2020
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12月16日
赤松利市
24
鯖
作者は年間に10000冊読んでいたことがあったそうだ。このことが書評に書かれており、読後間に合点がいった。凄い作品だった。予定調和などほとんどなく、読み手の裏をストーリーが進んで行く。それでいて読みにくさはなく、活字並べが素晴らしい。
単純に「シンイチ」がいい漁師になるストーリーを思い描いていた。ページが進むにつれての変化は胃の腑が痛くなるような感じだった。人間が持つ本来の欲が、ハッキリと前に出ている。ハチャメチャで破天荒さがありながら、人間の真髄を突いてくる。登場するキャラクターも独特でありながら、後半には普通に思えてくる不思議。
アンジのその後もあっていいだろう。何が目的だったのか・・・。
12月11日
江上剛
23
庶務行員
多加賀主水
がぶっ飛ばす
元銀行員の利を生かした、ノウハウでの作品と思えた。行員で無いと知らない内情を暴露と言うか。そしてそこにAIを登場させ、現代に見合った作品。ここは少し時代が過ぎるとスルメのような味わいが出てくると思う。その時代その時代の先駆したアイテム。
シリーズ作が進むごとに、主水VS鎌倉の様相が濃くなってきている。あとからラスボスとして町田一徹の登場があるのだろうか。銀行の知識を得ながら楽しく読める。
12月 8日
江上剛
22
庶務行員
多加賀主水
が泣いている
シリーズ三作目。ダイイングメッセージに隠された意味は・・・。ややコミカルな構成もあり、格闘はあるものの「死」は無かったこれまでだが、3作目で死人が出たと言うのはインパクトがある。本作だけでも面白いが、前作を読んでいると、200パーセントぐらい楽しめるだろう。逆を言うと、前作の内容が反映されているので順を追って読んでおきたい。
回を重ねるごとに、敵対する組織が見えてくる。作者の手腕で、面白さをどこまで引っ張れるか・・・。盛り込まれた政治経済の話は、フィクションとは思えず、事実も盛り込まれている。作者の知識により学ばされることも多い。
12月 1日
江上剛
21
庶務行員
多加賀主水
が悪を断つ
シリーズ最新号を読み、面白かったのでシリーズを遡って1作目を読んでみる。「許さない」の方は3匹のおっさん的なまろやかさがあったが、こちらはそれよりはエッジが効いた仕上がりになっていた。そして面白い。作者は銀行に勤めていただけあって、色々を知っている。そしてその色々を題材にして作品が書けるようだ。よって内情など知ることが多い。
読みだすと時間を忘れてしまうほど入り込んでしまう。とても読みやすい文字運びでもある。水戸黄門的内容であり、日本人受けする話構成でもある。
11月20日
赤松利市
20
藻屑蟹
歯に衣着せぬ書き方で震災後の福島が綴られている。フィクションなのか、ノンフィクションなのかは読み手側で判断することだが、フィクションには思えないほどに内容精度があるように感じる。よって、そうだったのか・・・と思わされることの連続であった。
登場人物の一人一人が、みなセンシティブのように思えた。言葉を違えると、心理学を齧っているような心の裏読みができ、それが作品内の会話に盛り込まれている。作品内に引き込まれる一つの要素であった。
高嶋哲夫さんのような作風ではあるが、氏よりもっとエッジが立っている感じ。これを読んだ東京電力の人は、どう感じるのだろうか。ナイフを向けられているような感じではないだろうか。
お金が全てだった主人公。ハッピーエンドが理想的な着地点だが・・・最後の最後まで楽しませてくれる作品だった。凄い力量で、とても読みやすい。活字選びがいい。
11月10日
高野秀行
19
世にも奇妙な
マラソン大会
作品内の「辺境慣れ」と言う言葉に納得しかない。作者は日本人の中で、5本の指に入るのは間違いないだろう。辺境に行く頻度も量も半端ない。怖さも不安さも、強い言葉も態度も、全て受け入れて面白さや糧にしてしまう。そういう意味では特異な変換機能を備えている人である。そんな人が文才があるのだから、つまらないわけがない。くだらないと一言で片づけられてしまうようなことを、真剣に取り組む姿勢は素晴らしい。そして結果を出している。
西サハラでのマラソンに誰が参加しようと思うだろうか。それも砂漠でのフルマラソン。15Kmまでしか走ったことが無い人が参加し、走り切っている。無茶を無茶に思わせないバイタリティーが備わっている。
抱き合わせの作品も全て面白い。ウイットに富んでいる。作者ほど経験値の高い人は稀だろう。
10月28日
江上剛
18
庶務行員
多加賀主水が
許さない
経済小説と言うカテゴリーがあるらしい。合併後の銀行が舞台。ありそうな背景の中で、次々に事件が起こる。フィクションとして読みつつも、リアル感はあり、主食に対する別腹のようにすいすいと読める。当然主食にもなり得る。たまにこんな作品に出合うのが楽しい。
最終章での展開に、この作品で完結のように思えるが、シリーズ作がまだ続いている。先が見たくても止めてしまった。水戸黄門的な日本人が好む部分を、銀行に絡め現代風にアレンジしている感じ。各章毎に爽快。
10月21日
岡田喜秋
17
旅に出る日
名著を読む。作者の一代記となろう作品。地頭の良さもあろうが、記憶と記録の量が半端なく、多岐にわたるノウハウ量が凄い。ただただ凄い。戦中戦後と生きてきたからこその情報量でもあるが、経験は強いと思わされる。机上の仕事の方であるが、自分の足で各地を歩き、五感全てで感じ得たものを克明に記録している。造詣が深いことがあっちもこっちもにもある感じであるが、なんと言っても旅のスペシャリスト。前半の章では、旅とはを多角的に検証しており、後半は人生記を軸に旅を語っている。旅をここまで重厚に書けるのは作者くらいであろう。学ぶべきことが沢山ちりばめられていた。
9月29日
大倉崇裕
16
秋霧
時季もピッタリ、そしてつい先日登った稲子湯からのルートが登場し、なんとも臨場感があり楽しめた。この本を読むのなら、歩いてからが楽しいかもしれない。読んでから歩いても、今度は歩きが楽しいかも。
強すぎる深江。たぶん樋口明雄さんなら、いくらか主人公がやられる表現で進めるだろうが、本作での主人公は完璧なほどに強い。最後まで読んで判ることであるが、途中ではそれが判らないのでハラハラしながら読める。久しぶりに血なまぐさい作品を読んだが、読み物として楽しく読めた。
終始登場人物にスピード感があり、面白くて貪るように読んでしまった。
9月27日
藤崎翔
15
神様の裏顔
この作風は初めてで新鮮だった。モノローグの連続で、いつになったら本題に入るのかと思っていたら、最後までそれを貫き、代わる代わるに登場人物のモノローグが繰り返され作品が仕上がっていた。
作者は元お笑い芸人と言う。だからか、ウイットに富んでいて、面白さを増すための言葉並べが秀逸。そして世の中を広角に見ていて、登場人物のモノローグが裏の裏を読むような、もう一つ先を掘り下げるようなしっかりとした思考を表し、キャラクターの各々が存在感を出していた。
一転、二転、三転。三転するとは思わなかったが、三転目がこの作品の真骨頂で、一転二転目の布石が絶妙。どうやって下書きをしたのだろうか。フローチャートで論理回路でも並べて繋げて書いたのではないかと思うほどのループした楽しさだった。
凄い能力の作者に思う。
9月10日
浅田次郎
14
霧笛荘夜話
人間観察に長けた作者が、人間模様を描く真骨頂の作品。
強い物言いの登場人物ではあるが、強いほどに温かみがあるのが作者の描く登場人物。アパートの店子をバリエーションよく描き、そしてアパートと言うくくりで繋がらせ、大家の存在で結んでいる。
人間の欲求のなかには、アパートには「どんな人が住んでいるのだろう」と思う部分が有る、それをうまく使った手法であり、すいすいと貪るように読めてしまう。そして巻末に作者のインタビューが載っているが、それも併せて読んで、作品完結と思える。そこまで読むと、ちゃんとスパイスの効いた作品になっていた。
人間愛を楽しみたいときは、たまに浅田作品が読みたくなる。
8月31日
オグ・
マンディーノ 13
世界最強の商人
世界でも人気の作品と言う事で手にしてみる。訳者の苦労が判るが、どうしても外国作品は読んでいて読み辛さがある。文法が違うので言葉並べの順列が違うからだとは思うが、そこは訳者の腕の見せ所であり、なんとかならないものかと常々思う。
営業職に対する指南本と解釈したが、私自身が営業職ではないので、あまり浸透水のようには頭に、身体に入ってこなかった。他人の言う事を聞かない天の邪鬼だからだろう。最後は聖書的な記述で、締めくくっているのも・・・現実と離れてしまっているような感じで読みづらく違和感があった。
日本のセールスマンも、この本をそれこそバイブルのようにしているのだろうか。
8月18日
伊沢正名
12
くう・ねる・のぐそ
楽な気持ちで楽しもうと手にした本だが、作者の本気度が見えてきた時から、学術書のように思えてきた。それほどにデータをとっている。野糞をここまで追求し調べた人は居ないだろう。あらゆる角度から観察し、最後は「味わう」ことまでしているから頭が下がる。いろんな学者は居れど、そこまでの探求心を持っている人は稀だろう。ウイットに富んだ言葉並べで、半分ふざけたように書いてあるが、その実際に行っていることは、マネできないような努力が在るはず。バイタリティーの塊のような人であろう。
野糞肯定派や否定派が居り、関わる法律もあるようだ。それでも、そんな中でも、この本を読んだら、野糞に対する思いが変わってくるだろう。田部井淳子さんは「持ち帰り派」で、三浦雄一郎さんは「クレパスに蹴落とす派」で、有名登山家でも大きく違う。どちらが自然派なのかの自分なりの判断をするのに、この本は背中を押してくれるだろう。
山中に入るので、年間にすると私も50回くらいは野糞をしている。一般人より遥かにしていると思っていたが、上には上が居ることを知った。
7月24日
島崎藤村
11
破戒
名作を読む。先に読んだ作品内にこの本が書かれており、恥ずかしながら、その時に存在を知った。
同和教育、部落問題、昭和でもかなり騒がれた事柄で、平成令和となり、時代がそのことを薄めて行っている。逆に遡るほど濃くなったはずであり、この作品は濃い時代を書いている。
時代が時代なので少し読みづらい言葉並べがある。用語とそのルビがそうさせているような感じでもあったが、それはそれとして物語としての構成がよく、読み手側を吸い寄せ一喜一憂してしまう。善悪が割とはっきりしているので、そこで心が動かされているのもあった。
現在も地名が残る場所がそのまま作品内に使われている。住まわれている人は「部落」と全国区に知らされたようなものであり、この部分では大丈夫なのかと心配してしまう。
主人公の学友である銀之助の存在も光る。途中まで卑下していた部落民に対し、最後は友情を優先している。なんとも秀逸。
戒めを破る事・・・。
6月30日
岡田喜秋
10
山村を歩く
三部編成の32作が読め、ショートショートのように楽しめる。読み易い軽やかさのなかに、濃い内容がちりばめられ、それが各地となるので、作者の知識量には驚かされる。元々頭のいい人であり、記憶力が長けていることもあろう。そして頭脳でなく体も動かし、自分の足で踏査する探究心。旅に目的を持ち、抱いた疑問を一つ一つ解決している。作者の知識量の多さは、このことからと判るが、普通旅をする場合は景勝地を楽しみにすることが多いが、作者はそれとはちと違う観点である。
書かれている三分の二ほどの場所に出向いたことがある。私の場合は楽して出向いているわけだが、作者は時間をかけて歩いている。結果として現地を知ることにおいて歩きに勝るものは無いと思える。現地の人との出会いもそう。
現代で同じような旅ができるかと言うと、少し難しい部分もあろう。バス路線も減り、山村の住民も一人減り二人減りして、迎える現地の様子も違ってきているだろう。かなり歩き辛い側になってきているが、それでもそれが今の山村風景であるのだから、昔を求めず今を求め山村の歩けるところを歩いてみるのでいいだろう。
読書を続けている中で、尊き一冊に思える。
6月12日
吉村昭
9
深海の使者
以前にも第二次世界大戦中の潜水艦に触れた作品を読んだが、これはその潜水艦中心に書かれたもの。よく調べ上げているのが判り、いつもながら吉村さんの作品は読み易い。ただ一つ、階級がしっかり書かれると、しょうがないとは言えスルッと読めなくなる。階級位をしっかり理解しつつ読み進めようとしてしまうのだった。
戦時中の日本軍のレーダー開発の遅れが読める。同盟国同士で技術供与しあって開発がなされていたことが読める。そして流れている時間軸が戦争中にしてゆっくり感じられる。昔の戦争と、今の戦争の違いを強く感じる部分。
過去の大戦があって、多くの戦死者があって今があり、その中で日本とドイツを潜水艦で行き来していた方々が居た事実。今も海の中では各国の潜水艦が行き交っていると聞く。見える飛行機や船などに対し、見えない潜水艦は、今既に実戦同様と聞く。
いい作品、いい資料であった。
5月13日
小倉美恵子
8
オオカミの護符
「護符」にピントが合っていなかったので、あまり判らず読み始めたが、面白くてみるみるうちに引き込まれてしまった。
都会と言える川崎から発したこれが、ここまでの面白さになるとは、面白いと言うのは興味深いと言い換えられるが、ここまで掘り下げて追及した作者も凄く、探求心旺盛だったと言える。
神社に見る狛犬。ずんぐりむっくりしているのを普通と思っており、たまにやせ細った犬のようなものを見る。なんだろうと思っていた。この作品を読み終えて、経緯が判った。そして「講」を知らず、赤城や榛名や武尊に登っても、現地に見える判らない石碑が理解できなかった。それらは講に寄るものと本作品で理解できた。
知識が得られこれからの山歩きの糧になり、現地で出会った場合、より見えてくるものがあるだろうと思う。知らないより知っていた方がいい。
和名倉山の昔も知ることが出来た。今は藪山になっているが、あそこに焼き畑が多く在ったとは・・・時代の変遷を感じる。
山への思いを少しリセットできた。ただ登るだけの場所ではない。
4月15日
岡田喜秋
7
名残の山路
ここまで読み心地のいい作品は久しぶり。言葉並べが絶妙で、文字遣いが秀逸。ドストライクとも言える。五感をくすぐると言うか、作者の五感が長けていて観察眼も鋭い。アンテナの張り方もよく、さらに記憶力がいいときている。紀行文を書くに際し全ての能力が伴っている感じ。
あとは知識も豊富で、初めて知り学ばされる事柄も多く、その点でも作者に興味を抱いてしまう。どれほどの知識を持っているのか。少し岡田さんの作品を追ってみよう。今回が、円熟のお歳になっての作品だからかもしれないが・・・。
ショートショート的で、手離れと言うか作品離れがよくしつこさが無い。作品内に登場する場所の半分くらいは現地を訪れたことがあり、同じ現地でもこんな見方があるんだと感心させられた。
3月21日
ジョン・ブラッドショー
6
DOG SENSE
訳者が今一つで、かなり読みづらい。学術書的に書かれているので、難しい内容を訳していることは判るが、なにせ読みづらい。機械が訳したような雰囲気がある。
ただし読める内容は、長年犬を研究してきた人の経験と、研究結果が書かれ、現在におけるトレーニングの違和感を伝えている。本来の犬はこうであると教えてくれ。上下関係を重んじた過去からの犬と人間の位置取りは、間違っていると理詰めで綴っている。やや諄いくらいに書かれているので、作者が強く言いたい部分だとは判る。
かなりの情報量のある本だが、一つ驚いたのは、犬は口の中にも匂いを感じるヤコブソン器官と言うのがあるそうだ。鼻だけでなく口の中にも・・・。犬は人間の匂い感知能力に対し千倍から100万倍の能力があるそうだ。数値を示されると差異がとても分かり易い。
読みずらい難しい本であるが、愛犬家は一度読んでみるといいだろう。接し方が違ってくると思う。
2月29日
ラーシュ
ミッティング 5
薪を焚く
薪ストーブに関わる全般が書かれ、科学的見地と長年の経験値で書かれているので、有益な情報ばかりであった。自分のノウハウで、もう十分と思ってういた読む前であるが、作品内の各所に記憶したい技術が読めた。
「火が無ければ死んでしまう」時代からずっと続けてきた作業。特に薪割りに関する木材の情報や乾燥の仕組みは、“そうだったのか”と思わされた。国内にいると知らない海外の薪割りノウハウ。文化風土に合わせたノウハウもあるが、乾燥促進、省力の為にこうしておくってことを知れただけでもありがたい。
ちょこっと書いてあるが、日本のメーカーが模造してストーブを作ったとチクッと書いてある。そして日本向け加筆している部分もあるようだ。いい本に出合えた。
2月21日
熊平製作所
4
抜萃のつづり
その七十九
今年も届けられ、ホッコリとホロッとさせられた。前年度も読んだような記憶があるが、NHKの森田さんの記事はよく取り上げられるよう。選定委員の好みなのかもしれない。たしかに文章も上手。
世の中に流されがちで、ネットによる情報がスピード化している。立ち止まり確認することなく押し流されている感じがしている。そんなとき、この本は立ち止まり足踏みをさせてくれる。ゆっくりと周囲の景色が見えるようになる。忘れていたものを思い出させてくれるよでもある。
2月18日
飯田浩司
3
「反権力」は正義ですか
ニッポン放送のアナウンサーが、リスナーに促され書いた本とのこと。
毎朝作者のラジをを聞いている。他の誰よりニュースが理解しやすい。それには、多角的に物事がみられている様子が見え、バランスがよく、それでいでウイットさも持ち合わせ、飽きないで聴いていられるからであった。分かり易いのは何よりで、そう伝えている努力をしているそうだ。それらが作品の中に綴られている。
知らないことを報道で知る。その時、伝えられたことを鵜呑みにする。ここでは、伝える側はそれ相応の責任が在るわけで、そこには正確さが必要でもある。この辺りの、伝える側の立場と放送法などの内情を知ることが出来る。
毎日のようにキレのいい放送をしている氏であるが、この作品ではさらに鋭く切り込んでいる。震災、辺野古、政治、加計学園、等々の裏側が解説されている。若い人も読んだ方がいいだろう。
少し言葉並べに独特さがあるが、そこは氏の個性となろう。
2月4日
原山 智
山本 明 2
「槍・穂高」明峰誕生のミステリー
ブラタモリ(HNK)からは、タモリさんの地質や岩石に対する博識さに驚いたりする。この作品を読み、その世界に飛び込んだ感じで、岩など地形などつまらないものと感じていたことが、180度ひっくり返った感じで、興味を抱く事ばかりであった。
見知った場所が多く書かれ、そのことも親近感を抱き理解しやすく。なによりも山本氏が分かり易くウイットに富んだ言葉並べで書いているので、難い技術的な話でも読み進められるのであった。
最後の総括では、ガイドブックとの認識で書いてあると作者は言っている。これを読みながらは大変だけど、山行前にその場所を読んでいくと、かなり見るものがあり有益な山行になるだろう。そういう意味では、もっと早くに出合いたかった本である。
時間軸の長い話ではあるが、不思議とそれらが最近とか少し前とか思えるようになった。この作品を読んで、少し理解できたからだろう。この分野も興味を持つと思い白い。何事にも興味を持ちたい。
TBSラジオに原山さんが出演しており、それをきっかけに購入に至った。
1月 8日
船木上総
1
凍る体
低体温症の恐怖
丁寧に書かれた医学書のような作品で、これをしっかり読めばどんな人も低体温症に対して知識になるだろう。どんな症状(弱い、強い)の時、どうした方がいいか医療従事者らしい表現で伝えている。そして伝えている当人がクレパスに落ち低体温症になり死の淵から這い上がっている。運も良かったのだろう。でもバイタリティーを伴った頭の良さも健常状態になれた要因だろうと思える。困難に突き当たった時の、乗り越え方の多角性も学ばせてもらった。うち一つは、神に頼り祈ることもそれ。
書かれた内容に驚きながら読んだが、もう一度かみ砕くように読んでみたいと思う。そしてこの作者も単独行はしない方がいいと締めくくっている。でもただ、本人も出勤前に山スキーをしている。高山の故篠原先生のように忙しい人なんだろう。
低体温症の知識と、生きる知識を学ばせてもらった。