2025
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2月12日 | 森沢 明夫 | 8 さやかの寿司 |
作者らしい、作者の作品を読んでいる感が強い仕上がり。海辺の情景が映像として見えてくるよう。過去作の登場人物も織り交ぜながらの、ほんわかとしたいい雰囲気。さやかのキャラクターのおかげで、至極ほっこりさせられる作品。 人生いろいろと言うか、誰もが何かを背負い生きてきている。本作はそれらすべてをハッピーエンド側に結んでいる。理想的な展開であり、それが心地よさに繋がっている。逆を言えば出来すぎではあるが、読み物としてはこれでいいだろう。本を読む楽しさになる。まひろの登場から、最後の未来の〆まで、海辺町のローカルな出来事をのぞき見しているようで、ほっこりほんわかさせてもらった。 |
2月 8日 | 村崎 なぎこ | 7 百年厨房 |
ナカスイ同様に栃木が舞台で、今回は大谷石が切り出される地区。ローカルな感じで、ご当地な感じでジモティーが読むと特に面白いだろう。過去から、過去へと時空移動と言うファンタジックな部分もあるが、それはそれとしてとても心地いい仕上がりになっている。昔の飲み物や氷菓、食べ物が登場し、そこに民族・文化・風習・風俗などが織り交ぜられ、大正時代の現地の様子が綴られている。資材の場所から、観光の場所に変わった大谷石の産地が、この作品で学ぶことができる。 斬新な構想ではあるが、突飛な感じはせず浸透水のように心地よく読めた。ギスギスした現代社会も語られ、その反面な感じでアナログなゆったりとした大正時代が語られる対比がいい。 |
2月 2日 | 寺地 はるな | 6 雫 |
題名から想像するに、水に関わる展開かと思ったが、意外な内容だった。過去に遡る特異な進み方で、今の背景がどんどんと紐解かれてゆく。作品内に、きらりと光る原石がちりばめられているような、時々ハッとさせられる部分がある。登場人物の人となりがハッキリと判らず、その部分がとても人間らしく、それら表と裏の押したり引いたりの会話がとてもいい。 冒頭、淡々とされる会話に、少し食傷気味であったが、以降ではそれらがクセになるような感じであった。 |
1月29日 | 村崎 なぎこ | 5 ナカスイ! 海なし県の海洋実習 |
構成的には、前作に似ている印象があるが、主人公さくらの成長度があり、他校との交流が楽しめる。そして1年生を経て2年になり、周囲の桜に対する暖かさや信頼度が見え、ほっこりする部分。多感な年代の恋愛を主軸にした展開だが、昨今の景気の悪さからの家庭事情も加わり、かなり現代的な印象を持つ。1作目ではマイナスな感じから入ったが、だんだんとプラス要素が増してゆく感じがいい。さくらが教員を含め仲間に溶け込んでゆく様子がいい。 |
1月26日 | 誉田 哲也 | 4 首木の民 |
久和が、ノンフィクションの世の中における高橋洋一さんのような切り口で、財務省に対しての苦言が、佐久間との取り調べの中で展開する。しつこいほどに、これでもかと・・・庶民のために。作者の世の中に対する言葉を、久和になって発信しているようでもあった。 三都が影の主人公になるのかとも思ったが、彼女の推理も楽しい部分。そして展開は当然ながら最終場面まで判らないが、捜査の進捗は知らされてゆき、事件解決へ近づいてゆく様子はストレスフリー。 経済や財政を学べ、推理も楽しめる斬新な作品だった。財務省に騙されるな!! |
1月22日 | 原田 ひ香 | 3 古本食堂 |
古書店が舞台の独特の展開。著名作家の作品を絡ませ、おそらくは作者のお気に入りの行が抜粋され取り上げられているよう。そしてそこに料理が絡む。 軽い感じで読み進められ、肩の凝らない作品。登場人物同士の、相手を思いやる部分が温かい。 |
1月16日 | 村崎 なぎこ | 2 ナカスイ!海なし県の水産高校 |
栃木県の水産高校が舞台。これは架空ではなく、実際に馬頭高校と言う水産科のある学校が存在し、そこがモチーフにされているよう。読みだしてすぐに、「成瀬は天下を」の雰囲気を感じ、とても展開が心地いい。高校生の多感な感じもよく表現され、成瀬でのM1が本作では「ご当地美味しい甲子園」となる。 主人公のさくらと、かさねと、小百合の三すくみな位置取りが、キャラが立っていて面白みとなる。読後感がとてもよく、終えてからすぐに再度読み直すと、さらにするめのように味が出てきた。成瀬に引けを取らない仕上がり。これはいい。 |
1月12日 | 高嶋 哲夫 | 1 チェーン・ディザスターズ |
預言者のようにタイムリーな作品を残す作者。コロナのパンデミックの時も的確に言い当てた。書き当てた感じだった。ほか地震もそう。このあと、残っているのは富士山の噴火である。その富士の噴火が、今回の作品のラスボス。 太平洋側の地震連鎖。東海から四国に渡るプレートが動いた。そこに台風。東京も地震が襲い、復旧復興の最中に、今度は富士の大噴火。作品として作られたモノだが、自然災害の可能性としてゼロではない。利根崎の開発したソフトにより、当初は復興側に向いていたが、最後はやはり人間は自然には勝てない・・・。ただし、これら自然の動きは繰り返されてきたこと。そして人類もそんな中で生きてきている。 若い早乙女総理の手腕。政治と経済と外交と、いろんなことを考慮する中での災害対応。どうするべきかを少し促しているようにも読める。皆が皆、このような作品に触れていれば、実際の災害時には行動が速く的確に動けるのではないだろうか。 このあと、ラスボスが噴火するのか、住まいするこの地も影響が出るように書いてある。 |