小天狗   2178m      大天狗     2430m        
      
    2004.9.20


   曇り    単独   八ヶ岳牧場側から県界尾根を辿る       行動時間 :不明



  登山記録・写真ともに紛失、記憶に頼る。(2008.9.3 再作文)



 八ヶ岳の登り残しも少なくなってきた。そんなところへ日本山名事典が発行され今回の2座も掲載された。地形図に名前の載らないこの2座は、これまで私の中では登山対象とはしていなかった。それが事典に載った事で、現金なもので行ってみたくなった。私の登山対象とはこんな判断基準なのである。

 早朝家を出て、野辺山最高地点から八ヶ岳牧場の方へ向う。エアリアマップにあるゲートの場所は問題なく通過でき(記憶薄)、ダート林道を奥の方へ進む。志木市少年自然の家への入口を左に見てさらに奥に行く。少し記憶が呼び起こせないのだが、登山口付近まで車が入れられたように記憶している。そこには既に1台の車があり、周辺の食器から前泊の様子が伺えた。主に話を聞くと、これから自宅に帰るのだという。県界尾根をこちらから登る人は稀であり、昨今はスキー場からのアプローチが大多数と聞いている。そんな中でここに居るとなると、よほどの猛者なのかと思ってしまった。“昨日は上の方はどうでした”と訊ねると、”夕方に着いて一泊して帰るのです”という。さらに話を進めると、このようなキャンプを良くやっているらしい。週末をこのような場所で一人楽しむ事を趣味にしている方であり、登山目的では無いのであった。家を離れて自分の思った場所で車中泊、その装備の充実さからも楽しさが伝わってきていた。

 古い道標に従い山道に入ってゆく。最初は開けた場所だが次第に笹薮となり、足許の道形を拾うように笹を分けてゆく。視界はあるものの、何か熊でも出てきそうな雰囲気がある場所であった。ここは左右に針葉樹があり、ここだけ一定の幅でそれらの植生が無い。要するに防火帯となっているのであった。この先の三角点峰名は防火線の頭であるから、地元では防火線と言うのが正解なのかもしれない。笹は夜露で濡れ、雨具を着込んで進んでゆく。防火帯のやや南寄りに道形はあり、それを気にしつつ上を目指す。時折その道形を外し適当に笹を分けてゆく。外しても酷い笹漕ぎではなく、それなりに分けて行けるほどの植生であった。

 防火線の頭を手前になると踏み跡は分散し、低い笹原を適当に上がってゆく。山頂部には確か黄色い標識があったような・・・完全の樹林の中なのだが、そこそこ明るさのある場所で、ダラッとした丘のような場所であった。三角点をカメラに収め、さらに足を進める。歩かれる人が少ないせいか、ルート上は折れた木々などで遮られている場所が多かった。暫く続いた平坦地が終わると急登が始まる。笹の中の見えない障害物に躓きながら来ていただけに、この先は急登であるが歩きやすい登路と感じた。そしてこの付近からキノコが非常に目に付くようになる。ひとたび気にしだすと周辺部のキノコがどんどん目に飛び込んでくる。「これは食べられるのか」、「これは毒だろう」などと視覚から判断しながら色とりどりのキノコを楽しみながら上がってゆく。周辺は幹の細い針葉樹が多く、少しやせ尾根的な場所も通過する。全体的に登路としては幅の狭い場所が多かった。

 小天狗手前で南から上がってきている道と合流する。やはり南側の道の方が主要道に見えるしっかりさであった。ここからほんの僅かで山頂部であった。適当な広さがあり休むのには適当な場所となっていた。少し日も差すようになり、着続けていた雨具を脱いでこの先に備える。先ほどまでは樹林の中の薄暗い登山であったが、一変してこの先は南側が開けた明るい尾根歩きとなった。 さして急な場所もなくじわりじわりと高度を上げてゆく感じであった。岩陰に青いリンドウが揺れ目を和ませてくれる。

 大天狗は少々岩場的な場所となり、巻き込むように駆け上がるといくつかの道標が点在し、天狗様の石造もあった(たしか)。岩場に腰を下ろしトランシーバーを握る。この標高になると関東一円の声が入ってきていた。もう少しがんばれば八ヶ岳最高峰の赤岳に到達するが、今日の最終目標地点はここ。無理はせずここで踵を返す。と言うのは、帰路に防火帯の笹漕ぎが最後にあるので、あまり遅くなっての笹漕ぎが負担に思えていた。ガスも少しかかった状況でもあり、余裕を持っての下山とした。

 小天狗東の分岐箇所まではあっという間に降りてきた。ここまでの道が広く展望も良かったために、この先の登山道は至極狭い道に感じる。ただ往路同様にキノコが目を楽しませてくれ、よく判らないまま俄かキノコ採りになって適当な一本を摘んでみたりもした。それが毒であるのか食べられるのかも判らないまま。往路は登りだったからまだしも、帰路は下りとなり、足場の見えない中で少々難儀するルートであった。笹の中の岩に引っ掛けたり倒木に引っ掛けたり、やむなく途中で枯れ枝を拝借して、まるで座頭一のように足場を探る杖代わりにして降りて行った。高度を落とすに従いガスも濃くなり、やはり大天狗での判断は正解だったようであった。

 防火線の頭からは最後の防火帯の中を行く。どこに正式な道が付いているのか探るように行くと、南寄りの針葉樹林の際に道が切られているようであった。しかしその道を伝っても笹漕ぎから回避されるわけではなく、先ほどの杖は捨て泳ぐように下ってゆく。進める足にもやや纏わり付くような植生で、途中でトップを誰かに変わってもらいたいような感じでもあった。明るければそんなことは考えないのであろうが、ガスに巻かれた暗い中だったので、気持ちが後ろ向きだったのかもしれない。

 朝にキャンパーと会った場所まで戻り県界尾根のピストンを終える。山行を振り返るのだが、ここは入口こそ道標があるが小天狗までの登山道が一般向きではない。薮山派、静山派にはそれが少し面白いと感じられる場所かもしれない。それから目の当たりにしたキノコの多さ。八ヶ岳はキノコが多いと良く聞いていたが、他の登山道上ではあまりそれを感じず、どのエリアの事なのだろうと思っていた。そんな中、この県界尾根はキノコには住みやすい土壌環境のようであった。ただ、私には食べられる食べられないの判断は出来ないので、私の言っているキノコが全て食べられるキノコではないことはご理解のほどを・・・。キノコが多いということは湿気も多く、常々ガスも出やすい場所なのかもしれない。

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