大窓頭 2500m
池平山 2561m 小窓ノ頭 2650m 長次郎ノ頭 2930m
剱岳 2999m シシ頭 2900m
2007.9.9(日)
9日
: 晴れ 単独 大窓から剱岳をへて早月小屋まで。 行動時間:12H52M
10日: 雨 単独 早月小屋から馬場島。 行動時間:2H18M
@大窓5:23→(75M)→A大窓頭6:38〜45→(58M)→B池平山北峰7:43〜52→(35M)→C池平山南峰8:27〜33→(71M)→D小窓9:44〜10:18→(69M)→E小窓ノ頭11:27〜44→(61M)→F三ノ窓12:45〜51→(45M)→G池の谷乗越13:35〜53→(55M)→H長次郎ノ頭14:48〜54→(38M)→I剱岳15:32〜38→(26M)→Jシシ頭16:04〜12→(122M)→K早月小屋テン場18:14
L早月小屋6:00→(138M
)→M馬場島野営場8:18
@大窓から五竜岳方面。日の出前。 | @大窓谷側。 | @大窓黒部側。雪渓までは100mほど下らねばならない。 | 大窓頭中腹から大窓。この辺りまでが急登。 |
大窓頭直前。少し傾斜が緩む。 | A大窓頭から池平山北峰。 | A大窓頭から剱岳方面。 | A大窓頭から赤谷山方面。 |
A大窓頭から池平山北峰。複雑な尾根形状だが、さほど危険度は無い。 | 池平山側に少し進んだ所から大窓頭。 | 池平山の北側の壁は無理して登らなくとも良い。ここから左に巻いてゆく。 | 左に巻きながら上部を気にしているとロープが降りている。このロープは切れそうである。 |
B池平山北峰。 | B北峰から南峰を見る。 | B池平山北峰から剱岳 | B池平山北峰から赤谷山方面。 |
B北峰から坊主山を望む。 | 北峰の南斜面。 | 壁に映し出される縦走ハイカー。 | 北峰からは中央の草地をトラバースするのが良い。 |
池平山南峰山頂に登山者の姿が見える。 | 写真中央やや左の草地の所にロープが垂れている。 | 下から見上げるとこんな感じ。かなり腕力が必要になる。 | 登ってきた場所。 |
C池平山南峰山頂。標識が置いてある。 | C南峰から池の平小屋を望む。 | C南峰から北峰。 | 池平山からの稜線途中から小窓。 |
2505高点を過ぎると急峻を降りるルートになる。この下の通過点でお助けロープが切れた。 | D小窓。池平山側から撮影。 | D小窓のテン場。 | 小窓から7分ほど下ると右側に水が出ている。かなり冷たい。 |
D小窓雪渓。 | D西仙人谷。 | 小窓から池平山側の2505高点を望む。中央少し左の緑の部分を下ってくる。 | 小窓ノ頭方面。 |
小窓ノ頭直下。 | E小窓ノ頭山頂。 | E小窓ノ頭テン場。 | E小窓ノ頭から小窓ノ王。 |
三ノ窓側から来た場合、ここをまっすぐ行くと小窓ノ頭。右へ下るとトラバースルート。 | トラバースルート(南から撮影) | やや不明瞭なトラバースルート(北側から撮影) | 小窓ノ王直下のルンゼ。ここは水が得られる。 |
ルンゼ下側。 | 小窓ノ王。流石に登れない。 | 登って来たザレ。 | 小窓ノ王は西側を巻いて下ってゆく。 |
途中お助けロープがある場所。 | F三ノ窓。テントサイトが4つ。 | 池ノ谷ガリー下部。 | ガリー上部から下を見る。 |
八峰頭の岩。写真中段まで登った。 | G長次郎谷へ行く太い踏み跡が降りている。 | Gペンキマークに従い岩壁を登って行く。 | 岩溝を登るのだが、北(右)に側に避けてもよい。 |
途中から八ツ峰を振り返る。 | 池ノ谷尾根の頭付近にあるテン場。下からの吹き上げの風を大岩が遮っている。 | 写真中央に2本のシュリンゲがあり、それを使ってトラバースする。2本目で腕力必要。 | 長次郎ノ頭のトラバースルートが剱岳側に巻き込む所。ケルンがある。 |
付近の要所にkumoが設置してあった。 | H長次郎ノ頭から八ッ峰。 | H長次郎ノ頭最高点と、後ろが剱岳の斜面。 | H長次郎谷を見下ろす。 |
長次郎ノ頭側から剱岳への登路を見上げる。おおよそ白く見えているところを辿る。 | 長次郎ノ頭から懸垂下降で降りて来る。距離8mほど。(下から撮影) | 剱岳側から長次郎ノ頭。左側の黒い部分を降りてくる。(ザイルが無い場合は、長次郎谷側を深く巻く) | 剱岳直前。 |
I剱岳三角点。 | I数枚設置してあったプレート。 | I山頂の祠。立派な標識が2つ置いてある。(撮影側にもう一つ) | I源次郎尾根を見下ろす。 |
立山方面遠望。 | J登山道からシシ頭へのルート。登りやすい岩場。 | J山頂の岩にはハーケンが2〜3本打たれていた。 | K早月小屋到着。 |
Lテント場
L早月小屋全景。
登山口に下山。
これぞ剱!「試練と憧れ」
とうとう一周して来た。往路は左に進みブナクラ谷へ。
M馬場島野営場駐車場に到着。
さて二日目の朝を迎えた。換気穴から外を見ると五竜岳方面がしっかりシルエットとして見えている。今日は天気が良さそうである。パンを齧り簡単な朝食とする。テントを畳みザックをパッキングして、最後にお地蔵様に挨拶をして大窓を後にする。大窓頭までの3/4ほどは至極急であった。稜線に対してやや西側を通過する場所が多く、迷ったら(迷わないが)西を気にしていたらいいだろう。山頂を手前にしてやや西側に上がり、巻き込むように東に向かい大窓頭頂上に立った。ここは逆ルートの場合は、少し戸惑う部分だろう。今日は昨日と一転して好天であり、360度のパノラマが見られた。振り返れば歩いて来た稜線、剱岳方面にはこれから挑む岩峰がゴツゴツと天に突き上げている。なかなか見ることが出来ない景色があった。
さてこの先の池平山南峰と池平山北峰の北側斜面に危険箇所がある。どんな難関なのか。そこを越えねば戻るしかなく、否応無しに気合が入る。岩尾根をクリアーして北峰直下のコルまで来ると、垂直に近い草付きの壁が立ちはだかる。6mほど這い上がれば安全地帯になりそうだが、滑ればそのまま尾根に着地できず奈落の底に行きそうであった。2mほど上がり次の手がかりを探したが、どうにも無理であった。空荷で登り後からザックを上げればよかったのだが、それも面倒なので背負っていたせいもある。そこで東(左)側にほぼ水平にトラバースするように進む。ここは赤茶けた岩場で、そのまま巻き込むと谷になり行動不能となった。どうにもルートが見出せず、それならと上に這い上がった。ここはやや緊張する場所である。腕力で5mほど登ると、なんとお助けロープが垂れていた。要約すると、大窓の方から来た場合、壁を直登せず左側に巻いて5m〜10mほど進み、右手の岩部にルートが有ることになる。ただこのロープは切れそうになっていたので、位置の把握ぐらいにしか使えないだろう。この後は危険箇所は無く、池平山北峰に到着した。目の前には南峰があり、丁度一人の登山者が登頂した所であった。こちらを向いていたようなので手を振ったが返答なし、もしかしてこちらが見えていないのか。この北峰もなかなか居心地のよいところであった。
南峰へは忠実に尾根を行くより、やや東(左)側をトラバースするように進むのが良い様であった。と言うのは忠実に進んで難儀したのであった。そして今度は池平山南峰の直下に来た。この辺りも踏み跡に導かれるように進めばよい。そして頂上へのアプローチなのだが5mほどを古いお助けロープに頼らねばならない。もしこのロープが無くなったら東側のルンゼを登ることになるのだろうが、少し偵察したが足場がかなりやばい、やはりここはロープに頼る。実質4mほどの危険区域なのだが、ここさえ抜ければ後は山頂までハイマツなどを掴みながら上がればよかった。東側から回り込むとケルンがあり、大岩の重なり合った山頂であった。東を見ると池の平小屋が見える。本来なら安全のために小屋経由で小窓雪渓を登るのが妥当のようである。がしかしここは是が非でも稜線で繋げたい。休憩の後ハイマツの尾根に踏み入る。さすがに歩く人の数に比例しているのか、踏み跡の薄さを感じる。時折消えている場所もあり、判らずハイマツと格闘する場所もあった。そして2505高点を過ぎて小窓への下降に入ると、急な場所の連続であり、各所にお助けロープがあるのだが、その1ヶ所で体を預けていたロープが切れ、あわや滑落と言う場面もあった。下から上がった場合は、ロープが欲しい所に無いので注意してもらいたい。まー私が切ったから次の事故が防げたと考えればプラスに向くか。気の抜けない下りをこなすと、そこが小窓であった。
辺りからは嬉しい水の音がしている。小滝が見えるが、そこへは100mほど下る。他で流れはないかと目を凝らすと、もう少し上の岩場に舐めるような流れが見えた。ここなら楽に汲みに行ける。雪渓の上を7分ほど下り、冷たい水に辿り着いた。テルモスの中の池の水は捨て、全てここの水で満たした。あまり水を飲まないのだが、飲み水が沢山有ると元気が出るもので、意気揚々と雪渓を登り返す。少し早い昼食とし大休止とした。ここには1張り分のテン場も有る。もう朝露の心配も無さそうなのでここで雨具のズボンを脱いだ。時間に猶予があるのなら1時間でも2時間でも居られそうな気持ちの良い場所であった。
小窓ノ頭向け歩き出す。小窓からのルートは、これまでに比べ格段に明瞭になった。小窓ノ頭への中間部は、北側に大きく膨らむようなルートになっていた。そしてその先の草地でルートは稜線は通らず東斜面をトラバースして行っていた。適当に小窓ノ頭へ向け上がって行くといつしか踏み跡が出てきた。これは最高点へ行く跡と、もう一つ北側のハイマツの無い展望場のようなピークに繋がっていた。この最高点の東側にはハイマツが伐採され、そこに1張り分のテン場が設けられていた。ハイマツが風を遮ってくれ、眼下は花畑でもあり、居心地は良い様だが、なぜにここにと言うような場所を切り開いてあった。ここからは稜線に並行する道を行く。すると先ほどトラバースしていた道と途中で合流した。逆進路の三ノ窓側からだと、この分岐を真っ直ぐ進むと小窓ノ頭へ行き、右下にトラバースするとショートカットして小窓方面に進むことになる。
三ノ窓へ向け黒部側をしばらくトラバースしてゆく。ガスの中から小窓ノ王が浮かび上がる。さすがにここは見ただけて登れないのが判る。40mザイルで3ピッチと聞く。全く持って遊ぶ世界が違うように見えた。その小窓ノ王の真北で途中直角にルートが変わる所があり、やや不明瞭なのだが踏み跡が途絶えたら稜線に突き上げるのが正解である。そこを辿ると一部水が出ている所があった。ルート上で容易に水を汲める(私は汲まなかったが)のはここだけであった。三ノ窓のキジ場とは距離があるので使える場所である。稜線に戻ると小窓ノ王の基部で、ここは西側(右)を巻いて下ってゆく。お助けロープなども使い三ノ窓に到着。最初にすることはクンクンと辺りの匂いを嗅ぐ事なのだが、この時はさほど臭う様な感じは無かった。4ヶ所テン場を確認。
さて池の谷ガリーに入る。気持ちこちらに来た方がキジの匂いがしていた。歩き始めから手探りと言うか足探りで状態を把握する。ここは下の方は中央部の大きな岩の所を伝うのが楽であった。次に左に振って岩壁寄りに歩き、そこもだんだんと流れるようになったら、中央やや右側の砂状の所を歩いた。砂が流れて歩き難いと思われがちだが、粒子が密接している分、グリップしているのであった。中央に大岩が見えたら、ややザレ状態も楽になり右側に進む。すると池ノ谷乗越に到着。ここはなにかと残置物が多い場所であった。ザックを置いて八峰頭に取付く。10mほど登った所で、微妙にオーバーハングしているような場所があり上に行けない。私の力量もここまでである。もう少し岩の技術があれば良いのだが完全に欠落しているのであった。乗越まで降りてしばし風に当たる。長次郎谷からの吹上が気持ち良い。ここはその長次郎谷へ太い踏み跡が降りている。思わず伝いたくなるので注意である。
ルートは西側に見える岩壁側にある。やや登りにくい場所をしばらく行くことになる。岩溝になり、さらに難儀しながら落ちないように上がってゆく。よく見定めて岩溝の辺りから北側にずれると幾分か進みやすい。稜線に上がると気持ちの良い通過点が続く。付近に見える景色は全て岩場である。途中大岩の間を通過するような場所があり、そこにも1張り分のテン場スペースがあった。長次郎ノ頭を前にしてシュリンゲを2本使って北側にトラバースする所がある。手前が短く次が長い。2本目のシュリンゲを目いっぱい使って腕力で通過する。手足の短い人だとやや難儀する場所であろう。いつになったら長次郎ノ頭に登り上げるのかと思って進んでゆくと、いつしかそのまま剱岳方面へ進んでしまい長次郎ノ頭の南側の岩壁の所に出る。ここにはケルンがあり、そこを乗越して進むとハーケンが打たれフィックスが垂れている。進む場合はザイル下降となる。もう一つは、ケルンに行くもっと手前で長次郎谷側に下ってしまえば、ここはザイル無しで長次郎谷左俣のコルに回りこめる。私は長次郎ノ頭を踏みたいので上を目指す。すると岩肌に赤布が見え、それを良く見るとkumoであった。確かにルートが判りずらいところで、このkumoは長次郎ノ頭を乗越ルートを示していた。要するにここは3ルート選択出来るのであった。
長次郎ノ頭山頂に上がると小石を無造作に積んだケルンがあった。さてもう残すは剱岳までの登り、ただこの先の左俣のコルまでに懸垂下降が待っている。まだまだ緊張を保たねばならない。乗越すところにもkumoが付けられ、ここでザイルを出して準備をした。ザレタところを15mほど下るとその場所に来た。フィックスが3本輪をなしていた。そこにザイルを掛け、一度テンションをかけてみる。問題なし。高度差8mほどを肩がらみで下って行く。ここだけのためにザイルを持つとなると、北方稜線においてのほんの一部となる。持っている事で各通過点の安心材料になるが、重荷と言えば重荷になる。まー最終的には事故に遭えば笑いものであるから携行が正しいのであろう。ただ北方稜線を南から北に行く場合は必携であろう。
コルに下りたら最後の登りである。ほとんど一般登山道と言えよう道を伝ってゆく。そして9年ぶりに剱岳の山頂に立つ。ほとんど変わっていないが、立派な標識が二つ作られていた。残すはシシ頭のみ。早月尾根側に下って行く。以前に増して鎖が多いように見えた。最初にシシ頭らしい岩峰があるのだが、本峰はその先で、直下を登山道が通っているので、登りとしては5分ほどであった。山頂の岩にはハーケンが打ち込まれていた。さらにシノダケのマーカーの束が沢山残置してあった。冬ルートはここの直上なのであろう。ガスも濃くなり、ほとんど視界が無くなって来た。装備が軽ければ馬場島まで降りてしまえたのだが、この装備では今日の塒は早月小屋とした。夕暮れ近くなり、再び雨が降り出す。もうここまで来れば、予定のほぼ9割以上をこなしたことになり、天候の変化はどうでも良かった。残すは怪我や事故をしないことであった。
早月小屋に着くと、夕食の後片付けをしている所であった。先にテントを張ってしまい、18:30になりテント料金とビールを買う。小屋主は私が馬場島から来たと勘違いしているらしく、“何時に出てきました”と聞いてきた。“あー大窓からです”と答えると全てを察したらしく、脳みそのギヤを入れ替えて会話をしてくれた。昨今の北方稜線はガイドの稼ぎ場所らしい。確かにそう言われればガイドがガイドらしく振舞えるルートだと思う。優しい小屋主に“ゆっくり休んでください”と丁重に扱われ、テントに戻った。この日は沢山写真を撮ったので記録はそこから追えばいいのだが、記憶からも引き出しておく必要がある。でも沢山の体験にほとんどキャパオーバーで、詳細記録に対してはICレコーダーなどアイテムの必要を感じた。深夜は再び雨と風。その風音にあまり眠れないほどであった。
3日目。今日は下るだけなので、急ぐことはなくのんびりと行動をとりたいのであるが、結局のところ自然と普段の行動が出てしまうもので、早々に起き出し朝食を作り下山の準備に入った。朝からかなりの降雨でパッキング時に全てが濡れてしまった。ただもう下るだけなので、どうでも良いことであった。
6:00早月小屋前を出発。雨に打たれながら滑りやすい岩の上を通過してゆく。かなり土が流れている箇所も多く、9年の歳月を感じる。サンカンスギの針葉樹林帯に入ると、登りのハイカーにかなり行き会うようになった。月曜日に歩くことはめったにないのだが、登ってくるパーティーの多さに、ここ剱岳の人気度も判る。馬場島が近くなると立山川の音を左耳、白萩川の音を右耳に聞きながら下って行く。そして「試練と憧れ」の石碑の前に立つ。赤谷山で下ってしまったら、今がないのだが、判断とは微妙である。もしかしたらガスの中で稜線に突っ込んだことにより、負の要因になることもありえる。最後は運なのか。試練と憧れの文字に深い意味を味わう。
野営場到着8:19。予定していた行程を全て終えた。考察として、この時期ならピッケルとアイゼンも不要であった。逆コースで無ければザイルも無くてもいいだろう。テントをツェルトなどにして荷を軽減すれば、中1泊の2日の行程も可能であろう。まー無理なく楽しむには3日が妥当であり、装備もきちんとせねばならないが・・・。帰路、金太郎温泉に寄り、8号線をトコトコ走り、糸魚川から大町経由で地走りで戻った。