烏帽子岩 2162m
2007.5.12(土)
快晴 単独 スキー 猿倉から 行動時間:7H01M
@猿倉駐車場4:30→(84M)→A小日向山のコル5:54→(98M)→B鑓温泉7:32〜35→(39M)→C烏帽子岩8:14〜45→(12M)→・鑓温泉8:57〜9:30→(18M)→D湯ノ入沢9:48〜53→(40M)→E小日向山のコル10:33→(33M)→F1430m付近11:06→(15M)→・登山口11:21→(10M)→G駐車場11:31
@猿倉駐車場。日の出も近い。 | 鑓温泉登山道入口 | 途中から西側の主稜線側。 | コル(一番左)を前に。 |
Aコルから登って来た斜面。 | Aコルから小日向山。 | Aコルから鑓ヶ岳方面。 | 途中から |
夏道付近から | 杓子沢手前から | もうすぐ鑓温泉 | 湯が雪を溶かしている。温泉直下。 |
B鑓温泉 | B湯壷。湯の花が白く堰堤に付いている。 | B小屋の木材は分解され雪解けを待つ。 | B温泉から東側の展望。 |
B鑓温泉から2518ピークを見上げる。この正面の岩を烏帽子岩だと思っていた。実際はこの絵の左(東)にある。 | 稜線から烏帽子岩 | 烏帽子岩直下。 | C烏帽子岩山頂。 |
今日の板は、フリーライドオフリミッツ。 | C山頂から西側。 | C山頂から東側 | C山頂の大きなダケカンバの基部にマーキング設置。 |
シュプール | 旧層の上に新雪が乗っている。 | D湯ノ入沢から小日向山側へ登りあげる。 | E小日向山のコル到着。 |
Eコルから下山側。かなり雪が溶け出してきている。 | F1430m付近まで滑って降りた(振り返って撮影)。ここで板はザックに。 | 駐車場の様子。 | G下山完了。 |
2003年、鑓ヶ岳からの下山時に、気になっていたものの楽を優先して登らずに通過してしまった。おまけに鑓温泉も手だけ入れただけの足浴ならぬ手浴だけであった。不甲斐ない過去を一掃すべく、出向くことにした。
あの岩峰に登るには、ピッケルは必携だろう。さらにはザイルまで必要なのではないかと思い準備はしていた。ただこの時期はスキーで行きたい。スキー山行にザイルまで装備するのは・・・。登りたい部分とスキーをしたい部分を両立させるには、かなり重装備になりそうであった。
1:00家を出る。三才山トンネルを経て明科経由で大町に入る。途中にコンビニに寄るもヤキソバパンがない。なにか前途多難な雰囲気がしてきた。白馬駅前を左折して322号白馬線を詰める。2003年の時は二股でゲートされており、ここから延々と歩いたが、猿倉までの距離をメーターで見てみると5.5キロある。よくも歩いたなーと我ながら感心する。猿倉のマイカー駐車場には15台ほどが停まっており、そのほとんどが出発の準備をしていた4:10。ピッケルと12本爪はサッと用意が出来た。ザイルは最後の最後まで悩んだ。ザイルを出さねばならなくなるようだと、それなりの場所で、たとえ登れなくとも納得がいくだろうと、結局弱気な判断でザイルは車に残して出発となる。
4:30歩き出す。林道で猿倉荘を高巻きにして、その先から鑓温泉登山道に入る。雪が繋がっておらず、この辺りはスキーを担いで上がってゆく。登山道上も雪が繋がり出すのは1400m近辺であった。繋がり出せば雪の状態は良く、全く沈まずに歩けてしまうのでスキーは背負ったまま歩行を続けた。一般的には重荷となるので履いてしまうのだろうが、私は歩けるところは歩いたほうが断然早いのである。西側を見ると白馬岳から杓子岳への稜線が良く見える。向こうの大雪渓もスキーヤーで大賑わいなのだろう。ただ週中にかなり降雪があった。その前日は夏日である。そして挟むように後日は雨。事故が無ければ良いが・・・。結局、小日向のコルまで背負ったまま登り上げた5:54。
コルまで約1.5時間で来ている。調子がいいのか悪いのか。距離的にはほぼ半分を消化。まー残り半分がどうなることか。この先、スキールートを選ぶか夏ルートを選ぶかである。スキーヤーなら迷うことなく湯ノ入沢の方へ下るのだろうが、高度を落とすことを嫌い、夏道を選択した。がしかし、この選択は間違いでは無いが、杓子沢の下辺りは雪崩の巣のような場所を通過せねばならなかった。酷いデブリではないが、気持ち良いものではない。体力的には助けているのだろうが、精神的には良くないのであった。新雪を踏みながら(確かめながら)先を行く。新雪が乗っていないところは朝日に照らされてツルツルテカテカであった。この辺りで途中でスキーを履きシール歩行とした。
7:32鑓温泉到着。予定では4時間をみていたので1時間の短縮である。雪の状態が良ければあと2時間もあれば上の鑓ヶ岳の稜線まで行けそうな雰囲気であった。鑓温泉小屋は跡形も無く、分解された柱は一部は見えて居るが、ほとんどは雪の下になっていた。湯壷がエメラルドグリーンの湯を溜めて待っているので、この先を急がねばならなかった。目指す岩峰は黒く光っている。登れるのか否か。
なるべく新雪を辿らぬようにしてゆくのだが、どうしても乗らないと上に上がらない、慎重に足を出してゆく。稜線に上がって残り距離を確認しようとナビを見ると“オヤッ”と思うことになった。目指していた黒い岩峰は2518ピークで、烏帽子岩は乗った稜線より東なのであった。どう見ても「烏帽子」に見えるのは2518ピークの方で、2003年の山行時の記憶を優先し、情けないが思い込みで歩いていたのであった。烏帽子岩の本峰を見ると別段難しそうな部分は無く、これならピッケルでさえも要らない。
少し上に上がり過ぎたので、降りるように雪につながり行き、難無く山頂に立つ8:14。山頂には直径30センチほどのダケカンバが2本あり、付近はハイマツがはびこる。雪があるのはその北側と南側で、表現が上手くないが、モヒカンのような状態でハイマツが出ていた。こんなに早くに山頂に立てるとは思っていなかったので、のんびりと行動をとる事とした。トランシーバーを握り15分ほど儀式をしていた。昼寝でも、と思ってしまうほど天候も良く、展望もあり至福の時であった。それでも風呂が口を開けて待っているので8:41下山。真っ直ぐに鑓温泉まで滑り降りても良かったが、もしも雪崩を起こしては温泉に被害を出しそうなので、登ってきたコースに沿って滑り降りてゆく。温泉まではあっという間であった。
さて鑓温泉到着。烏帽子岩に行っている間に3名到着していた。彼らは上を目指すようであるが、この雪の状態をどう見ているのか。天気予報と同じで、100パーセントの予知などは無理であるから、あとは本人の意思と運により、生き死にが左右されてしまうだろう。さて目の前の温泉に浸かる事とする。足を入れると非常に熱い。急いで雪を入れようとするが、硫黄分の堆積なのだろうか、足を下ろす所の全てが滑る。堰堤になっているところもツルツルで歩けない。熱くて気は焦るが、まるでスローモーションであった。真っ裸のまま辺りを歩き回り雪の塊を落とすが、それでも44度くらいと熱い。我慢して首まで浸かる。目の前に見える絶景が“静かに浸かっていろ”と言っているようでもあった。周り全体が雪、ここだけポカンと口を開けて天国である。このまま一日が終わればいいのだが、この後も登り返しはあるし、折り返し地点に居るだけである。現実を思うと、そうのんびりとはしていられない。
9:30滑走開始。まずまずのシュプールを残しながら下に下に。10名ほどのパーティーも登り上げてきていた。湯ノ入沢を跨ぐ所でシールを付け登り返していると、さらに10名ほどのパーティーが降りてきた。今日は続々と入っているようである。小日向のコルでも5名ほど。ここまでで単独者も含めて総勢30人ほどとすれ違った。そのほとんどが、スキーヤーまたはボーダーであった。不思議と、滑走具を持たない登山者は一人も居ないのであった。
コルからは登り返しは皆無。やや波打った縦縞の斜面を大きなターンで下ってゆく。すると西側から大轟音が響いた。双子尾根で岩交じりの雪崩であった。距離はあるものの、その凄まじい崩落の様子に少々身震いがした。最初に鑓温泉で会った御仁は、中央ルンゼを滑走すると言っていたが、こんな状況下でどこまでチャレンジするのだろうか。緩斜面では雪が緩んで滑らないと思っていたが、これが逆で、波打っているおかげで板に対して面当たりでなく点当たりになるからだろう摩擦が少なく良く滑る。滑り過ぎる状態に、私のような下手糞スキーヤーは木を避けるのに精一杯であった。そして1430m付近で板を脱ぎ、担いで降りた。猿倉には11:19到着。駐車場の車は50台ほどになっていた。思いのほか好天に恵まれた山行となった。
帰りは「おびなたの湯」に入る。時間的に早いのか他の客が居らず、一人で独占であった。帰路途中で、木崎湖の畔で昼寝をして17:00家に到着。