白馬乗鞍岳  2456m    

 2007.9.2(日)   


  雨のち曇り   初心者同行   ゴンドラ利用      行動時間:7H02M



@ゴンドラ麓駅8:13→(34M)→・山頂駅8:47→(8M)→A栂池自然園8:55〜9:00→(37M)→B銀嶺水9:37→(25M)→C天狗原10:02〜12→(45M)→D雪渓通過10:57→(13M)→E三角点11:10〜14→(8M)→Fケルン11:22→(2M)→G2456高点11:24〜31→(2M)→Fケルン11:33〜12:04→(58M)→H天狗原13:02〜12→(16M)→I銀嶺水13:28〜38→(45M)→Jロープウェー頂上駅14:23〜40→(35M)→@ゴンドラ麓駅15:15


tenki.jpg  gondorakara.jpg  shizenen.jpg  hiyodoriheno.jpg 
@ゴンドラ麓駅の本日の天気表示。 ゴンドラから。前方はガス。 A栂池自然園。ガスが晴れてきた。 @鵯峰への分岐。鵯峰の表示は無い。
ginreisui.jpg  tenguhara.jpg  tenguhara2.jpg  sextukei.jpg 
B銀嶺水。 C天狗原。 C天狗原の池塘。 D雪渓。通過横断距離は10mほど
sankakuten.jpg  raicyou.jpg  hyoushiki.jpg  kerun.jpg 
E2435.4三角点。 三角点周辺で5〜6羽の雷鳥を確認。 F行政の標識。 Fケルン。
saicyoubu.jpg  honpou.jpg  chinguruma.jpg hokoraheno.jpg
G2456高点。 ケルンから2469m乗鞍岳。 登山道脇のチングルマ。 H天狗原の祠ピークへの木道が切れた辺り。数メートルかき分け進む。
tenguharahokora.jpg  ginreisui2.jpg  cyoujyoueki.jpg  gondorakarakaeri.jpg 
H天狗原の祠。 I銀嶺水。美味しいマッタリとした水であった。  J頂上駅到着。  ゴンドラ帰り。生憎だんだんと晴れてきた。 


  

 週中に、登山は初めてと言う初心者の案内を頼まれた。同行される方も不安であろうが、こちらもそれ以上に色んな事に頭を廻らす。と言うのは、私の宰領如何でこの方の今後の山に対してのスタンスが決まると思ったからである。易しい所にして次に繋げようか、展望の良い所で感動を引き出そうか、少しがんばらせてあるハードルを越えさそうか。いずれにせよ当人がどんな人か判らずに場所を決めねばならない。そんな中で満足を引き出すには・・・。低山で登り1時間ほどの場所を選択する方法もあるが、本人の自信の為にも少しはネームバリューのある所を踏ませてあげたい。各エリアの地図を眺め最終的に白馬乗鞍岳(行政ピーク)に決めた。ここは、登山のいくつかの要素を含んだコースである。それらを体験させるにも適当と思ったのだった。乗鞍岳としては既に2469高点の方は踏んでいる。こんな事でもなければ最高点ではないこちらを気にかける事がなかったのだった。

 

 私自身は、北陸に出向いた25日から再び気胸になってしまった。現地では予定していた山に行けずに低山廻りになったのだが、それ以来調子が良くない。吸気はいいのだが、排気が辛くなっている。気胸と言うより老化の始まりかもしれない。

 

 朝4:30、依頼の方が我が家に到着。人は見た目で判断してはいけないが、おおよそは判断できる。見るからに体力が無さそうに見える。ちと困ったが、約束の時間に遅れずに来ていると言う事は、内面ではやる気が感じられる。ハートの部分では登頂は可能だろうと判断出来、行き先は変更せず白馬に向け出発した。

 

 三才山トンネルを越えて松本に出て、池田町を経て大町に入る。天気はどんどん下降線になり雨粒がフロントガラスを叩く。こうなると最悪のお膳立てである。バックミラーに見える初心者の顔は不安そうであった。ガスの垂れ込めた栂池の駐車場に300円を払い突っ込む。この天気なのでハイカーは少ないかと思ったが、思いのほか多い。さすがにゴンドラのあるところは違う。靴の縛り方から教えてあげ、いざ出発。

 

 3000円で往復券を買いゴンドラに乗り込む。中間駅を越えると視界は50mほどになった。ゴンドラでスピードを上げて行くと、視界はほとんど無いようなものだった。初心者がブルーな気持ちになってゆくのが見て取れる。ゴンドラからロープウェイに乗り継ぎ山頂駅に着くと、やはりここでも視界は100mほどであった。初心者にはこの視界がどう写るのか、聞くに聞けない部分であった。舗装路を行き栂池山荘に登りあげる。自然園への散策者と、白馬大池へ目指す者とではここではきっぱりと棲み分けが出来、一見しただけで行き先が判断できた。ただ、私の同行している方も姿格好は散策者と同じ軽装であった。

 

 トイレ脇から山道に入る。いきなりの急登が始まる。肺の調子が悪いので自分自身でも辛かった。今日も鼻呼吸に努めたいところであるが、反対に会話をせねばならない。かなりの負荷となっているが、唯一の救いは非常にのんびり上がれる事である。通常の3割〜4割のスピードでのんびりと足を出していった。それでも初心者の方には辛いようで、様子を見ながら何度も立ち止まってペースを合わせた。次第に天候も悪くなり、雨粒に耐えられなくなり雨具を着込む。とたんに蒸れて暑くなった。初心者には体力面を考慮し傘をさすように指示した。岩交じりのヌチャヌチャした登山道を行く。この道に当然のように後ろで難儀しているのが判る。ある程度のアドバイスはするものの、最後は体が覚えるしかない。

 

 銀嶺水を過ぎると、ひと登りで天狗原であった。「後5分」「後5分」と鎌をかけるようにここまで到着。それでも歩き出しから80分ほど来ているので、丁度良いペースである。ある意味、初心者ががんばっていると言えよう。木道の木片に腰掛けさせ小休止。目指す高みを差して、“あともう1時間のがんばりであそこに到着します”と告げると、一瞬困った表情をしていた。もう限界なのか。本人には予想以上の負荷なのであろう。ここで引き返す方法もある。しかしあと1時間をがんばってピークを踏むのと引き返すのでは、全てにおいて重みが違う。どうしても引っ張りあげてあげたい気持ちになった。

 

 木道が切れ、水の流れの中の岩を伝って上に行く。上からどんどん登山者が降りてくるのだが、大池山荘からの人なのだろうか。話をした人の多くは始発でピストンしてきた方であった。岩に付けられたペンキマークを拾うように足を上げて行く。雪渓の通過箇所は非常に滑る。私が滑るのだから初心者には辛く、全くグリップをさせることが出来ないようであった。ステップを切ってやり通過させる。ここを過ぎれば後は平坦地に変わる。登山道は緑のロープで仕切られその範囲内を伝うのだが、これは植生保護と言うより視界不良時の為のように見えた。三角点はそのロープの外にあり、少し逸れる。辺りからは雷鳥の鳴き声が頻繁に聞こえる。登山道を歩きながら鳴き声の方を注意していると、居るは居るは。雷鳥は1山に1グループ(つがい)と聞いていたのだが、ここは違っていた。

 

ケルンに到着し大休止。最高点へ足を進めると、ここにも7羽を確認した。全て成鳥であった。北アルプスに雷鳥が少なく、外来種を入れて混血でもいいので増やそうとしているようであるが、ここの状況を見ると、そこまでせずともいいのではないかと思ってしまった。もしや既に目の前の光景が外来種だったのか。ケルンまで戻ると初心者の顔が真っ青であった。汗をかいたのが急激に冷えているらしく、“寒い”と言う。この時期はお湯を持たないので、すぐに湯を沸かし飲ませてあげた。全てに慣れないづくしで体が追いつかないようである。様子を見ながら十分休憩させ、落ち着いた所で下山に入る。

 

終始ガスって居る中で、少し辺りが開けてきた。こうなるとここまで上がってきた甲斐がある。高山の展望をほんの少しだけ楽しんでもらい、ゴーロの下降になった。初心者を見ると膝が棒のようになっているのが判る。膝周辺の筋肉が無く、屈伸する力がないようであった。こうなると両手両足を使ってもらうしかなく、ゆっくりと岩を掴みながら下降してゆく。天狗原に到着した頃には、天狗原の木道の上でさえ転倒していた。みかねて大休止とする。休ませている間に祠の方へ足を伸ばす。木道が途中まであるが、最後の所は樹木が覆い完全に道を隠していた。祠のピークに上がると天狗原が良く見渡せ、スキーツアー用の標識が高い所に見えていた。

 

少し休憩して余裕が出たのか、初心者は後ろを振り向き登って来た峰を見て、“あそこまで登れたんだ”と感慨深げに口にしていた。内心嬉しい限りであった。さて最後の下り。ここさえ下れば結果を出せたことになる。往路よりさらにドロドロの登山道を行く。どんどん後ろから追い越されてゆくが、今日は致し方ない。栂池山荘への分岐は右折せず、そのまま真っ直ぐ進み舗装路に出た。ここには登山道を示す標識は無い。その代わりに「栂池山荘側へ行き登山届けを出すように」と書いたプレートがある。残り少し。自然園の散策を終えた人らの波に混じり舗装路を下る。そしてロープウェー駅に到着した。ホッと肩の荷が下りた瞬間であった。あとは本人が今日の山行をどう捉えたかである。自分なりには最大限サポートしたつもりなので、まーあとは野となれ山となれである。

 

ロープウェーとゴンドラで快適に空中散歩をしながら麓駅に到着。天候には恵まれなかったが、事故も無く予定を完了出来た事に感謝感謝。


chizu1.jpg

chizu2.jpg 

 

                                           戻る