離山 2307m
2007.11.3(土)
晴れ 単独 大武川林道ゲートから 行動時間:10H38M
@大武川林道ゲート6:27→(15M)→・新しい林道から引き返す6:42→(4M)→A人面橋6:46→(1M)→B堰堤行き止まり6:47→・高巻き出来ず→(43M)→C朴の木橋7:30→(10M)→D稜線に乗る7:40→(55M)→E1320m付近尾根合流点8:35→(74M)→F大岩9:49→(76M)→G岩屋11:05→(61M)→H第四高点12:06〜10→(13M)→I3・4のコル12:23 →(55M)→J2コースでトラバースを試み再びコルに13:18→(16M)→K第四高点帰り13:34→(139M)→L1393高点付近15:53→(6M)→M1320m付近15:59→(38M)→N林道16:37→(28M)→Oゲート到着17:05
@大武川林道ゲート。背中側に篠沢橋。 | 林道途中から離山 | 人面岩の看板。本来ならここからが一番顔に見えるのだろう。樹木が生い茂り・・・。 | A人面岩と人面橋。 |
A人面橋から見る堰堤。 | B林道の行き止まり(堰堤) | 林道が寸断された様子。 | 林道途中の押し出し。 |
C朴の木橋。2005年1月完成。 | 橋を渡った先からすぐに取付く。 | D稜線から林道側の斜面。 | D稜線の南側。 |
一ノ沢からの尾根にぶつかる手前辺り。 | E一ノ沢からの尾根に乗る。1320m付近 | 少しやせた尾根も通過。 | F大岩に当たったら左に巻く。 |
途中から甲斐駒。 | 軽い崩落地通過。 | G岩屋。中央の石の左側に鋸と缶切りがある。 | 急下降箇所 |
6mほど垂直に降りる。手がかりが少ない。 | 急下降地を下から見上げる。 | H離山第四高点の標識。落ちていたのを木の上に乗せた。 | H第四高点から2302m峰を見る。 |
ザイル下降開始。支点がやや細いか。 | アプザイレン途中から西側。 | アプザイレン途中から東側。 | I20mめいっぱいで降り立った。この西側を下った方が、ザイルを出す距離は短いよう。 |
幅1m無いほどの草付きのバンドを斜めに登って行く | ここが簡単に抜けられなかった。左は崖。上の潅木まで3mほどある。 | この上の潅木にシュリンゲが垂れていれば・・・。次は右の隙間にナッツを入れて通過を予定 | JV字の向こうに甲斐駒。 |
Jコルから見上げる。流石にここは私の力量では登れない。 | J第三高点側の一枚岩のスラブ。一枚の幅は25m〜30mほどだろうか。 | コルからは西側にあるこの場所を登る。かなり脆い岩。 | K第四高点再び。来た時と同じように標識が落ちている様子。 |
K第四高点北西側の様子。 | 敗残兵出没。登頂出来ず肩を落とし、それこそ落胆の「影」が濃い。 | 2150m付近南東側。 | 岩穴にヒカリゴケが輝いていた。 |
途中のガレ場の上から。 | 一箇所、黄色い絶縁テープが残っていた。 | L1393高点のテン場適地。 | M1320m帰り。主尾根を離れ、北西尾根に向かう。 |
少し下った尾根の様子。全く下草が無い。 | N林道に降り立つ。見えているのは朴の木橋。 | 朴の木橋。 | O林道ゲートの北側の駐車スペース。 |
いつここに踏み入れようか迷っていた。踏破にはザイル必携のようであり、核心部の通過はそれなりに緊張の連続のようである。そもそも私の力量で狙える場所なのかも判らない。でもハードルが高いほど狙う価値はあり、登頂に向け意欲がわく。岩屋の領域なら完全に諦めるが、何とか登山の範疇で行けるような記述が残る。内心、ドキドキトワクワクであった。当初は10月の20日に狙う予定であったが、所用によりこの日までずれ込んでしまった。
やる気とは裏腹に、出発したのが4時であった。前夜も帰りが遅く、土曜日の出勤も頼まれていた。どうにか土曜日は勘弁してもらい、その代わりに日曜日の出勤になった。そんなこんなで出発は遅れ、山行に対してもビバークなど出来ない日帰り限定の行動をとらねばならなかった。野辺山のコンビニでやきそばパンを仕入れ、長坂経由で白州の町に入る。道の駅を山手に入り、尾白川の黒戸尾根登山口の分岐を右に見ながら藪ノ湯の方へ向かう。そして篠沢入滝キャンプ場からダート林道を進み、篠沢橋を境に大武川林道に入る。ゲート前は東側から来ている林道との合流点になっており、広さこそあるのだが双方の林道の通過スペースを保とうと思うと駐車は1台出来る程度であった。6:20到着。
今日の追加装備は40mザイルとアイゼン。アイゼンは余計かとも思ったが、現地で“あったら通過できたのに”と後悔するくらいなら持った方がいいことになる。ゲートから歩き出す。ゲートの先の林道にはタイヤの跡があり、時折なかに入る車もあるようであった。人面ダムの所から林道が分岐し、地形図に無い林道が山側に一本付いていた。よく判らぬまま最初は山手の道を進んでみた。400mほど進んだが、どんどん川と離れて行くようで、疑問に思いふと左下(東)を見ると、大武川に沿った林道が見える。どうやら見えているのが大武川林道のようである。しょうがなく来た道を戻り、先ほどの分岐から東側の林道に入る。
しばらく進むと「人面岩」と書かれた看板がある。その先に橋があるのだが、橋を渡って左側に大岩がある。おそらくこれが人面岩なのだろうが、センスとイマジネーションが乏しいせいか顔に見える部分が見出せなかった。その先を行くと、なんと堰堤が林道を寸断していた。寸断というか立ちはだかるといった方が表現が正しいのであろうが、ねずみ一匹通す隙間が無いような状態であった。さて困った。予定では一ノ沢左岸から取り付くつもりで予定していたので、これは大きなブレーキとなった。先ほどの林道では違う方向に行ってしまいそうで、この時点で諦めるしかないのか。出だしから前途多難であった。高巻きをしようと、20mほど這い上がり南にずれて行く。すると脆い岩場になり、落ちれば助からない通過点が現れた。こんなところでこんなリスクを与えられても・・・。やむなく林道に下りることにした。再び堰堤前まで行くと、コンクリートのすぐ脇が登れそうなのだが、ここも水が出ていて安全に通過は無理であった。さて考える。要するにこの林道は使えない事となった。離山を狙うにあたって、この林道が一番狙いやすいと踏んできたのだが、残すは北精進ヶ滝の散策道から取り付くしかないか。方向性は見出せたが、どうせなら先ほどの新しい林道もこの先どのような道になっているのか確かめておきたいと思った。出だしからこんな調子であり、離山を狙うにあたってかなり意気消沈した状況であった。私の中でスタートの30分ほどは非常に重要な時間であり、完全に萎えてしまっていた。
林道分岐まで戻り、地形図に無い道を行く。当初はこの林道が延々と山手側を巻いて行くのかと思ったが、よくよく考えると既存の林道が寸断された状態であり、大武川を遡上するにはこの林道しか残っていない。とするとこの林道も上流で川に下りるところが出てくると判断した。500mほど進むと案の定下り勾配になった。そして先の方に橋が見えた。これで右岸に行ける。かなり状況が明るくなった。林道は先に進むと谷からの土砂の押し出しがあり、仮に車が入ってもここまでであった。ここを乗り越えると真新しい橋があり「朴の木橋」と命名されていた。2005年1月の完成らしく、本当に出来たての橋であった。
橋を渡り、15mほど進んだガードレールの裏側から斜面に取り付く。ちょうどここにはブナの木に作業中の表示があるので目印になる。斜面は少し急峻だが、特に問題になるような場所は無く稜線に上がる。稜線は非常に歩きやすい尾根で、数回のアップダウンをこなすと下草の無い気持ちの良い斜面に変わる。下草の無さは、おそらく鹿の食害であろう。時折古い赤テープが見えるが、かなり古さが目立つのでここ最近のものでは無い様である。紅葉が見ごろなのはこの1100m付近からで、艶やかな中の尾根登りとなった。そして空が開けると、そこが標高1320m付近の、一の沢から上がってくる尾根との交点であった。細い木に赤の絶縁テープが2本巻いてあるので目印になる。尾根上には踏み跡があり、それに伝って行く。下草はほとんど無く、予想外に明瞭な踏み跡で上に上がって行く。時折新しい絶縁テープ(赤)が見られる。
1570m付近が一部やせ尾根がある。次に1700m付近は尾根が広がり道形も無くなるのでこのあたりは急峻を適当に這い上がる。だんだんと優しい山歩きから切り替え時期になってきた。1800m付近で大岩が目の前に立ちはだかる。ここは赤い絶縁テープに導かれ踏み跡に従って大きく左巻きをする。巻き方を小さくとると上で倒木帯に引っかかるので、ひとつ左(東)の尾根に乗るつもりでずれるのが良いようである。この辺りは帰りのためにマーキングをしておいた方が無難であると感じた。しばらくこのまま上を目指す。シャクナゲがだんだんと目に入るようになり、2170m付近で一人分ほどの岩屋が有るのだが、そこの地面には錆びた鋸とまだ使えそうな缶切りが残っていた。2200m付近のピークには大きな一枚岩が縦になったような場所がある。ここは岩に乗って進みたい所であるが、先へ行くと降りるに手がかりも足がかりも無くなってしまう。岩の西側の南面に足を置けるほどの細いバンドがあるのでそこを伝うのが適当であった。次に現れる岩尾根は右にしか巻けない様な感じで進んだ。
高度が上がると共に少しづつ危険度が増してくるのが判る。途中でハーネスを着けザイルは袈裟掛けにしてこの先に備える。一箇所ザイルを出したい所もあったが、何とか出す事無く2290mの第四高点まで到達。ここには白いプラスチック板が落ちており、「離山 2307」と書かれていた。裏を返して見ると、表側は登山道(別の場所)の道標であった。なぜにここに設置したのか。一つ言えるのは、エアリアでの表記はこちら側の高点をプロットして離山としている。あとは標識を用意はしたが、この先の難所が行けなかったのだろうと推察した。東側に顕著な2302高点が円錐形に見える。離山本峰は第三高点が邪魔をして見る事は出来ない。
少し南に進むと深いギャップが待ち構えていた。左右は深く谷が見え、その中央に細いランディングポイントが見えるのだが、この斜面をどのようなライン取りをすれば適当なのか上からは判らず、適当に途中の松の木にザイルを通しアプザイレン。柔らかい岩場をズルズルと降りてゆく。40mを目いっぱい使って着地したので、距離は20m。さて下から上を見上げ、帰りの事を考える。この壁を登れるのか。今ならまだザイルが有るのだが、これを外してしまって登り返すことが出来るのか否か。やや不安に思える斜面であった。西側を見ると這い上がれそうな地形があり、大丈夫だろうとザイルを回収。一回でもザイルを出すと時間の浪費が大きいもので、かなりの足踏みとなった。しかしこのコルから見る甲斐駒は見事であった。第三高点と第四高点とで綺麗なV字形を成し、その壁をフレームとして中央に甲斐駒を置いた見事な絵であった。ここに来た者でしか見られない絵面である。
さて第三高点を目指す。最低鞍部から少し進むと、左斜め上に1m幅ほどの土の乗ったバンドが有る。そこを伝ってみる。下の方は木に掴まり行けるのだが、10mほど先でスラブ状の一枚岩がある。その上にコケが乗り谷側のエッジ部分には土が乗っており、特に手掛りが無い。3mほど上に潅木が有るのだが、そこに行くまでに滑りでもしたら一巻の終わりで、かなり考え込んでしまった。一度鞍部まで戻り、今度は東側を巻いてみようと50mほど進むが、こちらも途中で切れ立った斜面に変わり、トラバースは無理であった。いやはやここまでかと思ってしまう。もう一人居て確保して貰えるなら先ほどの岩の場所を突っ込むのであるが、何せ一人である。ザイルにカラビナでも付けて、上部の潅木に投げる方法もあるが、先端が木を巻いてこちらに戻って来るかは微妙な所であった。ナッツでもあれば、右手の壁側の亀裂に入れられそうであったが、今日は装備に入れていない。時計を見ると13時を回っていた。残り距離320m。もどかしいが次に繋がる調査が出来たとして、ここで撤退を決めた。後一つ、今のバンドの上にもう一つ行けそうな場所があった。次回は、そこと2本立てで通過しようと思う。
第四高点への戻りは、甲斐駒側にある細い岩溝を上がる。少し腕力を必要とする10mほどの登りである。上に上がると安全地帯になり、どうも南より西側の斜面の方が易しい地形のようであることが判った。こちらを上手く降りてこられれば、ザイルは20mで足りるだろう。そして第四高点を通過し往路を辿る。辿りながら思ったのだが、登りこそルートファインディングが楽であったが、下りは往路を見出すのに難儀した。よって登行時に要所要所でマーキングを上から見易い場所に付けて置くのが良いだろう。
往路では気がつかなかったのだが、2070m付近の岩穴の中にはヒカリゴケが輝いていた。高度を落として行くと、途中に黄色い絶縁テープがルート上に一箇所だけあり、もしや南川さんの付けた物とも思ったが、10年の歳月が経過して居るにしては発色がいいのでおそらく別人の物であるだろう。1550mほどから歩き易い尾根になり、1393高点はこの稜線で唯一テン場にもってこいの気持ちの良い平坦な場所がある。ただ全体を計画する中で、ここを幕営地にする事は無いであろう。1320m分岐高点から先はほとんど無毛地帯である。ただ気持ち良さに負けて尾根を間違わないようにせねばならない。どこを降りても良い様だが、傾斜のきつい尾根もある。
林道に降り立ちやっと緊張がほぐれる。考察しながら林道を下って行く(一部登り)。往路、旧道の部分で40分ほどのロスタイム。第三高点の通過でも30分ほどゴソゴソしていた。それらを差し引きすると、もう1時間ほど早くに出れば、この時期でも明るいうちに戻って来れそうであった。次はザイルの長さを調整したいが、やはり40mが無難なのか。おおよその状況は掴めたので次回はぜひ頂に立ちたい。まー最後の部分は、この「立ちたい」と言う気持ちがあるかどうかで決まるのだと思うのだが・・・。
ゲート到着。いつもの登頂した爽快感は無いが、問題点をいくつかクリアーしたので、立ちはだかっていたハードルがいくつかクリアー出来た感じがする。バラエティーに富んだコースであり、第四高点までザイル無しで行くのも面白いかもしれない。登りに関しては、ほぼ迷うことなく到達できるであろう。展望があるようで無いような、ほとんど樹林帯の中の登路となる。悪天は避けて好天の日に出向くのが吉であろう。途中に水場が無いのだが、林道途中の流れから汲むのがいいだろう。次回はぜひ登頂談を書きたいものである。
戻る