黒檜山 2540.4m
2007.12.2(日)
晴れ 単独 三峰川林道大曲ゲートより 行動時間:10H50M
@大曲ゲート5:28→(16M)→A巫女渕の霊泉5:44→(23M)→B塩見新道入口6:07→(69M)→C小熊沢取水施設7:16→(9M)→D熊沢出合7:25〜35→(9M)→E滑車発見7:44→(91M)→F2054高点9:15→(115M)→G黒檜山11:10〜37→(82M)→H2054高点帰り12:59→(76M)→I熊沢出合帰り14:15→(84M)→J塩見新道入口帰り15:39→(23M)→K霊泉帰り16:02→(16M)→L大曲ゲート16:18〜25→(33M)→M三峰川林道入口16:58
@三峰川林道 大曲ゲート。人間用の通路は左に設けてある。 | A巫女渕の霊泉 延命水 | B塩見新道入口。工事用のコンテナハウスが置いてある。 | 林道途中から黒檜山? |
C小熊沢出合の取水施設 | 熊沢出合手前。左側に作業小屋が見える。右に見える樹林の中を登って行く。 | D熊沢出合。渡渉の水深は150〜170mm程度。流れの幅は5mほど。 | カンジキに長靴の装備。 |
取付きの斜面。適当に上がってゆくと、右上(南東)に向かう杣道がある。 | 途中に落ちていた滑車。ほとんど枯葉に埋もれていたのを掘り出した。 | 1600m付近の尾根の様子。 | 尾根の熊沢側。かなりの急登。 |
1880m付近 | 時折絶縁テープが見られる。剥がれ落ちているテープも多々見られた。 | 落ちていた地図。数枚入っていたようだが、水分を含みバリバリに凍っていた。 | F2054m高点の様子。密生した場所であった。 |
F2054m高点から黒檜山。まだ高度差は500mほどある。 | 2054m高点の東側。密生した植生の中を行く。 | 倒木を乗り越えたり、潜ったりしながら通過。 | この岩の露出した斜面は右側を巻いてゆく。 |
2100m付近から中央アルプス方面。右端に白く見えている。 | 山頂まで150m〜200m付近。 | 見ずらい絵だが、正面の岩は左に巻いて行く。 | 残り100m付近。岩と岩の間の斜面を上がってゆく。 |
G黒檜山山頂。明るい山頂で、日差しもある。よって雪も融けている。 | Gこれぞ黒檜山のKumo。 | G黒檜山の三角点。四方に大きな石を従えている。 | GKumoにMLQのいたずら書きがある。4年が経過しているのに書いたばかりのように見える。鉛筆も侮れない。 |
G山頂に残る赤布。柏の御仁の物かもしれない。 | H2054m高点帰り。西側少し下から撮影。 | 途中の1930m高点。休憩に適している。 | 1750m付近の崩落場所。三峰川側に崩れている。 |
1750m付近から風巻峠側の稜線。稜線直下の水平な林道が見られる。 | I熊沢出合。三峰川に降り立つ。正面の斜面の上が林道。 | 林道途中から塩見岳遠望。 | J大黒橋から塩見新道登山口の様子。 |
K巫女渕の霊泉。美味しい水であった。 | L大曲のゲート到着。ゲート手前の余地に駐車してある。 | M三峰川林道入口。バリケードがされている。 |
長い林道歩き、渡渉、情報の少ない稜線。これらが黒檜山(くろべいやま)に足を向けていない理由でもあった。そんな中、数年前にMLQは自転車&ウェダーでいとも簡単に踏んできてしまった。入山はMLQと同じ時期にとも思ったが、少し負荷をかけて雪の乗った黒檜山はどうなのだろうかと、この時期に出向いてみる事にした。マウンテンバイクを装備に入れようか最後まで迷ったが、真っ向勝負とばかりに林道は歩く事にした。
1:15家を出る。野辺山の高原野菜畑は一面真っ白であった。コンビニでいつものようにヤキソバパンを仕入れる。運よく陳列棚の残り1個をゲットした。なんとなく今日はついているような・・・。八ヶ岳の南面道路では路面凍結箇所もあり、さらには雪が舞い出した。私のスタッドレスはもう4年目、気休めぐらいしか氷には対応しないので、ソロリソロリと進んでゆく。茅野から杖突峠を経て高遠に下りて、152号を分杭峠に向けて南下する。そして市野瀬地区から始まる212号に左折して三峰川林道に向かう。直前になり気づいたのだが、林道の通行の可否を確認して来なかった。“通行止めだったらどうしよう”などと思いつつ林道の入り口に到達すると、予期していた通りに「通行止め」であった。昨年の9月にもここを訪れたのだが、バリケードの状態はその時のままであった。引き返すにも今日は他に登る山を用意していなく、困った・・・。
ゲート前には不通の文言が色々書いてあるのだが、どうも崩落があり通行止めにしているようである。侵入者が多い為か、「事故に関しては責任を取らない」との伊那市の文言もある。かなりグレーにしてあるのだが、非公式で進入は可と読み取れる。ゲートは手で移動できるバリケードであり、ダメもとで崩落現場を確認しようと侵入してみることにした。途中で舗装路からダートに変わるのだが、舗装路と遜色ないほどに状態がいい。よほど車の往来があるか、車重のある車が通っていると言う事だろう。工事現場を2ヶ所見て、問題なく大曲のゲートまで到達した。ここまで来られれば引き返す選択は無い。30分ほど仮眠をし、もぞもぞと準備をする。雪対策としてアイゼンとカンジキ、渡渉用に長靴を装備に加えた。
5:28ヘッドランプで出発する。林道はすぐに右岸から左岸に移り、左に三峰川の轟音を聞きながら歩いてゆく。巫女渕の湧き水には延命水の名が付けられていたが、さすがにマイナス3度の気温下では往路では飲む気にはならなかった。林道はわずかに登り勾配で、これなら自転車が有用なのだが、そう思ったのは始めだけであった。各所で湧き水の流れが道を覆い、ガチガチに凍っていた。その上に薄っすらと土が乗り、足を乗せて初めて足の裏が氷だと判る所もあった。今回は自転車の選択をしないで正解であったようである。
大黒橋手前の塩見新道入口の現在は、工事用詰所のプレハブハウスが置かれており、賑やかしい場所になっていた。大黒川に沿うように林道が作道されて登山ルートが寸断されているのだが、工事現場内には登山道を示す道標が付けられ迷うことは無いだろう。ただし、道中で崩落があるようで、公には通行止めにしているようである。ただでさえ塩見新道を歩く人は少ないというのに、この状態が続けば廃道まっしぐらとなってしまう。荒川出合の先で林道支線が左側に鋭角に上がっているのだが、今回黒檜山側の上層からこの林道を眺めた感じからして、稜線直下に水平に延びる林道と繋がっているようである(憶測)。小熊沢出合を手前にして正面に円錐形の山が見えるのだが、これが黒檜山のようである。ちと自信が無いのだが・・・。そして小熊沢出合。ここには導水施設があり、人工物が多い。無人であるが人の気配のするホッとする場所であった。この先で左に作業小屋(内部に立派な薪ストーブがある)を見て、右にターンした先が熊穴出合である。三峰川の川面まではガレた斜面を下って行く。
7:25熊沢出合。ここまで歩き出しから2時間。ある意味これからが本番でもある。ゲートからここまでの間に堰堤工事や崩落修復工事、作道工事などなどが見られ、各所にユンボなどの大型重機が停まっていた。この事から、ここに入るなら作業をしない日曜日のみが適当と思われる。ザックから長靴を解き放ち、登山靴から履き替え渡渉。水深の浅い所を狙うと、ギリギリだが水没しないで渡りきる事が出来た。インナーとしてビニール袋を履いているので水没しても良いようにはなっている。左岸に移り、再び登山靴を履き、気を引き締めるように靴紐もきっちり・・・と縛ろうと思ったのだが、手が悴んでユルユル。さてここから目の前の斜面に取付く。岩場もあり何処が正解か判らないので、適当に左右に振りながら高度を上げてゆくと、MLQが記しているような踏み跡が出てきた。伝ってみると途中に林業作業用のオレンジ色の滑車が落ちていた。この落し物から推察すると歩いているのは林業作業用の杣道であるようである。そしてこの道は熊沢を詰めるように先に進んで行っていた。適当な所からこの道と離れ尾根に乗るように這い上がる。かなり急駿であり、潅木を掴みながら上がってゆく。そして尾根に乗ってしまうと、スカイラインとまではいかないが、産業道路か農免道路ほどの踏み跡があった。取付きからここまでの間は20分ほど。この辺りは針葉樹の落ち葉を踏みしめ登って行く。急ではあるが私には登りやすい(足を上げやすい)尾根であった。あと、時折赤い絶縁テープも見える。おそらくMLQのものであろう。テープの切り口にしても巻き方にしてもエンジニアとして絶縁テープに慣れている者の扱いである。
1870m高点で進路が東に変わる。ちょっとした痩せ尾根を通過し、相変わらずの登りやすい尾根を行く。登りやすいと言ってもそれなりではあるが・・・。すると2000m付近にビニールでパッキングされた地図が落ちていた。藪山で地図を落としたら致命傷ではないのかと思うのだが、薄れた地図を見るとパソコン作業の痕が見える。各ウエィポイントが丸で記され、その丸を直線で結んであるような地図であった。湿気が浸入したようで、ガチガチに凍っていたのだが、滲んだ色からしてベースデータは山旅倶楽部のものであろうと推察できた。それにしても落とした本人は、このあとそれなりにドキドキしながら歩いたことであろう。途中で南側が開けた場所が有るのだが、この尾根で開けている場所は2ヶ所ほどしかなく、貴重な撮影ポイントでもあった。
9:15やっと2054m高点に到着。予想外の針葉樹の密生した場所で、休憩するにはいまひとつ。木々の間からなんとか黒檜山が見えるものの、まだ標高差は500m以上。見るには首をかなり上に向けないとならなかった。この先はやや倒木があり、密生した場所を進む。これまでがこれまでであったので、やや鬱陶しい感じに思えた。高度が上がるつれて岩場も出てくるが、よく見定めれば巻き道がしっかり見出せる。標高2100m付近で再び密生した植生の中を分けてゆく。なかなか雪が出てこないのでどんなものかと思っていたが、2200mを越えた辺りからちらほらと乗っていた。この辺りは左(北)側にやや展望があり、樹林の間から真っ白な仙丈岳を望むことが出来た。残り120m付近で、尾根を逸れて左側の谷を登るように進んだのだが、べったりと付いた雪はガチガチで、アイゼンを着けての通過が妥当であった。楽をして着けずに我慢。本来はここらへんの判断が事故を起こすのであろう。キックステップで上がってゆく。
11:10広い黒檜山山頂到着。すぐにKumoを探すと、登って来た方向を背にするように取り付けられていた。展望は木々の間から間近の間ノ岳や仙塩尾根の山々が見える。地表に目を移し三角点を見ると、きちんと四方に石が置かれた状態で鎮座していた。一部苔むしてはいるが、見栄えのする三角点であった。次にKumoに目を移すと、左肩にMLQのいたずら書きが見られた。便乗して裏にいたずら書き・・・。外気温はマイナス2度で、この標高にしては暖かい。空が開いていて日差しも入り、居心地の良さはこの上ない。雪の上に座りヤキソバパンをほうばる。至福の時である。トランシーバーを握り声を出すと、知多半島の重鎮から声がかかった。さすがに高所、電波もよく飛んでいるようである。もう少しのんびりとしたいところであるが、長い林道を思うとそうもいかない。熊沢出合まで車が入れたらと思うのだが、入れないからこそ、ここ黒檜山の価値があると言えよう。
下りは雪の乗った部分はかなり時間をかけて下って行く。そして枝尾根のあるところは慎重に判断しながらルートを見出してゆく。おおむねマーキングがあるので問題が無いのだが、別の尾根に足を踏み入れても違和感が無いような状況であり、やはり注意は必要になる。2054高点を過ぎ、1870m高点から南西に行かねばならないところをボケッとしていて北西に下ってしまった。100mほど下ったのだが、全く違った事に気がつかなかった。再び登り返すのだが、山では下りでのルートミスは多大な労力を消費する。ルート修正して熊沢出合への最後の下りだが、かなりの急峻箇所が出てくる。おおよそ往路を辿ってはいるが、往路でも這い上がったような場所であり、それを上から見るとかなりの崖であった。慎重に潅木に掴まりながら下りて行く。そして杣道に乗ってさえしまえば、あとは緩やかに高度を下げてゆく。この踏み跡は何処から上がっているのか伝ってみると、出合の北側にあるゴーロ帯で消滅しており判らなくなった。ここから川までの距離は100mほど。ここを言葉で示すことは難しいので、登りは尾根を適当に狙ってゆくのが妥当であろう。
三峰川(熊沢出合)に降り立つ。デポしておいた長靴に切り替えてジャブジャブと渡って行く。すると往路では気がつかなかったが、正面の林道への斜面には獣道が付いていて登りやすいトラバースルートがあった。ありがたく利用させてもらい林道に這い上がる。そして我慢の林道歩きが始まる。30分ほど歩くと、白い衣を纏った塩見岳が見えてきた。完全に真っ白ではないのだが、そのまだら模様ゆえに険しさを示しているようでもあった。林道沿いにはいくつもの沢の流れがあり、その都度、味を確かめるように口に含みつつ歩いてゆく。水の味が判るようになったのはここ最近なのだが、全ての沢で微妙に味が違う。そんな中で美味しかったのは巫女淵の霊泉であった。謂れとか名称地となるところはしっかりバックボーンが有るのだと思うのであった。
大曲のゲート到着すると、日の入らない谷あいの林道は既に夕暮れを迎えていた。山行を終えると素に戻るのだが、今回の進入は、侵入でもある。急いで着替えてハンドルを握り三峰川林道を戻って行く。結局林道入口のバリケードまでの間に誰とも遭うことはなかった。好天にも助けられ、無事黒檜山を踏ませていただいた。あの山頂の居心地の良さは、登った人で無いと判らないだろう。少しオーバーだが藪山の聖地のような気さえする場所であった。
家には20時15分到着。
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