嫦娥岳 2046.8m
2007.7.1(日)
曇り(ガス)時々晴れ 単独 熊穴沢ノ頭から第三尾根を辿るも失敗 行動時間:8H58M
@熊穴沢ノ頭4:25→(125M)→・第三尾根途中まで6:30→(162M)→A熊穴沢の頭再び9:12→(26M)→B中川乗越9:38→(123M)→C戸台川11:41→(59M)→D砂防堰堤前渡渉12:40→(43M)→Eゲート13:23
@濃いガスの中、第三尾根を下り出す。 | 途中のルンゼ。方向修正したくも岩が立ちはだかる。 | 下側にも行けない。 | 尾根の様子。歩きやすい場所もあるが・・・。 |
こんな至極危険な場所もある。 | 間違えた尾根には踏み跡が・・・。 | ここの5mほどが今回最大の危険箇所。見た目以上に濡れている。 | 斜面がガクンと落ちているのが判るだろうか、ここで撤退を決めた。 |
A熊穴沢ノ頭再び。細いダケカンバにロープが巻かれている。 | 途中から第二高点。少し青空も出てきた。 | 中川乗越のテン場。西側に石で風除けが作ってある。 | テン場から仙丈ヶ岳。 |
付近にあったハクサンイチゲ | B中川乗越。 | B乗越から熊穴沢のゴーロ帯。 | マムシが日向ぼっこをしていた。 |
途中、登り側に付けてあった旧長谷村の標識。 |
もうすぐ戸台川。 | Cこの木を伝って対岸に渡った。(左岸から撮影) | ヘツリポイントはだいぶ水が引けていて濡れずに通過。 |
D砂防堰堤前もこのくらいの水量 | 以前はもう少し広い道だった気がしたが・・・。(下流から) | イワンヤ谷の先(下流)に廃屋があった。 | Eゲート到着。 |
風の音で目を覚ました3:00。フライシートをバタつかせ“早く用意をしろ”と言われているような状況であった。ドライカレーとコーヒーで朝食として、再びここに戻ることは想定していないので、テントは畳んで全てパッキングした。登りに使うより下りのリスクは大きい。途中で行き詰まったら降りればいいのと、登り返すのでは多大な労力の差がある。上手く降りられれば最高だが、最悪の事態も当然有り得る。百戦錬磨ではないのでやや不安もあるが、予定したので行ってみることにした。
4:25スタート。第三尾根の最初はハイマツとシャクナゲが尾根を覆っている。そんな中、尾根を外れてやや西側に獣道のような踏み痕が下りていたので調査のためにも伝ってみた。しかしこれはたいぶ尾根とは異方向に行ってしまい、途中で尾根側(東)に修正する。この辺りでも斜度は50度くらいである。ほとんどが濡れた岩と濡れた草付きであった。太い木を選ぶようにトラバースして主尾根に戻ろうとするが、途中に大きなルンゼがあり一筋縄では戻れず。かなり登り返して主尾根に乗った。乗ったと思って意気揚々と下ってゆくが、地形図には現れないような枝尾根が多く、次々と行き詰って行動不能となり、登り返す。この状況下で、当然のようにナビを見ながら歩いているのだが、それでも間違えてしまう。おそらく下から登って来たならば、これらはないのだろうが、こう微細な尾根が多いとは思いもよらなかった。まるで北アの錫杖(丈)岳がそうだったように、地図が使いものにならない事を実感した。行きたい方向は決まっているのに行かせてもらえず、行き詰っては登り返す。途中、岩尾根の下りでザイルが無いと下れないような場所になり、下るには脇のルンゼしかなく、そこを行くが、滑りでもしたら一貫の終わりのような場所で、ホールドを探しながら慎重に下る。5mほどの高低差なのだが、寿命が数年は縮まったような気分であった。再び尾根に乗り、左右どちらを見ても大きな谷がある。果たしてこんな状況下で行き着けるのか不安になってきた。ナビを見ると残り500m。普通の山なら、もう射程圏内に入っているのだが、ここは全くそんな感じはなかった。
そして尾根が北緯35度46分の線に近付く辺りで、また行動不能になった。体力的なダメージより、精神的なダメージが強かった。周りを見ると深い谷があり、私の野心を削ぐほどに、鋭利な口を開けているように見えた。ナビ、地図、現地を見て「こりゃー無理だ」と判断した。この第3尾根を登っている人も居る様だが、下から狙った場合、すんなりと歩けるのだろうか。もう悔しいとか名残惜しいと言う部分はなく、早くに熊穴沢ノ頭に戻りたい一心であった。途中にまたあの危険地帯があると思うと、気が重いが、通過しない事には戻れない。数十分後にその場所は現れ、濡れた岩にグリップを探しながら這い上がる。最後の最後で足場が滑り、宙ぶらりんになった。残すは腕力だけ。運を天に任せ、掴んだ岩と草を手繰り寄せ体を持ち上げた。岩屋でない私にはもう十分であった。尾根を忠実に辿り熊穴沢ノ頭に戻る9:12。5時間ほど無駄に費やしたが、それでもここがこのような尾根だと判っただけでも後に繋がる。
この後の登山道は、そう歩き易い道ではないのだが、第三尾根から開放された私にはすばらしい道に思えた。第二高点が目の前に聳え、正面から降りてくる登山者を目で探したが、それらしい姿はなかった。まだ時間も早い事もある。9:38中川乗越到着。熊穴沢を見ると、すり鉢状になり吸い込まれるようであった。ここを下ったのは3年前である。途中までルートが不明瞭であった記憶があり、やや不安であった。ガラガラと崩れやすいゴーロの区間は適当に下り、樹林が出てきたら、その中を行くように下った。踏み跡が有るような無いような中である。嫦娥岳を完全に諦めたわけでなく、隙あらば常に狙えるように左側(東)に見える斜面を見ながら下って行った。しかし第三尾根の西側は全てに切り立っており、少しの隙も見出せないような状況であった。こうなると、残すは南川さんのルートとなる。もう一つは「点の記」に三角点設置の詳細があるだろうから、それを閲覧させてもらうと登頂に役立つだろう。いずれにせよザイルは持たないと不安要素が多すぎる。完全に出直しである。
11:39戸台川に降り立つ。水量は少し落ちたものの、流れが強い。下流側を見ても適当な場所は無く、上流に少しずれてみた。すると大木が上手い具合にくの字になって対岸に渡っていた。その上を平均台のようにして対岸に渡る。まだまだバランス感覚は大丈夫のようであった。左岸に移ればあとは登山道を歩くのみ。往路で水没した第一号床固のヘツリは濡れずに通過。堰堤前の渡渉も、水没はしたが中洲も出来ており容易に通過。あとは林道を闊歩して戻る。下るに従いジリジリと日差しが強くなった。思えば今日はもう7月。暑いわけである。
帰路、高遠桜ホテルに寄って疲れを癒す。ここは綺麗な施設でありながら、空いていてかなり気持ちの良い風呂であった。
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