滝ノ沢頭山  2149.3m     
 
 2007.12.8(土)   


   晴れ   単独    奈良田第一発電所前から    行動時間:7H29M 
              


@開運隧道ゲート5:39→(66M)→A河童橋6:45→(7M)→B尾根取付き口6:52→(2M)→C作業小屋6:54→(17M)→D送電線鉄塔7:11→(83M)→E1775高点8:34→(20M)→Fドラム缶ポイント8:54→(38M)→G稜線コル9:32 →(24M)→H滝ノ沢頭山9:56〜10:33→(25M)→Iドラム缶ポイント帰り10:58→(13M)J1775高点帰り11:11→(44M)→K送電線鉄塔帰り11:55→(8M)→L作業小屋帰り12:03〜06→(2M)→M林道に降立つ12:08→(60M)→N開運隧道ゲート到着13:08


ge-to.jpg  kaxtupabashi.jpg  eikaku.jpg  sagyoukoya.jpg 
@開運隧道入口ゲート(奈良田第一発電所前。門扉は鍵が閉まっている。 A河童橋。取付き箇所はもう近い。 B林道が尾根を巻き込んで野呂川発電所側に少し進んだ所から鋭角に道が上がっている。 C作業小屋。かなり荒んだ場所。放置車両が4台ある。撮影側の右手にルートがある。
jyunshiro.jpg  textutou.jpg  ro-pu.jpg  akapenki.jpg 
明瞭な巡視路。尾根に乗ってしまえば一級の道。 D送電線鉄塔。 途中にタイガーロープも流してあった。やや急峻の登り。 1470m付近から左のトラバース道を伝った先のマーキング
toraba-su.jpg  tabioku.jpg  iwaya.jpg  1580.jpg 
トラバース道の様子。先に進むと右の絵に。 大木が2本あり、その一本に鋭角に曲がるよう赤ペンキが付けられている。 左の絵から少し進むと上部に岩屋がある。洞穴に近い岩屋。 1580m付近。尾根に戻った場所の様子。赤いリボンが続く。
1775ouro.jpg  sasa.jpg  1870.jpg somamichi.jpg
E1775高点の西側の様子。 途中に低い笹の原がある。 F1870m付近。「ドラム缶ポイント」と名付けた。 尾根を外れ左(西)側の杣道を行く。付近は夥しい間伐倒木。
toubokuuekara.jpg  onetemaebunki.jpg  koru.jpg  tore-su.jpg 
先の写真の下側の様子。杣道以外は足の踏み場も無いような感じ。 コルを手前にして矢印が3つ書かれた分岐がある。ここを右に。 G滝ノ沢頭山南のコル。正面が倒木帯。 G登ってきた方向。雪の量は15センチほど。
korukaraookaramatu.jpg  touboku.jpg  toubokukarakoru.jpg  sancyou.jpg 
Gコルから大唐松山方面。伐採した道形が続いているようであった。 コルから先の倒木帯の様子。かなり難儀する。ここは左(西)側に最初から逃げた方が良い。 倒木帯からコル側。 H滝ノ沢頭山。東から西側を撮影。
sankakuten.jpg  be-ku.jpg  shiranesanzan.jpg  ookaramatu.jpg
H滝ノ沢頭山三角点 H三角点の北の木にベーク板の標識が付いていた。他に朽ちた布とビニール袋も縛られていた H山頂の西側から白根三山遠望(近望)。 H山頂から南西側の大唐松山。
hiraketabasyo.jpg  sancyouhigashigawa.jpg  doramukan.jpg  1775hukuro.jpg 
H少し開けた場所があり、そこで休憩。ホシガラスが遊びに来ていた。 山頂の東側の様子。グリセードーで下ってゆく。 Iドラム缶ポイント。雪の下には割れた一升瓶も多い。 J1775高点。東側を見た絵。
mark.jpg  komorebi.jpg  textutoukaeri.jpg  sagyoukoyakaeri.jpg 
カラマツ林内のルート上は下山側にもこのように赤ペンキが続く場所もある。 最近出番が多くなっているが、木漏れ日ハイカー現る。 K送電線鉄塔の上から。右下に白く早川の河原が見えている。 L巡視路から小屋を見たところ。杉林の中に夥しいゴミが散乱している。
koyanaibu.jpg  koyakarashita.jpg  rindouni.jpg  ge-tokaeri.jpg 
L小屋内部の様子。 M小屋から下ってきた斜面。ここもゴミが多い。 M林道に降立ち帰路側の絵。 N開運隧道入口ゲート到着。警備員が開門してくれた。


  

 2005年7月大唐松山側から少し稜線を辿ったのだが、時間的な部分でやむなく引き返した。いやな所を残してしまった結果になったのだが、1座だけとなるとアプローチは林道(南アルプス街道)側からとなる。しかし現在の林道は車が入れない。昔この林道を車で通過していたのを懐かしく思えるのだが、崩落が度重なることもあり自然と通行止めになったようである。もっとも環境面を考えての通行禁止の部分も大きいだろう。そんな中であり、率直なところ林道歩きが負担で敬遠していた場所であった。それでも、2006年の10月にこのゲート前に訪れた時は「徒歩と自転車は通行可能」と書かれた表示があり、ゲートの門扉は自由に開閉できた。前週は自転車の選択を迷ったが、今回は自転車で行こうと車に積み込み準備をした。


 1:15家を出て、4:45開運隧道(奈良田第一発電所前)のゲートに到着する。車のヘッドライトを当てながら門扉に近寄ってゆくと、予想外の事態になっていた。ゲートにある門扉にはステンレスのチェーンがされ鍵がかかっていた。どういう事なのか、季節により通行の可否が設定されているのか。夏期に通すなら、冬季ならもっと入山者数が少なくなるので、通しても問題にはならないのではないだろうか。それから以前に掲示してあった「自転車と歩行者は通行可」との文字が無くなっていた。意気揚々と来たものの、完全にそのテンションをそぎ落とされた感じになった。すぐに頭を切り替え別ルートを探るが、別と言ってもここからは雨池山経由のルートしかない。頭を廻らせながら、門扉に貼ってある各種の注意書きを目で追ってゆくと、黄色い表示の注意書きに歩行者は入れると取れる文言があった。さらにその下の地図には、「徒歩通行区間」が記されていた。どうも入ってはいけないのではないらしい。次にオーバーハングしたゲートを見上げる。“行ける” 自転車を持っての乗り越えは物理的に無理であるが、人間様だけなら・・・。車に戻り、広河内橋の南側の余地に突っ込み準備をする。


 5:39ゲートを乗り越える。トンネルの電燈は工事中は消灯しているそうで、ヘッドランプだけが頼りであった。冷気が正面から吹き付け、閉鎖的な場所においての怖さが増す。開運隧道の次は見晴隧道、そして笹山隧道を出ると道が崩落して車1台分の幅しか残っていない状況であった。現在も工事中のようでありユンボが置かれていた。滝見橋からはこごみの滝が見える。植物のコゴミに例えられているのか、少しくねった形状で上下2段の長い滝であった。次に中尾沢橋の神楽滝。この滝は幾重もの流れが複雑に絡み合って下に落ちていた。道は相変わらずなだらかで、自転車であれば快適であろうと思われた。雨池隧道内には小さな落盤もあった。一般道では許されないが、ここだから許されるのであろう。コンクリートが吹き付けられたトンネルばかり見ている者にしてみると、ここのような掘りっぱなしのトンネルは至極無骨なトンネルに見えるのであった。

 野猿橋の所は滝が無く、その次にある仙丈橋から見る仙谷滝がこの日一番の名瀑であった。ここを過ぎると工事箇所が点在する。山側に荷揚げ用モノレールの軌道も延びていた。上の方で崩落があるのか、もしくは林業作業なのか。その先ではドブ付け鍍金された工事用の足場が延々と急斜面に付いていた。工事用としてはお金が掛かり過ぎなので、巡視路だったのかも。泰平橋を過ぎ、今日の取付き点手前の最後の橋が河童橋となる。河童橋と言えば上高地だが、ここはここで深い谷を有し、そこに流れる河童滝もあり、景勝地となっていた。右に緩やかにターンして高度を落としてゆく。

 尾根の末端から入山するつもりで居たが、コンクリートが吹き付けられた高いよう壁があり、取り付けない。少し手前から駆け上がることも出来たが、もう少し進んでみることにした。すると「11.5Km」と書かれた標柱が右にあり、その南側にコンクリート舗装された道が鋭角に上がっていた。それに伝うと舗装はすぐに途切れ、ススキを踏みながら分けてゆくと目の前に古びた小屋が現れた。これが地形図に示される黒い点である。周辺に車が放置されているのだが、その車から使われなくなって30年以上は経過しているように推察できた。付近はゴミだらけで、はっきり言って汚い。ゴミの多さは利用者の多さを示しているのだが、目を覆いたくなるほどに散乱していた。さてこの先のルートだが、山側の斜面にはシカかイノシシの土坑の痕があり、その先に巡視路に良く使われるところの黒いプラスチックの階段が続いていた。斜面に対して左上に登る感じで続いている。階段が土に埋まっているところが多く、最初の取付きが発見しずらいかもしれない。


 6時55分になり、谷あいにエンジン音が響き今日最初の車が奈良田側から入ってきた。間違いなく工事車両の様であり、ゲートが開門されたことを確認出来た。巡視路を進むと送電線の鉄塔に辿り着く。巡視路なので当然鉄塔までは道があるものと思っていたが、この先にも明瞭な道が続く。少し先に分岐があり、標柱には「西山線」と書かれ右(北)側に水平道が伸びていた。尾根上には杉の木に赤い矢印がされ進むべき方向が記されていた。さらにはピンク色のリボンも下がっている。鉄塔から5分ほど進んだ辺りで急斜面の登りになる。ここは驚いたことにタイガーロープが流されていた。ありがたく伝わらせてもらい這い上がる。


 水平道が左右に多々現れる。おおよそ現在の尾根道が杣道であることが判る。それにしても林業関係者がペンキ矢印まで付けるのかどうかである。登山対象なのではと少し思ったりもした。1470m付近で左に明瞭なトラバース道があり、伝ってみることにした。意外やこちらが本道なのか、赤ペンキの矢印もこちらに付いていた。緩やかに真西に進むような道であり、このまま上には行かないものと思っていたら、急斜面に2本の大木があり、そこから右手に鋭角に上がって行く道になっていた。少しザレた場所で、斜面を上がった所に洞穴形状の岩屋がある。熊の巣穴のようで確認するまでが怖かったが、居ないことが判り中が覗けるとすばらしく居心地の良い場所であった。付近の道は不明瞭で、赤ペンキは大木を最後に無くなっていた。

 主稜線に出たのは1580m付近で、ここにはピンクのリボンと赤いリボンが見られた。この先これらのリボンを拾いながら行く。1600m付近から雪が乗り出し足許が滑る。前週は2000mまで上がらないと雪は無かったが、こちらは早い段階でお出ましになった。ところ変わればと言う部分である。1775m高点は展望の無い通過点と言う感じであった。ここから10分ほどで笹の原があり、稜線と言うより、やや左側の斜面進んで行く。そして1870m付近のやや地形が穏やかになった所にドラム缶や一斗缶、一升瓶に盥などが散乱している所がある。それらは雪に埋もれているのだが、雪が無かったらもっと凄い絵づらであろう。ここのゴミの多さは、尾根の突端にある小屋の周辺のゴミの多さと相通じる。


 さてここからの進路であるが、直登側の尾根にはおびただしい伐採倒木がある。予定ではここを直登しようと思っていたのだが、この状況では辛そうに見え、左(西)側にトラバースしている杣道に伝って行くことにした。こちらも左右の斜面には倒木があり、辛うじて道の部分だけ避けられている感じであった。目指すべきピークは右上であり、隙あらば駆け上がるつもりで見ていたが、いつになっても倒木の状態は減らずにだいぶ左にずれてしまった。そして滝ノ沢頭山の真北に達した所で、カラマツの木に3本の矢印が書かれた分岐になっており、矢印の一本は山頂側を示していた。杣道を真っ直ぐ進むと2122高点の方へ行くようであったが、ここで北西に方向を変える。雪はどんどん深くなり付近は15センチほどになっていた。カラマツの植林地なので太陽光が良く入り、明るく気持ちの良い場所であった。明るいと言うのは、林業作業者によっての間伐がされたせいでもあるのだが。


 滝ノ沢頭山と2122高点とのコルに上がると2122高点側には道らしき幅が確認できたが、逆の滝ノ沢頭山側にはそれが無く、ここから倒木を乗り越えながらの試練の時間が続いた。雪があり倒木の上も滑り、格段にスピードが落ちる。伐採をした時の道がどこかにあるものと周囲を見たが判らず、やむなくこのまま耐える。ほんの20分ほどであったがとても長い時間に思えた。少し左側にずれると、東西できっぱりと、伐採がされていない部分とされている部分とに分かれ、ここにマーキングが繋がっていた。私は適当にコルと山頂とを結んだ線で進んでいたが、コルからはやや西側に歩き易いルートがあるようであった。ここらへんは下山時に辿らなかったので未確認部分であった。ルートに乗ったと言っても雪の上を適当に歩きやすいところを行くだけである。振り返ると木々の間から大唐松山が見える。そして左(西)側には白い白根三山が間近にあった。ダケカンバが視界を邪魔しているのだが、葉が落ちているのでほどほどに見えている。途中にワイヤーロープが残置されているところもあり、山頂部まで林業関係者が入っているようであった。


 9:56滝ノ沢頭山到着。本当に鬱蒼とした樹林の中で、ほとんど日の当たらない場所に三角点はひっそりと鎮座していた。北側の木にベーク板のような標識が釘で打ちつけられていた。東側の木に色あせた布キレが下がり、西側にはビニール袋が縛られていた。山名を記す物は何も無い。少し西側に出ると白根三山が何とか見える。展望が有るのはこの西側だけで、他の方角は全くの樹林であった。この西側は少し日差しも入りぽかぽかと暖かい。雪の上に腰を下ろしヤキソバパンに食らえ付く。今日は快晴無風。ふと気がつくと頭の上の木にホシガラスがやってきて私を見下ろしていた。ホシガラスと言えばガーガーと言う声を連想するが、鳴かないホシガラスがなぜが品のある鳥に見えた。


 結構にのんびりして、下山は真っ直ぐに尾根を狙うように降りてみた。最初はなだらかでグリセードーをしながら行くのだが、すぐに倒木帯に変わった。こちらにはほとんど踏み跡らしき道は無く、急斜面を滑らないように注意しながら高度を下げて行く。ドラム缶ポイントに到着しての考察になるが、ここは登りに直登した場合も、下りに使った場合も辛いルートとなると思う。少し大回りにはなるが西にトラバースしている杣道を伝った方が登りも下りも無難であろう。この先はピンクのリボンを追いながら高度を下げてゆく。小尾根が派生していて迷うような場所にはきちんとリボンが付いていたのでじっくり探せば迷うことは無い。下りはほとんど尾根を外す事無く忠実に辿ってみた。送電線鉄塔を過ぎ、小屋までの間に白い看板があり、付近の造林の詳細が書いてあった。付近のカラマツは1968年に植林されたと有るのだが、もうすぐ40年が経過する。それにしてはカラマツの成長が遅いような気がしたが、現在のスピード社会において、林業は相反する時間の流れがある。白い看板一枚に林業の大変さを感じるのであった。


 作業小屋に到着し、小屋の内部を恐る恐る覗いてみた。意外やゴミ屋敷にはなって居らず、使おうと思えば使える小屋であった。この小屋からは往路は辿らず、直接南側に林道を下りてみた。杉林の中に薄っすらと道があり、出た先は保安林と書いた黄色い標識の所であった。林道に降り立ち、あとは滝を愛でながら下って行く。丁度お昼時で、作業員が車の中や野外で食事をしている風景が見られた。早川を挟んだ対岸に団子沢山や先日MLQが踏んだ高山も見えてくる。歩きだからこそ楽しめる景色かもしれない。


 開運隧道の出口が明るく見えると、ゲートはまだされたままであった。近づいて行くとと向こうから警備員の方がきて門扉を開けてくれた。「どうもすみません」と言うと相手は無言であった。通ってはいけないところを通ってきているような気さえしたのだが、見ていたら警備員の人は通過するトラックなどの作業車が来る毎に開閉を繰り返していた。たぶん私がやっても無口になるかもしれない。あんな重いゲートを日に何度も開け閉めしなければならないのは仕事とは言え苦痛であろう。そんな時に人間様のために“どうぞお通りください”と開けたのであるから、相手の気持ちも察する所である。でも人として最低限の挨拶くらいは必要であろう。


 丁度登頂した時に、金沢に居たころの恩師が高崎に訪れているとの携帯連絡が入った。18時までに来て欲しいと言うことで、ゆっくり帰宅をと思っていたのだがまたまた忙しい予定で帰らねばならなかった。とりあえず奈良田の里温泉で汗を落とし、駐車場を出たのが14時。何とか10分遅れで高崎まで戻った。

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