五六峰  2172.8m      

 2008.1.19(土)   


   晴れ     単独     林道氷沢線より    スキー    行動時間:7H12M


@林道氷沢線終点4:36→(8M)→A氷沢取水場4:44→(83M)→B1625高点南6:07→(167M )→C五六峰8:54〜9:31→(80M)→D1642高点付近10:51→(52M)→E氷沢取水場帰り11:43→(5M)→F林道終点11:48


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@林道 氷沢線終点。奥に向かって道が付いている。Fは帰り。 A道を伝ってくるとこのようなフェンスの場所に出る。ここが氷沢。 B1625高点の南側の鞍部付近。幅広い稜線。 ハト峰北側の、無名峰のコル付近からの日の出。
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最初はなだらかな勾配でのアップダウン。 途中に手仕事で仕上げた石の標柱が立っていた。(珍品) 左が五六峰の前衛峰。本峰は見えない。 ここに来てやっと見えてくる。奥の黒い高みが五六峰。
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前衛峰までの稜線の様子。フカフカの所、アイスバーン、重い雪、等々が入り混じる。 C五六峰山頂。今日の板は、ハーガンのツアー フリーライド オフ リミッツ。 C山頂の北側。(歩いて来た側) C山頂の南側。(鉢盛山側)
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C山頂を示す物は何も無く、無記名のリボンを残す。 D鉢盛山遠望。中央の背の低い木の左に、点のように鉢盛山のアンテナが見えている。 下山途中から蝶ヶ岳側。 奥穂も雪雲から姿を現す。
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見えている稜線を伝って降りて行く。稜線の西側は樹林があり、北アの主稜線側の展望は無い。 登りのトレールと下りのシュプール。 ハト峰遠望。中腹の林道が良く見える。 途中から振り返る。
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D1642高点の北側の巨木。幹に赤い見出し標が打ち付けてある。 氷沢上部から梓川を挟んだ対岸を見ている。小嵩沢山か? 氷沢の上部は雑木が生え、あまりスキーにはならない。(下から上を見ている)  雑木帯を抜けると取水場まで快適なバーンが続く。
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E稲核地区の取水場(水源) F林道終点到着。 F @の絵と同じ角度。お日様の下ではこのように見える。  「道の駅 風穴の里」の西側から始まる「林道 氷沢線」。

 

 この五六峰(ごろくほう)を目指そうとする方は稀だろう。と言う私も以前は見向きもしなかったのだが、日本山名事典に掲載され登らねばならなくなった。そんな中、既にMLQが登頂し踏破記録がWEB上で見られるのが嬉しい部分である。MLQは大白川側から取り付いたようであるが、私は稲核(いねこき)地区の林道氷沢線から入山を決めていた。と言うのは、地形図上の林道実線が現地ではもっと上の方まで伸びているのではないだろうかと思ったからであった。非力なもので、少しでも労力軽減の場所から狙うのであった。


 1時30分家を出る。三才山トンネルに潜り松本に出る。そして夜間無料の松本トンネルを経由し、梓川沿いの土手高速をふっとばし158号線に乗る。上高地がオフシーズンなので、車通りはまばら。北陸からの地走りのトラッカーが目立つのみであった。そして現地の「道の駅風穴の里」に到着。当初はここに停めて出発を思っていたが、見ると林道のゲート(チェーン)は開いており、轍が奥に続いていた。雪道走行のリスクなどもあり少し迷ったが、林道に入ってしまう事にした。2007年2月に狙おうとした時(当時もゲートが開いていた)は、雪が多くここから全く入れなかった。今回も林道終点までのアルバイトは覚悟して来たのだが、極めてラッキーであった。ただ林道入口には「立入り禁止」の看板があり、色々と注釈が書かれている。山菜とキノコの栽培地があり、立ち入ることも許されないようである。踏み荒らす事に対しての罰金も書かれており、法的にも有効な看板である。一応社会性は持ち合わせているのでこの看板にはかなり躊躇してしまう。しかし雪が乗ったこの時期なら草系の山菜は雪の下。踏むにしてもカモシカよりは私の方が体重は軽い。タラやコシアブラなどは見れば判るし、立ち木を傷つけることは無い。乗鞍などの国立公園でも、冬季(積雪期)なら指定区域外の侵入もあまり問題視されない事もあり、同じような解釈をして入らせてもらった。行き着いた林道終点は地図通りの場所で、表示以上先には続いていなかった4:00。


 積雪期でもあり余裕をもってすぐに出発と思ったが、車に乗せたと思ったヘッドランプが見当たらない。どうも忘れたようで、やむなく非常用のハンディーライトで我慢することにした。登はん具は、今日はスキー装備で3組持って来ていた。藪であれば短い板が良いし、緩い斜面やフカフカなら長い板が良い。あとは稜線が結構にアップダウンがあるようであり、シール内蔵のカルフのメタにしようかと思ったが、雪がガリガリであったらメタの幅広だとかえって危険が増す。ここはハーガンのオフリミッツとした。


 4:36 板を背負ってのスタートする。林道終点からは杣道が奥に続き、70mほど辿ると目の前に緑色のフェンスが現れた。ここは氷沢の沢の中であり、往路では真っ暗でよく判らなかった。上流に向かって50mほどフェンスの場所が続きそれに沿うように進んで行く。フェンスが切れた所から谷を詰めようかと思ったが、明るかったらそうしようとも思ったが、ここは尾根に乗ろうと地形図上の1262高点を目指して斜面を駆け上がる。人が入った形跡として刃物の跡があるものの、雑木の幼木が多く、進路を阻まれ歩きずらい。ヘッドライトがあればもう少し広角に辺りが見られたと思うと、自分のミスの戒めにもなる。標高1350mほどになり板を履いてシール登行となる。雑木を避けながら歩きやすいところを選びつつ上に行く。狙うは稜線の1625高点の南側鞍部。ここの登りは特に危険箇所は無く、スキーを脱がねば上がれないような場所も無い。もうすぐ稜線と言う所で広い緩斜面になり、帰りの滑りが楽しみな地形であった。


 稜線に上がり南に進むと、時折赤い見出し標が目に入る。まだ新しいものや、赤茶色にさびたもの。この見出し標により人の気配はするものの、雪の下から飛び出しているクマザザの様子から、無積雪期だとかなり辛いルートであろうと予測できた。地形図上で見て取れるアップダウンに加えて、雪による細かいアップダウンがある。この辺りは雪がフカフカであり、帰りの事を思うと板はメタ(カルフ)の選択の方が良かったかと思うほどであった。稜線には見出し標のほかにコンクリート石柱が有ったり、木の角柱が有ったりもした。これらが見えているということは、積雪量はかなり少ないということになる。1642高点を前後して、見事な大木が立ち並ぶ稜線であった。東側を見るとハト峰の北側鞍部から丁度ご来光が上がる所で、2008年に入って初めてのご来光であり、しばし足を止めて上昇するのを見入ってしまった。目指す五六峰は既に見えており、円錐形の凜とした容姿をしている(実際は前衛峰)。この付近からの高度差は残り500mほど、もう少し難儀するかと思ったが意外に楽に来てしまっていた。

 

 外気温計はマイナス15度を指していた。天気こそ晴れではあるが、西からの冷たい風がある。その西側の北アルプス主稜線を望むと、高嶺の多くが雪雲に覆われていた。風が冷たいわけである。ただ、この稜線には大きな雪庇は無く、冬季間を通じても風はあまり強くは吹かないようであった。稜線を進んでゆくのだが、だんだんと目的地が近くなると勾配もきつくなる。キックターンを繰り返しながら這い上がる。フカフカの雪の下20センチほどにはガチガチのアイスバーンがあるようで、表層雪崩的に流れる場所もあるので、足を出す地形には注意しつつ上がって行く。直下に来て、最後の登りと思って登りあげると本峰はまだ先であった。北側から見えていた峰は、山頂の北側にある高みで、三角点峰はその先なのであった。

 五六峰到着。最後はカンジキやアイゼンを出すのかと思ったが、何とかスキーで上がりきれた。南を見ると、鉢盛山の大きなアンテナがポツンと見える。他の方角の展望は木々の間から見るしかなく、目視なら見えるが、カメラに収めようとすると全くダメであった。山頂には一切のマーキング類が無く、無記名のピンクのリボンを縛っておいた。記念写真にスキーを外し立てかける。スキーが無いと股ぐらいまで潜り、スキーのありがたさを痛感。日差しを浴びながらヤキソバパンを齧る。寒くて鼻水がツララになり、まるで風大左衛門のようであった。


 さあシールを外して滑降となる。五六沢に向けて降りられれば理想なのだが、林道終点に車があるので往路を辿る事になる。狭い尾根を滑るには、私の技量が低すぎ、ズルズルとずり落ちるように下りて行く。たまにはそれらしいシュプールを刻んではいるのだが・・・。登り返しもシールを着けずにカニ歩きで我慢。7回か8回ほど登り返しがある。そして1642高点を過ぎ、当初はトレースのある尾根を降りようと思ったが、氷沢はどんなものなのだろうかと気になった。名前からして凍っている滝などを連想し、いろいろ考える部分はあったが、運を天に任せて滑り降りてみた。降り始めこそ雑木が多いが、そこを貫けるとなかなかのバーンが続き、滑っていて楽しい谷であった。やや狭い谷でもあり、今日の短い板が大活躍。下の方に行くとゴーロを伴った枝沢が合流している場所があり、その先に往路で見た緑色のフェンスがあった。近付いてよく見ると、黒いホースがありここから取水しているのであった。どうも稲核地域の水源であったようである。要するに林道は、林業用で無くこの水源地の為に有るようであった。これだと立ち入り禁止にしている意味がよく判った。水源を汚されては一大事である。


 水平道を辿り林道終点に到着。着替えを済ませ、ゆっくりと林道を下りて行く。緊張が解けラジオでもと手を伸ばした瞬間、情けない事に山手側の路肩に落ちてしまった。よく踏まれた雪ではないので、ちょっとしたハンドルさばきで明後日の方向に行ってしまう状況なのであった。谷側だったら命は無かったが、山側で良かった。斜めになった車内で、先ほどまでの楽しかった山の事が一気に吹っ飛んでしまった。こんな場合は落ち着きが大事。下手をすると全く脱出できなくなる。落ちた状況をもう一度確認し、四駆のLoモードにギヤを入れ、最良の舵角にハンドルを切り、静かにアクセルを踏む。なんとか脱出したが、今度は意に反して谷側に進みたがりさらにドキドキ。結局なんとか正常位置に戻せ事なきを得る。雪道の運転、一瞬の隙が大事故になるので要注意でなのであった。一速に入れソロリソロリと道の駅まで降りて行く。

  

 結局のところ、林道利用によって簡単に踏むことが出来た。歩いた感じではスノーシューハイクなどでも十分に楽しめる場所であり、歩き易い場所であると思う。この時期お勧めとしたいところであるが、林道は登山目的でも立ち入り禁止なのだろうか。たぶんそうなのであろう。少し考えを発展させて、林道終点から沢を避けた尾根伝いルートを切り、五六峰へ登路を付けても面白いのではないだろうか。「言うは易し、するは難し」と怒られそうだが・・・。

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