深田久弥さんの代表作「日本百名山」を読んだ時に、とても興味深い記述があった。谷川岳は、その昔は現在の場所ではなかった旨の事が書かれていた。昔は俎�ｰ山稜を指して谷川岳と呼んでいたそうな。早くに本を読んで登れば良かったと後悔。何度もこのエリアに踏み入れているが、そう思って俎�ｰ山稜を見た事など一度もなかった。やけに綺麗な山稜だな〜とは思っていたが・・・。

　
　歩かれていた過去があって、地形図にはルートの在り処を示す破線が書かれてある。しかし廃道となっているのは誰もが知るところ。歩かれなくなってどのくらい経過しているのか。そう思うと、地形図の更新サイクルにお役所的部分を感じるのと、人間の興味とは風見鶏なもんなのだと思う。つい先日までこちらが谷川岳だったのに、今日からこっちが・・・。こんなことが発生した訳である。その結果が、寂れ人が行かなくなり・・・なのかと思ったりする。オキノ耳、トマノ耳のあの場所を、違う名前にしていたならば、俎�ｰの道も残っていたかも・・・。全ては妄想と空想での我が思い。

　
　攻め方を考える。普通に冬季、雪を利用してが順当。ほとんどの人がそうしている。春先にスルス俣山から眺めた時も、誘うような尾根形状と山容にワクワク感さえも覚えた。ただし、道があった過去があり、無積雪期にも一縷の望みはある。歩き易そうな場所に道を切るはずであり、在ったことをのみだけ考えても、伝いやすい稜線だとも考えられる。何処を探しても無積雪期の記録が見出せない。なぜなのか・・・廃道になって余程年月が経過したって事か・・・。迷っている自分に、行くのか行かないのか自問自答。ダメ元で調査登山を決め込む。群馬側はくもり予報。新潟側は晴れ予報。はてさて現地はどっちの予報となるのか・・・。ルートは、最楽ならロープウェーとなるが、時間的に完結しない。近接する中ゴー尾根などを使いたいが、経路に時間がかかりすぎる。天秤にかけると、西黒尾根が一番いい。いろいろが決まれば、運を天に任せ・・・。どんな場面があるか判らないので、３０ｍのザイルも持った。

　
　１：１５家を出る。月明かりが非常に明るく、夜歩きに最適の日に思えた。関越道をのんびりと走り、水上で降りて湯檜曽に向かう。Ｒ２９１は、その湯檜曽付近で工事中だった。２箇所で停められつつ土合に到着となる。無理は判っているが念のためと思って登山指導センターの方へ車を進める。路肩の左右にはロープが流され、ねずみ一匹、いや車１台も停めるスペースは無かった。ハイシーズンも終わりに近いが、向かえる側も夏の様相のまま。戻ってロープウェー駅の地下に潜る。その駐車場内には、ざっと１２のテントの花が咲いていた。マイカーの横に自由に張っている。みんな、深夜はここが混まない事を知っての事なのだろう。地下駐車場素人の私は、「ここはいい」なんて思ってしまった。なにせ、蛍光灯が適所にあり、明るいのがいい。準備するにもヘッドライト要らずが嬉しいのだった。葬儀明けの金曜日の夜となる。疲れがとれず、軽く仮眠を入れる（２：４０）。

　
　そこは駐車場。時折エンジン音がするのと、出発の為か開け閉め音が低い天上により響き渡る。これが駐車場のサガ。それでも３０分ほどは体を休められ準備に入る。明るく快適で、あまり周囲の殺気を気にせず居られるのがいい。通常だと少なからず獣などを気にして準備をしている。ここはそれから回避される。準備が終わりエレベーターに乗ろうかと思ったが、夜間は停止中であった。知っている上に行く術は、駐車場に入って来たルートを戻る事。一度北東側に出て、東に進んでＲ２９１に出てから登り上げて行く。登山指導センター前を通過し、大きなヘヤピンを経ると西黒尾根の登山口となる。日本三大急登に数えられるが、標高差がそうあるわけでなく、しばしの我慢である。

　
　良く踏まれた西黒尾根の登山道を登って行く。ここの虫はＬＥＤライトに寄ってくる。通常は寄らないはずなのだが、進化したのだろうか。手で払わねばならないほどに数匹舞うのだった。外気温が暑いくらいで、一気に汗が噴出してゆく。細かいピッチでコツコツと上がる。樹林の中に下界の施設の明かりがポツポツと見えてくる。まだ下の方に居ることを自覚し、ひたすら足を上げる事に専念する。鉄塔の場所は、下草が刈り払われ、その為に牧草地に居る様な香りがする。夜間視界が無い時は臭覚が働く。途中からガスが周囲を覆う。そのガスがライトに反射して見難い。雲の中に居るのか、それとも今日は全てこの視界なのか、折角の展望のいい場所に挑む、今日は僅かでいいから晴れて欲しい。“頑張れ新潟側の予報”なのだった。

　
　現在の夜明けは４：５０ほどであった。明るくなると同時くらいに樹林帯から抜け出す。しかし周囲にはガスが見えるばかりの白い景色だった。そしてこの先は鎖場の連続。ソールのグリップを確かめつつ登るのだが、良く滑ること。普通に鎖の恩恵に与かった。３つの鎖場を抜けきると、登り上げてラクダの背。東側のガスは取れたが、西からのガスが稜線を覆う。“もう少し・・・晴れろ！！”と念じていると、意外にも取れてきた。その様子を見ながらコルに向けて下って行く。いい感じに狭稜が見え出してきた。荒々しい谷川岳に相応しいガスによる演出でもあった。

　
　ラクダのコル。ここからは巌剛新道が合流している。この先は完全にガスが明け、明るい中を黄ペンキ道標を追いながら進んで行く。ここでも岩が滑る。そろそろソールを張り替えないと・・・。攀じるようにして這い上がって行くと、後から声が聞こえてきた。目を凝らすと、動いている人が居る。こちらを判っているのか否か、時折大声でシャウトしている。もう背中側が気になってしょうがなかった。山は静かに・・・。ザンゲ岩周辺は、ややお花畑で、トリカブトのブルーが目立っていた。ここから１０分ほど上がると、分岐道標が現れ、立入禁止のロープも見え出す。肩の小屋はもう近い。下側の道を辿り、途中で天神尾根と合流。忘れていたが、今日もここは賑わうのだろう。帰りは相応の覚悟で通過となるか・・・。

　
　肩の小屋到着。中に入ると、４名のお姉さま方が食事をしていた。「あら、こんなに早くに・・・」などと会話が始まる。平標側から昨日来たようで、本体はオキノ耳を目指して出発しているよう。居るのは留守番部隊となる。ここで藪装備となる。雨具を着込みスパッツを装着。暑さ寒さが微妙だが、こればかりはしょうがない。１０分ほど滞在し、歯磨きをするお姉さま方を横目にオジカ沢ノ頭を目指してゆく。ササの中の登山道は、刈り払われた葉っぱでフカフカ。なんとも心地いいルートであった。管理する人が居て歩けている。この刈り払いが無かったら、ここは凄い植生。すぐに自然に戻るだろう。大きく下り、オジカ沢ノ頭への登り返し。南からの風が強く、北に巻き込むブラインドになる場所があり難かった。かなり冷え込み、フードを被り、しっかりとジッパーを締め込む。ただし、僅かに日が差すと、途端に熱い。被ったり取ったり、開けたり閉めたり・・・。

　
　オジカ沢ノ頭到着。懐かしい場所で、２００２年の６月深夜、それも雷雨の中を歩いて到達した場所。さらにおまけがあり、途中の大障子避難小屋にはＫＱＡ・ＨＸＦ両氏が泊まっており、人（私）の通過を感づいていたと聞いている。ニアミスもいいところで、昼間だったら「おおぅ」なんて言えた事になる。私の中でも記憶に残る場所なのであった。小休止をして、地図を見ながら再度作戦を練る。俎�ｰ山稜側の展望はガスに覆われ全く見ることが出来ない。故に地形図を穴の開くほど見て頭に叩き込む。大きな山場は、やはり俎�ｰ山稜。崩落など危険箇所が発生して廃道になったのではないか、背中にはそれを危惧してのザイルが入っていた。さて下降開始。

　
　まずはオジカ沢避難小屋に降りて行き、その前から主稜線ルートがトラバースしだすのに対し、主尾根に沿った感じで笹原の中に足を踏み入れてゆく。道形の場所を当然探すも、その場所は判らない。膝上ほどのササの深さで、最初は意外に歩きやすかった。そして、西側に主尾根があり、東側にもダラッとした高みがある場所になる。大枠では二重山稜的な場所。ここの最初は、どうせ下るのだからと、低い側の東側を伝っていた。どうもここは、それらの鞍部を伝うのがいいようだ。この１７９０ｍくらいが過ぎ、広い斜面の下降に入る。あさっての方角に進まぬよう、コンパスは常に見る様にして降りていた。ここで胸くらいの高さのササ。帰りは普通に頭上を越える事になる。新しいササの下に古い枯れたササがある。下るにはフカフカして歩きやすいが、登りでは分け進むのは酷いだろう。出来るだけ一本の筋を笹原につけるよう、掻き分け、強く踏むようにして降りて行く。振り返ると何となく鹿道に見える筋が続いている。今日だけなら復路の目印になる。

　
　それにしても汚れていない綺麗なササが覆っていた。これほど綺麗なのも久しぶり。そんな上にブルーのカミキリムシを見つける。それを見ながらホッと一息。判らないうちに１７６１高点を過ぎ、俎�ｰ山稜の一角に足を踏み入れていた。上を目指して登って行く。実際は分けてゆくと言うのが正解。視界が無いのがいいのか悪いのか、この時は良く判らなかった。頂稜をしっかり拾うようにして進んで行くのだが、南東側からの吹き上げの風が強く、足場に注意する。逆の北西の風だったら、崖側にもっと注意せねばならないので、風向きとしては今日は幸い。強い風で倒されたとしても北西側なら笹原であるから・・・。

　
　ササ一辺倒だった場所に、シャクナゲが現れだした。一気に進度が落ちる。中央突破や、右に巻いたり左に巻いたり、そんなことをしていると、足許に細い道形がある場所も発見する。これが地形図の破線の名残。下ばかり向いていればずっと辿れるのかもしれないが、ほとんどが覆われている状況に、それは無理であった。脛を低木にぶつけながら、分け入るところが多くなる。ポコポコと、いくつのピークを越えたろうか、３つ、いや４つ。そんな中に、ここが俎�ｰの最高点だろうという場所があった。本来なら３６０度のパノラマ写真を撮りたいところだが、今日は・・・。それでも微かにガスが晴れつつあった。自然は味方をしてくれるのか・・・。

　
　俎�ｰから下降に入ると、薄っすらと前の方に鋭利な高みが見えるようになった。なにか、北海道の礼文岳の山腹を見ているような草原風景。これまで続いていたササも、１８２０ｍ付近でパタッと消え、草地となる。ひとつ手前に小高い高みがあるが、その先１８１０ｍほどから再び笹原となり、上部は低木が覆う場所。ここはササの選択の方が歩き易く。正面に山頂を置き、左（南）に巻き込むようにしてササに伝って山頂に立つ。ここで胸くらいのササ。北側を進むより遥かに楽であったと思う。

　
　川棚ノ頭到着。とうとう念願の場所に着いた。眼下に本谷ノ頭も見ている。生憎、平標山側はガス。見たかったスルス俣山側も覆われていた。すぐに三角点探しに入る。しかし這いずるようにして探しても出てこない。その前に、這いずるのも大変なほどの低木が蔓延っている。体を押し沈め、ひたすら探すと、なにかその大きさをした四角っぽい苔で覆われた場所が目に留まった。これは・・・間違いない。完全にカモフラージュされ、自然に同化していた。その苔の厚みは１．５センチほどあった。静かに剥ぎ取ると、真新しいと思える三等点が出てきた。どれだけ埋もれていたのか、何十年陽の目を見なかったのか、眩しそうに目を開けた三角点であった。これを踏まえると、ほとんど無積雪期に人が入っていないことが判る。入る人がみな三角点を見ようとしている人ではないであろうが、ここを訪れる好事家なら、三角点は目当てであろうから、私の推察も当たらずも遠からずであろう。しっかりとカメラに収め、再び苔で覆っておいた。また長い永眠に入る。次は誰が陽を当ててあげるのか。そして私の次は冬季がいい。戻って行く。

　
　往路に体験した所を戻らねばならない。纏わりつくササを分けて戻る。だんだんと膝から下の力が衰えてきて、分け入る足に元気がなくなっている。ストックを使い、先を押し広げるようにして進んで行く。それでも救いは天気。だんだんと晴れてきたのである。遠く、オキノ耳までも見えるようになり俎�ｰの最高点に到達する頃には、オジカ沢ノ頭までの俎�ｰ山稜としての全体が見えるようになった。なんて綺麗なんだろう。こんな綺麗な場所が国内に・・・。高層でありながら草原の雰囲気があり、さらには険しさも伴う流麗で気品がある場所。来て良かった。歩かせてもらい良かった。復路も頂稜を伝ったのだが、なるべく道形を探すように伝ってみる。ある場所もあるが、水の流れが通る為か、段差がある場所があり、それが見えないので伝いつつ転ぶ事数度。やはり道は気にせず頂稜を伝うのがいいようだ。時計を見つつ、残り距離と時間の経過で、行程を練ってゆく。ここであまりにも時間が取られ、疲れるようならロープウェーの利用も考慮せねばならない。そこまで軟弱にならぬよう頑張らねばならないのだが、そもそもお金を持っていたかどうか・・・。最後は自分の足のみが頼り。

　
　１７６１高点まで降り、登り返しとなる。再びガスが覆い出す。いいタイミングで展望を楽しませてもらった。ほんの３０分で状況は違っただろう。ツイている。登り始めの最初は腰くらいのササ、それが中盤以降から頭まで没するようになる。往路の分けた道を伝ったのだが、場所によっては負荷の多いルート取りとなった。戻る事を考え、ササの浅い場所をもっと選べばよかったと思えた。体力のまだあった往路では、そこまで気がまわらなかったとも言える。ほとんど牛歩。両腕を駆使して足への負荷を減らしつつ、膝を入れながら登って行く。心臓破りの坂と言うのがあるが、ここは脹脛の筋肉をピクピクさせるほどの試練の場所。単調な登りであるが、雨などの濡れた状態となれば、もっと酷いだろう。なにせ足の下は枯れたササがある。それでも１７９０ｍほどまで上がると避難小屋が見え出し、ゴール（登山道）も近い事が判る。復路は鞍部を伝ったのだが、そこに細い一本の濃い筋がある。これは往時の道なのか・・・。伝ってみたが、掘れ過ぎていて歩き辛く、すぐに横の笹原に逃げてしまった。ゴソゴソ・ガサガサ、登山者が居たら驚くであろう。気にしつつ静かに分けて登山道に飛び出した。

　
　オジカ沢ノ頭再び。俎�ｰ山稜を歩いてきた喜びが、疲労として味わうことが出来ていた。あとは一級のルートを戻るだけ。まだ１２時であり、時間は十分。天神尾根を伝って田尻尾根とも思ったが、もう少し岩の多い場所を楽しみたい。巌剛新道を歩くことに決めた。今日はヤキソバパンが手に入らず、代わりにドーナツ。これを撮ろうとしたが絵にならない。やはりヤキソバパン。その活躍の時期ももうすぐやってくる。冬季でも凍らないヤキソバパンは、食べやすく便利。内心、ガスが明けるのを待っていたが、その気配すらなかった。小休止の後、肩の小屋に向けてゆく。

　途中単独のハイカーが私同様の全身雨具を着てすれ違ってゆく。上の方は寒いようだ。振り返るが、一瞬たりとも俎�ｰ山稜は見えない。今日はこちら側からは一度も見させてもらっていない。十分現地で見たからいいのだが、それでもと欲張りなのであった。ちらほらとあるリンドウやイワショウブ、ピンクのハクサンフウロなどが目を和ませてくれる。そして上の方から鐘の音や人の声がしてくる。休憩者はベンチの設置具合からして、こちらを向いているのだろう。一挙手一投足を見られているか・・・。ガスの中から建造物が姿を現す。喧騒の場所に来てしまったようだ。

　肩の小屋の西側には１５名ほどが居た。東側にはもっと多い４０名ほどが休憩していた。さすが谷川岳である。朝のお姉さま方も賑やかであったが、にぎやかさの質が違う。みんな雨具を着込んでいる中、登りあげた暑さから場違いに半袖となる。欧米人並みの皮膚になってきているか・・・。本当はここまで来たら谷川岳最高峰を踏んで帰るのが順当なのだろうが、もう何度も踏んでいるのでそう拘りが無い。また来ればいいと西黒尾根の方へ進んでゆく。その西黒尾根はいい感じに見渡せ、上から見るルートは天空の回廊的雰囲気がある。天神尾根にはアリンコのようなハイカーが続いていた。こちらもけっして少ない訳ではないが、それでも静かに歩けていた。

　ラクダのコルからは予定通りに巌剛新道に入って行く。シンセン岩峰やマチガ沢の雪渓、そしてそしてクライマーたちの岩壁が見える。ここが本当の谷川岳。これが見たかったために、ここを選んだとも言える。鎖場、ハシゴ場、鎖場と繰り返しながら高度を下げてゆく。途中で、マチガ沢の方から声がする。間違いなく岩屋が何処かに居るようだ。急下降な感じが多く、それが緩みだすと、小沢の流れが沿うようになり、流れを跨ぐ場所で喉を潤し、顔を洗う。背中には１リッターほどの水がほとんど飲まずに入ったまま。ガスが多く涼しい時間が長かったので飲まなかったのだが、現地の冷たい水を期待して飲まなかったとも言える。長く我慢してやっと冷たい水にたどり着いた感じ。緩やかに降りて行く。石の上をピョンピョンと飛ぶようにして・・・。

　巌剛新道の登山口に到着。ちょうど通過して行った散策者がおり、驚いたようにこちらを見る。舗装路を降りて行くと、すぐにマチガ沢のバス停がある。通行止めにしてあるからバスなのかと理解したが、バスなどどう利用するのかと思っていたら、タイミングよくまだ新しそうな小さなバスが上がってきた。バス時間に合えば、ここからバスに乗って下ることも可能な様子。バスの中には乗客は数名。クライマーでもバスに乗るのか・・・。歩いてゆくと、下道への下降点道標がある。趣のある古いもの。谷川岳の歴史を感じる錆び具合でもあった。気持ちよく闊歩して降りて行く。そして西黒尾根の登山口を右に見てもう少し・・・。登山指導センター下のゲートでは、係りのおじさんがにこやかに話しかけてくれる。「上はまだ人が居ますか」、当然「はい」と返答する。他愛もない会話に心が入っている。「ご苦労様」と声をかけると「お疲れ様」と帰ってきた。

　ロープウェーの駅に着くと、観光客とハイカーが入り乱れていた。上に行ってきたためだろうややハイテンションの人が多い。なんとなくその気持ちが判る。汗臭さを隠すようにそそくさとエレベーターに乗り込み地下まで降りる。その地下駐車場は予想外にも疎ら。登山者御用達の場所なのかも。この駐車場で注意は、支払いブースの場所は、欧米並みの右側通行である。普通に左側通行をすると、対向車に正面衝突してしまうことになる。要注意。

　無事、川棚ノ頭を踏むことが出来た。やもすると踏めないのではと思っていただけに、嬉しい１座である。ガスであったが、その天候に後押しされたのかも。あの距離がオジカ沢ノ頭から眼下に見えたら、もしかしたら萎えてしまい足を踏み入れなかったかも。自然のお膳立てが良かったから踏めたとも言えよう。オジカ沢ノ頭から、休憩などを加味したら往復５時間を要するような場所。あの位置では、一般にはなかなか足が向かなくなるか・・・。崩落などの危険箇所は皆無だった。よってザイルなども不要。ただし俎�ｰ山稜の通過時は東側には要注意。落ちても死なない場所も多いが、その逆の場所もちらほらとあった。不思議と、鹿道は一筋しか見えなかった。もっともそれは熊道だったのかもしれないが・・・。