明星山   1188.5m  
                                             
                                      

   2017.3.18(土)


  晴れ    単独     岡地区登山口より   行動時間:9H19M


@登山口(除雪終点)5:45→(143M)→A林道を離れる(標高640m)8:08→(93M)→B鞍部9:41〜56→(90M)→C明星山11:26〜44→(41M)→D鞍部帰り12:25〜36→(31M)→E林道に乗る13:07〜12→(112M)→F登山口15:04


   
@岡地区登山口。除雪は登山口西側50mほど先まで。 配水施設の場所までカンジキのトレースが在った。 久しぶりの幕営装備。雪が緩く重さが弊害。 長い林道歩き。8割がたツボ足。
       
途中で明星山を望む。 A林道を離れ小谷に入る。 A林道を振り返る。 ブナ林の中を進む。
     
B940m峰南の鞍部で大休止。 B西尾根の岩峰を望む 西尾根に乗ったらストックをピッケルに、カンジキをアイゼンにスイッチ。 途中から振り返る
       
先ほど臨んだ岩峰が目の前。 再び振り返る。 露岩の多い場所は雪穴も多く時間がかかる。 山頂は先の先。
       
やっと山頂が見える。 C明星山山頂。後ろは雨飾山や妙高山など。 C伝ってきたリッジ C山頂と栂海新道の尾根筋。
     
C北側 C北東 C東 C雨飾・天狗原側
     
C南側 C黒姫山 C日本海 C栂海新道側
     
C東側を俯瞰 リッジの帰り 行きはよいよい帰りは・・・踏み抜きの連続。 こんな感じで何度も踏み抜く。
     
見える向こうの山々へ行く予定だったのだが・・・。 西尾根から北の鞍部に降りてゆく。 D鞍部再び。アイゼンからワカンに。 トレースを追って小谷を降りてゆく。
       
E林道に乗ったところで、重荷を飲んでしまうことに。帰路の林道はカンジキでも300mmほど沈む腐れ雪。 緩斜面で目の前で雪崩れた。撮影時にもまだ下側へ動いていた。 岡地区に戻る。右に見える家屋は住まいしている方がおられた。 F登山口に戻る。
       
F除雪終点。気温によっては融雪が凍っている場所で注意。




 お彼岸での三連休。天気もいいようで久しぶりに幕営装備で挑むことにした。その場所は、糸魚川は岡地区からの明星山を皮切りに犬ヶ岳までの尾根筋。海沿いの場所であり標高もあまり高くはない。よって一番に雪の状態が心配されたが、そこはまず行ってみて自分で体感しようと、斥候的な計画でもあった。

 
 1:20家を出る。久しぶりに三才山トンネルを潜って松本に出る。そして池田の直線道路を伝って大町に入り、148号に乗って姫川第六発電所のある小滝地区に到達する。途中少し雨が降り、危惧している雪の状態が気になった。外気温は+3℃。暖かいのだった。ヒスイ峡入口を左折して700m進むと、立派な道標が立ち明星山の登山口を示している。

 
 特徴的な消火栓の塔を目にしながら岡地区の村落内の道を登ってゆく。除雪は登山口の50mほど先で終わっていた。ここは傾斜があるのでマイナス気温の時は注意が必要だろう。融雪の水がガチガチに氷る場所であろう。岡地区を見下ろしながら夜明けを待つのだが、明けるまで待てずに一度雪の様子を確認する。やはり柔らかい。これにより装備を悩む。アルミワカンにするか、スノーシューにするか。今日は幕営装備なので大型のスノーシューとアルミワカンも大型のものを持ってきている。この雪にどちらを持とうか悩んでいた。犬ヶ岳までを思うとアルミにしたい。ただし途中まではスノーシューの地形。

 
 少し白みだし準備を開始する。NHKの594MHzが入らないので、スキャンしていると高い周波数がよく聞こえている。耳慣れないアナウンサーの声に聞き入っていると、なんとそれは北海道放送であった。やや早いがこの陽気に日本海ダクトが発生しているのかとも思えた。そんなことをしながらも装備を最後まで悩み、最終的にはアルミワカンをザックに結わえた。幕営を楽しむ為のビールや皮の厚い文旦などを入れたので、ザックは20kg近くになってしまっていた。

 
 登山口から歩き出す。林道の雪の上には米軍の使うスノーシューのような特異な跡が続く。数日前に入山している人が居るのかと、しばらくトレースが当てにできるかと期待しながら足を乗せて行く。しかしそう楽はさせてもらえずトレースの上でありながら踏み抜きが多い。歩き始めから既に辛い状況となっていた。最初に左に配水施設を見て、次に送電線鉄塔下にもう一つ現れる。特異なトレースはここで終わっていた。どうやら管理する地元の方の足跡であった。早々に期待外れとなり以降は無垢の上を進んでゆく。

 
 スギの植生がある場所はほとんどツボ足だった。我慢ならずにワカンを装着する。こんな状況ならスノーシューの方が機能的であり、1kmほど進んだものの取りに戻りたくもなった。樹林から出た日当たりのいい場所は締まっている雪面もあるが、最初の1時間ほどは試練の時間であった。あとは、林道を伝っているが、登山道としての夏道が在るはずであり、距離を思うとそこを伝った方が良かったのだが、初めて訪れているので在り処が判らないし探すこともしなかった。淡々と林道を進んでゆく。林道には分岐があるが、見える明星山の位置から判断し、北側に進んでゆく方を選ぶ。林道も北側に切られた場所では雪の覆っている場所が多く、雪崩そうな雰囲気を持っており、亀裂や上側の雪の様子を見ながら通過して行く。

 
 634高点の南西、640mの場所から林道を離れ西に見える顕著な小谷に入ってゆく。時計を見ると既にスタートから2.5時間ほどが経過していた。こんな進度では、到底当初計画を遂行するのは困難と判断できた。スノーシューを選べばだいぶ違ったのかもしれないが、なにせ雪が悪い。スキーの選択も考えなくはなかったが、ここぞのリッジやクラックの場所で邪魔になる。くねる小谷の中を進んでゆくと水の音がしている場所もあり、その右俣を見つつ左俣側へと入ってゆく。左に明星山が見上げられるが、岩壁ではないものの登れるような勾配には見えなかった。

 
 あまり休憩したいと思うことは無くなっている最近ではあるは、この日は休憩を入れたくなり、960高点南側の940m峰南の鞍部で大休止とした。もうこの時は以西に行こうなどとの思いは無くなり、ここから明星山に登るのでさえ結構に時間がかかり大変だろうと思えていた。持ち上げた文旦の固い皮をむしり取り、爽やかな果肉を貪り食べる。いつかこの場所で文旦が生えたら私のせいです(笑)。重いザックはデポしていこうかと思ったが、何があるか判らないのが雪山、全装備は肌身離さず持ってゆくことにした。上で何かが生じビヴァークすることだってある。単独行であり頼れるのは自分のみ。

 
 長い休憩のあと歩き出す。表層雪崩が起きそうな雰囲気のある斜面を、確信犯的に九十九を切りながら登ってゆく。雪崩だした場合の泳ぐ覚悟を持ちつつ、既に腐り始めた雪を踏み込んでゆく。そして西尾根の主稜に上がったところでワカンをアイゼンにスイッチし、ストックをピッケルに持ち替える。最初の岩峰までも時間がかかる。かかる理由としては雪が緩いのと、そもそもの露岩が多いので、その周辺で雪穴が出来ている。低木の上にここ数日の雪が乗っている事。これらのことで踏み出す足はトランプの神経衰弱か黒ひげ危機一髪をやっているかのようで、軽く雪面に置いた後、二段構えでぐっと踏み込む歩行となる。一段目の時点で抜け落ちる場面もあった。踏み抜いた中には、そこに鎖が見えている場所があり、ここは鎖場なんだと思った時もあった。

 
 最初の岩峰から先は少し平坦になるが、新雪が乗り北も南も緩く、雪尾根と言うか雪庇の頂部にクラックの入っている場所も見られ何とも進路が見出しづらい状況であった。ここもまた慎重に二段構えの歩行仕様で進んでゆく。そして三峰目的な場所まで上がると、やっとその先に明星山の山頂部が姿を現した。手前に一部リッジ状の場所があり、当然ここも崩れやすそうな緩さであり、微妙な力加減で進んでゆく。

 
 明星山山頂。足跡をつけたくないので放物線を描くようにピッケルを放り投げ、石突きから見事に着雪させ山頂の絵にする。鞍部の場所からして1.5時間もかかってしまった。これが実力でもあり、気象とエリアと地形の読みが甘く、その状況下で実行した結果でもある。この時季の明星山としてはもっと軽荷で挑まねばならなかったろう。360度の展望があり、春霞であるが各名峰があちこちに見えていた。腰を下ろし白馬側を向いていたら、突然背中側から2発の破裂音がした。銃のような響きではなくダイナマイトのような響き。黒姫山のデンカの敷地からで間違いないだろう。土曜日でも作業がされていることが耳から判る。

 
 じりじりと陽射しが暑く、顔が火照ってきて焼かれているのを感じる。東側には雪庇が出来ていて怖いのだが、それでも登山口側は見下ろしたい。岡地区側から見上げた場所なので見下ろしたいわけで・・・。恐る恐る足を進め東側を見下ろす。視界の中に南北に見える尾根にある雪庇が見え、チラ見した程度で後ずさりする。少しは別ルートで降りたいとは思ったが、ただでさえ踏み抜きが多い場所であり、抜けそうな場所が判っている西尾根の方が間違いない。往路を戻ってゆく。

 
 リッジをそっと戻り、その先の緩斜面はトレースに足を乗せ戻るのだが、踏み抜く場所が発生しヒラメ筋に負担がかかる。急峻の場所はピッケルを刺しながらバックステップで下る。朽ちた木が掴むと折れる場所もありドキッとさせられる場面もあった。急峻が終われば命を取られる心配がなくなり展望を楽しみながら降りて行く。予定していた西側の山々を繋ぐ尾根筋が良く見える。大きな雪庇の場所も見え、ここを体験しているので歩きにくそうな場所にも見えていた。今日はと限定しておいた方がいいか・・・。

 
 鞍部の場所まで戻り、休憩を入れつつアイゼンからワカンに換える。小谷を戻ってゆくのだが、恐ろしく潜り、ここから林道に出るまでだけでも酷く疲れた。完全に腐れ雪でワカンでなくスノーシューが適当な状況だった。餅は餅屋で道具は道具と言いたくなる。汎用性を持たせたワカンの選択であったが、この場所では完全に外していた。まあ複数人で行動していれば、それはそれで状況が違ったのだろうが、単独では装備がものを言うときがある。

 
 林道にやっと出たところでビールを背負っていることを思い出し、躊躇せずプルタブを起こす。疲労したぶん美味しさが増していた。ここからの林道歩きは試練のツボ足が続いた。そっと歩く時に抜き足差し足と言うが、この時も意味は違うものの言葉通りの歩行状態であった。アルコールを飲んで歩くと心臓の鼓動が不整脈的に乱れる。山で飲まなくなったのはこの為なのだが、この時も顕著にそれが現れていた。飲んでからすぐにガツガツ歩くからいけないのかもしれないが・・・。

 
 往路411高点より南に林道を伝った場所は、端折るように地形図の破線寄りに降りて行く。その途中、幅2mほどで足元から表層雪崩が発生した。幅が狭かったからよかったが、広く雪崩れたら危なかった。緩斜面であり雪崩れないだろうと思った場所で雪崩れた事実。予期せぬ自然現象を体感した。予期せぬと言うより、私の歩行で起こした人工的なものだったのですが、小さいながら相応の厚さで流れ落ちてゆく様子にゾクッとした。

 
 スギの樹林帯を降り、往路のトレースに乗る。往路ではこのスギの植生のある辺りの林道歩きがツボ足で辛かったが、復路はかえってこちらの方が安定している雪質で歩き易く感じるのであった。配水施設のコンクリート構造が見えたら、その先で民家が見えてくる。不甲斐ないが幕営予定が日帰りになってしまった。

 
 今回を踏まえ、体感したことを考慮し作戦を練り直さねばならない。下見により雪庇の様子も良く見えた。装備も再考し次は結果が出せるようしっかりと計画したい。








                            戻る