イヨ山   979.1m        ヌカザス山   1175m        入小沢ノ峰   1302m  
 
 神楽入ノ峰   1447m   
小焼山   1322m    向山   1100m                                                                                                                                                                                                               
  
                                      

   2017.2.25(土)


  晴れ    単独     峰谷橋Pより時計回りで周回   行動時間:7H34M


@峰谷橋P5:48→(5M)→A麦山浮橋北5:53→(17M)→Bヌカザス尾根登山口6:10→(51M)→Cイヨ山7:01→(45M)→Dヌカザス山7:46→(28M)→E入小沢ノ峰8:14→(20M)→F巻き道入口8:34→(43M)→G巻き道出口9:17→(28M)→H神楽入ノ峰9:45〜54→(30M)→I小焼山10:24→(36M)→J向山(山名事典)11:00→(8M)→K向山三角点(櫓)11:08〜16→(38M)→L向山登山口11:54→(10M)→M国道139に出る12:04→(78M)→N峰谷橋Pに戻る13:22


   
@峰谷橋からスタート A麦山の浮橋(色調補正) A浮橋を渡ってゆく。凍っている場所も多かった。 周遊道路には雪の場所も
       
Bヌカザス尾根入口 左右からの野草の多い場所も・・・。 御前山側からの来光 Cイヨ山
     
Cイヨ山の行政標識 Cイヨ山三等点 ヌカザス山の北側は急峻 Dヌカザス山
       
D漢字表記はこの通り。 ムロクボ尾根を見下ろす。最初は急。 オツネの泣坂 E入小沢ノ峰。少し下に標識がある。
       
E入小沢ノ峰 作業道下降点 F山腹への巻き道へと入ってゆく。 南に進む最初は容易だが・・・。
     
最奥の谷の場所から先がガチガチだった。(最奥の谷部を振り返り撮影) 凍った危険地帯の連続だった。少し遅い時間の通過の方がいいかも。 G山腹の道と尾根道の合流点。ここから三頭山側は道形は薄い。 H神楽入ノ峰
     
H絶縁テープ H古い標識 山腹の道分岐帰り 小焼山の東側から道形を逸れて登る。
     
I小焼山 I小焼山の絶縁 向山への下降点分岐 熊に齧られた標識
     
白沢地区への下降点 J山名事典が示す向山1100m地点 K向山三角点ポイント K三角点の前に達筆標識
       
K三等点 K櫓は半壊状態。それでも攀じってみる。かなり危ない。 K櫓の上は穴だらけ。展望は今一つ。 下山途中のトイレ舎。東屋は崩壊。
       
L登山口に降り立つ。 車道に出る。トイレ舎は閉ざされていた。 M国道139号に出る 三頭橋を横目に
     
麦山の浮橋帰り 峰谷橋帰り N峰谷橋駐車場。車イス用を除くと5台分しかない。  





南魚沼の寂峰で雪中行軍を予定していたが、日中も雪が降り止まない予報に行き先を夜になって変更する。天気を気にするようになり弱さが出てきたが、関東では晴れの天気が多い中、雪空に敢えて突っ込むのもどうかと思ったわけで・・・。

 

前夜20時になり奥多摩のヌカザス尾根に決定する。三頭山は既に踏んでいるので、その北の分岐点から西に振るようにすると、全6山が数えられる。最後に、国道139号の車道歩きが気になるところだが、バスを使うつもりは毛頭ない。全17kmほどの一筆書きが用意できた。

 

1:30家を出る。星の綺麗な空を見つつ秩父から名栗の山里を抜けて青梅に出る。時季的に凍った場所があるかと心配したが、今年は降雪が少ないためか、乾いた路面のまま東京都に入る。国道411に乗ると、途端に改造マフラーを取り付けた走り屋が行き交う。週末だけなのか、沿線住民はたまってものではないだろう。

 

檜村橋の所で、下は黒いオーバーズボンを履いて、上着は茶系(カーキ色)のジャンパー、頭に黒いオスロ帽を被った人が前方を走って横切り、橋の右岸側の場所で身を隠し私の通過に対し腰を屈め顔を隠すようにしていた。走る姿や体躯からして女性に見えた。時計を見ると3時49分。なにか犯罪の臭いがしたのだが・・・。走り逃げ隠れる・・・何だったのか。

 

峰谷橋のたもとの駐車場を利用するのは初めてであった。その場所に入ったはいいが、健常者の駐車スペースは5台分しかない。車いすマークの場所を含め6台分、紅葉時期などを想像するのだが普通に狭い印象を受けた。日中に邪魔にならぬよう考慮し、端の方に突っ込みエンジンを切る。すぐに仮眠に入るが、走り屋の車両が通過するたびに起こされる感じであまり休まる場所ではなかった。まあ国道沿いであり、ここに停めた私の負けだとは判っていた。

 

あまりにも煩いので、夜明けより少し前に動き出すことにした。いつものように冷え切ったコーヒーで、今日は揚げあんパンを流し込む。外気温は3℃。このあと浮橋を渡るので風が気になっていたが、影響するほどには吹いていなかった。6本爪をお守りのようにザックに放り入れる。擦り減ったソールに、“そろそろ替えないと”とは思うのだが、もう何週も同じことを出掛けに思っている。

 

5:48峰谷橋を渡って行く。柵のジョイント部がデザインを兼ねた椅子になっているように見えるのは私だけだろうか。橋の先で馬頭トンネルを潜るのだが、路肩は狭く生憎なことに車をやってきてかなり気を使う。トンネルを抜け出すと、夜が明けきれぬ湖面に白蛇のように浮橋がくねっていた。コンクリートの階段を降りて行き板張りの橋の上に足を乗せると、ふわふわとしたのとは違う違和感が感じられる。少しタイムラグがあり、それは「滑る」事と判った。揺れる浮橋上で滑ると、地上で滑るのとは違った感じを抱くのだった。暗くて凍っているのが見えなかったのも関係するか、視覚情報がないと不思議な感覚になるのかもしれない。橋は凍りやすく事故が多い。車での運転時も橋は注意せねばならない所であり、妙にここで納得した。そろりそろりと足を出して行く。ここでは欄干があってよかった・・・。

 

対岸に渡り切り、エアリアの地図通りに道が在るのかと思ったが、現在は塞がれだいぶ東に進んでから西側に戻るルートとなっていた。周遊道路に上がってから昔の登路の場所を見出そうとしたが、注視していたものの判らないまま通過してしまう。周遊道路は9時開門。現在はまだ6時だが、塩化カルシウムの散布車がガリガリと大きな音を立てて通り過ぎて行った。確かに路面に多くの雪が乗った場所もある。これだとまだバイクは走れないだろう。バイクの爆音を聞きながら登った三頭山登行の日を思い出したりした。ここに入るなら冬季が静か。

 

周遊道路を10分ほど歩くと、ひっそりとあるヌカザス尾根の登山口を見つける。前後に駐車余地もなく気にしていないと通り過ぎてしまうような場所であった。ここからの登り始めは、いやに野草が進路を遮る。こんなルートなのかと、先に続く道を案じたが2分ほど我慢すると間違いない一級路に変わった。薄く残る雪の上には近日歩いたようなトレースはなく、新雪を踏みして行く感じが心地いい。一級路とは言ったが、登山口から40分ほど登ると、登山道の左右からの植生がうるさい場所がある。複数人での通過は前後間隔をあけて通過したい場所であった。

 

6:50御前山から来光が上がる。木々からこぼれる雪の欠片が金糸のように映し出され、見えなかったものが見えたようで思わず立ち止まってしまう。多くても少なくても美しくなく、そのハラハラと舞う様子が絶妙であった。外気温はマイナス3℃ほど。美しさには寒さも関係しているようであった。展望のない尾根歩きだが、こんな季節柄の楽しさがあった。

 

7時になり谷間に時報代わりの音楽が鳴り響く。登山口から50分ほどで、1座目であるイヨ山に到着する。行政の標識に大雑把な文字運びの標識が留められている。これには綺麗なレタリングとの対比がおかしく苦笑いしてしまうのだった。頭を白くした三等点を拝んでから先に進んでゆく。イヨの文字に線路に侵入したあの方の顔を思い浮かべたりする。標識に、「松本」といたずら書きをされないことを祈りたい。

 

しばらく快適なままの一級路であったが、ヌカザス山の北斜面から様子が変わりだし、ここでは急登尾根が出迎えてくれた。キックするような雪の量でなく、その微妙さが急斜面を歩き辛くさせていた。滑りやすく力の入らない足に対し木々に掴まりながら這い上がってゆく。獣も嫌がる場所なのか、これまであった蹄の足跡はこの急登では見えなくなっていた。

 

ヌカザス山は「糠指山」と表記するのを到着して知ることとなった。尾根の肩のような場所で、今一つ登頂感が薄い感じがしたが、ここも目指していた二つ目の目標点だった。標識には老眼鏡かメガネが挟まれていた。西に少し進むとムロクボ尾根の下降点があり、その尾根を見下ろすと急な場所にザイルが流されていた。雪を踏みしめ快適に尾根を進むと今度はオツネの泣坂となる。その坂の入り口辺りは落ち葉にルートが埋もれてしまっている場所もあった。足場の悪い中をタイガーロープに伝って登ってゆく。ここにロープが在るなら、ヌカザス山の北側も欲しかったような・・・。

 

入小沢ノ峰は、最高所より少し下がった位置に「入小沢ノ峰 東」と読める行政の標柱が立っている。東があるなら西峰があるのかと探すのだが、よくよく考えれば「東京都」の「東」だったわけで、現地を歩きながら答えが判るのに2分ほど要した(笑)。地図にない作業道の下降点を見て、そこから15分ほど先で、山腹へと道が分岐している。ここから三頭山まで1.1km。この時季なら尾根通しの方が安全だとは判っているが、机上でも山腹を歩きたかったし、ここから右に見える白い一筋の道に既に気持ちを誘われていた。山腹の道の方がより自然の中に居るようで好きなのであった。

 

尾根歩きに比べ2.5倍か3倍ほどになった雪を踏みしめ進んでゆく。ほぼ水平道であまり上下動はない。ほとんどないと言ってもいいほど。大きな谷を挟んで西側に白く一本で続いているのが見える。滑っても死なないが、だいぶ痛いだろう斜面が眼下に見えている。当然慎重に足を進めて行く。陽が入らないのでかなり寒く感じる場所であった。その寒さの為か凍っている雪面がある。背中のアイゼンが「出番じゃないの」と言っているのが聞こえてくるが、「まだ我慢」と突っぱねそのまま進む。

 

三頭山から北西に降りてくる主谷の場所は、太ももくらいまで落ち葉と雪に埋もれながら通過するような場所であった。ここまでは何となく歩けたが、このルートの核心部はここからであった。薄い雪の下で身を潜めている凍った場所の連続となり、危険度が増していた。ストックではなくピッケルを持ちたいような場所も出てくる。「もう出番でしょ」と背中で言うが、ここでも「まだまだ」とだましだまし進んでゆく。ここでも滑れば30mくらいは落ちてしまうだろう場所であった。

 

陽が高くなったころに歩けばだいぶ違う場所なのだろうが、日の入らない朝のこの場所はドキドキの通過点となり真剣にさせてくれた。斜面途中から神楽入ノ峰に直登してしまおうかとも考えたが、このルートの終点と言うか尾根ルートとの合流点まで歩いて完結したいとも思い端折らずに進んでゆく。この道は石積みをして造られているのが見える。整然と並ぶ大量の石に、出来立て当時はかなり立派だったろう事が見て取れた。

 

トラバースが終わり尾根道との合流点には三頭山と鶴峠を示す道標が立っていた。ここからの三頭山側は道が在るにしては薄い感じがし、植生が尾根上に濃く遮っているような場所が多い。当然雪面に人間のトレースはなくマイナールートな場所を伝っている感じを強く抱く。登りながら、三頭山側へ登ってここを降りてきた方がスマートだったとも少し思ってしまった。でもトラバースルートほどこの尾根が真剣にさせてくれたかと思うと、そこまでではないようであった。

 

神楽入ノ峰到着。赤い絶縁テープに山名が書かれているのと、もう一つ古い標識がかかっていた。山頂の南側には鹿除けのロープが植林された木に一本一本施されていた。登山者の気配はないが、林業作業者の気配を感じる場所であった。ここで足を止め小休止、コロッケパンを齧る。いつもは下山路を探すことをするタイミングだが、今日はその必要がなく、その代わりに国道のトンネルの場所を確認したりした。自分がハンドルを握りトンネルに入った時を思い出す。晴れていた場合、入ってすぐは内部がよく見えない。そこに自分が歩いていたら・・・。

 

本日の最高点を後にする。トラバースルートの合流点を過ぎ、その先の小焼山の現在は、登山道は山腹を通過して尾根側への踏み跡は現地には見えなかった。唯一見えるのは水道局の境界標柱が尾根に続いている様子であった。登山道を離れるようにして尾根に登ってゆく。最初のピークには「山信」と書かれた絶縁テープが残る。これは北の三ノ木戸山あたりで最近目にした表記と同じである。一度下って登りあげる。

 

小焼山の上にも、神楽入ノ峰にあったのと同じ絶縁テープが巻かれ山名が記されていた。他に山名を示すものは無かった。地形的に北側に降りたくなるが、やや密生している西側へと降りて行く。するとすぐに巻道との合流点となり幅の広い一級の道が続く。その途中に向山を示す道標が立ち下降点となっていた。併記してある「オマキ平」表記にどこを指しているのか判らず地図で確認するも、結局判らず消化不良だった。

 

向山に向かって降りて行く。この尾根も快適尾根で危険個所はない。ただしあまり歩かれないためかクマは出没するようで、その落とし物や齧った標識などが見られる場所であった。白沢地区への下降点の場所には、小菅村の新旧の道標が立つが、悉く齧られ、向山側を示す文字は判読できなくなっていた。このあたりもルートが薄くどこに登山道があるのか見えてこない場所もある。

 

山名事典での向山は、ヒノキの植樹帯の中の山頂であった。この樹林帯の中が全くルートが見えてこない場所で、コンパスを出して方向を定めて進む場所となった。途中から道形が出てきたが、これまで在ったものがなくなると不安になるのは言うまでもない。進んでゆくと道標が現れ、その場所から先の高みを見上げると何か人工物があるのが見えた。近づくように登ってゆくと櫓であることが判った。

 

向山三角点峰。朽ちた櫓と、倒壊した案内板があった。そしてここには達筆標識が残っていた。最終座にして達筆の出迎えとは嬉しい限りであった。その前に三等点が眠る。異様にそそり立つ木組みの櫓に、このまま指を咥えて望んでいるだけでは満足できない。ただし倒壊するリスクもあり、登るのにも細心の注意が必要であった。最初の7段が抜け落ちており、ここが朽ちているってことは他の段も抜け落ちる可能性があると理解した方がいい。ステップの入っていたホゾに靴のエッジをひっかけクライムアップ。踏んだら抜け落ちそうな場所は、なるべく左右ギリギリの位置で踏板に力がかからないようにして足を置いてゆく。踊り場の板も朽ちてグラグラで、常に足の置き場を考えねばならなかった。普通に登ってはいけない展望櫓であった。

 

なんとか櫓の最上部に到達。最上部の床も当然穴だらけで自由に動き回ることはできない。最高所に登ったはいいが、それによる恩恵の展望は伴わない感じがした。東に三頭山、西に大マテイ山が見えるくらいで、新緑時季以降はほとんど見えないだろう植生になっていた。それより、最高所から見下ろす下側の景色がスリルがあった。アフリカのどこかの部族の度胸試しの櫓はこんな感じなのだろうと思うのだった。登りと同じほど時間をかけてゆっくりと下る。登れるけど登らない方がいい。妙義の筆頭岩ほどにスリルがある。

 

三角点の場所から北に進もうと試みたが、道形が見えないので一度道標の場所まで南に戻り、そこからの登山道を伝う。スギとヒノキの混合林の中をクネクネと九十九を切りながら降りて行く。途中にログ調の建物が見え、それはトイレだった。併せて在っただろう東屋は、今は屋根だけが地面に伏せていた。この先も九十九折が続く。樹木の名前がふられた場所も多く、学びながら歩ける場所であった。横移動が多くなかなか下に到着させてもらえない場所であった。登り易いように切った登山道のようであった。

 

向山の登山口に降り立つ。林道終点地には手洗い場のような設備が残っていた。降りて行き舗装車道に出るも、そこに建つトイレ舎は使用禁止になっていた。積雪した路面に、滑らぬよう注意しながら降りて行く。「余沢御番所跡」などと言う掲示物も見られる。往時はこの村落も要所だったと言う事になる。人気のない寒村の中を進み、チャーちゃんまんじゅうの店前で国道139号に出る。

 

国道の路側帯を貪るように東へ戻ってゆく。路側帯がある場所はいいとして中盤以降はない場所が多くなる。車が来ない時はどちら側でも選べるようにセンターラインの上を歩いて、接近する車の反対車線側に逃げたりもした。そしてやっと三頭橋が見え、深山橋を渡ったら、気になっていた川野トンネルの場所となる。ここは歩行してはいけないんじゃないかと思うほどに路肩がない。車道の横はすぐトンネルの壁となっている。幸いに往来がなかったので、ここでもセンターライン上を歩き足早に行動する。出口15mほど手前で車が向かってきたので、ここではヘッドライトに見えやすいように走行してくる車線側を歩いて気付いてもらった。どうにも疲れる奥多摩の車道歩きなのだった。

 

麦山橋を渡ると、前方右下に浮橋が見えてくる。そこから伝ったルートを自然と目で追ってみてしまう。展望がいい場所なのでそうしてしまうのだろう。そして最後の馬頭トンネル。ここは北側と南側の入り口部がカーブで高速で突っ込んでくる。日中なので出掛けの交通量とは違っており、ましてや前方も後方も見通しは悪く、入ってしまうと耳からの情報しか判断が出来なくなる。ほとんど一か八かで進入する。最初東寄りを歩いていたが、そこにやんちゃな轟音が聞こえてきた。後ろなのか前なのか、とっさに前と判断し西側へ逃げると、三菱のランサーが時速60キロくらいでタイヤを軋ませるようにして進入してきて、私を確認し急ブレーキを踏んでいた。危なかった。一つ間違えば車とトンネルの壁とに挟まれていた。トンネルを抜け出すと目に鮮やかな真っ赤な峰谷橋が最後に出迎えてくれる。駐車場に到着する。

 

振り返る。安全を優先なら、この時季は入小沢ノ峰から三頭山に登って西に下った方がいいし、時期に関係なく車道は歩かないでバスを利用した方がいいだろう。スリルを味わいたい場合は、今回のルート取りで最後までスリルを味わうことが出来る。










                            戻る