六万騎山   320.6m        長森山   538m        堂平山   630m  
 
 猿倉山   687.8m   
                                       
  
                                      

   2017.3.4(土)


  快晴    単独     地蔵尊駐車場から猿倉山まで縦走し下出浦に下り周回  行動時間:5H41M


@地蔵尊駐車場6:07→(30M)→A六万騎山6:37〜45→(98M)→B長森山8:23〜24→(33M)→C堂平山8:57〜59→(39M)→D猿倉山9:38〜48→(54M)→E貯水池西10:42→(7M)→F下出浦地区10:49→(59M)→G地蔵尊に戻る11:48


   
@地蔵尊下には融雪設備が施されたスペースがあり4台ほど停められる。 早朝でありながら気温が高く、踏み抜きながら登ってゆく。 鐘の掛かるピーク。ここで3尺ほどの積雪量。 A六万騎山到着
       
A六万騎山から北側俯瞰。 Aこちらにも鐘があるよう。{平和の」と読めた。 A雨上がり、平地にガスが垂れ込める。 A関越自動車道。
     
六万騎山東側の斜面を振り返る。以東はいきなり急峻の下降から始まる。 アップダウンの連続。スノーシューではなく和かんじきが適当な場所。 最初のリッジ。雪が締まっていないので、崩落の怖さが常につきまとう。 300m峰通過。
       
途中から堂平山側 カモシカが先行している。 440m峰通過。かなり顕著な高み。 440m峰から六万騎山(中央左)側を振り返る。
       
リッジ2か所目。コルと言うかキレットと言うか、鞍部の場所の雪が脆く通過に難儀する。無積雪期のタイガーロープも見えていた。 長森山西側のリッジ。雪庇が弱く足の置き場に困った場所。 長森山直前 登ってきた場所を振り返る。けっこう強い勾配。
     
B長森山から八海山側。中央左が猿倉山。 B長森山の南尾根には数日前に通過したようなトレースが残っていた。 551高点付近から見る堂平山。 C堂平山は東西に長いピーク。
     
C堂平山から振り返る C堂平山から猿倉山(中央)。その向こうに八海山。 猿倉山西側の鞍部から最後の登り。 猿倉山への最後の急登。
   
登ってきた西側を振り返る。 D猿倉山から八海山 D南東 D南
     
D西 D北 D堂平山はけっこう下に見える。 D八海山の鋸歯が見える。
       
Dヤキソバパンと上越の山々。 D猿倉山の北東斜面はスキーに最適。 D東側斜面もいいが、この下流で荒れ谷になっていた。 D猿倉山の南尾根を降りてゆく。
       
途中から振り返る。緩い雪崩やすそうな雪で、リッジ状の場所が続き注意が必要。 570mの尾根の方の場所にカモシカのオロクが横たわっていた。この下側が急峻で、雪の状態によってはザイルが欲しい。 570mの肩の下の急斜面に見えたタイガーロープ。この尾根にも道が在るよう。 560m付近。傾斜の強い狭い尾根が続く。
       
540m付近。勾配が緩くなるが、この辺りから踏み抜きが多くなり5回ほどコケる。 290m付近。樹林の向こう側に貯水池。 樹林を降りてゆくと用水路を飛び越える場所がある。1.5mほどを飛ぶ。 貯水池の落ち口を跨ぐ。
       
E貯水池西側の車道終点地。地域の林業作業者が伐木に入山していた。 途中の社の場所から歩いてきた稜線を振り返る。降りてきたのは中央右の黒く「ノ」の字に見える尾根筋。 F下出浦(シモイズナ」地区の除雪終了端でカンジキを外す。 G地蔵尊に戻る
       
Gこの日は全て上州ナンバーが並び、地域の人から「何かあったの」と聞かれた(笑)。      





前週の山旅の予定地だった六万騎山からの稜線に、一週ズレて入山する。天気も申し分なく、前日も少し降ったようであり降雪後の景色を楽しみに出向く。


 1:30家を出る。上州は綺麗な星空が出ていた。しかし関越トンネルで谷川岳の山塊を抜けると、越後の空はガスが垂れこめたようなすっきりとしない空模様となる。風が強いようで吹き流しは真横になっているのが見える。六日町インターを降りて地蔵尊のある麓地区を目指す。今回のコースは猿倉山まで縦走した周回計画としたので、下山後により近い真浄寺側のコースを使えればと思っていたが、駐車スペースの関係から地蔵尊の場所から入る事となった。


 地蔵尊の駐車場はしっかりと融雪設備がされており、こんな場所に置いておくのは忍びない感じを抱く場所であった。この配慮のしようは、北側には集会場のような建物があり、その駐車場も兼ねているのだと思えた。NHKの深夜便を聞きながら夜明けを待つ。外気温は6℃を示していた。今日は快晴であり朝からこの気温では腐れ雪に苦闘するか・・・と予想できた。本当はもう少し標高を上げたところで遊びたいのだが、この場所の私にとっての旬が今であり、楽しみにしていた場所でもあった。


 6時の音楽が流れ行動開始。地形図からは等高線の詰まった場所や痩せた地形が見られる。12本爪を入れ、ピッケルとカンジキを結わえた。何か忘れていると思ったら帽子を忘れてしまい、しょうがないのでタオルで代用した。冬季においてこの有無の影響は大きく、一度忘れてしまい頭が痛くてしょうがなかった事があった。痛い思いをしてもなお忘れてしまうようになってきていることを自覚する。


 6:07登山開始。踏み跡が残るのでそれを辿れば快適に登れるかと見えたが、何度も踏み抜きが繰り返される。前日の暖かさと本日の暖かさを体感させられるのだった。何処に登山道があるのか判らない中を、一週前なのか薄く残るトレースが導いていた。春先にはカタクリで綺麗な場所とは知っているが、その全てを白く雪が覆いつくしていた。やや勾配が強いので一気に高度を稼ぐ感じでもあり、振り返ると早々に麓地区全体が見えるほどになっていた。


 鐘の設置された高みに寄ってから、その先の六万騎山に到着する。ここまで30分。もう少し早くに着くかと思ったが、踏み抜いた回数分がロスタイムとなっている。ここまでを踏まえ地形図を見て距離換算して猿倉山の到達時間を想定する。幸いしたのは風がない事。この有無は大きいし、吹いていたらタオルだけでは引き返す選択になったかもしれない。関越道の音だろう走行音がよく聞こえる場所であった。我慢して上がってきたが我慢の限界で、ここでカンジキを装着する。


 六万騎山の東側はいきなりの急下降となり、木々に掴まり体を支えながらズリ降りて行く。この先はほとんど痩せ尾根が続き、そこに緩い雪が乗っていて肝心なところでカンジキを履いていても踏み抜く場面があった。左右が切れ落ちている場所もあり、ゆっくりと足場を確かめるようにして踏み固めつつ進んでゆく。夏道が在るようだが、それを頼りに楽に伝えるような場所は無かった。


 最初のリッジの場所を経て300mの高みに上がり、こんなところがこの先どれほど続くのかと不安になってくる。もう少し締まっていてさえくれれば状況が違うのだが、この日の雪質は終始緊張感を持たせてくれていた。300m峰の先でやや長いリッジ尾根が続き、その先で何か動くものが見えた。先行している足跡の主であるカモシカであった。進む様子を見ると、けっして上手に歩いておらず、彼もへっぴり腰でみっともなく歩いている。この雪には土地の主も苦労しているようであった。私の遅々とした歩行も然りとなる。


 440m峰に到達。長森山が近くに見えるが、その間の尾根はこれまで通り痩せた感じが続く。見えているところが痩せているので、見えていない場所がさらに痩せているのではないかと思えてしまう。449高点の南東側に進むと、本当に緩い場所が出てきて雪が抜け落ちている場所も出てくる。ブリッジのようになった雪面に足を乗せ抜け平均台のようにして進む。その先が急登なり、落ちた雪の下からタイガーロープも見えていた。ただしこの時期にそれを掴んでも登りに役に立たず、尾根の南側の植生を使いつつ這い上がった。


 少し雪庇が南側に発達した場所も出てくるが、その全てが緩い。ツボ足を強いられ通過して行くのだが、私のトレースを後から使う人も大変だろうと思えた。長森山への最後も10mほどの距離で急峻箇所があり這い上がる感じでキックステップで上がってゆく。六万騎山と長森山間はここまで大変だったのか・・・。夏道のハイキング風味の情報しかない中で、完全に舐めていた。たしかに4月の記録があっても3月のは見当たらない・・・。


 長森山到着。見下ろせる南尾根には単独者が下山して行ったトレースが見える。そして堂平山側からこちらに向かってきている雪の乗ったトレースが在った。地形からして霊泉小屋側から尾根を伝って来たと思うのが順当であるが、力強い単独行者の跡であった。下り勾配を歩いてきているので、これから登ってゆく私には歩幅が広く伝うには広すぎる場所もあったが、踏まれ締まった場所を選べるのはありがたい。東進してゆく。


 551高点付近は痩せ尾根続きの中での広い尾根の場所で、展望も良く心地いい場所であった。目の前に堂平山が待っているが、そこまでの間にゴツゴツとした雪庇の育った尾根筋が見える。高度が上がり踏み抜きこそしなくなったが、こうなるとカンジキの足にして勾配が気になってくる。さりとてこの天気、腐ってくるのも時間の問題であり、アイゼン+カンジキでの行動も考える。少し急な場所もトレースの主は果敢にズリ降りてきている。よく歩いている猛者と判る。


 堂平山は東西に長細い、ここも心地いいピークであった。振り返ると既にはるか下方に長森山が見える。猿倉山も近いはずだが、そのバックヤードに見える八海山のせいなのか、それによる錯覚なのか遠くに位置するように見える。このあたりになるとトレースの主のその痕は探さないと判らないほどになっていた。この堂平山からの南尾根を見下ろし、谷を挟んで東側に見える猿倉山の南尾根もしっかりと見ておく。場合によってはこの往路を長倉山まで戻って夏道のある尾根を下る選択もあったので、臨機応変に行動するための下見はし過ぎることは無い。


 堂平山からの東尾根は幾分か幅があり安心して歩くことが出来た。ただし雪庇が、既に春の雪解けで自重で割れだしてきており、雪庇の張り出した反対側の雪面で隠されたクラックが入っている場所が出てきていた。ここも慎重に探るように足を出して行く。そして620m付近からの猿倉山の急傾斜帯に入ってゆく。最初はトラバースして北側に振ってから南に登るコース取りの方が安全に見えた。獣も急登を避けているのだろう北側に進んでいる。ただし雪崩そうな斜面で落ちたら這い上がるのに大変そうなので、それよりは直登を選んだ。


 キックステップをしながら、ズリ落ちないよう踏ん張りながら登ってゆく。目の前に頂上があると判っているので我慢の登りだが、これが途中の通過点であって往復せねばならなかったら、登らないかもしれない。登りながら堂平山と長森山の南尾根を下るのは無くなった。ここを降りるのには雪が緩すぎる。地形図を見て勾配は把握していたので覚悟はあったが、ここまで緩いとは思わなかったし、それは来てみないと判らない事でもあった。高い場所もそうではあるが、低い標高の場合は前日の天気がより関係することを体感して学ぶ。


 猿倉山到着。頑張った甲斐のある好展望ピークであった。東側に雪庇が張り出しているので西から登頂した場合、喜び勇んで東に行くと危ない場所であった。その東側の谷はスキーで滑りたくなるような開けた場所で、下山に使おうかとも少し思ってしまった。白湯とヤキソバパンで少し遅い朝食とした。ここから八海山へと続く尾根は快適そうな場所の連続で、伝って行きたくなるような優しい表情の場所であった。たぶん、おそらく、間違いなくこちらからの八海山への登山道が存在したと思えた。今日は降雪後で陰影もはっきりしており、各方面の山々がしっかりハッキリと見えていた。


 南尾根を降りて行く。まだ10時前ではあるが腐りだしてきている状況で、グリセードできる場所、グリップさせねばならない場所を使い分けながら高度を下げて行く。進路右側(西側)は切れ落ちた崖地形。スリップした場合でも左(東)側に飛び込める意識で降りて行く。当然のように気持ちいい東側の谷を見ながら行くのだが、600m付近から様子は一変し雪の繋がりのない黒い荒れた谷になった。上に居る時はスキーで登ってくれば楽しそうと思ったが、この危険個所を見てしまうとスキー登るのは無理だと思えた。その場所がよく見下ろせる肩の場所には、カモシカがオロクになっていた。そして私もここでどう行動したらいいかと悩むことになる。どちらに行っても急峻地形で、これだと少し登り返して、東の592高点側の尾根に乗り換えないといけないかとも思えた。オロクを右に置いて尾根を見下ろすと、急峻だが下に繋がっている。とりあえずここを10mほどズリ降りられれば先に繋がる。そう思い滑落するように体を落とす。3mほど下に杉の倒木があり、それに掴まると、雪解けした空洞にタイガーロープが見えた。この尾根にもルートがある事を示していた。


 560m以下でもやや痩せ尾根が続くが、540m付近からは幾分広がりだす。と同時に踏み抜きの連続となる。カンジキごと飲み込むので抜き出すのに一苦労だった。嵌った時はほとんど前傾姿勢の中であり、そのままつんのめり転び、そこから斜面上側に体を持ち上げて抜き出さねばならなく、そんなことを10回以上繰り返すこととなった。もう少し天気の悪い日の方が良かったか・・・と思うのだが、麓は近くもうしばしの我慢。タイガーロープの後は、それらしい人工物もマーキングも見られなかったが、310mの肩の所に古いビニール紐が結わえてあった。尾根の先に貯水池の四角い土地が見えている。そこを目指すようにして進んでゆく。


 300mを切ると西側の谷からチェーンソーの音が聞こえてくるのに気づいた。作業者が入山しているようだ。290mくらいからの南西斜面には九十九折の道形が確認できた。そして針葉樹林帯に入ると、その先で用水路が東西に横切っていた。スノーブリッジもあるが、怖くて使えない。緩い雪を想定して、踏ん張らずして大跳躍するように助走を付けて飛び越える。その先はもう貯水池で、西側にズレて行くと大量の水が池に落ち込む落ち口があり、ここも飛び越えて通過する。そして池の西側の車道終点地に行くと、1台のトラクターが置かれ、そこから山中へと一人分のトレースが入って行っていた。キャタピラーで踏まれた道を快適に南に進んでゆく。途中に虚空蔵尊のような社も在った。


 下出浦の集落に入る。除雪最終端でカンジキを外し舗装路を伝って戻ってゆく。各家は水を使った除雪の仕組みがあり、その為の水を貯めているのが先ほどの貯水池なのかと見えてくる。村落を抜け下出浦橋を渡って下薬師堂地区の主要道に出る。ここからはずっと歩道があるので雪があっても心配はない。雪が多いからこそ安全の為にしっかり歩道があるのであろう。城内中学校を右に見て上原交差点を右折して北進に変わる。八海醸造の前を通るときは、漏れ出る香りが鼻腔をくすぐってくる。お酒に弱い人は散歩していても酔ってしまうだろう。ここでの私は深呼吸を繰り返す(笑)。


 地蔵尊の駐車場に到着すると、私を含め停まっている車は全て上州ナンバーであった。着替えをしていると集会場を出てきたおばちゃんがやってきて、「今日はここで何かあったの、群馬の車ばかりだけど」「みんな一緒に登ったの、今の時期だと道判らないでしょ」と言う。確かに六万騎山まではトレースが無かったら道の在り処は判らなかった。ジモティーらしくよく知り得ている人だと判った。少し会話を弾ませると、「カタクリが咲くころまた来て、綺麗だから」と誘ってくれた。地元の綺麗な場所を胸を張って紹介できるなんて羨ましい。自分においてはそんな場所はないような気がするから・・・。


 振り返る。里山であり平地の気温の影響をそのまま受ける場所であろう。積雪期に入山する場合は、前日の気温にも気を配った方がいいかもしれない。アイゼンを付けて歩けるくらいがちょうどいいように思うが、締まるのを待っていると雪解が進み雪の繋がりが無くなるだろうし、時期を早くするともっと雪が緩いだろうし、適期としてはごく短く、それもピンポイント的な気象条件と降雪条件の絡みがあるよう。単独の危険も無いわけではないが、複数人でリッジを通過したら、それが為のリスクが大きくなるだろう。何か所か急峻地形がある。今回のコースの逆行の場合は20mほどザイルを持つと安全且つ楽に通過できるだろう。無積雪期には優しい場所のようだが、積雪によりけっこう楽しい場所になっていた。雪解けを待ち、猿倉の南尾根を使っての藪漕ぎでも面白だろう。









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