山隠居の腰掛       2024.1m           水ノ塔山        2202m                                                                                                                                                                                         
  2023.3.4(土)


  晴れ     単独      アサマ2000スキー場第5駐車場より北進      行動時間:3H2M


@第5駐車場6:53→(17M)→A林道終点7:10→(67M)→B山隠居の腰掛8:17〜21→(58M)→C水ノ塔山9:19〜20→(30M)→Dスキー場ロータリー9:50→(5M)→D第5駐車場9:55 
                                                                                                                                           


 
@アサマ2000第5駐車場から見る水ノ塔山(進む:北西)側。 @駐車場からゲレンデ側。 橋の分岐。冬季は雪捨て場の壁がある。 締っておらず、すぐにスノーシュー装着。
       
A林道終点 林道終点から西に登って行く。北には深い谷。1900m付近。 1965m付近の明るい場所。この辺りから北進する。 2025m付近。開けた場所。
   
歩き辛いのでトレースを追って進んでくる彼。 2035m付近。シラビソの幼木とシャクナゲの薮が待っていた。高度を変えるといくぶん違うが、それでも密生帯。 一度植生が弱まったが、北進をすると再び密生帯へ。 2044m付近。主尾根に乗り上げる。
     
2035m付近の明るい場所。 B前橋ハイキングクラブの唯一の標識 B北側。展望は全閉で陽射しさえも入らない場所。 B南側
       
Bヤキソバパンと 2080mに見られたロープ。 2090m付近で周囲展望が得られる。 2090mから西。
       
2090mから北。中央が山隠居の腰掛。 2136mに見られる杭(標識)。 2136mから北 2136mから南(水ノ塔山)側。
       
2180mでスノーシューのトレースに出会う。 真新しい道標 C水ノ塔山 C南東
       
C南西 C八ヶ岳の向こうに北岳も見えている。 2135付近。スノーシューのトレースに乗って降りてゆく。 2020m付近。尾根を離れ東進しているトレース。
       
Dスノーシュートレースは、ロータリーの更衣室前からスタートしていた。 D赤丸が現在地。  E第5駐車場に戻る。  E雪上車で高峰温泉よりの泊り客が到着し、各マイカーへと散って行った。 


 「山隠居の腰掛」。珍名すぎて見過ごしていたと言うか、山の名前に見えず目に留まらなかったと言うのが本当のところ。エアリアマップ軽井沢・浅間図の、水ノ塔山北側にその場所はある。WEB上では、前橋ハイキングクラブが唯一登って報告している。そこでは水ノ塔山の登山道を経由し、下る格好で攻めている記録が読める。これに対し、登る形で登頂できないかと北斜面を探る。地形図からは見えてこないが、嬬恋村観光商工課発行の登山道マップを見ると、不思議な筋が北側山腹に描かれている。そして嬬恋村のこの地図にも、「山隠居の腰掛」が三角点ポイントでしっかり記載されていた。

 嬬恋村に電話で確認したところ、地図に描かれている「筋」は、昔の山道だと回答があった。”これは使える”と思い、小棧敷山側からのアプローチを考えた。昔の山道とのことなので、状況はどうかとすぐに衛星画像で確認する。確かに筋はあるが、全体の7割くらいは見えてこなかった。とならば残雪もある冬季に、山道も使い雪も使って登ろうと、実行に移したのが今年の1月21日であった。入れるかと思った小棧敷山への林道は冬季時通行止めで、それならと北に回り込んだが、牧場の所で冬季通行止めになっていた。冬季、北側で雪遊びするには、距離の覚悟を含め本気を出さねばならないことが判り、諦め村上山に転進したのだった。

 
 4月か5月にもう一度北側から狙おうと思っていつつ、地形図を見ながら他に攻略法は無いかと探っていた。諦めが悪く寝かしておくことができない性格であった。これをせっかちと言う。東側には緩斜面が広がる。南東1.2km位置まで林道が入っている。使える林道かどうか、衛星画像を確認する。広い林道であり、おかしな言い方だが使われていなくても使えそうに見えた。登山するにも衛星画像やストリートビューを多用するようになってきている。使えるものは何でも使って省力しリスクヘッジをする。各自治体に電話確認し情報を得ていた時代とだいぶ変わった。当日の天気は快晴。未達になっても、下見だけになっても好天の下で迷犬が雪遊びできればいいと割り切った。

 
 5時に家を出る。浅間サンライン経由でチェリーパークラインに入って行く。車坂峠でマイナス6。嬬恋村側路面はアイスバーンでそろりそろりと降りて行く。アサマ2000の第1駐車場を左に見送り、その先で第4第5への分岐があり入って行く。これが目的の林道。途中左に在る日大ワンゲル部の山小屋には、その小屋前に明かりが灯っていた。電気代高騰の最中、無駄なんじゃないかと思うが、ガスに巻かれた中で、この黄色い灯りが目に入ったら安心するだろうとも思えた。スキー場隣接なので、そこまでの場所ではないかと思うが・・・。使おうと思った林道は、橋の手前が雪捨て場になっており雪の壁が出来ていた。南に進み、高峰温泉の雪上車の発着場である第5駐車場に入れる。周囲の雪をすぐに確認する。冷えているが、締まっておらずフカフカで、ツボ足で難儀するのが判る。西を望むと水ノ塔山があり、その北側に尾根が降りて行っているが、山隠居の腰掛のピークは見えていない。東斜面には十分量の雪が乗っており、容易に到達してしまえそうに見えていた。

 
 6:53第5駐車場を出発。橋手前の堆積した雪を乗り越え、橋の上でスノーシューを履く。まだ元気な迷犬は、もがきながら雪塗れになってはしゃいでいた。雪を伝う時間が長いので迷犬に靴を履かせたが、雪が嬉しく興奮度合いがマックスとなり、すぐに4足脱げてしまった。人間だったら裸足は致命傷だが、犬は素足でも大丈夫。林道をスノーシューの浮力の恩恵に与って進んで行く。雪面に獣の足跡は無く、週中に降った雪のようだった。

 
 出発から17分で終点地に到着。北に小尾根な感じで広い尾根筋があり、そこを西に登って行く。右手の北側には深い谷があり、起伏を避けて巻き上げて北進する計画であった。スノーシューのヒールサポートを上げないでもいいほどの傾斜が続き、1965m付近まで上がったら西進から北進に変える。この先、細かい山襞があり、2回ほど小さな谷を跨ぐ。小谷の右岸斜面は雪が緩く、スノーシューでも潜りながら進む。目的地が2024mなので、標高を上げ過ぎないよう、横移動で到達するよう進んで行く。途中、このトラバースで唯一東側の開けた場所が在った。以降は全て樹林帯の中であった。

 
 ただの樹林帯なら良かったが、シラビソとシャクナゲの密生帯となった。高度を上げたり下げたりしながら空間の多い場所を探すのだが、高度の調整をするにも雪があるので結構大変で、勾配が強い場所は、スノーシューでは登れても、四駆の迷犬でも藻掻くばかりで登れない場所も出てきた。こうなると斜面に対し上下に移動しないよう密でもトラバースに徹した方が得策だった。体を入れて押し広げるようにして進んで行く。駐車場からは、楽に進めるように見えた場所は、実際は密生帯だった。10分ほど我慢の時間で最初の密生帯から抜け、その先は幾分空間のある場所があり、さらに先で再び植生が濃くなる。この北側は、先ほどの南側ほどには濃くなかった。当初は、この斜面の往復を考えていたのだが、この試練に帰路は水ノ塔山経由の方がいいだろうと思えた。

 
 2045m付近で水ノ塔山からの主尾根に乗る。明るい尾根で、最初から水ノ塔山経由で来れば楽だったかと思えた。尾根上には古いピンクのリボンが続いていた。ゆるく下る格好で北進してゆくと、どんどん山頂らしくない雰囲気となって行く。2030m付近で少し明るい場所があったが、再び植生の濃い中に突入し、経路1時間24分、珍名座に到着した。奥秩父の藪山に居るかのような錯覚を覚える場所だった。

 
 山隠居の腰掛に到着。シラビソの小径木が林立し展望は全閉であった。一時は北から計画したので、1665高点側の尾根を見下ろしたが、けっこう急な尾根に見えた。前橋ハイキングの標識が唯一で、在ってありがたい標識で、無かったらなんとも素っ気ない場所だった。荷紐がもう一つ縛られており、他にも好事家が訪れているようだった。無積雪期であれば三角点を探し拝むことをしたが、この時季ではだいぶ雪の下のようであり掘る事はしなかった。ヤキソバパンを分ちあう。藻掻き疲れたようであり、いつもより多めの配分で迷犬に与えた。登頂感が乏しく展望もない。珍名座でも、これではなかなか足を運ぶ人は増えないだろう。

 
 帰路は往路のトレースを辿らず、水ノ塔山経由で戻ることにした。トレースを追って戻り、その先無垢の雪を進む。これは往路より軽快に進めるか"と思った矢先、状況が変わった。尾根上にはけっこう雪穴が多くスノーシューでも踏み抜きが多くなった。ストックが嵌り込んで抜き出せないことも多くなり、迷犬も藻掻き這い上がれない場面も出てきて、二度三度と戻っては体を持上げて進めて行く。尾根上の木々には、刃物痕があり、道を拓いた、もしくは道が存在する形跡が見られた。2080mの急斜面地には緑色のロープが流してあった。縛っている木だけが見えるが、雪の重みの中となっているロープは引き出せず使う事は出来なかった。ここを這い上がり2090m付近まで上がると、やっと樹林帯から抜け出た場所となり展望地だった。特に西側の展望がよく、北を見下ろすと、こんもりとした形の山隠居の腰掛が存在しているのが見えた。上から下った方が、山に向かう感じだったようだ。

 
 西側の斜面は、頭を出しているシラビソが多く、雪の繋がりが乏しい感じ。よって尾根頂部か東側を伝うのだが、2090mから上もけっこう難儀した。スノーシューだから浮力が得られたが、輪(和)カンジキだったら、とてつもなく大変だったろうと思えた。犬には何も履かせていないのだが・・・。大型犬であり、胸板が厚いので勾配が強い場所は胸が閊えて、後ろ足で蹴っても進めないのだった。性格や体力差もあり、全ての犬が当てはまるとは言えないだろけど、中小型犬ではまず登れなかったろうと思う。

 
 2135mの雪面に、木製の角柱が60mmほど頭を出していた。おそらくこれがこの尾根唯一の道標なのだろう。ここも展望がいい肩で、先ほどの三角点ポイントより山頂らしい場所であった。迷犬は、ほどほど疲れたようで、ここに着くなり雪面に腹ばいになり休んでいた。水ノ塔山はもう僅かで指呼の距離と言えるのだが、ここから先はこれまでに増して雪穴が多くなり進度が落ちた。大岩が在ったりし、太い木に対しての刃物痕も多くなっていた。相変わらずピンクのマーキングは続いていた。一本尾根であり、ルートミスなど発生しないと思うが、雪がある時と無い時とでは様子が違うのかもしれない。

 
 南進してゆくと、2180m付近にかなり踏まれたスノーシューのトレールが現れ、山頂への道と南北への踏み跡があった。その分岐に「スノーシューコース」と書かれた真新しい道標が縛られていた。ここにスノーシューのこんなコースが出来ていたとは知らなかった。アサマ2000スキー場がここまでレジャーを派生させるとは思えないので、高峰温泉が管理していると思うのが無難だった。僅かに進むと大展望の山頂だった。

 
 水ノ塔山登頂。ピーカンで雪目が気になるほどの天気となった。北アルプスの連なりも奇麗に見え、風も少なく暖かで心地いい。迷犬も2度目の登頂。その山頂はスノーシューでバタバタと踏み固められていた。小休止の後、スノーシュートレースを追って東に降りて行く。無積雪期の岩場を避け、東斜面を降りて行っていた。岩場を巻いたら夏道に戻る格好で南に進み、2135m付近から真西に降りだす。てっきりトレースは高峰温泉側へと進むのだと思ったらそうではなかった。斜度の強い場所が在ったりし、どんどんとスキー場に近づいてゆく。

 コース途中に出るものと思っていたが、意外やどんどん高度を下げて最後は谷の中に入って軽く登り返し、目の前に建物があり進んで行くと、それは更衣室だった。スノーシュートレースの出発点はここからだった。ちょうどロータリーになった場所で、すぐ南側はスキー場のゲレンデであった。最短地で穴場なのか、ロータリーに停めるスキーヤーも居るようで、丸く駐車がされていた。使われていない第4駐車場を北に突っ切り第5駐車場に戻る。

 着替えているとディーゼル音が響いてきて高峰温泉の雪上車が降りてきた。7割がた席が埋まっており、停まると後にビールケースが置かれ、それをステップに乗客は蜘蛛の子を散らすようにマイカーへと別れて行った。このタイミングで、クリーニング屋が上がってきて、シーツなどを運転手に手渡していた。天気が良くても乾かないのだろう。と言うか、シーツを洗って干すほどのスペースは無いのだろう。対価を払って洗濯した方が楽って事だろう。

 
 振り返る。東麓は距離こそ短いが、楽に伝える場所ではなかった。雪が締まっていても藪漕ぎがあり分けて進む箇所が待っている。水ノ塔山から山隠居の腰掛まで道が在り(現在は廃道?)、その北麓に山道があることから想像するに、山隠居の腰掛から下にも、昔は道が在ったろうと想像する。なので北麓から当初狙ったのだが、今回登頂してしまったので、今後それらを確かめることは無いかもしれない。北麓で計画する場合は、ダニが多い場所と言う事を考慮し雪がある時季で計画された方が無難だろうと思う。




    

      
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