筆頭岩   826m 
      

 2008.11.24(月)   


   晴れ      同行者あり      一本杉から             行動時間:1H44M


@一本杉車止め6:46→(2M)→A一本杉6:48→(9M)→B尾根取付き6:57→(18M)→C筆頭岩7:15〜46→(22M)→D登山道に降り立つ8:08〜19→(6M)→E車道に出る8:25〜27→(3M)→F一本杉車止め8:30

 登山禁止の場所につき、入山に関しては自己責任となる。


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@一本杉への車止め前から見る筆頭岩。 @車止め前。KUMO氏がザイルを束ね準備中。 A一本杉前。「筆頭岩は登山できません」とある。 途中の尾根道。この先でコンクリートの吹きつけの上を歩く。
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筆頭岩の西側の岩壁には赤ペンキでルートが。 B岩尾根の取付き 最初のここは左(西)側の松の木の方から上がるのが楽。 逆層スラブ的場所を上がって行く。ここは歩き易い。
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だんだんと核心部に入ってゆく。最初のここが怖いと思ったら、引き返したほうがいい。 前を行くKUMO氏は、最初の高みに向けてどんどん這い上がってゆく。 先を行くKUMO氏は、やせ尾根を通過し鎖場を這い上がっている。 見ずらいが、ここが一番の痩せ尾根。幅40センチほど。距離は4〜5mか。
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KUMO氏の足許1mほど下の辺りに浮岩があるので注意。 鎖場の上部。 鎖場上部から山頂を見る。 鎖に掴まりながら下を見下ろす。
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もうすぐ山頂。この辺りは安全地帯。 C筆頭岩山頂のケルン。東側は展望台のようになっている。 C山頂から金洞山。山腹左の影が筆頭岩の影。 C山頂から白雲山。(大の字がある峰)
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C山頂から金鶏山。筆頭岩と合わせた昔のルートがあるのだが、スカイラインの設置により登山禁止。  C安中市(関東平野)側。  C南の奥秩父側。沢山の山々が連なっている  CKUMOが設置された。 
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Cリボンも設置された。  下降開始。慎重に行く。  危険箇所にはタイガーロープを設置。  三点支持で慎重に下るKUMO氏。 
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鎖場はザイルを垂らしてもいいが、まだ充分使えると判断し体を預ける。  痩せ尾根に向け下って行く。下りはコンパスが長いほうが楽。 KUMO氏は最初の高みに到達。  高度感のある場所を慎重に足を下ろしてゆく。 
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2回目のロープ設置。  D登山道に降り立つ  2007年暮れに取付いた東側の壁。  D尾根の所から登山道を下って行く。Bの場所。 
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壁を右に見ながら下る。左下は車道の為、落石には注意。  E尾根から車道に出る場所には階段も作られている。  Eさくらの里の東側にあるゲート前に降り立つ。  F一本杉入口に戻る。 



 11月22日、旧南信濃村のかぐらの湯にふらっと立ち寄ったら、なんとそこでKUMO氏に出会った。お互いにびっくりし、すぐにいつものように山談義となった。KUMO氏は5日ほどの予定で、南アルプスと中央アルプスの目的の山を駆け上がり、最後に西上州の筆頭岩を登ると言う。筆頭岩と言えば昨年の暮れに狙って、踏めずに帰ってきた場所であった。KUMO氏から発せられたその弾むような山名に、かなり心を揺さぶられた。“はたして同行して邪魔になるような場所ではないのだろうか”との思いが強いのだが、行ってみなければこれも判らない。この温泉地に向かいながらラジオを聴いていたのだが、番組内でプロフィギュアスケーターの荒川静香さんが、「Think Positive」と言っていたのを思い出した。「だよな」と心の中でつぶやき、明後日の再会(同行)を約束してしまった。


 一日置いて24日となった。土曜日の筋肉痛が少々残り、これが心地よい。6時に一本杉で待ち合わせ予定であり、妙義のスカイラインを駆け上がって行く。時間になってもKUMO氏の姿が無いので駐車場がある中ノ岳神社の方へ進むと、すぐに氏の車が降りてきた。寝坊してしまったと言うが、もう5日も連続で歩いているのだから、寝坊くらい当たり前であろう。私なら3日でモチベーションが途切れ、4日目は温泉に浸かっているだろう。KUMO氏に二日ぶりに会うと、昨日はふらっと立ち寄った飯田市の売店で、東海の重鎮のTAI氏に出会ったそうだ。KUMO氏はこのタイミングで宝くじでも買ったほうがいいのではないだろうかと思った。岩の七つ道具をザックに入れ、最後にヘルメットをくくりつけた。KUMO氏もザイルを束ね袈裟懸けにして準備完了。


 一本杉へ登って行く。東崎さんのお宅を左に見て、一本杉の脇から尾根道に降りてゆく。ここはさくらの里付近に駐車し、車道から尾根に乗る方が近いのだが、駐車スペースとして一本杉の入口の方が適当であり今回もそこにした。吹き付けのコンクリートの上を乗り越え、その先から岩場を左にしながら踏み跡を伝って行く。ここは車道の真上であり、落石には要注意。基本的に「登山禁止」の場所であり、こちらの責任で車の事故が起これば、2重に批難されてしまう。この山の周囲は前回の調査で殆ど様子を把握していた。


尾根を乗越す場所から岩尾根に取付く。前を行くKUMO氏はスルスルと登って行く。まるで蜘蛛のようだが、「KUMO」の意味は「Spider」とは違う。最初は階段状の岩場で、その先はマツが生える西側に進み、西から壁を2.5mほど這い上がる。ここは2歩目の岩が少し揺らいだ気がした。岩尾根に乗り逆層のスラブ的岩場を少し進むと、足許にボルトが打ち込まれているテラスの場所に出る。ここまでは前回も来ている。この先は未知の世界。私が逐一カメラに収めているのに対して、KUMO氏はどんどん先を行く。完全にKUMO氏ペースなのだが、ここは落ち着いてこのボルトの場所でハーネスを着け、岩装備となる。しかし同行のKUMO氏は確保も何も要らないようであり、自身のセルフビレイの為に着けた様なものであった。岩に掴まりながら目の上の潅木を目指して少し東に体を置きながら上がって行く。展望がいいのだが、周囲を見てしまうとやけに足が震えてしまい、目の前の岩ばかりを見ていた。そして最初のピークがあり、乗り越えると幅40センチほどの痩せ尾根となり、左右(東西)にスパッと切れ落ちていた。風が無いので少し立った状態で通過したが、少しでも風があればここの難易度はかなり違ってくるであろう。5mほどを緊張しながら抜けると再び岩壁になり、上からかなり古い鎖が垂れていた。この鎖を信じるか信じないかは個人の判断となる。足場はそこそこあるが、コンパスの長い人がより優位であろう。鎖に命を託して這い上がってゆく。2〜3mほど上がった場所に浮石があるので要注意。この鎖は上下2段付いていて、上の鎖場を過ぎるとやや安全な岩尾根となり山頂まで続いていた。鎖を離して山頂を見ると、既にKUMO氏は山頂に到着しザックを下ろしていた。少し遅れて山頂に到着。


こんなにスイスイと上がってこれるとは思わなかった。途中でザイルを出していないせいがあるだろうが、予想外の短時間で山頂に立った。この筆頭岩の山頂は意外や広く、5〜6人居てもそれなりに居られるようなスペースがあった。北側の潅木には幅広のテープシュリンゲが縛られ、西か東か、はたまた北側へかの支点となっているようであった。何も標識は無いが大きなケルンがあり、ここに到達したものだけが見られるものとなっていた。その昔、あのウエストン氏も根本氏の案内でここを登っている。なんとも感慨深い山頂であった。当然のように360度の展望がある。西に金洞山、北に白雲山、東に金鶏山、そして南側には、西上州と奥秩父の峰々が折り重なるように見えていた。この後天気が悪くなる前兆として、荒船山の軍艦の上から流れ落ちるような雲の流れが見えていた。


展望を楽しみ感慨に浸っているだけではこの山の登山は終わらない。登ったら下りがある。私は40mと30mのザイルの2本持ち上げてきたので、どこを降りても良い体制にして来たが、KUMO氏は丸腰であり、壁を下るには長い肩がらみとなる。東西どちらかの壁を降りてみたかったが、勝手な行動は出来ず往路を再び戻ってゆく。下りはやはり登りとは少し様子が違い、下が見える分怖さが増す。鎖に再び命を預けて降りてゆく。信用できる鎖なら、体を岩から離せるのだが、これが心許ないので片手は岩を掴みながら、張り付くように下って行く。先を行くKUMO氏が危険箇所に適時タイガーロープを設置してくれ、これによりザイルを垂らす事無くどんどん下って行けた。痩せ尾根を再び通過するのだが、下り側だと2〜3歩目にある尾根上の岩を跨ぐところがなんともバランスを保つのにいやらしかった。左右を見下ろすと何十メートルも垂直に切れ落ちている。落ちればまず命は無い。

 再び小ピークに立ち、最後の厳しい場所。ここさえ抜けてしまえば、下の方はさほど問題にならない。ここも途中の危険箇所に
KUMO氏が補助ロープを設置してくれ、それを使って安全に下ることが出来た。最後まで緊張を保ち、一挙手一投足に神経を尖らせる。そして危険地帯をクリアーし、下の安全地帯に降りたらやっと力が抜け登頂の喜びが沸いてきた。東側に回りこみ、前回の岩壁を再び見上げる。また登ってみようかなどと不埒にも思ってしまった。実際のところ、危険地帯から開放されて、登って来た面白さが湧き出していたのである。踏み跡を戻ってゆく途中に、千切れたシュリンゲが落ちていた。切ったと言うより引きちぎれたように見えたのだが、ちとゾッとしながら拾い上げ枝に掛けておいた。


一本杉に戻るのだが、途中の尾根から車道に出るようなコンクリートの階段があり、そこを降りるとさくらの里のゲート東側に出た。ここは車道脇に余地もあるので、車を停めるには適当な登山口となる(ただ目立つ)。スカイラインを登り上げ、駐車場所に到着。KUMO氏のおかげで、無事筆頭岩の登頂が出来た。


さて振り返り装備を検証する。ザイル無くして行って来られるかと言うと、そこそこ技量があれば行って来られるだろう。ただ持っているのと持っていないのとでは、安心量が違う。あと、小学生がサンダルで登ったと言う有名なエピソードの検証だが、サンダルであの岩場をグリップするものかと思えてしまった。鎖を掴む腕力もそうだが、足許装備がしっかりしていないと、かなり危険に思えた。わらじならまだましだが・・・。何はともあれ山頂を踏めた。天気に感謝し、KUMO氏に感謝したい。

 ここは「登山禁止」の場所。くれぐれも私が登った事は内緒に・・・。

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