剣ノ峰 1844m 箱ノ峰 1751.2m
2009.7.25(土)
晴れ 単独 林道鎌田入線途中より 行動時間5H34M
@林道鎌田入線途中の緑資源公団東側林道入口5:53→(7M)→A分岐6:00→(6M)→B林道終点6:06→(36M)→C1810mピーク6:42→(26M)→D剣ノ峰7:08〜27→(17M)→E1810mピーク7:44→(11M)→F1820mピーク7:55→(25M)→G岩場8:20〜28→(64M)→H1750mピーク9:32→(20M)→I箱ノ峰9:52〜10:16→(35M)→J緑資源公団西側林道に乗る10:51→(4M)→K林道鎌田入線に出る10:55→(33M)→L東側林道入口11:28
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山田牧場側、林道鎌田入線入口(分岐)。 | @緑資源公団の林道入口(東側)。 | 林道の様子。状態の良い場所。 | 途中、この標識の右側からはっきりとした登路が上がっている。(そのまま林道を進む) |
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A林道分岐。中央に目立つシラカバ。右へ進む。 | B林道終点の様子。 | 1700m付近の斜面。 | 1700m付近。登ってきた斜面。 |
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両側に岩壁が迫った中を行く。 | 岩場を登る。 | C1810mピークから見る剣ノ峰。 | 剣ノ峰西側直下の岩場。少し腕力を使う。 |
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岩場には可憐なコメツツジが咲いていた。 | D剣ノ峰山頂の岩。基部には空洞があり、足場注意。 | D剣ノ峰から箱ノ峰(右側)。左は1820m峰。 | D剣ノ峰から笠ヶ岳と横手山。 |
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D山田牧場では牛が草を食んでいた。 | D須坂側。 | E1810ピーク西側の目立つ大木。 | F1820ピーク。鬱蒼とした薮の山頂。 |
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1820ピークを西に下るとワーヤーが残置。 | 途中で尾根の南側をトラバース。 | 途中から振り返る。左に剣ノ峰。右が1820ピーク。 | G一番の厄介な場所、岩峰の上に立つ。南側に巻き込むように下に降りられるが、その下が危険箇所。 |
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G岩峰の上から北側を覗き込む。 | G時間をかけて下ってきた岩稜。安全通過にはザイル必携。 | 稜線が屈曲する付近の笹薮。2.5mほどの高さがある。 | H1750ピーク。ここも密生。 |
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箱ノ峰の東側の肩的場所。まだまだ笹が切れない。 | I箱ノ峰山頂。 | I三等三角点。 | I箱ノ峰から剣ノ峰側(中央に突き上がった峰が剣ノ峰)。 |
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I箱ノ峰から北側。 | I箱ノ峰から須坂(南)側。 | I山頂の小岩。 | 箱ノ峰から南東に下りだす。 |
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途中で小尾根に乗ると・・・。 | ワイヤーが残っていたり・・。 | J緑資源公団の西側林道に出合う。 | 途中には東側林道に有ったのと同じ標識も。 |
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K林道鎌田入線に降り立つ。 | 林道途中から見上げる箱ノ峰(左) | L往路の林道入口に戻る。 | 駐車スペースの様子。 |
週末毎に梅雨の雨に翻弄される状況となっていた。大きな登行予定を思っていたが、珍しく雨を嫌って諦めた。と言うのも、前週には北海道で大勢の被害者を出す事故起きた。数日前は九州での自然災害。ここでも大勢の方が被害に遭っている。北と南に挟まれ、次は本州の番ではと思えていた。変な予感がする時は、あっさりと諦めるのも私である。と言いながら、家でじっとして居られるはずも無し。どうせ濡れるならと、登山道が無い濡れ鼠で歩くような場所を探していた。これを金曜日の帰宅後にやるのだから忙しい。各エリアの地図が机の上に乱雑に開かれ、各候補地が篩いにかけられる。
剣ヶ峰などが代表するように、「剣」とか「槍」とか山名に付く場所は、特に山屋の心をくすぐる場所である。長野で言えば、高い順に、御嶽山の剣ヶ峰。次に乗鞍岳の剣ヶ峰。次が中アの宝剣岳。このように各山塊で一箇所は「剣」の文字の入った場所がある。八ヶ岳にも浅間山にも剣ヶ峰は存在する。そんな中、柔和なダイナミックな山塊が多い志賀高原にも、「剣」の付く山があった。剣ノ峰と、中間に「ノ」の入る珍しい読みだが、そこを地形図から読み取ると、等高線が詰まっていて、らしい場所である。すぐ西には箱ノ峰と名の付く三角点峰もあり、この2座狙いで出向く事にした。状況良くすれば、さらに西にずれて、三沢山まで視野に入れていた。
2:30家を出る。すぐに上信越道に乗って須坂を目指す。空はドンヨリしており、北西に一つだけ星が光っていた。さて今日の天気はどのように変化するのだろうか。まあ濡れる事には違いないだろうから、最悪を予定していれば、それより悪くなる事はない。今日の車の流れはさほど多くない。三連休の後の一休みだろう。須坂長野東で降りてサマーランドを掠めるように山田牧場を目指してゆく。何度かガスの中に入り、今日は“こんな天気なんだろう”と半ば諦めていたのだが、それが山田牧場地内に入ると、予想外に展望が利くようになった。林道鎌田入線に入っても、周囲の緑緑した夏らしい景色、その先に霞のかかったような、これも夏らしい遠望。“意外にいいじゃん”となる。カーナビを見ながら東側を気にしていると、暗い樹林の中に、作業小屋のような大きな棟が見えた。その先で右手に入っているコンクリート舗装林道があった。さらに進むと、入口にチェーンの張られたダート林道もある。ここを過ぎるとヘヤピンカーブの始まりで、先の林道の場所から1.7キロほど進んだ場所にも同じような林道が入っていた。双方の入口には同じような公社の標識が建っており、もしや繋がっているのかもと思えた。林道が中腹にあるならなんとも力強い。駐車余地として適当な場所があるのは、最初の東側の林道であり、そちらに戻って路肩余地に停める(4:40)。夜が開けきっているのだが、仕事疲れかかなり眠く、少し仮眠を取る。
1時間ほど熟睡し、5:53スタートを切る。林道の入り口のチェーンを跨いでゆくと、雑草こそ多いが、さほど歩くのに妨げになるような植生ではなく進んで行ける。6分ほどでクリーム色の「緑資源公団」の標識が建っている。なぜかその脇から濃い踏み跡が入っている。伝いたい欲求にかられる踏み跡だが、我慢してそのまま林道を詰めてゆく。すると目の前が顕著な分岐となる。これを左に進めば先ほどの林道に繋がると思い、右側に進路をとる。この分岐の又には大ぶりなシラカバが立っている。首を上げると稜線の山並みも見え、この林道に何処に連れて行かれるのかと、半信半疑のまま伝ってゆく。
入山(道)から13分、あっけなく林道は終点となった。その先は何処を見ても山道らしい踏み痕は無し。ここから薮斜面に取付く。雨は降っていないが、夜露ですぐに濡れ鼠となった。別の言い方で「蒸れ鼠」と言う言葉も作りたい。周囲は植林帯のようであるが、あまり管理されていないのか、杣道は全く無い。当初は剣ノ峰へ向かう谷部を登ろうと思っていたのだが、少し自分への負荷として、一番急峻斜面を狙って行く事にした。下の林道から見上げると上の方に岩場が見えたので、練習がてらにそこを狙うようにして上がって行く。薮はさほど密生しておらず、背丈も低く、登るに際し見通しは利いていた。そしてその薮も、途中から岩場となる。と言っても岩場を避けようと思えば避けられる地形で、そこを私はあえて狙って行っただけであった。岩は脆く、そんな岩を掴みながら慎重に高度を上げて行く。こんな場所で動けなくなっても誰も助けには来ない。単独行のリスクや山岳保険の存在をもう一度考え直したりした。
稜線に乗った場所は、東経138度28分の1810mピークであった。この場所から東を見ると、スクンと立った剣ノ峰が間近に見える。僅かな距離と楽に構えていたのだが、なかなか植生が濃い。薮を漕ぎながら稜線を東進して行くと、そこには何となく踏み痕が見える。間違いなくそれはカモシカのものなのだが、北側に逃げたり、南側に逃げたりしながら先に進んでいた。稜線頂部には、プラスチックの丸い標柱が埋められている場所もあり、これは村町界を示すものであろう。進行方向右側には終始笠ヶ岳が見え、そのさらに右側には山田牧場の草原が見え、そこに点々と動く牛の姿も見ることが出来た。剣ノ峰の西側直下は岩場があるが、ここは特に問題になる事無く通過できる。ただ、よくルート選びをしないと、危険度は増してしまう。下から見上げると北寄りルートと南寄りルートが見出せるが、私は後者を伝って行った。この岩場には可憐なコメツツジが咲いていた。
剣ノ峰山頂。「ワァ〜」と声にしたいほどの360度大展望の場所であった。剣ノ峰の頂部にはそこそこの岩があり、それが「剣」の先の「刃」のようでもあった。その岩の下は空洞になっており、踏み抜きには注意したい。それにしてもいい展望。右に左にターンしながらカメラを構える。この日はかなり雲が張っていたが、その雲は山にはかかっておらず、満足できる景色であった。トランシーバーを握ると、何処を抜けてきているのか北陸の声も飛び込んできていた。西側を見ると、先ほど稜線に乗った1810ピークが見え、その右側に次に目指す箱ノ峰が見える。しかし、ここまで来るまでに体験した薮状態からして、箱ノ峰まで行って今日は終わりだろうと思えた。地形図を三沢山まで準備したが、残雪期ならともかく、無積雪期ではよほど気合を入れて入山しないと無理であった。今日の私は、かなり軽い気持ちで来ているので、あっさり諦めたのだった。
西進して行く。不思議なもんで、1810ピークまでは往路として一度通過しているので、歩き易い場所が頭に入っており、そこまではそう時間は掛からなかった。それにしても足許が見ずらい。ここの適期は秋以降から春先までなのかもしれない。1810ピークの西には、稜線上に枯れた大木が残り、良い目印となる。この次に1820ピークがあるが、こちらの周囲は目線以上の高さに木々が生え、あまり展望は良くない。このピークの西側には、岩構造の痩せ尾根がある。足許が見にくいので通過は注意。私は南側を巻くようにして通過した。
次々に注意ポイントが現れるのだが、1790m付近で、この場所にしてワイヤーがピンと張られた状態で残置されていた。さらに先に地面に流してある場所があり、この場所で林業作業がされていた名残なのか・・・。ここを過ぎるとシャクナゲの植生も弱まり歩きやすくなる。1780m付近から稜線を外れ、踏み痕(獣だろう)は南をトラバースして行く。それに便乗して通過。再び稜線の乗ると、周囲の展望の良い場所となる。振り返ると高い位置に通過してきた峰々が見える。そして1760mでこの山塊の肩的場所となり、そこは完全に岩場となった。西を見下ろすと、かなりの高度感でザイル無くして降りられそうも無い。北側を見ると150mほど下は緩やかであり通過できそうだが、そこへはかなり早いタイミングで降りていなければならなかった。反対に南側は植生が濃くて見えなかったが、等高線の詰まり方からすると南の方が伝いやすかったかもしれない。ここで悩む。一本ある朽ちた潅木を掴み、西側に体を乗り出して状況把握。ランディングポイントも見えない中で、非常にギャンブルなのだが、岩場には植生もあり、何とか降りていけると判断。最初は南に進むようにして岩場の下に行き、2mほど高度を下げる。次が本番で垂直の岩場となる。掴めるだろうと思った潅木は、殆どが根の張りが弱く、体を預けるには怖いものばかりであった。岩角など僅かなホールドを探して慎重に体を下げて行く。下の着地点までは上から6mか7mほどの距離。岩慣れしている人にとっては問題ないだろうが、そうでない場合はザイル必携の場所となる。逆に進む場合も、けっこう腕力を使ういやらしい場所に思えた。
さて危険箇所を過ぎてホッとしたのだが、この先の植生は濃くなる一方であった。ササの太さも太くなり、シャクナゲの上に乗り、足が地面に着かないような場所も出てくる。特に稜線が左に湾曲するこの辺りは、進路を良く見定めないと、漕いでも漕いでも先が暗いような、そんな密生した場所であった。左右に振りながら歩き易い場所を探すのだが、北か南か、どちらかに寄っていれば歩き易いとかは無く、獣の踏み痕も乱れていた。進度によっては隙あらば三沢山へと、思いを残していたのだが、ここの通過でもう箱ノ峰から先などとは思えなくなっていた。
1750mピークを前後して、蔦類が非常に多くなる。鉈か鎌が欲しい所で、ここで戸隠の再来で、その蔦を捩って千切りながら分けて行く。もうゴールが近い場所なのだが、これにより進度がかなり落ちていた。夏の日差しが雨具越しにジリジリと暑い。かといって薮に潜る場面も多く、フードを重宝していたので脱げない。もう少しの我慢とサウナ状態のまま先を目指す。周囲から聞こえるアブラゼミの鳴き声に、益々暑さを感じるようであった。箱ノ峰手前で周囲の植生が少し弱くなり、南側の展望が一気に広がる。最後は背丈以上のシャクナゲを漕ぎ、そこを抜けると円形状の山頂部が待っていた。
箱ノ峰山頂。三等三角点が鎮座し、その南側に小ぶりの岩がある。なぜここにぽつねんと置かれているのか、不思議な岩であった。西側は樹林に遮られるが、他の方角は見栄えがする。先ほどの剣ノ峰側を見ると、そこに見える景色は、西上州か奥秩父に居るかのような山容であった。この後雨が降らぬ確証となるのか、山頂部には大きなアリが無数に居た。その為、不届きだが三角点に尻を乗せ休憩とした。ここまでスタートから約4時間。仮に箱ノ峰から三沢山を狙った場合、剣ノ峰からは約2.5時間を費やしているので、距離換算すると、その3倍の7.5時間かかる事になる。まあこれは歩いていないので予測にしか過ぎないが、稜線の植生はこれまでとそう違わないだろうから、大きく違ってはいないだろう。三沢山をこちらとつなげて考えられるのは、やはり残雪期でなければ厳しいようだ。さていつものように下山を考える。今回は下山路を特に決めておらず、現地で考える事にしていた。地形図からは顕著な尾根が南西に下りている。しかし、その尾根が林道に出合う場所が、急斜面になっているようだ。危なげなく林道に乗れる場所は、南に下った細かいヘヤピンカーブの辺りであり、尾根下りでなく、谷部を下って行く事にした。と言うのも朝の斥候時に、山中に入っている林道の存在を把握しており、降りてゆけばどこかでそれにぶつかるだろうと踏んでいたのだった。
下山。少し東に進んだ後、南側の谷部を下って行く。ここの途中にはセンジュガンピの群落があり、周囲では見事な白い花を咲かせていた。適当に歩き易い場所を探し、時に微細尾根に乗ったりしながら高度を下げて行く。するとその尾根上にも古いワイヤーが残っている場所があった。ワイヤーが見つかったので、踏み痕があるのではと期待したが、周囲に杣道は見られず、こちらもあまり管理されていない場所に見えた。大半は笹を漕ぐような場所が続き、下の方に行き杉の植林帯の中に入ると、それから開放された。ただここも、下草と言うべき雑木が生え、けっして歩き易い場所ではなかった。当然のように明るい方明るい方と選びながら進むと、1500m付近で林道と出合った。そこは林道の終点ではなく、上側にまだ続いていた。地形図からすると、一番勾配の緩やかな場所に道が付けられているようであった。林道を降りて行くのだが、戻りたい方角に対して180度の方向に下って行った。かなり半信半疑になりつつ進むと、途中で再び180度方向を変え、東に向かい出した。間違いなく斥候時に見た林道で間違いないようだ。何度か九十九折をこなし、鎌田入線に出る。こちらの入口には、登山口とした往路の入口のようなチェーンはされておらず、車が入れるようになっていた。作業車が入ったのかダート愛好者が入ったのか判らぬが、舗装路の上には林道から出て来た泥を着けたタイヤの痕が残っていた。
舗装林道を登って行く。時折林道脇の木に錆びた標識が見える。どうやらこの林道はスキーのツアーコースになっているようで、文字が明瞭な標識を見つけてそれと判った。車通りが少ない証拠に、路面でのんびり蛇が昼寝をしている場面もある。こちらの存在に面倒くさそうに逃げて行くのだが、その車通りの少なさは私にとってもありがたく、舗装路とは言え、静かな山歩きの延長の気分で歩いてゆく事が出来た。往路の林道入口を左に見て、その40mほど先に駐車余地がありゴールとなる。
結局、往路で分岐した西へ進む林道の存在は判らぬままとなった。右側へ進んだ道同様に、どこかで終点になっているのだろう。箱ノ峰から下って来た谷部は、途中までは登りに使えるが、最後の方で濃い笹薮が待っている。使う場合は覚悟していた方がいいだろう。復路で出合った林道をそのまま詰めて行くとどうだろうか。ルートが確立していないだけに、まだまだ色んなコース取りが出来、楽しめる場所のようである。
何度もくどいようだが、剣ノ峰から箱ノ峰へ西進して行く場合は、安全通過にはザイル(20m)必携である。逆コースの場合は要らないかもしれないが、今度は岩場の技量がないと通過できないであろう。わずかな距離なのだが、ザイルを使って下降コースで通過した方が、無難に思えた。
最後に。予感は的中、本日(27日)館林で竜巻による自然災害が起きたのだった。25名ほど被害にあったようだ。
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