比志ノ塒   1460m            
   

 2009.9.27(日)   


   晴れ     単独       林道比志海岸寺線途中より     行動時間:1H40M


@林道途中から入山7:56→(40M)→A尾根に乗る8:36→(5M)→B比志ノ塒最高点8:41〜42→(3M)→C比志ノ塒三角点8:45〜59→(37M)→D下山9:36


 
rindouiriguchi.jpg  nyuuzan.jpg  sumiyaki1.jpg  yajirushi.jpg 
清里須玉線(605号)から林道比志海岸寺線への入口。 @取り付き箇所。車のある路肩と、ガードレール前に1台分。 途中の立派な炭焼き釜。 矢印なんかもあったり、矢印に従ったほうが歩き易い。
ki.jpg  sumiyaki2.jpg  kanban.jpg  karamatu.jpg 
途中、静かな平坦地もある。 谷には炭焼き釜がいくつか点在。 造林の詳細看板。 谷の上部で、このような快適な唐松林。
yaxtukyou.jpg  tani.jpg  hyoucyuu.jpg  one.jpg 
散弾の薬莢が落ちていた。 少しナメ岩状の場所もある。 急峻で、標柱も倒れてしまっていた。 A尾根に乗り山頂側を見る。
saikoutenhigashi.jpg  te-pu.jpg  hyoushiki.jpg  yontou.jpg 
B比志ノ頭最高点。 B最高点西側。テープを残す。 C比志ノ頭三角点の場所にある標識。綺麗なレタリングである。 C四等点。「角」の字は旧字体。
mitky.jpg  cyuuyou.jpg  migi.jpg  kareta.jpg 
C新ハイの標識もかかる。 南に尾根を下山開始し、最初の分岐。この虫ようのあるアカマツ側に降りる。 2度目の分岐。このテープの方(右)へ。 尾根にはそこそこの踏み跡があり、目立つ枯れた大木があった。
mixtusei.jpg  onshirin.jpg  kabenoue.jpg  gezan.jpg 
1317高点付近だったか、進む南西側の尾根は密生しており、北側に逃げつつ降りる。 恩賜林のこの標柱が現れたら、西の谷に下るように進んだ方が良い。 尾根を南に下ると、よう壁の上に出てしまい、長い時間、西にトラバースせねばならない。 D入山口に戻る。


 

先日、椹島にも白籏史朗さんの写真館が出来たのを確認した。各地にたくさんできるなぁと感心していたのだが、その時に白籏さんが紹介していた北杜市(旧須玉町)の里山を思い出した。そろそろ涼しくなってきているので薮漕ぎシーズンでもある。連休はしっかり遊んだので、そのインターバルとばかりに出向いてみる事にした。

 

比志ノ塒(ヒシノトヤ)。他に類を見ない珍しいネーミングの山である。比志は「菱型」通じるようであるが、「塒」とは「ねぐら」と読む。野生動物が沢山居るのではないかと思えるのだった。現地の様子が判らない中でのこのネーミングは、ワクワク感を誘うものであった。ネットで調べると、長野の重鎮がしっかり紹介しており、それにより周辺情報が得られた。

 

5:00家を出る。こんな時間に出るのは久しぶりで、やはり深夜とは車列のスピードが違い、2割ほどゆっくりとした流れであった。野辺山から八ヶ岳を見ると、全くのガスの中。それも非常に濃く、これから天気が良くなってくると言うものの、今日の八ヶ岳はいまいちだろうと思えた。そんな事を思いながら須玉への下降に入ると、路面が濡れ出し雨となった。暫く降り続き、これから薮に入るに際し嫌な部分となった。津金地区に向かう道を曲がりそびれてしまい、大門ダム経由で浅川の集落を目指す。この大門ダム、水を攪拌させるように2箇所ほどで水流を作っている。その水の蠢く姿は、何か生き物がそこに居るのではないかと思えてしまった。浅川の集落に突き当たると、右折(南進)して海岸寺の方へ向かう。大きなヘヤピンを経て、浅川集落の分岐から600mほどで、東側に「林道比志海岸寺線」の入口がある。ここが今日のアプローチ林道で、左折して舗装路に伝ってゆく。当初はダート林道かと思っていたが、非常に綺麗な舗装林道であった。その上に時折サワグルミが落ちていて、タイヤで踏んでしまい、大きな破裂音が谷あいに響く。

 

林道分岐から4分ほど進むと、左側を注意していると「笠無」と書かれたKUMOカラー(茶色地に白色の文字)の標識がある。この笠無とは北側にある1475.7三角点を指し、この山塊では一番の高所となっている。残念ながら山名事典に無いので今回は目的地に入っていない。他にも登りたい山をプロットしてきているので端折るのだが、時間がある場合は、ここから入山して、笠無経由で比志ノ塒に行くのが楽らしい。ただ林道を戻って来るのが長く、十分に時間が必要なのであった。ここで標識があったので、比志ノ塒側にもあるものと思い、左側に注意しながら進むのだが、それらしいものは全く無かった。それより、途中で見つけた雨竜山側への山道が嬉しかった。地形図を見ていて、ここから入山しようと思った場所に、ちゃんと山道が入っていた。こちらの雨竜山への紹介はネット上では皆無であったので、嬉しい発見であった。そして事もあろうに、その入口に一台の軽四が停まっていた。まさか登山か、まあキノコ採りと思うのが順当だろう。この山道を右に見て、ずんずんと比志の集落(増富側)に向かって行く。何も無いまま取付こうと思った尾根を巻いて、林道は下りだしている。比志側の林道は草刈中で、両側の野草が綺麗に刈られていた。舗装の状況、この草刈の状況を見ると、地域では重要な林道のようであった。道は下る一方なので、狭い林道内でユーターンして戻り、地形図に見る一番北側に突き出した林道の場所から入山する事にした。ここには路肩と谷側入山口に各1台分の駐車余地がある。

 

今日は長靴行動、サッと足を入れ、サッと出発できるのが嬉しい。しかし里山を舐めるといけない。高所の薮より里山の薮の方が遥かに難しい。尾根が入り組んでいる場合が多く、低いからといって安易に楽とは言えない。昨今で耳新しいのでは、筑波での里山遭難は大きく取り上げられていた。さて入山。最初は野草でモシャモシャしているが、僅かに分けると、その先の谷は見事なまでの静けさと歩きやすさ。どうも山師が入る場所のようであり、古い杣道がついている。入ってすぐに炭焼き釜跡が崩壊した状態であり、そこから谷を正面にして、右側の尾根側に踏み跡が上がっている(帰りはここを降りてきた)。左右の山からはシカの鳴き声がし、この谷部にも足跡が非常に多い。すると10分ほど進んだ場所だったか、見事なまでの綺麗な状態で炭焼き釜が残っていた。今では使われなくなって、それこそ獣の塒にでもなっているようだが、これほど完璧な状態で山に残っている場所も珍しい。これを乗り越えてさらに先へ進む。途中左への大きな谷があるが、迷わず目の前の北側の谷を伝う。少し岩の出ている場所、枯葉の堆積した場所などがあるが、それらを踏みしめながらどんどんと詰めて行く。すると今度は、上部に行くに連れて谷が狭くなるのが普通だが、ここは違う。居心地がいいほどに広くなり、そこにカラマツが凜として立っている。下草は皆無で非常に歩き易い。目の前に赤ペンキの線があり、右上から左下にペンキが流してあった。右側へ進むのかと伝うと、確かにその通り行くと歩き易い。今度はその先で、矢印付きの赤ペンキもあった。山屋のものではないだろうが、的確にルート案内をしていた。

 

相変わらず足許の状態は良く、楽に足を運んでゆける。3つ目(壊れたのを含め)の炭焼き釜を見ると、その先で昭和44年設置の林業公社の看板を見る。現存するカラマツはその時に植えられたようである。前を見つつ、足許にも気を使っていると、散弾の薬莢が落ちていた。狩猟時期には要注意となる。目指す稜線が近くなると、谷にナメ岩状の場所が出てくる、滑りやすい足場の場所を這い上がると、その先はかなりの急峻になる。そこに一筋の獣道が山頂側に向けて上がっているので、伝った方がいいだろう。意固地にも沢を詰めて尾根に突き上げる事を目標にしていた為に、そのまま急峻を駆け上がる。急峻過ぎて、途中にあるコンクリートの境界標柱は倒れているくらいであった。

 

尾根に乗り上げる。谷部も歩きやすかったが、この尾根も非常に状態がいい。西に進めば笠無の三角点峰へ、今回は東に進む。僅かに駆け上がり、少し右手に巻き込むように進むと、1460高点に到達する。しかしその場所には何も無く、この山の山頂としては三角点の場所を主としているようだ。この高点の場所に、黄色い絶縁テープを縛り唯一の人工物とした。早く色褪せて自然と同化して欲しいが、今は目立ちすぎる。“そう思うなら着けるなよ”と言われそうだが、最高点に何も無いのも・・・。ここから3分ほどで三角点の場所に到着。驚いた事に、ここにもKUMOカラーの大きな標識が建てられていた。そして小さな御影石の四等点も埋まっている。四等なので新しいはずだが、「角」の字は、旧字体で刻まれていた。そして西側のミズナラの木に新ハイのミッキーマウス形状の標識も掛かっていた。この周辺では確か兎薮にもあった標識である。展望は全く無いが、そこそこの広さがあるので閉鎖感は無い。もう少し難儀しながら登る場所と思ってきたが、谷ルートがとても歩きやすく、短時間で到達できた。下山はどうしようかと考えるが、調査のために南の尾根を伝う事にした。

 

下り始め、最初の尾根分岐となる場所は、アカマツに大ぶりな虫ようがある場所で、それがある方(西)へ足を進める。次に1350m付近でも尾根分岐があり、ここは右側の赤い絶縁テープがある方へ進む。降りて行くと枯れた奇形の大木があり、その先へと道形は降りている。1317高点からも、西に尾根を拾う。要するに下山時は、尾根を右に右に拾えばいい。ただ、他にも右への枝尾根があるので、現地では良く見定めねばならない。1317高点だったか、やや密生した植生がある尾根を、分けながら降りて行く。尾根を西(北)側に逃げた方が歩き易い。そして暫く行くと、赤く塗られた恩賜林の標柱がある。ここからさらに尾根(広がる)を行けるのだが、このあたりで西側の谷を目指して降りて行ってしまったほうが無難であった。まじめに尾根を下ると、林道脇のコンクリートよう壁の上に出てしまい、降りるに降りられず長い距離を西にトラバースして往路の谷に戻った。従い、恩賜林の赤い標柱をリミットに、西に下る方が安全となる。谷に降りた場所は、最初に見た崩壊した炭焼き釜で、そこから僅かに下り車に到着。

 

狙うに際し、一番安全なのは谷を登り、谷を降りるコース取りだろう。尾根を歩くより、遥かに歩き易い地形であった。何よりも気持ちがいいのである。一人で歩くも良し、数名で歩くも良し、そんな場所であった。


chizu1.jpg

chizu2.jpg 

      

                       戻る