北沢山 1968.9m
2009.1.24(土)
雪時々晴れ のち曇り 単独 萱ヶ平ゲートから 行動時間:6H51M
@萱ヶ平ゲート6:06→(63M)→A権兵衛峠7:09〜13→(7M)→B駐車場・トイレ7:20→(29M)→C展望台7:49→(16M)→D尾根に乗る8:05→(60M)→Eアンテナピーク9:05→(103M)→F北沢山10:48〜11:23→(21M)→G1884高点11:44〜47→(55M)→H巡視路に乗る12:42→(5M)→I林道終点12:47〜50→(7M)→Jゲート12:57
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@権兵衛街道 萱ヶ平ゲート。 | 権兵衛峠400m手前、米の道への入口。 | A権兵衛峠 | A権兵衛峠の東屋 |
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権兵衛峠から北に向かう道。 | 途中の送電線鉄塔。後には1806.5アンテナピークが見える。 | B駐車スペースとトイレ | 駐車スペースの北端にある通行止めの標識。 |
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途中モノレールの麓基地がある。山頂基地がアンテナピーク。 | C展望台的場所がある。ここから取り付く。 | D権兵衛トンネル上の尾根に乗る。 | D尾根に乗った場所から登って来た斜面を見る。 |
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Eアンテナピーク。三角点は裏側。 | Eアンテナピークから見る北沢山。 | アンテナピークから先にはリボンが続く。 | 尾根上には目立つ奇岩がちらほらとある。 |
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もうすぐ北沢山。少し急峻になる。 | F北沢山山頂。南から北側。 | F三角点補助標柱が顔を出していた。 | Fコンクリート製の標柱を掘り出した。 |
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F今日はフリーライド・オフ・リミッツ+ピュア・パフォーマンス。 | F木曽駒側は雪雲の中。 | F山頂から経ヶ岳側。 | Fリボンを残す。 |
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G1884高点。往路のトレール。 | 1884高点から西へ下って行く。 | 1750mからはダケカンバの生える快適なバーン。 | 1530m付近。 |
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H1420m付近で巡視路に乗る | 谷を跨ぐ手前にあった巡視路の標識。 | I林道終点には、林業関係者が入って来ていた。 | Jゲートに到着。 |
今年の冬季は、雪の上をガツガツと歩こうとの思いがある。全ては北アの硫黄尾根に向かう準備なのだが、雪に対する慣れは経験しかなく、あとは運と不運のどっちに転ぶかで、登頂できるか否かが決まる。よって自分で出来る部分の努力は、後悔しないように最大限やっておきたい。そんな思いがあり、今週もまた雪のあるエリアを選び、権兵衛峠の北にある北沢山を目指す事とした。
週中は降雪がだいぶあったようであり、山頂まで届くかどうかに疑問符がついた。もう少し標高を落そうかと思ったが、目標はそれこそ高いほどに達成感がある。単独ワカンでは厳しいが、スキーなら届くだろうとスキー装備で出向く。経由地である権兵衛峠は、雪さえ無ければ、昔の峠道があり簡単にアプローチが出来る。常々楽をして踏みたいと思っている部分との矛盾はあるが、全ては前記の硫黄尾根で結果を出す為。かと言って、ここを練習地と簡単に思っているわけでなく、初心忘るるべからずで、1座は1座、緊張感を持って挑んでゆく。
1:00に家を出る。空には星が無くどんよりとしていた。野辺山を経て、八ヶ岳南面道路を伝い小淵沢に出る。途中の道路には一切の凍った場所は無かった。杖突峠に上って高遠に下り、伊那から国道361号で権兵衛トンネルへ向かう。峠へのアプローチを、伊那側と木曽側のどちらからにしようかと迷ったが、峠へ向かう車道(権兵衛街道)距離の短い木曽側から入る事とした。権兵衛トンネルを抜け、左(東)側を気にしていると、旧道への連絡道路があり、そこから旧道に入る。面白いのは麓側への道は通行止めで、峠側が開放してあった。普通は上に行くほどに「止める」のだが、ここはこの上に集落があるので開放してあるのである。
積雪の道を行くとしばしで萱ヶ平地区に入る。手前には立派なバス停があり、生活の場がある様子が見て取れた。ちょうど左にカーブする場所に「米の道」と書かれた表示があり、村内への進むように案内していた。車で突っ込んだが、住居を目の前に行止りとなり、そこは駐車しておくのに適当な場所でなく引き返す。カーブまで戻り、道なりに進むと強固なゲートがあり、ここで権兵衛街道は冬季封鎖されていた。ゲート横から除雪した道が東に上がっており、ここも入ってみたが、先ほどと同じく、民家へ続く道であった。この道はかなり細く、谷側に傾いている場所もあり、積雪期は特に注意したい。駐車に最適な場所はゲート前となり、路肩に寄せて仮眠となる。林道歩きなので出発しても良かったが、雪が強く降り出し歩きたい欲求を抑えていた。小用に外に出ると、周辺にある雪は柔らかい。目標地点に届くのか・・・。
雪は深々と言うより、車を叩くような硬い雪がづっと降っていた。目を瞑りながらコース取りを頭に浮かべ、コースタイムを算入する。ゲートから権兵衛峠までは距離にして2キロ強。夏道で1時間であり、雪を考慮して1.5時間とする。そこから北沢山までが3キロ強であるから、単純に1キロ×1時間として合計4.5時間をみた。これはスキーの機動力を加味させて考えてあり、この日の柔らかい雪の状態だと、スノーシューやワカンだったら余裕をみて5〜5.5時間ほどかかるだろう。そんな事を思いながらうつらうつらしていた。
ボンネットを叩く雪の音がしなくなり、途端に登行意欲が出てくる。スキーにシールを張り雪の上に立つ。そしてゲートを越えて林道(権兵衛街道)を上がって行く。そこには深い車の轍があるのだが、猟師の轍ではない。と言うのは猟師なら何台も連ねて山に入るはずだが、轍を形成している車は1車種のもののようであった。その脇をスキートレールをつけながら上がって行く。帰りにここを気持ちよく滑る為に、なるべくレールを乱さないように真っ直ぐなレールを引いてゆく。外気温はマイナス5度。雪も降っており、薄手の手袋では悴んで寒いほどであった。
権兵衛峠が近くなり、道が九十九折を始める辺りに来ると、「米の道 権兵衛峠ルート 山頂まであと400m」の表示があり、ショートカット道が上がっていた。スキーでも伝いやすい道で、おそらく昔はここを馬や篭が通った場所なのであろう。車道を3回跨ぐように米の道は切られ、登り上げると1523標高点を取っている権兵衛峠に到着した。常水のはずの水は凍てつき、周囲は白と黒の寂しい景色であった。南側へは登山道が新たに切られたようで、案内看板があり茶臼山までのルートが記されていた。分水嶺の石碑も殆ど雪に埋もれ、「嶺」の字がやっと読み取れるほどまで埋まっていた。
さて北進開始。東屋を左に見て稜線を行くと、驚くほど快適な道がそこにあった。そして大きな送電線鉄塔設備があり、ここは開けていて展望がいい。目指すルート途中のアンテナ設備も良く見えていた。そしてさらに北に進むと、トイレ付きの駐車場があり、どうやらこちらが峠への正規アプローチ場所のようであった。道はこの先で「通行止め」の看板があるが、「展望台までは通れます」と小さく書かれていた。鉄塔の場所から見えた、この先にあるアンテナピークへは、1656高点の東に始まる破線ルートを辿ろうと思っていたが、気にしていたものの判らず通過してしまった。地形に倣うようなルートではない為か、冬季は判りずらいのかもしれない。こうなれば権兵衛トンネル上を東西に走る尾根を使おうと、1552高点に向けて緩やかに下って行く。すると途中に展望台のような場所があり、山手側の一段高い場所に上がれるようになっていた。内心あまり東に進むのは面白くなかったので、この取付き場所はありがたく、ここから林道を離れ入山となった。雪があるものの笹が出ており、倒木もちらほらとある。シール登行にはちといやらしい場所であったが、果敢にも上がって行く。
主尾根に乗ると時折マーキングもあり、伝っている人も居るようであった。緩やかに上がっているのだが、微細なアップダウンが多く、何度もヒールサポートを調整しながら最適な状態で足を上げてゆく。そして最後の急峻をつづら折に登りきると、大きな立派なアンテナ施設が目の前に現れた。周囲にはこの施設を示す文言が書かれたものは無く、建物の詳細は判らなかった。来る途中に見ている、建物からのモノレールがここに繋がっていた。施設の東西には見事な平地があり、どちらも気持ちがいい。テン場としては風当たりこそ強いが、平らと言う部分では最適である。目指す北沢山も遠くに見え。その先には経ヶ岳も鎮座していた。内心もう少し早くにここに着く筈であったが、権兵衛峠からここまでのコース取りがいまいち良くなかったようだ。このアンテナピークの西側には三角点が埋まっているようなのだが、流石に掘り出す根性は無かった。
さてアンテナピークから歩き出す。時折ピンクのリボンが下がり、好事家が通過しているようであった。権兵衛峠にあった「伊那用水路」の解説文には、用水路を引いたのは「北沢山」までとあるのだが、まさかこの尾根上を用水路が通っていたのではなかろう。でも、少し切り開きがあったような歩き易い尾根で、可能性も無きにしも非ずと現地を見ていた。緩やかにアップダウンがあり、時折西側に直立した奇岩が立っていた。歩きやすいと言うものの、この柔らかい雪では、スキーだからこの調子であって、カンジキなら先ほどのアンテナピークまでで股関節が痛くなっているであろう。
1884高点は、先ほどのアンテナピークに次いで広い山頂で、そこそこ展望のある場所であった。目指す北沢山はもうすぐであるが、山頂へは最後の急登も見えており、まだまだ気を緩める場合ではなかった。積雪状態は、笹が30センチほど顔を出している状態で、これで通年通りなのか、多いのか少ないのかも判らない。もう少し笹が埋まってくれればスキーも滑らしやすいのだが、時折罠の様にスキーに引っかかり、進むのに難儀した。最後の急登は西側の樹林帯の中を進むように上がって行く。東側より少し雪が硬くなっていたので、こちらの方が登りやすかった。
こんもりとした北沢山の山頂部に到達。何も標識は無いかと思ったが、最高所の場所には、三角点の補助標柱が15センチほど顔を出していた。これが顔を出しているくらいだから、三角点は簡単に掘り出せると思って周囲を掘り返してみるが、残念ながら見つからず。その代わりに、その標柱から南に2mほどの場所に、コンクリートで出来た石柱を見つけ出した。何も山名を印す物が無く、久しぶりにリボンを設置する。それにしてもどれほどの積雪量なのか、補助標柱の下は掘れども掘れども雪であった。スキー板を外すと、ストンと股位まで踏み抜いた。ちょうど天気も回復してきて日差しも出てきた。雨具の風防を取っても居られるほどになり、展望を楽しみながらヤキソバパンを齧る。伊那の町も眼下に見え、気持ち良さは抜群。登り甲斐のある山と言えよう。これで木曽駒側の雪雲が取れれば言う事は無いのだが、これだけは最後まで適わなかった。北を向くと経ヶ岳に向かう尾根が続いている。この調子で行けば、あと2時間ほどで到達できるであろう。最初から行くつもりで来ていれば別だが、今日のモチベーションはここまでである。トランシーバーを握ると、遠く大宮の才媛と話す事が出来た。
さて下山。シールを外したいところだが、すぐに1884ピークへの登り返しがあり、ここはつけたまま滑り降りる。そして1884ピークに登り上げ、ここで再度地図を眺める。林道には滑りやすいようにトレースを付けて来ているが、滑りはいいものの、同じ道を辿ってもつまらないと言う部分もある。少しギャンブルだが、時間も充分あり、ここから西に滑り降りる事にした。この先往路を辿ってもアンテナピークまでシールは外せないのは判っているし、アンテナピークから滑るにしたところで、斜面の状況が判らないのはここと同条件であった。シールを外し、笹の出た尾根斜面を滑り降りる。木が林立しており、それをマーカーに見立てて縫うように降りて行く。途中少し登り返しがあり微妙に時間が取られるが、それ以外は何とか快適に降りてゆく事が出来た。
下る方向を変えるのは1750mの肩の部分で、ここから南側にはダケカンバの広大なバーンが広がっている。どこを滑ってもいいような場所で、大きなターンをしながら降りて行く。しかし気をつけねばならないのは、時折岩が顔を出しており、それらを目視で確認しながら降りて行った。意外や滑れる場所で、スキーを外したのは1450m付近であり、そこまでは快調に降りて来られた。スキーを外し少し下ると、地形図上の水線の入る谷があり、その右岸側斜面には山道が付いていた。何の道かと辿って行くと、途中に黄色い標柱があり、送電線の巡視路である事が判った。ちょっと綺麗な字で判読が難しかったのだが「須松線 75」と書かれていた。「須」の部分が不確か。
途中で谷を跨ぐのにエキスパンドメタルの乗った橋を渡る。そして対岸をトラバースして行くとなにやらキシキシと音が聞こえてきた。スワッ居るなと思って恐る恐る足を進めると、なんと居たのは林業関係者の若者であった。なんでもこの時期に送電線の下の下草を刈るそうな。「こんな雪の積もった時期にどうして」と言いたい所であったが、こちらは遊び、向こうは仕事、こんな場所で諍いはしたくない。「ご苦労様です」と声をかけて、世間話をする。向こうも私をクマと思ったらしく、少し構えたそうだ。これが向こうが猟師だったらと思ったらゾッとした。林業関係者はこの場所までジムニーで上って来ており、林道の終点的場所になっていた。ここで再びスキーを履いて一気に滑り降りる。途中で権兵衛街道に乗り、往路のトレールを伝ったのは400mほどであった。雪の上に付いていた轍は、どうやらこのジムニーのものであったようだった。
ゲートに到着し時計を見ると、まだ13時前。途中少し登り返す場所もあったが、流石にスキーでの下降は速い。でも戒めねばならないのは、その速さ故に間違えた時には修正に時間がかかる。滑降を楽しみつつ、ルートファインディングはしっかりせねばと思ったのであった。
ここはもう少し雪が締まった残雪期がお勧めである。各通過点ピークはパーティー行動でも受け入れてくれる広さがあり、なんと言っても北沢山山頂の居心地の良さは抜群である。展望が良いと言う事は場合によっては風当たりも強いのだが、快晴の日に当れば、登山してて良かった、登って良かったと思う場所であると思う。