小虫倉   1269m          虫倉山     1378.1m   

 
 2009.6.21(日)   


   雨のち晴れ     同行者あり       岩井堂コースを登り、小虫倉コースを下る。          行動時間5H15M


@岩井堂コース登山口8:06→(35M)→A尾根に乗る8:41→(32M)→B小虫倉9:13〜19→(47M)→C虫倉山10:06〜54→(2M)→D小虫倉コース下降点10:56→(81M)→E地京原虫倉神社12:17〜24→(24M)→F籾生地区分岐12:48→(19M)→G虫倉山大看板前分岐13:07→(14M)→K岩井堂コース登山口帰り13:21


tozanguchi.jpg  oneni.jpg  ooubajinjya.jpg  komushikurasancyou.jpg 
@岩井堂コースから入山。入山して5分ほどの場所が荒れている。 A尾根に乗る。道標あり。 B大姥神社がある小虫倉。最高点は東側。 B小虫倉の最高点にある標識。
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B最高点から祠側の様子。 小虫倉と虫倉山との間の鎖場。ここは中間峰からの下り(最初の鎖場)。 C虫倉山山頂。天気が良ければ展望がいいのだが・・・。 C三等三角点。無残にも四隅が欠かれている。
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C中条村設置のFUJINONの大型双眼鏡。 C山頂のツツジは最盛期。 C山ネズミ氏は昨年来ているようだ。 D小虫倉コースへの下降点から下の様子。最初はなだらかだが、急に・・・。
kakoucyuu.jpg  kakoucyuu2.jpg  ufo.jpg  okusya.jpg 
急峻地形をタイガーロープに伝って降りてくる。 この斜面には4人居る。ガスの中、雨具の色による見え方の違いがよく判る。 途中にある「UFO穴」の落書き。この左側に窪地あり。炭焼き穴?  山の神かと思ったが、虫倉神社奥社のよう。 
mushikurajinjya.jpg  syoumen.jpg  toriishitakara.jpg  momio.jpg 
E地京原虫倉神社に到着。この辺りは野草が繁茂している。  E社殿正面から。社殿の入口に記帳ノートが下がっている。  舗装林道側から神社への参道。下山は舗装路を下側へ。 F籾生の分岐箇所。後のコンクリートの中に子牛が居た。
ushi.jpg  gainenzu.jpg  tozanguchikaeri.jpg  cyuusya.jpg 
F人懐こい子牛。 G虫倉山大概念図前。ここから岩井堂登山口まで約1キロ。 H岩井堂コース登山口まで戻る。 H登山口の先、カーブミラー前に駐車。 


  

 先だってはソフトクリームの大メーカーから声がかかり、当H・Pを載せて頂ける事になった。どこでどう評価されるか判らないと思っていたら、今回は女性ばかり4名のグループからガイドをして欲しいと声がかかった。しかもそのグループ内のほとんどの方は山を歩いた事が無いと言う。私の歩き方が面白そうに思えたのか、依頼に至った経緯こそ聞かなかったが、一月以上前から日取りが決められ、お願いをされていた。インターネットとはいろんな広がりが出来るものと感心するのだが、頼まれたのは他人事でなく私が当事者、ちょっと親身になって対応せねばならなかった。

 
  少し歩いた事がある方なら気が楽なのだが、全くの初心者となると、これまた困った。しかも4人居れば、それぞれの体力も違うだろうし、足が揃わない事は予測できる。そんな中で、山の楽しみを植えつけて、次に繋がるような山行にせねばならない。と言うかしたい。各エリアの地図を見ながら、自分の山行以上に真剣に場所選びをした。しかも彼女らからは一つ注文が入っており、「散策」でなく「山登り」をして欲しいと言われていた。この注文が無ければ、女性なので少し軽めの場所を選ぶ事になったが、しっかり歩ける場所を用意せねばならなかった。

 
 自分自身でも「山登り」の概念がどこら辺に中心があるのかよく判らなかった。八ヶ岳のピラタス周辺、中アの千畳敷、後立山の遠見尾根などを候補に上げたが、一級の道は楽な道が多い。しかし山登りの楽しさは、スリルや少々の困難にあり、達成感は集中した時間の長さに比例するのではないか、そんな事を思い、谷川岳の北側の大源太山を選び出した。一本橋、ザイルに伝っての渡渉、急登、好展望。今回の要望にもってこいの場所に思え、この場所で登山計画書を彼女らに提出した。しかし前日の土曜日、翌日の雨が予報されていた。渡渉があるので、流石に初心者には酷と大源太山は直ぐに取りやめた。天気にそっぽを向かれ、また別の場所を探さねばならなくなった。梅雨だからしょうがないとも言えるのだが、ここで中止と言う選択もあった。しかし雨天決行で良いとの事で、コースが多く臨機応変にルート選びが出来る中条村の虫倉山に決定した。

 
 5:30集合場所に皆が集まった。ザーザー降りの雨の中、「雨具は大丈夫ですよね」と聞くと、一応「大丈夫です」と返答があった。しかし中の一人から、「私、七分寸の雨具なんです」と言う。“何で雨具で七分寸”と思って良く聞くと、ポンチョタイプのもののようであった。まあ無いよりマシで、おそらく今日の雨での蒸れで、こんな場合使えるかどうか、自分で体感できるだろうと思い黙っていた。ただ、それにより山を嫌いになってしまうとまずいのだが・・・。七部寸で笑わせてもらったのだが、さらに「これ男物なんです」と言う。「ええっ」とまたまたびっくり。「上はいいけど、下はありますか」と聞くと、ニコニコしながら「これ300円だったんです」と満面の笑みで見せてくれる。いやはや山屋たるもの、このくらいの道具に固執しないバイタリティーが必要だと、初心者の方に思い知らされたりもするのだった。


 上信越道に乗ってビューンとひとっ走り。更埴で降りて、県道77号から国道19号に入り、笹平トンネル東から県道31号に乗って中条トンネルに潜ったら、西側出口で右折(北進)して、あとは452号で現地まで一本道。経路には「やきもち家」と「音楽堂」の案内看板が無数にあり、迷う事はない。コース情報を思い浮かべながら、どのルートを辿るか悩みながらハンドルを握っていた。この雨の中だと、安全で無難なのは不動滝コース。ただ、安全ゆえに面白みが無いように思えた。もう少し緊張感を持たせるルートとして岩井堂コースがある。結局ここを登りに使う事にした。登山口に行く最後の分岐には、虫倉山全体を示す大概念図があり、ルート配置の様子がしっかり読み取れた。そこから1キロほど北に進むと、岩井堂コースの登山口があった。駐車余地は、南側と東側に各1台ほどの路側余地があり、東側のカーブミラーの所に寄せる。雨は依然と降り続き、すぐに雨具を着込んで準備となる。靴の縛り方から教えてやり、これで見かけはいっぱしのハイカー集団となった。七分寸のポンチョもお披露目となり、賑やかにスタートを切る。


 登山口から入山し、振り向きながら各人の足の出し方を観察する。それから上体の使い方。最初は皆同じようにぎこちないが、5分ほどで素の状態が見え出してくる。岩井堂観音への道を左に見て、雑草で覆われた登山道を少し行くと沢を渡る。水を得るのはここが最終となる。そしてこの先に高低差3mほどの崩落地がある。雨でかなり滑り、私でも嫌な場所に思えた。コース取りをマズッタかと思ったが、皆ワーワーキャーキャー言いながら登ってくる。しかし楽しいと言うよりは、“こんな場所を歩かされるのか”と微妙にブルーな気持ちであったに違いない。雨は強くなるばかりで雨具は脱げず、内側からは歩行距離に比例して汗が噴出してくる。3名はゴアの雨具だが、七分寸ポンチョは酷い状態だろう。判ってはいるが、それをあまり言ってはマイナス効果と黙っていた。


 九十九折を繰り返すようになると、道も安定しなだらかになる。少し恐怖感が和らいだようで、後からの話し声も賑やかになる。ただ、やはり力の差が如実に現れてしまい、少しパーティーが長くなってしまった。大股を止めて、ピッチ歩行に切り替えてコツコツと登ってゆく。歩ける方の視覚には私の歩行が沢山足を出しているのでしっかり歩いているように見えるはず。一方少し遅れている人には進度を遅めたので着いて来るのが楽だろう。このように全ての方を満足されるよう気遣いながら進んで行く。ホウチャクソウが花を垂れ、ギンリョウソウも顔を出していた。それら山野草を解説しながら歩調を合わせてゆく。尾根に乗り、登山道が緩やかになると、理想的な間隔の短いパーティー形状となった。少し薄くらい樹林帯を行くのだが、ガスも垂れ込め、後の声もしなくなる。皆同じように不安になっているようだった。スタートから1時間で休憩としていたが、僅かに時間内では小虫倉に届かず、もう少しと頑張ってもらい山頂を目指す。


 登山口から67分、初心者としてはまずまずの時間で大姥神社前に到着した。社殿の奥の方が高みになっており、そこに「小虫倉」と書かれた大きな標識が立っていた。社殿の前に戻り、ここまでの様子を尋ねると、一人が「トレッドミルに乗って歩いている感じ」と言った。「どういう意味ですか」と尋ねると、「歩いても歩いても着かない感じ」と言う。判りやすいような判り難い様な例えだが、初めて山を歩く人にはそう感じるのかと、素直に受け止めた。じっとしていると体が冷えてしまうので、6分ほどの休憩の後、虫倉山を目指す。


 コルまで一気に下降しだす。後を見ると、登りの筋肉使いから、下りへとすぐには切り替えられないようで、かなり慎重に下って来ていた。それで正解である。そして中間のピークを越えると、ここから核心部で暫く鎖場が続く。後から「見て見て、この先、見えないよ」と急斜面を覗き込みながら言葉にしていた。このルートに入っての初めての下り箇所であり、慎重に下ってもらう。それを見ながら各人の下りのセンスを観察。下りは往路を戻ってはつまらないと、小虫倉コースを思っていた。急斜面の連続なので、行けるかどうか不安であり、ここで様子をよく見た訳であった。次に登りに入ると、チェーンを握りながらの腕力を使う場所が連続する。雨で足場がツルツルであり、見本である私が滑ってしまっている状態であった。登りに入って2本目の鎖の所が少し荒れていて、女性には足上げが辛い段差のようであった。この急登を過ぎると、小虫倉コースの下降点があり、少し繁茂した野草を分けながら進むと、一気に視界が開けた。


 虫倉山登頂。ちょうど2時間で到着。次々に到着し、歓声を上げる。少し苦労した分、喜びもひとしおの様であった。ガスで全く展望はなし。元来展望が良い場所だけにこの部分は残念だが、その代わりに山頂では綺麗なツツジが目を和ませてくれていた。雨は依然止まず。西側に東屋があるので、それを頼りに雨宿りしたいところだが、かなり距離があり、ここは我慢してもらうしかなかった。あまり寒くなかったのが幸いだった。それでも皆ずぶ濡れ、湯を沸かしコーヒーを入れ、労をねぎらう。一瞬ガスが取れ、姨捨山が姿を現し、そのちょっとした眺望にも歓声が上がる。雲が足の下にあることでさえ、初体験のようであり、しばし感動されていた。「食事を」と言ったが、疲労が強く腹が空かないようであった。言っている意味は良く判る。よって疲れの度合いも把握出来た。そんな会話をしながらも下山路をずっと考えていた。小虫倉コースを行けるか、今ほどのコースを戻るか。雨は少し小康状態になる時もあるが、降り止むほどにはならない。急峻尾根であり、脚力とロープを掴む腕力が必要になる。ただ頼もしかったのは、不思議と皆さん腕力がある。なぜなのかと考えると、皆さん看護師さんであり、患者さんを支えたり起こしたりで腕力が強いのであった。これなら行けるか、と東に下りだす。


 小虫倉コース下降点から南に下りだす。ルート上の苔むした岩が良く滑り、慎重に足場を探りながら降りてゆく。下りだして5分ほどするとロープを流してある急峻尾根となる。足場が滑り、我ながら引き返そうかと思ったが、後からは元気に降りてくる。少しのスリップも、キャッキャ楽しんでいるようだった。こちらが思うほどに危険度は感じていないようだった。急下降を終えコルに降り立ち、再び僅かに登ると、またその先もタイガーロープが続く。暫くこのロープの急下降を連続していると、ふと気づいた時には、後から来る皆さんがいっぱしの登山家に見えるよう頼もしくなっている。あからさまに登山口をスタートした時とは違っている。荒療法だが、短時間で山に順応したようである。センスが良いとも言えようか。それでも崩落地の通過は細心の注意でサポートしながら通過。


 このルートは黄ペンキで木に書かれた文言が多い。一番面白かったのが、1150m付近にあった「UFO穴」と書かれた文言。確かに窪地があるのだが、それが炭焼きの穴に見えたのは私だけか。途中ミズナラの木の下にブロック構造の祠があった。山の神だと思ったのだが、下山後確認すると虫倉神社の奥社との事であった。この先は最後のロープ箇所を通過し、その先から緩やかな道となる。尾根をはずれ東側斜面を九十九折を切りながら降りてゆく。足許では沢山のアカガエルが跳ねている。雨を喜んでいるようであった。左下に舗装路が見え、しばしで地京原虫倉神社に到着。境内はレンゲなどが生え、やや鬱蒼とした寂れた感じを醸し出していた。雨も上がり、濡れた雨具を脱ぎ、やっと爽快感が得られる。5分ほどの休憩の後、参道の階段を下る。下りきると舗装林道に乗り、最初判らず左に進んでしまった。岩井堂の方角がその方向なので、てっきり道が続いていると思ったのだが200mほどで行止りとなり引き返す。舗装路をどんどんと下ると、村落内に入り各分岐にはしっかりとした道標があった。そこには岩井堂登山口の表示も見られ、安心感が増す。籾生の分岐には子牛も居り、軽くなでてやると大きなベロで歓迎された。村内は何十年もタイムスリップしたかのような景色であり、特に藁を混ぜ込んだ土壁の土蔵が目を引いていた。大股で舗装路を下って行く。


 朝に見た虫倉山の大看板前で皆を休憩させている間に、1キロほど登り上げ車を取りに行く。雨が一転し、真夏の太陽が出てきた。もう少し速くに好天に転じてくれていたらと思ったのだが、この暑さの中に歩くのも厳しいかとも歩きながら思えた。そして岩井堂コース登山口到着。すぐに車を降ろし、大看板前で皆さんを拾う。そして一路「梅木鉱泉やきもち家」さんへ。湯殿に行き露天に出ると、壁越しに賑やかな聞きなれた声が聞こえてきた。下山後時間が短い為か、余韻を引きずりながら、「あの鎖の場所が」「あのロープの場所が」と、少し興奮気味に語らっていた。楽しそうな様子が会話から伝わり、それを聞いてこちらも安堵した。


 雨天でありどうなるかと思ったが、事故も無く、終わり良ければ全てヨシとなった。


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