笙ガ岳  1635m      

 2009.5.2(土)   


   晴れ     同行者あり       鳥海山ブルーライン、駒止ゲート開門8:30を待って鉾立より入山      行動時間3H38M


@鉾立登山口8:22→(10M)→A白糸の滝観瀑場8:32→(8M)→B賽の河原9:41→(19M)→C長坂道の尾根に乗る10:00→(30M)→D笙ガ岳10:30〜41→(74M)→E展望台11:55→(5M )→F鉾立駐車場12:00

※シリセード等、遊びながら下る。


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鳥海ブルーライン「駒止」ゲート。きっかり8:30に開門。 @鉾立駐車場は、到着時には既に賑やか。 歩き出してすぐ辺り。雪の上のトレースから、入山者の多さが見て取れる。 A白糸の滝の観瀑台(場)から見る稲倉岳側。
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つぼ足トレースとスキートレールが先を行く。 B賽の河原上部より、先を行くスキーヤーを見上げる。 C鳥海湖の真西に突き上げ、長坂道の尾根に乗る。 長坂道に乗って笙ガ岳を望む。白さが眩しい。
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D笙ガ岳山頂の錆びた標識。  D笙ガ岳から見る鳥海山山頂側。  D三角点はやや西側の斜面にあった。  D二等三角点。 
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D三角点の場所から日本海側を見下ろす。  登りたかった鍋森を手前に、鳥海山山頂側。  E展望台まで戻る。  F鉾立まで戻ると、観光客で大賑わい。 


 

 2009年のゴールデンウイークの予定は珍しく何も決めていなかった。例年だと山旅か島旅となるのだが、3月が終わり4月に入っても全くウキウキ感は無かった。間違いなくこの不景気が要因になるが、遊びを考えるほどに心の余裕が無い状況なのであった。とは言いつつも、家にじっとしている私ではない。

 

前日、地図を見ながら行き先を練る。同行者が居るので、私の達成感をそこそこ満たし、その同行者を不機嫌にさせない場所を選ばねばならなかった。緩やかで尚且つ展望の良い場所を探すのだが、登り2時間ほどに纏めないと、歩く足より口が活発に動くようになる。それだけは避けたいのでかなり真剣に場所選びとなった。あとは高速道1000円で、利用するにあたり混雑渋滞もある。こんな時の東北なのだが、東北道を使っては混雑に嵌る。ここは高速のように走れる国道7号線を使い北上する事とし、鳥海山の登り残しを目指す事にした。いつものように観光地を交えた綿密な計画を短時間で練り上げる。我ながら、職種は旅行業界の方が向いているのではないかと思えてしまう。

 

前夜、仕事を終え帰宅するが、どうにも体が重い。体温を測ると38度を超えていた。中止にしようか迷ったが、後ろ向きは大嫌い。熱い風呂にサッと浸かり、2時間ほど布団に包まった。寝ながら気合は出せないが、何とか気合で37度台まで下げる事ができた。それでも微熱は微熱、ややボーッとしながら22:20家を出る。関越道をひた走り、長岡から北陸道に乗り中条で降りる。中条から先は、荒川胎内までの10キロが、今年の7月(18日)に開通するからさらに便利になる。そして7号線に乗り、快調に北上してゆく。信号も少なく車通りもまばら、車の流れは時速90キロほどであった。と周囲の速さに合わせた事にしておく。

 

酒田市を抜け、山形県最後の町の遊佐町に入る。そして直線的なおけさおばこラインが曲がりだすと鳥海ブルーラインも近い。ブルーラインは夜間の通過は出来ないので8:30まで開門を待たねばならない。とりあえずゲートまで入ってみようと、国道7号線からブルーラインへの道に入る。すると分岐してから8.9キロ地点、「駒止」にてゲートされていた。ゲート脇の広見にはテントも見られ、その方々の車の上にはスキーが積まれていた。出発から6時間ちょうど、4:20に到着となった。ゲートがもしかしたら開いているかと思って、開いているのを知らずに待っているような事があると残念なので、その確認だったのだが、閉門状況は公表通りであった。一旦道の駅鳥海まで下って、そこで仮眠とした。ここは朝早くからパンを焼いている。その香ばしい匂いが駐車場に漂っていた。日が上がった中で、あと3時間も待たねばならないのは苦痛であった。せめて7時開門くらいにならないだろうか・・・。

 

7:00道の駅から駒止めに向かう。そして駒止ゲートに着くと庄内ナンバーの四駆がゲート前に止まっていた。よって2番目に並んだ事となった。前の四駆の御仁はスキーにシールを張ったり、既に防寒具を着込んだりしていた。今日は快晴で気温が上がる。用意周到はいいが、見ているこちらが暑くなってきた。時間と共に後ろに並ぶ車も増え、7:30になると、その数も15台を超えた。するとその車列を追い越すように1台の車が上がってきた。それはゲートの鍵を持った管理人であった。“早くに並んでいて良かった。1時間早くに開く”などと俄かに喜んだのだが、管理人は自分の車をゲート内に入れると、再びゲートを閉めて走って行ってしまった。これから道路確認かと落胆。次にこの車がゲート前に現れたのは8:25。公表通りの開門時間なのであった。

 

ゲートが開くと、まるで競馬馬のようにブルーラインを登って行く。ゲート内には車は多く、時間外になったら締め出しされる事はでないようであった。高度を上げて行くと、車道脇には3m以上になった雪の壁があり、見る場所によっては立山のアルペンルートを思わせる場所もあった。そして時折ある駐車場所にはキャリアを積んだ車が停まる。そう、全てはスキーヤーの車で、大平や鉾立から入山するのではなく、帰りの滑りを考えた位置に車を置いて出発しているのであった。こちらはスキーではないので、そのまま鉾立を目指す。それにしても路肩のスキーヤーの車が多い。前夜から居る人なのか、本日象潟側から入った方なのか・・・。

 

鉾立に到着すると、既に20台ほどが停まり、遥か先をスキーで登ってゆく姿もあった。靴は先ほどの駒止で履いてしまっているので、駐車場に停車してすぐにスタートとなった。雪は緩く、そこに無数のトレースが付いている。8年前に訪れた時は、夏道しか辿っていないのだが、今はその殆どを雪が覆っていた。最初に登りあげた展望台施設が、当時の記憶を甦らせた。緩やかに高度を上げて行くので、喘ぐ事もない。白糸の滝の標柱からは、その滝は見えず。現在見えるのは雪に埋め尽くされた奈曽川の谷だけであった。その奈曽川の谷を挟んで向こう側に稲倉岳も見えている。隙あらば行こうかと思っているが、今日の自由度は殆ど無いに等しい。尾根を進みながら今度は西側に目をやる。広大な緩やかなバーンがあり、そこにゴマ粒のように登っているスキーヤーが見える。帰りはさぞかし快適であろう。

 

夏場は賽の河原のある場所に来ると、そこから見えるハイカーは、周囲全体で30人以上居た。そのほとんどはスキーヤーなのだが、つぼ足で行く単独ハイカーもちらほらと見える。みな鳥海山の最高点を目指してゆくようであったが、そんな中私らは長坂道側の笙ガ岳を目指す。鳥海湖の窪地を見下ろす位置まで上がったら、鳥海山に背を向けるように南進して行く。ただここからの進路は下りではなく、大きなアップダウンが途中に二つある。後続者用に細かいステップを切りながら上がって行く。それにしても長坂道側の白さたるや、周囲がやや茶色を含んだ白であるが、笙ガ岳側は真に純白なのであった。これには同行者も喜んでいた。通常のハイカーとは逆行しているような進路であり、この日のハイカーの中では異端児であったことに違いない。

 

笙ガ岳に向かいつつも、左(東)側には常に鍋森が見えている。当然ここも狙う予定で来ているが、歩いている稜線からその山頂までの間に、深い南折川の谷がある。そして鍋森の登攀は間違いなく12本爪の世界となっていた。アイゼンを使わない場合は、北からの岩稜帯を登るのだが、どうにもサッと行って来られる場所には見えなかった。槍ヶ岳の小槍を大槍から見下ろしているような場所となり、実際行ったら、こちらからのギャラリーに見られながらの登攀となる。コース取りを色々想定するが、こちらに戻るまで1時間以上はかかる。せめて30分短縮したいところだが、それは無理に思えた。という事は同行者が居る中での、身勝手な行動は出来ない事となった。まさに目の前にぶら下げられたニンジン状態であり、すぐには割り切れなかったがとりあえず先に笙ガ岳に向かった。

 

1660m峰に続き1650m峰を越えると、緩やかに下り込み、笙ガ岳の山頂部に到着した。そこには錆びて茶色くなった鉄の標識が雪から顔を出しており、そこから西の方へ進んで行くと、斜面途中に二等三角点があった。山頂部全体としては雪が豊富だが西側斜面は雪が無く、草原に岩が点在していた。陽射しで温まった岩に越し掛け日本海を見下ろす。少し靄ってはいるが、広範囲に下界が見下ろせ、高度感が感じられた。南側に目を転じると、万助道の広い尾根道が、その上に白いカーペットを乗せたように見えていた。そよそよと風がある程度で全く寒くない。この日は東西を高気圧に挟まれた国内どこも快晴の日。北アはどうだろう、南アはどうだろう、などと遥か遠くの山々を思ったりもした。

 

さて下山。と言っても最初は登り。登りながらも終始鍋森が気になって東側を何度も見てしまう。雪庇に注意しながら谷を覗き込む。下まで100mほどはあるように見える。短時間で行く場所でなく、やはり時間をかけてゆく場所であった。この後の観光の予定もあるし、稲倉岳も残っている事だし、また出直してこよう。そう思うと、下山する足が俄かに軽くなった。鍋森を狙おうとしているばっかりに、まごついた思いがそのまま歩みに出ていたようであった。

 

下って行くのだが、どんどんと登ってくる人が居る。鳥海山の残雪期人気を、その人数から目の当たりにしたような感じであった。そして展望台を間近にして既に時計は11時に近かった。あるスキーハイカーから「もう山頂を踏んできたのですか」と聞かれ、「いや笙ガ岳のピストンです」と返事すると、意外な話を聞くことが出来た。「高速が渋滞でこんな時間になってしまいました。当初のスタート予定は8:30だったのです」と言った。当然ゲート開門に間に合うように家を出ているから、1時間くらいは余裕をみているだろう。とすると、予定より3時間半の遅れ、その要因が高速の渋滞のようであった。そう聞くと、時間こそ違うが、渋滞を避けて下道ルートを選択した自分の判断は正しかったと思えた。これから山頂を踏んで滑り降りてくるのは、閉門時間の17時くらいだろう。最後に「お気をつけて」と言葉をかけ背を向ける。

 

鉾立の駐車場に戻ると、人、人、人であった。バイカーも多く、五月蝿いエキゾースト音が聞こえ、下界の喧騒がそのまま高所に持ち上げられたように思えた。逃げるように駐車場を後にした。

 

これは奥の手なのだろうが、「駒止」で、ゲート内に居る仲間に乗り換えて開門時間内に入って行く方も居られた。これなら8:30を待たずに出発が出来る。本来一番いいのは、前日の開門時間内に中に入ってしまう事になるが、遠方の場合はそれは厳しい。となると、前日にゲート内に入れる仲間が居ると、開門時間を気にせず入れる事になる、これはずる賢いとは違い、賢いとなるであろう。

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