浅川山 1742.7m
2011.2.12(土)
雪 単独 満願寺よりの林道北沢線を伝って 行動時間6H58M
@林道北沢線境界見出標「界52」6:54→(98M)→A1210m付近尾根道から林道に出る8:32→(14M)→B巡視路60番鉄塔入口8:46→(61M)→C1530m付近林道に出る9:47→(47M)→D浅川山西側の谷に入る10:34→(15M)→E雪が深く進めず敗退10:49→(46M)→F浅川山南西(林道)から取付く11:35→(29M)→G浅川山12:04〜18→(87M)→H林道ゲート帰り13:45→(7M)→I車に到着13:52
@林道北沢線。境界見出標「界52」の場所からスタート。 | @スタートからしばらくは、積雪量は10cmほど。 | この辺りくらいまでは車で入りたかったが。ここまで25分。 | ゲート脇から下界。 |
1180mから尾根に取付き、1250m付近で廃林道が出てくる。 | A1260m付近で林道に出る。 | B1330m付近。60番鉄塔の巡視路の道標の場所から尾根に向けて登って行く。 | 乗り上げた尾根は痩せ尾根。 |
少し尾根が広がり、マーキングも残っていたりする。 | 1450m付近の急登箇所を西に巻く。 | C1530m付近で林道に出る。正面やや右から尾根に取付くも、フカフカで登れず林道を伝う。 | D1600mからの谷を詰めようと進んだが、スキーでも腰までのラッセルになり、敗退。 |
E1670m付近で引き返す。 | 1650mの取付点も最初の痩せ尾根で七転八倒。進めず林道へ。 | F林道途中1690m付近から尾根に向かって登って行く。ここもかなり難儀。 | 尾根上の広いところに乗り上げる。(レンズの雪が邪魔) |
G浅川山山頂。 | G振り返り、伝って来た痩せ尾根。 | Gピンクのリボンが二本縛られていた。 | Gこの方角に常念岳が見えるはずなのだが、この天気。ヤキソバパンで我慢。 |
G今日はオフ・リミッツ。 | G山頂から下山開始。 | 1324高点付近から下の快適斜面を振り返る。 | 1250m付近。送電線と林道が並ぶ場所。 |
スノーモービルの家族連れがすれ違って行った。峠まで行って雪の中でのランチだそうだ。 | Hゲート帰り。 | I車に到着。降り続いたが、さほどの積雪量にはならなかった。 |
2月の3連休。ここ最近は週末毎に荒れ模様となっているが、この週末もご他聞に洩れず荒れた天気。これ幸いにと言うか、腰痛も出ていて、連休初日の金曜日は停滞を決め込んだ。だがしかし、停滞を決め込むとその分の反動は出てくるもので、翌土曜日は是が非でも外に出たくなる。日曜日は回復傾向であり、二日ほど待てば気持ちよく歩けるわけなのだが、その1日が我慢できないのであった。
それにしても雪の中に歩かねばならない。金曜日の降雪を見ていると少し湿った雪のようでもあり、濡れた中での寒々とした行軍が予想できた。何処にしようか・・・。秩父辺りの低山にしようかとも気持ちが動いたが、雪の沢山ある、もがくような場所の方がより楽しい。やはり、気持ちが信州や甲州の方面に向く。そこで見出したのが浅川山。前週の六軒山に続き、林道が直下まで通っている山であり、何とか時間をかければ踏める場所に思えた。ただし、まともに林道を伝えば、満願寺のところから11キロある。これはけっこうな距離。当然のように等高線の混み具合を見ながら短いコース取りを考える。ここは林道を絡ませながらの南北に伸びる尾根を伝うのが順当。送電線も通っていることから、南東から西に巻き込むようなコース取りも出来るようだが、林道がある強みの前者の尾根の方が妥当となる。次に板の選択となるが、林道のみなら長い板。尾根が藪尾根となれば短い板が重宝する。ここの判断はかなりギャンブルであった。降雪の最中と言う事もあり、長い板が賢明かとも思ったが、一か八かの短い板の選択とした。ただし優柔不断。車にはその2式の板を積み込んだ。決定したものの、現地でも判断しようと思ったのだった。
1:15家を出る。粉雪のような降雪。峠越えではしっかりとした圧雪路面となり、しなしなと現地を目指す。重荷のトラックなどはギュンギュンとアクセルを踏み込んでいるようであるが、時にジムニーのような軽い車体が有利だと言ったり、トラックのような重い方が有利だと言ったり、どちらなのか・・・。久しぶりに三才山を越えるのだが、その手前のセブンにはお約束のヤキソバパンが並んでおり、一つ手にしてトンネルに潜ってゆく。松本に下りて安曇野に入って行く。“あれっ雪が少ない・・・”どうやら降りが強いのは太平洋岸側で、日本海側はあまり降雪はなかった感じ。満願寺を目指して突き進む。
少し山間部に入ると、それなりの積雪量。満願寺の駐車場まで入る。ここは参拝者の為に除雪がしてある。そこから右に上がって行く林道に入る。これが北沢線。はてさて今日は何処まで突っ込めるか。最初のうちは20センチほどの積雪量。ただし新雪であり、ハンドルを取られやすい雪質であった。標高1000mほどまで入ったか、積雪量は30センチ。もうスタックしそうで恐々突っ込む感じ。そして僅かに停車すると、四駆のLOWモードにしないと進まなくなった。周辺に余地は無く、回転すら儘ならない。ここから長いバックが始まる。下手にハンドルを切ると、また嵌ってしまう事になり、ゆっくりと降りて行く。雪の下には大きな落石もあり、予期せぬ硬い音にドキッとする。長らくバックし、標高940m付近の場所まで戻る。ここはやや広い路肩があり、何度もタイヤで踏み均して、出発時にスタックしないよう整地してから停車となった(4:05)。
夜明けは早くなったもので、6:30には明るくなった。仮眠も十分で、スタート準備。到着時に雪の様子を把握したが、この先は新雪が乗っている。となると長い板の方が、浮力が増す。ただしそれは林道を伝う事を誓った事にもなり、面白さに欠ける。迷いに迷ったが、短い板にシールを張る。まあこれで届かなくても自業自得と割り切った。そして車を背にしてスタートとなる。このスタート地点には境界見出標「界52」と書かれた標識があった。
10分ほど進むと、後からパジェロミニが登ってきた。私が一度突っ込んでいるので問題なく進めていたが、轍が切れたところで前進不能となった。そして私同様にバックが始まる。すれ違いざまに運転手が、「どこまで行くのですか」と聞いてきた。「浅川山です」と返すと、「えっ、どこ?」。再び「浅川山です」と言うも、「知らないなー」と言う。会話としてはこれでいいのだが、内容は全く伴わない。これと同じことが平地でもよくある。「今週は何処の山に行かれるのですか」と、「○○山です」と返答するのだが、そのほとんどで、相手は無言になる。まあこれは普段の挨拶だと思って割り切っている。本文に戻す。パジェロミニから湧き出てくるタバコの煙に顔をしかめつつ、後に見送る。少し進んでくれるかと一縷の期待をしたが、そこから轍のない新雪の上を進まねばならなかった。
スタートから25分で、北沢線のゲートがある。ここは開け放たれたままになっており、その中央を通過して行く。坦々とした林道登り、先に進むのはサルのようで、独特な歩幅のトレースが続いていた。それを追うように伝ってゆく。やはり冬季は、既にある足跡を追ってしまう習性がある。その方が気分的に楽に感じるから・・・。地形図には浅川の水線がしっかり書かれているが、そこと林道が交わる場所の西側を歩いていると、もう一台のピックアップトラックが登ってきた。“おおう、これならずんずん進め、轍が期待できる”と思ったのだが、彼らも、目の前のカーブのところで、ユーターンをして戻って行った。残念。すれ違い様に「気をつけて」と声を掛けられる。この声が掛けられると言う事は、山を良く判っている事が伺える。ましてや、ここまで雪を掻き分け上がってきている事から、地元の猛者なのだろう。さてこのカーブの場所には、59番と書かれた巡視路標識があり、尾根に道形が登って行っていた。その道に少し期待が膨らむが、そこからの等高線は密。よってこの時期には無理。ズンズンと林道に足を進めてゆく。
最初に取付くのは、林道が南に張り出した標高1185m付近の場所を考えていた。しかしここはスキーを履いて登るには酷な場所で、少し西側に巻き込むと、登れそうな勾配となった。尾根に乗り上げると、そこには細いがしっかりとした道形が確認出来た。クネクネと九十九折を繰り返してつけられており、その狭さと細さから、帰りのここはスキーにならないと判断できた。上の林道が近くなる頃、その僅か手前で廃林道が横切った。東側から上がってきているものだったが、何処かで入口を見落としていたのかもしれない。今日はシールが不調だった。と言うより雪質なのだろうが、全く噛んでくれず、ズリズリと滑り空回り。僅かな勾配でもこの状況であり、先が思いやられるのであった。そして標高1260mで林道に乗る。ここでもすぐに林道を離れようと思ったが、尾根に取付く部分が急峻で見送る。作道の為に地形が削られた弊害であった。
林道を進んで行くと標高1320m付近に60番巡視路の入り口があり、ここから斜面に取付く。巡視路の道形は急峻地形を斜め上(東)に登るように付けられ、流石に伝ってゆけない。何度も切り返しをしながら、ゆっくりと高度を上げてゆく。そして乗り上げた尾根は、麓側の鉄塔のある地形は広いが、上に進む側は痩せ尾根となっていた。“これじゃー滑りに・・・”心の中で不満を吐く。この尾根に乗ってからは、見出標やマーキングも見られるようになった。山屋の物と言うよりは、山師の作業でのマーキングに見えた。やや尾根が広がると、その先1430m辺りから急峻が出てくる。マーキングはそこを直登しているが、どう転んでもそれは無理。大きく西にトラバースして、急峻を回避して巻き上げてゆく。そして標高1530mで再び林道に出る。ここからも北に続く尾根に取付こうと思ったが、柔らかい新雪とグリップしないシールに、林道をそのまま伝って行くことにした。不甲斐ない選択だが、この時はこれが正しい選択であった。勾配の緩い長い林道歩き、気づくともう10時を回っていた。3時間ほどで届くと思っていたのだが、予想外に難儀している。でも手強いほど楽しかったりする。
林道を北に進み、浅川山が東に位置する場所まで登る。腕と手を模ったようなカーブがあるのだが、その指の先にあたる場所から、北にある1782高点側に谷を詰めてしまおうと考えた。それには、また大きく南に進んでから北に進む林道であり、それを面倒に思ったのだった。谷に突っ込むと、最初こそ快適に進めるが、50mほど進んだ辺りから、これはヤバイと思えてきた。両側に急斜面が迫った雪崩の巣のような場所となった。それならそれで谷部の雪は固いと思えたが、それがそうではなくフカフカ。腰辺りまで潜るようになり、ほとんど進まない空回り状態となった。目と鼻の先に山頂があるのに・・・ニンジンをぶら下げられたまま喘いでいる状況。がんばってこのまま行ってみようと思ってはいたが、疲労と焦りが「撤退」の答えを出した。林道まで戻り、嫌な南進が始まる。嫌に思うと長いもので、ここからの時間が凄く長く感じた。今ほどの谷での疲労も大きく、ほとんど牛歩常態となっていた。
1650mの浅川山の取付き箇所。ちょうど鋭角にカーブしている突端なわけだが、目指すにはここしか見出せない。しかし、これまでのカーブの所同様に、地形が削られ急峻になり、鋭利になっている。でもここしかないと思い突っ込む。と、案の定雪が緩く、東側にもんどり打つように崩れる。東側は樹林間隔が広く、いったん滑ろうものなら、かなり流れてしまうような場所であった。必死で食い止め、何とか林道に這い出す。もう雪塗れもいいところ。何度となく繰り返される今日の取付き箇所。全くもって突っぱねられている。今日の試練。少し雪が締まれば違うだろうが、この日の雪は・・・と、登れなかった理由にしておこう。やむなくまたまた林道を進む。この先はゲジゲジマークもあり、北に進んでから戻るように、なだらかな傾斜を選ぼうと思った。と、そのゲジゲジマークに入る手前で、何とか行けそうな斜面が右に現れた。もう一か八かで這い上がってゆく。シールを利かせつつも、エッジを利かせる様な登り。凸凹した荒れた雪面を根性で這い上がる。すると、登りあげた尾根上も、先ほど同様の痩せ尾根であった。幅は1.5mほどか。うねるように雪が堆積して、雪庇も出来ていた。そして進む先が開ける。
やっとの事で浅川山到着。広い山頂であり、なかなか居心地がいい。降雪がなければいいのだが、まあこれも我慢。指先が酷く冷たく、見ると外気温はマイナス10度ほどであった。今日は毛糸のグローブ。このせいか・・・。持ち上げたヤキソバパンと白湯で、一人祝宴。立ち上がる湯気を顔に浴びながら、上からは粉雪に叩かれる。本来ならここから常念岳が見えるはず。おぼろげながら空想したいものの、同定の苦手な私としては、山容さえも頭に浮かんでこない。残念。往路5時間以上の山になってしまった。無積雪期ならすぐ直下まで車で入れるのに・・・。そう思ってしまうと遊びがつまらなくなるのだが、この無駄さがまた楽しい。
下山は往路を戻る。痩せ尾根の部分が少しアップダウンがあるので、200mほど進んでからシールを外し、滑降となった。フカフカの雪。のぼりに苦労した分、その恩恵がある。フロントを持ち上げたテール滑りに徹し、クネクネ・ヨタヨタとシュプールを引きづりながら降りて行く。苦労した1650mの取付き点からは、そのまま尾根を行く。入口には大きなダケカンバがあり印象的。そしてその先の斜面は広く快適。陽射しこそ入らないような樹林帯だが、その広さが気持ちよさとなり、粉雪を巻き上げながら滑り降りる。1550m付近で林道に出て、少し伝い、再び尾根斜面へ。ここは往路のトレールがありルート判断はし易い場所。ただし、1470m付近から下は、急峻地形が待っていた。果敢に攻めるもなかなか厳しく、往路同様に西に巻き込んで降りて行く。その下で痩せ尾根を経て、広い斜面を巡視路の道標を目指して西に下る。ここもかなり気持ちがいい。そして再び林道に乗る。この先の林道をショートカットした場所は、滑りにならないのは判っているので、そのまま林道を伝って降りることにした。
尾根への取付き点を左に見送り、1150m付近まで降りて行くと、前の方からエンジン音が聞こえてきた。また車かと思ったら、スノーモービルであった。女性が運転し、かなりこちらに気遣ってのすれ違いとなった。話しかけると、4台でのツーリングらしい。この先の峠まで行ってランチだそうだ。しばらくすると、後続も来るのだが、可愛い子供が運転し、その後からお父さんらしい姿もある。なんとも微笑ましい。そして嬉しいほど気を使ってすれ違ってゆく。無謀な運転者も多いが、このような対応だと嬉しい。何より、家族で同じ趣味が出来るのは羨ましい。軽やかなエンジン音を微笑ましく見送る。
風を切りながら進んで行く。スノーモービルのキャタピラーの跡が、滑りにはちょうど良く、嬉しいほどに加速するのであった。そのスノーモービルの跡に乗ってからは、あっという間に滑り降り、無事車に到着。少し難儀した分、印象に残る山となった。簡単に登れそうであり、軽く考えていた山だったが、冬季に登って良かったとも言える。またいつか、晴れの日に登り、山頂から常念岳を見てみたい。