糸瀬山 1866.6m
2011.11.5(土)
曇り 同行者あり 林道途中登山口より 行動時間:4H49M
@登山口6:37
→(27M)→A松原よこて(旧道合流点)7:04→(112M)→B糸瀬山8:56〜10:00→(86)→C登山口11:26
@須原駅でなく、林道途中から入山。 | 杉の植林地内は、食害避けのテープが見事。 | 1090.5峰南のルート屈曲点。 | A松原よこて 旧道との合流点。その旧道はかなり道形が薄い。 |
イチョウ谷。銀杏が多いようには見えない。 | 急峻地にはタイガーロープが流されている。 | 胸つき八丁は、僅かな距離を駆け上がる。 | 丸屋の鳥屋。炭焼き址のような石組み。 |
まむし坂。多いのか? | 山居の鳥屋 | 刈られた尾根道 | 一生懸命刈られた尾根道。感謝。 |
東側が開けると砂岩の造形美。 | 途中に御料局の三角点あり。 | しらび平 | 見晴台への分岐。周囲にはタイガーロープが張り巡らされ、それに従う。 |
岩屋もある。2〜3人は入れる。 | B糸瀬山 | B古いわりに状態が良い | B自然石の上に埋められた珍しい三角点。 |
B二等点。人為的に埋められた物だが、既に自然に同化している。 | Bこれがのろし岩。出会って、その大きさに驚く。 | B敷設してあるチェーンに対する注意書き。自己責任という事。 | Bのろし岩のラスト。ナイフリッジになっている。その前に脚立が切れた場所からタイヤチェーンを使って登る辺りが厳しい。 |
Bのろし岩から登ってきた側。 | Bのろし岩最高点から下側。 | Bのろし岩から空木岳側 | Bお約束 |
Bのろし岩から三角点側。 | B見晴台から木曽川を望む。 | 紅葉も終わりに近いが、まだ力強い発色。 | 落ち葉のフカフカの絨毯を・・・。 |
織り成す紅葉。少し茶色が強いか・・・。 | 到着。駐車スペースは300mほど下がった場所にあるが・・・。 |
1900年代後半、金沢に住んでいる時に、金沢市内の山仲間から「糸瀬山に登ってきます」「登りました」と携帯にメールが入った。場所を探ると中央アルプスの前衛峰。マイナー過ぎてマニアック。そこを狙う自体で凄いと思って強く記憶に残っていた。それから幾年。ずっと気にしていた場所であり、残してあった場所。少し藪も漕ぎたく、横にあるその名も横山と抱き合わせで攻めようかと思っていた。そこに急に「何処かに連れてって下さい」と話が舞い込んだ。既に時計は22時に近く、場所の変更は無理に近かった。しょうがない横山は諦め、糸瀬山のみで狙うことにした。
深夜1:30上信越道の某インターで集合し、高速に乗ると見せかけて下道を行く(笑)。急いでゆく必要もなく、これは最初からの予定。野辺山を越え、八ヶ岳南面道路で小淵沢に出て、茅野から杖突峠を越えて高遠に降りる。そして最後の峠の権兵衛峠を潜って木曾谷に入る。ここまでは本当にトラックも少なく順調。しかし国道19号は、相変わらずのジャンボトラックの車列。ある意味、いつもどおりでホッとする。そして途中のセブンでヤキソバパンを仕入れて全ての装備が整う。19号をそのまま南下して行くと、須原駅の北側1キロ地点に「糸瀬山登山口」と書かれた青い標識があり、それに従いハンドルを林道に切ってゆく。狭いが舗装された良い道で、落ち葉を踏みながらどんどんと高度を上げてゆく。途中で導水管を跨ぐ。助手席から「タービンは何処にあるんですかね」と驚く言葉が発せられた。同行者はまだ若い女性。なんでそんなことを・・・と内心驚いたのだった。その先しばらくでヘヤピンカーブのようになり、抜け出すと左側に登山口が見えた。しかし先に進めども駐車余地は無い。300mほど戻ると雑草の生えた7台ほど停められる広見があった。すると「登山口にはトイレはないんですね」と横から、「俺の行く所はトイレなど・・・」と言いたかったが、一を聞いて十を知る。すぐに来た道を大急ぎで降りて須原の駅に行く。予定外だが、これも何かの縁。須原の駅舎を見学する事となった。6時にして既に駅長が働き出していた。再び登り上げ、登山口に到着。下の広見に停めようかと思ったが、甘んじて登山口のまん前の道路脇に停める。ゆっくりと時間をかけて準備し、いざ出発。
杉の植林地の中は、食害に遭わぬようスパイラルにビニールテープが巻かれていた。目の回るような整列ぶり。いきなりの急登で、かなり喘ぎながら登って行く。そして小尾根に乗ったらトラバース気味にズンズンと進む。かなり踏まれた道で、一級の道と言えよう感じであった。既に気づいていたが、地形図の破線ルートとは別の場所を歩いている。道標が頻繁にあるので不安はないものの、どんなルートで続くのか半信半疑であった。トラバースルートが1090.5m三角点から落ちる南東尾根の1015m辺りで終わり、そこからその1090.5m峰に突き上げるように登って行く。付近で一番見ごろな紅葉がこの辺りであった。登り上げると「松原よこせ」」と書かれた看板がある。ここで破線に乗った形となる。ただしその破線を現地で探すも、その道形は見えず。完全に新旧の登山道が世代交代したようであった。深い落ち葉の上を優しく歩いて行く。なにせこのルートは看板が多い。「イチョウ谷」。見下ろしながらイチョウを探すも見当たらない。植生というよりは谷の形状なのかも。
この先も、胸つき八丁などを含め標高1500m付近までは急登が続く。ゆっくりと、そして静かに足を上げて行く。自然界の動物が見られないかと静かに行くが、一方の同行者は相反する考え。動物を危険とみなして会いたくない方。なぜか2つの音色の鈴の音が、周囲に鳴り響いていた。判らぬように少しだけ足早に歩いて距離を開ける。そうして逢えるのは、山鳥くらいであった。
「丸屋の鳥屋」で少し待って足を揃える。石組みがあり、通常なら炭焼き釜に見えるのだが、ここは違うのだろうか。鳥屋とはなんなのだろう。この先のまむし坂の先にも「山居の鳥屋」がある。またまた鳥屋とはなんだろう。そしてここには太いチェーンが残置されていた。これも何に使ったのだろうか。この辺りから尾根上にはくっきりとした作道の跡が見える。ササの緑と隔てるようにアンツーカー色と言うか、落ち葉の茶色の絨毯が高みに向かって続いていた。それが1700m付近になると、深い笹薮の中を切り開いてあり、ここを楽に歩けるのも登山道整備のおかげと感謝する。だんだんと視界が開け、特に東側の眺望が良くなる。空木岳を中心に主稜線が見えている。しかしガスに覆われている場所も多く、今日の遊び場はこの標高で正解のよう。白い白い砂岩の崩落地。見事な自然のオブジェとなっていた。立ち止まり、下に見えるエメラルドグリーンの伊那川ダムを抱き合わせに目の保養。さあもうすぐ山頂。その手前にしらび平らとあるのだが、言うほどに平らな場所ではなく、そのしらびも幼木が目立つ。
山頂部に差し掛かると、目の前に見晴台の分岐道標が落ち葉に埋もれた状態で落ちていた。拾い上げ定位置であろう場所に据える。ここで山頂は何処なのかと迷う。左が見晴台なら、残す右側が山頂なのかと判断し進んで行く。大きな岩がゴロゴロとしており、苔生して、木が覆い被さり同化している物が多い。左側に大きな岩屋も見つつ、その先で倒木の下を潜る。そして北に巻き込むようにして進むと、「ようこそ糸瀬山へ」の標識が目に入った。どうやらここが山頂らしい。ちょっと釈然としない山頂であるが、最後のアプローチがパッとしなかった為であろう。その南側に大岩があり、その上に二等点が埋め込まれていた。人為的に埋め込まれた物だが、完全に岩に同化している。こんなのを見るのは珍しい。以前何処かで見た記憶があるが、これほど大きな石の上というのはここくらいじゃないのだろうか。珍しい場所ではあるが、展望はなく周囲は鬱蒼としている。その鬱蒼としている中に、この山での一番のお目当て、「のろし岩」を探していた。“何処にある、出て来い・・・”と言いつつも、その場所を示す案内看板があった。北側に進んで行く。岩と岩の穴に落ちないようにする為か、この山頂部には幾重にもロープが流されている。それに沿って進む。すると目の前に現れた。3階建ての建造物を見ているような感じ。こんな自然石がなぜにここに・・・。もうこれが見られただけで幸せだった。なにせデカイ。その前に祠があり、岩の上に向けて伸びている脚立の下には、「登るのには自己責任」の旨が書かれた看板が落ちていた。その東側には日本山岳会の登頂者名簿も掲げられ、かなり特異な山頂部に感じた。
さあ、岩登り。この時までは楽な気持ちでいた。しかし脚立を登って行くと、その危険度に怯む。上はチェーンがあるものの代用品の車のタイヤチェーンが敷設されていた。チェーンのフックも掛かっているが、外そうと思えば外れるような仕舞。その外したり付けたり出きる事事態が怖く、ドキドキでそれを掴む。そしてそのラダーに足を入れるのだが、これまた怖い。錫杖岳の左方カンテをやった時にアブミを使ったが、そのアイテムとは状況がかなり違った。踏むと握っているチェーンが圧迫され、岩に擦れた手の甲は血だらけ。さりとて放す訳には行かず我慢の時間。脚立から離れる2mくらいがいやらしい場所であった。2歩ほどを岩に靴をグリップさせ腕力で体を持ち上げねばならない場所だった。その先も気を抜けないといえば気を抜けない場所で、ナイフリッジの上にこちらもタイヤチェーンが流されていた。あるものを利用でいいのだが、スマートでないので握るにも不安なのだった。ほとんど牛歩状態で靴のグリップを確認しながら登って行く。ここは僅かでも雨だったら登らないだろう場所。降っていなくて良かった。そっか、山居の鳥屋に在ったチェーンはここの・・・と伝いながらふと思い出した。
のろし岩の上に立つ。人一人分のスペースで、単独で登ってこれはこれで結果オーライ。恐々足をターンさせながら360度のパノラマ写真を撮る。下の方に小さく同行者が見える。かなりの高度感。僅かなミスが死に結びつく場所であった。それでも感無量。ここを登れるほどになったと言う事、そしてこの岩に出逢えた事。下りは後ろ向きで慎重に下る。よく見ると途中の埋め込んだボルトは浮いてきていた。見なければ良かった。途中が飛べば、体を降られて落下。握力だけでは持たないだろう。そのためか、すぐ下のボルトには細引きがかけられていた。ここでビレーをとって行動すれば安全となるか・・・。登りより下りの方が楽であった。もうしょうがないので鎖に体を預け、岩から体を大きく離して堂々下る。それでも動く脚立に少々ビビリながら下に降り立つ。そして見上げる。「登ったぜ!!」そんな感じだった。ここで大休止。
下山は見晴台に寄って行く。どんな所なのかと思って進む。こちらもタイガーロープが導いている。行き着いた先は岩の上のような場所で西側が切れ落ちていた。足場に注意しながら望むと、眼下に木曽川の流れが見えている。けっこうに良い感じ。展望の乏しい山頂ではあるが、特異な三角点、のろし岩、この展望、巨石の折り重なる景観。けっこうにバラエティーに富んだ山頂と言えよう。ここを最後に山頂を後にする。一気に下って行くのだが、誰か上がって来るだろうと思っていると、1パーティーだけすれ違った。下りながらも次回に繋がるよう横山側を見る。下草が少なく、楽々行ける場所に見えていた。本当ならこのまま行っても良いくらいに植生が薄かった。ただし藪は藪。同行者優先。
1220高点の屈曲点には、その南側に薄い道形が東に伸びていっていた。もしやそれに伝うと横山に・・・無きにしも非ず。今日登れなければ南の1302.4三角点の方からアプローチすれば良いと頭を切り替えたが、その道形を見て、アプローチはもう一度ここから・・・とも思えた。紅葉を存分に楽しみながら、そして落ち葉のグリセードを楽しみながら降りて行く。時計を見ると、まだ午前中。早すぎて、同行者は少し不完全燃焼にように見えていた。一方の私は、木曜日にも歩いているので、この程度で十分。ちょっと不調な部分を加味すると、適当な山旅なのだった。登山口に降り立つと、我が車の後ろに途中ですれ違った方の車が置かれていた。
もう少しハイカーが居るかと思ったが、この秋にしても静山な場所であった。登山口にある登山届けを見ると、この前日、前々日と二人の書き込みしかなかった。山頂展望の乏しい為か、あまり挙って登るような場所ではないようだった。そうそう、のろし岩は誰でも登れるような岩でなく、あのチェーンに身を預ける覚悟をもって登る場所。楽しくを求めるなら、岩には登らないほうが良いだろうと思う。ザイルで懸垂・・・なんて思うが、埋め込みボルトが心許なく、それもしないほうがいいだろうと思えた。