城蔵山  1565m            

 2011.1.8(土)   


  晴れのち曇り     単独       馬曲温泉側林道入り口から          行動時間9H28M


@林道入り口7:02→(81M)→A林道終点(橋)8:23→(138M)→B1140m付近の広尾根に乗る10:41→(172M)→C1420m付近13:33→(62M)→D城蔵山14:35〜56→(16M)→E1470m付近谷滑走開始15:12→(56M)→F林道終点帰り16:08→(22M)→G下山16:30


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外気温は−12度まで下がっていた。 @猿ヶ沢に沿って進む林道の入り口。冬期1台分の除雪余地あり。 猿ヶ沢の大きな堰堤脇を通過。 最初の橋。獣が先行している。
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A林道終点。右俣側へ小さな橋が架けられ、そこを渡って行く。 谷の中は流れがあり、雪が繋がっていない。谷に(進む場合)入ったら左岸側を伝う方が良い。 B1140m付近、広大尾根に乗り上げる。この広い尾根は、やや密生尾根。谷を詰めた方が良いよう。 B1140mから登ってきた谷側を見下ろす。
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B1140m付近から尾根の西側を見る。緩い斜面だが、このように密生帯。 1150m付近。地形図ではなだらかなはずだが、現地は急峻。
1270m付近から、登ってゆく斜面。 1270m付近から、登ってきた斜面。深いラッセルの連続。かなり根性を据えないと、萎えてくる。
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C1420m付近。やっとなだらかな尾根となる。 C1420m付近から下側。なだらかそうに見えるが・・・実際は。 1510m付近。城蔵山の南に伸びる主尾根に乗る。 1510m付近から、東側の三角点峰側を見る。
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1520m付近。かなり勾配の緩い尾根。 D城蔵山。広く気持ちの良い場所。 D今日はカルフのメタと、エボリューションライトのマンゾクスペシャル仕様。 D北西側の展望。野沢温泉側の鍋倉山の山塊が見えている。
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D山頂から北東側。 山頂から僅かに南に下ると、焼額山側の展望がいい。 E1470m付近。往路のトレール。この辺りから南の谷に入ってゆく。 谷の最初は緩斜面でゆるゆる。
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1300m付近。フカフカのパウダースノー。快適斜面。 1300m付近。滑ってきた上側を見る。 F林道終点の橋まで戻る。 G橋の袂に下山。


 
 正月明けの三連休。散々遊んだ後だが、休みとなればまた遊ぶ。遊び過ぎって話もあるが、いずれ遊べなくなる時が来るのだから、それまで思う存分遊んでおこうという算段である。腰も回復し、肺も復調した。これなら少しがんばれる状態となった。


 一方、急な訃報に沈んだ気持ちでの2011年の始まりだった。ここは暮れに他界したJJ氏の追悼登山をせねばならなかった。これは自分にとっての気持ちの整理でもある。氏は藪屋としても勘が良く、文才もあり、カメラ技術も長けていた万能ハイカー。そして何せハートがいい。年明けから虚しさと悔しい思いを引きずりながら1週が経過した。しかしいつまでもそれを引っ張っているわけにはいかず、ここでいったん線を引く。と言っても氏を忘れる事ではなく、人生は前を向いて進まねばならなく、顔を上げて前を向くためのもの。
しばらく生温い登山が続いていたので、ここはきっちりと私らしさを出した山登りとしたいところ。JJ氏に喜んでもらうためにも、行き先は信州とした。そしてガッツリ雪にもがくような場所。木島平村の城蔵山を目指す事にした。新雪を思うと、単独のラッセルではちょっと厳しい距離のように思えたが、その試練と厳しさが、今回の目的に相応しいとも思えた。


 3:15家を出る。上信越道に乗り、一路豊田飯山インターを目指す。高速を北上して行くに連れてどんどんと外気温が下がってゆく。更埴ジャンクションを過ぎて小布施SA前では、チェーン規制の為のタイヤ監視で車線が絞られる。そして豊田飯山インターを降りた時の外気温は−10度となっていた。そこからの国道117号は、テカテカのツルツルで、ご多分に漏れずノロノロ渋滞。前を走る車は、左右に300
mmほど尻を振りながら進んでいる。見ている方が怖い感じ。一瞬でも気を緩めればコントロール不能になりそうだった。スタッドレスが新しいのと、四駆を過信して、どんどんと抜かして行く。中央橋西交差点から403号に折れ、中央橋の上ではマイナス12度と表示し出した。よく冷えている。軽油車であり、あまり気温が低くなるのはいただけない。昔、八ヶ岳で燃料が凍ってしまったことがある。あの時は何度だったのか、その裏付けがないのだが、寒いと軽油が凍ることを体感し、気になる部分でもあった。

 役場北側のローソンで食料を仕入れ、354号に乗って馬曲温泉を目指して行く。今日はその馬曲温泉の、馬曲川を挟んだ相向いの谷を詰めて行く予定。路面には雪が10cmほど乗り、雪煙を巻き上げながら進んで行く。そして馬曲温泉が近づくが、予定の林道は完全に雪に埋もれ道形も判らない様子。夜なので見えないのもあるが、ここまで見えないとは思わなかった。やや狭い林道のようで、道幅が狭い分、判り辛いのだった。よってスタートは夜明けを待つことにした。せっかくなので登山後の温泉の下見と、「望郷の湯」に行く。すると駐車場では融雪剤を撒いている人が居られた。こんな時間から凄い。時計は5時45分だった。道路は除雪して通れるようにはなっているが、駐車余地が全くないような状態。しょうがないので、温泉下の坂道の途中にある、すれ違い用の余地を利用させてもらい仮眠をとりながら夜明けを待つことにした。そこは坂道の途中。横をエンジン音を唸らせながら車が往来する。気になり過ぎるほど気になるが、ここしかないのだからしょうがない。


 6:45夜が明け、周囲が見えるようになる。サンドイッチをほおばりながら、周囲を見ながら降りて行く。降りた向かい側に釣り堀があり、そこに向け橋があるようであるが、その大半を雪が覆いどこにどう道があるのかがよく判らない。やはり、橋の袂の林道から入るしかないようであった。その入り口には1台分の除雪スペースがある。林道の在処を示している除雪なのだが、ここに駐車し邪魔にならないだろうかと危惧する。もしかして、本日この林道を除雪する事だって可能性としてはゼロではない。今日は土曜日。日曜日なら完全に作業は休みと判断できるのだが、土曜日のこのような場所は気を遣うのだった。でももう、ここに停めるしか無かった。「大丈夫だろう」、「大丈夫、大丈夫」、呪文のように心で唱えた。今日の板はカルフのメタ。新雪用にはこの板しか無く、軽さと浮力はピカイチ。経路どれだけのラッセルになるか未知数だが、突っ込むのみ。


 7:02林道入り口からスタートする。沈み込み量は30cmくらい。すぐに右から合流する道と合わさり奥に続く。左に猿ヶ沢を見下ろしながら、雪の上の獣のトレールを追って行く。15分ほど進むと、猿ヶ沢の中に大きな堰堤が現われる。堰堤の上の新雪は80センチほどか、この先どれだけ増えてゆくのか。そして地形図通りに右岸から左岸へと橋で渡ってゆく。橋と言うものは、欄干があって「安心」があるものとつくづく思う。雪で覆われたこのような橋はそれが見えず、道幅があってもドキドキするものであった。地形図を見ると、猿ヶ沢はこの先で右俣と左俣に別れ、水線がそれを示すようにしっかりと描かれている。その出合の150mほど手前から、林道は鋭角に左(北)側に上がっている。無視して沢の脇を進むが、右に寄り過ぎて沢に落ちそうな場面もあった。枯れ草の上に雪が乗り、スカスカの場所があった。林道を伝わないにしても、山手寄りを歩いた方が安全。穴ぼこだらけの場所に、足場に難儀しながら這い上がる。

 沢の出合いの場所から50mほど左俣の方へ進み、林道は終点となった。と言っても、雪があってそう見えただけで、溶けた後のその場を見ていないので本当に終点かは判らない。ただしそこには、中州と言えよう南側の尾根に向けた小さな橋があった。これ幸いにと右俣の方へズレてゆく。ここの橋も、雪の下の橋がどんな構造なのか判らず怖い。流れはしっかりあり、ここで落ちれば山行を止めねばならないほどに濡れる場所。慎重に強度を確かめるように、一歩、二歩と足を進ませる。そして今度は右俣の方へ入って行く。予定では両俣に挟まった尾根を突き上げる予定であったが、右俣がなだらかに奥に続いているので、伝って行く事にした。いつでも北側の尾根には乗れるし・・・と言う考えもあった。伝って行くと、水線の書かれている辺りは、ほとんどで流れが出ていて、雪を分けている。上手くコース取りしないと、地形との関係で進めなくなる場所もあった。突っ込んで、15mほど引き返して高巻きする場所もあり、それを踏まえると、右俣は左岸側を伝う方がいい。


 谷を詰めているものの、北側の尾根に乗ればなだらか地形が待っているのは判っていた。上に行こうか、このまま進もうか、かなり迷いながら足を出していた。それにしても寒い。温度計はマイナス10度を下回っているが、しっかり見てしまうと、視覚からも寒さを感じてしまうので、ちょっと見ただけで元に戻す。谷の弊害というか、だんだんと堆積する雪の量が増してきて進度が落ちて行く。少し休みたいものの、背中を伝う汗が休むと冷たくなるのも判っていた。ここはゆっくりでも動き続けた方がいい。そのまま右俣を詰め、標高1100m付近まで入って居た。上を見ると、朝日でオレンジ色に輝いている。それに対し、ここは日が入らず寒いまま。指先はジンジンしてくるし、ここはお日様に当たりながら少し休憩がしたい。右俣の主流を離れ北側の尾根に向かって登ってゆく。しかし、先程下の方まで照らしていたお日様は、私がもたもた登っているうちに、照らす範囲を変えていき、上へ上へと日差し範囲が狭まって行く。それこそ暖かさを追うように登っていた。ただし、それほど進度が上がらなくなってきていた。何度も九十九を切りながら、ラッセルしてゆく。


 1150m付近。広尾根の上に到着。日差しを受けると、やはり暖かい。お日様の有り難さをヒシと感じるのであった。それにしても厳しい登り、時計の針は既に11時に近い場所になった。ここまでで経路4時間ほど費やしている。残り距離は1/3ほど残っているのだが、これからの斜面が本番斜面で、等高線のきつい斜面が続く場所。届くのか・・・。いや、今日はどうしても山頂を踏まないと・・・不甲斐ない山行は出来ない。逃げの心と前向きな強い心とが葛藤する。どうする。日没は17時。スキーを思うと、下りは2時間みていればいいだろう。となると最終下山時間を15時と決めた。この時間で山頂に届かなければ、戻ることとした。

 東を向いて登り出すのだが、正面やや左(北)の尾根がはっきりしているので、少し進むが、勾配がキツく登るには厳しい。とは言っても、このまま東に突き上げるには、どこを見ても優しい場所は無かった。沢側に戻れば等高線間隔も広くなるので、しょうがなく大きくトラバースして行く。日差しを求めて登り上げて来た尾根ではあるが、そもそもの当初計画では、この広尾根がそのコースであった。沢を伝っていれば・・・なんて少し思ってしまう部分があり、今のコース取りを正当化しようとしていた。フカフカの雪、なかなか進度が上がらない厳しいラッセル。何度も萎えそうになる気持ちを、「今日は是が非でも踏まないと」と強い気持ちで押し戻す。正念場は1200mから1300m間。ここだけで1時間半ほど費やした。斜度のキツさに「雪崩」の心配も出てきた。したがい、地形もそうだが植生の混んだ場所を選ぶようにして登って行くのだった。いつになったらこの苦行から解放されるのか、「やっぱり止めよう」と何度思ったか・・・。


 1400m付近は、やや雪庇の出来たやせ尾根で、そこを下から巻くように、上を切り崩すように進んで行く。そして1420m付近でやっとなだらかな斜面となった。時計は既に13時半をまわっていた。残り1.5時間で山頂まで行かねばならない。やや焦る気持ちもあるが、この先の緩斜面なら手中に収めたとも思えた。これまではブナ林だったのが、上に行くとそれらが雑木と混ざるようになる。


 1510m付近で城蔵山からの尾根に乗った格好になる。谷を挟んで東側に三角点峰が見えるのだが、白くとても寒そうな山であった。起伏をしながら北に進んで行く。さほど風がないのが幸いしており、この外気温に風が加わったら、ここまで来ていなかっただろう。膝の辺りの筋肉がもう攣りそうなほどになっている。我が体力も限界に近いか・・・。もう少し、右へ左へ樹木を避けながら、深いトレールを引きずって進む。でもそれを振り向きながら見ると、「俺ってがんばってる」と、ニンマリしてしまう自分が居る。


 城蔵山山頂。広く平らな山頂で、晴れていればかなり居心地が良い場所に感じた。樹木が生えているものの、その間から周囲が見渡せ、そこそこの展望がある。北西側が一番開け、遠く鍋倉山の尾根が長く続いていた。経路7時間33分。感無量。我ながら諦めずによくぞここまで届いた。持ち上げた白湯を飲みながら感慨に浸る。ただ、あまり長居は出来ない。15時を目安に下山の準備にかかる。バックルを締め込み、さあ次は楽しい滑走。これだけのパウダーなら・・・と地図を見ながらコース取りを考える。このまま西に左俣に降りるのも面白そう。ただ、前半の急斜面と後半の緩斜面とではっきりと分かれてしまっている。時間も押してきているので、安全策を執るのも大事な判断。ここは右俣を下ることにした。


 往路のトレールを拾うように滑って行く。トレールを逸れると全く滑らない。山頂から標高1480mまでは、トレールを遣い、その先から往路に遣った尾根を右に見ながら右俣の谷に入って行く。この谷は最初こそ緩斜面だが、次第に急な谷となり、そこを快調に滑り降りて行く。パウダースノーが周囲に巻き上がり、この上ない気持ち良さ。今季初滑走が、これほどになるとは・・・。時折地図を見ながら地形を確認し、ルートミスをしないよう注意する。楽しく行動が速い反面、ちょっとのミスが大きく響く場合がある。滑る時間は短時間だが、地図を見る時間はじっくりとっていた。何度も休憩を入れながら、自然の中のコースを楽しむ。そして1100m付近で、往路のトレールに乗る。そのトレールには、シカの足跡が着いていた。シカも人間と同じ、他人の通った跡の方が楽と言うことだろう。それらトレールを上書きするように伝って降りて行く。快適、快適。私はあまりスピードが出ない方が気持ちよう感じる方。緩やかに周囲の景色を楽しみながら滑り降りて行く。


 心許ない橋を渡り林道終点に戻る。ここまで来ればもう降りたも同然。ゆっくり降りて山頂から1時間ちょっとだった。やはりスキーは速い。林道を滑り降りて行く。と言ってもかなり勾配が緩いので、踵をフリーにしてスケート走行。テレマーカー気分で、スイースイーと足を伸ばして行く。そして夕日を真っ正面に受けながら林道入り口に到着した。その前を、温泉帰りと思しき車が通過して行く。早く暖かい温泉に浸かりたい・・・。急いで装備を車に放り込み、馬曲温泉に直行。


 さて振り返る。山頂は広く、パーティー山行でも十分に受け入れてくれる場所となるだろう。ただし経路が長い。もう少し雪が締まればかなり違うだろうが、今度は斜面が凍る場所も出てくるから、狙う場合はタイミングが難しいかも。谷の滑るコースを乱さない面では、尾根登りが良いのだろうが、今の時期は時間がかかった。足で登る場合は、スノーシューより和カンジキが良いと思えた。緩斜面も長いのだが、途中にある急斜面に装備を合わせたい。思いのほかいい山だった。谷ルートは、もう一度滑りたいと思うコースであった。


 「おおぅ、やってるやってる」。そんなJJ氏の声が聞こえるような気がする。


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