人形山  1726m       カラモン峰  1679.3m     

            
            
 2011.10.23(土)   


  快晴     単独       中根平から          行動時間8H31M


@登山口5:47→(47M)→A第一休憩所6:30→(26M)→B第二休憩所6:56→(26M)→C宮屋敷跡7:22→(36M)→D県境分岐7:58→(18M)→E人形山8:16〜18→(116M)→Fカラモン峰10:12〜18→(118M)→G人形山帰り12:16〜21→(17M)→H県境分岐12:38→(35M)→I宮屋敷跡13:13〜16→(16M)→J第二休憩所13:32→(19M)→K第一休憩所13:51→(27M)→L登山口14:18


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@中根平登山口 付近の紅葉もそろそろ終わりだが、それでもまだ。 A第一休憩所 A四等点
daini.jpg  tocyuukaraningyouyama.jpg  miyayashiki.jpg  miyayashikikitagawa.jpg 
B第二休憩所 尾根から人形山 C宮屋敷到着 C宮屋敷から北側。
miyayashikiningyou.jpg  tocyuukaramitugatujiyama.jpg  kenkyoubunki.jpg  bunkikarahakusangawa.jpg 
C宮屋敷から人形山 途中から三ガ辻山 D県境分岐 D分岐から白山側
bunkikaraningyoyama.jpg  moucyoxtuto.jpg  ningyouyama.jpg  sekizou.jpg 
D分岐から三ガ辻山 人形山に向けて。正面は手前峰。 E人形山 Eにこやかに出迎えてくれる。
iwasakisan.jpg  nishigawa.jpg  nantougawa.jpg  tocyukarakaramon.jpg 
E岩崎さんの百名山に E人形山西側展望地からカラモン峰側。 E展望地から三ガ辻山 カラモン峰までは、人形山から見るとなだらかだが、角度によってはゴツゴツと。
horetanaka.jpg  kokokaradato.jpg  1670.jpg  karamonhou.jpg 
道が無くなり、最初の場所。尾根の北側の溝。 途中からカラモン峰。 1690m峰を見ている。 Fカラモン峰のマーキング。
karamonhoukaraningyouyama.jpg santouten.jpg  mukashino.jpg  karamonkaraminami.jpg 
Fカラモン峰から人形山 F三等点 F昔の標柱 Fカラモン峰から南側
tocyuunotani.jpg  modoxtuteyuku.jpg  ichii.jpg  hukaisasa.jpg 
帰路。カラモン峰南の谷。 藪を漕ぎながら戻って行く。 イチイが甘く美味しい。  深い笹薮
haika-.jpg  nishikaramitugatujiyama.jpg  nishikarahakusann.jpg  bunkikaeri.jpg 
乗り上げるとハイカーが偵察に来ていた。 G人形山に戻る。 G白山が見えてきた。 H県境分岐帰り 
miyayashikikaeri.jpg  mitayashikikitagawakaeri.jpg  ootakiyama.jpg  dainikaeri.jpg 
I宮屋敷帰り  I宮屋敷から北側 I宮屋敷から大滝山(右)。  J第二展望台。
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K第一展望台 L登山口に戻る。     


 
 富山での行事があり、それに託けて周囲の山々から行き先を探す。足しげく通い慣れ親しんだ場所ではあるが、まだまだ未踏座も多い。地形図にその名が載る大滝山(1498m)にもグッと惹かれたが、その東にあるカラモン峰の名前にさらに強く惹かれる。ここは地形図にはその名前が載ってこないが、山名事典にはしっかり載っている。その昔には大滝山と併せた県境縦走路もあったようだが、廃道になってかなりの年月が経過してしまっている。それでも道形があるのではないかと思えていたり、一方で白山山系の藪の濃さも十分承知している。期待と不安を抱きつつ決行とした。もう一座、マルツンボリ山側へ続く尾根上にも有効座を発見した。ただしこの尾根は、少し歩いた事があるが道形はほとんど無い状態。藪山を1座狙いで、時間があれば2座を狙う事にした。タイムリミットは、福光の某コテージに15:30に入らねばならない。はてさて。

 
 我が相棒である39万キロ戦士が、またまたトランスファーからオイル漏れをしだした。日ハムの祐ちゃんは「持ってる」と言うが、こちらは「漏ってる」であった。長距離は無理なので、ピンチヒッターを出して現地に向かう。北陸道から東海北陸道に入り、すぐにある福光インターで下りる。懐かしいR304を走り、五箇山トンネル、梨谷トンネルと潜って平地区に降りる。そしてその先の五箇山荘への案内看板に導かれ庄川を渡り、人形山登山口への林道に入って行く。少し舗装箇所が増えたが14年前に訪れた当時のままの様子があった。懐かしいダート林道。途中で中根山荘が現れるが、廃墟のような様子に、暗い中だと土木関係のプラントのようにも見えていた。中根平は整備が進み、とても綺麗な登山口が作られていた。休憩舎もあり水も引かれ、至れり尽くせりな感じ。真っ暗のなか準備をしだす。もう少しで夜が開ける。ヘッドライトで出ようか、少し明けるまで待とうかと悩んでいるうちに夜が白み始めた。人形堂の前で水を汲んで準備完了。いざ出発。

 
 暗い緩やかな尾根道を登山道に伝って行く。だんだんと東の空が明るくなり、登山道沿いの紅葉が綺麗に見え出してくる。快適すぎるほどの緩やかな道。スタートから40分ほどで四等点の埋まる第一休憩所となる。その先も相変わらず緩やかなままで第二休憩所。ここを過ぎるとやや勾配がつき、少しギヤを入れ替える。右前方にある人形山が朝陽に照らされ至極綺麗。そこから続く県境線の先にカラモン峰がある。さらに遠くには反射板を擁した大滝山が見える。無謀だが、この大滝山を含めた周回も思わないでもなかった。しかし長い林道が処理できずに単独行ではワンデイは厳しいと判断したのだった。高度を上げるごとに、周囲展望が広がってゆく。先日降った雪も斜面を白くしている。冬は近い。

 
 宮屋敷跡到着。鳥居越しに朝陽を浴びる。360度のパノラマ。特に北の礪波アルプス側を見ると、けっこうに高低差があり高度感が得られる。僅かに撮影休憩して足を進める。この先の地形図での分岐箇所では、マルツンボリ山側をよくよく見たが、やはり道形は消滅していた。泥濘地の多い尾根道を時折足を取られながら進んで行く。スクンと立つ三ガ辻山が見事であり、歩いていく気持ち良さは常にある。勾配が増しターガーロープが現れる付近で、新雪が多く残っていた。急峻を這い上がり、県境分岐点に到着。見やすい同定図があり、展望とその図を照らし合わせながら確認した。この時は残念ながら白山はガスの中。それ以外の山系の山々は良く見えていた。

 
 もうひと頑張りで人形山。この辺りからは本当に気持ちのよい登山道。この時期にしては暖かい日であり、そよ風が気持ちよかった。左には大芦倉谷が深く下がり、そこからそよそよとした風が吹き上げてきていた。そして本日一番乗りで人形山に到着する。鋼管に開けられた窓を覗くと、14年前と同じ姿で、お地蔵さんがにこやかに笑っていた。「こんにちは」と挨拶をする。そして南の展望場にずれてゆくと大きな標識が・・・。岩崎元朗さんの新百名山となる。岩崎さんは有名人。その岩崎さんを、KUMO氏は「がんチャン」と呼んでいた。あの岩崎さんをチャン付けで呼べる人はそう多くないだろう。脱線したが、100名山が人形山、良いと思う。展望はすこぶる良い。ここが最終地点だったらと思ってしまう。作道は西側の平原にも続き。笹が刈られたこちらが、一番休憩には適していた。

 
 人形山の西側1710m付近で道形は途絶える。足許は夜露でびしょ濡れ。時既に遅しな感じだが雨具を履く。さあ突っ込む。全く道は無いような感じ。それでも掘れた道形のような場所が尾根北側にあり、その中を潜ってゆく。しかしすぐに進行不能となった。と言っても進むのが嫌なら戻るしかなく、戻るのが嫌なら進まねばならない。両腕でバリバリと笹を分けて進む。なるべく高い場所を選ぶように。いきなりの背丈以上の笹薮。これが続くのかと思ったら、進むのにかなり負担に思えた。すぐにこの藪も楽になる、と期待して進むのだった。

 
 この尾根にはササのほかナナカマドも多い。そしてイチイ。これはちょうど食べごろの実を付け、その甘さで活力を得る。二三粒摘みながら進んで行く。1690m峰が屈曲ピーク。けっこうここまでに時間を費やしてしまっていた。なにせ藪漕ぎ。手で分け、膝を入れて分け・・・。あと、各ピークの西側斜面は往々に歩きにくい藪であった。そんな中でも地形の頂部は外さないでいた。一旦外すと、その頂部に戻るのに凄く時間を要す。そして1670m峰が、完全にカラモン峰のニセピーク。さあ着いたかと思ったら、その先にまだ続く。緩やかに下って行き、鞍部から少し登ると、やっとここで道形が薄っすらと現れた。それもかなり不明瞭。無いと言いたいが辛うじてある感じ。疲労困憊の両腕、その腕の動きが緩慢になると、いきなりササの洗礼を受ける。右耳に枝が刺さり流血。ぽたぽた落ちる赤い血に少し怯みつつ、鏡が無いがどうすれば患部が見えるかと考える。そうだ写せば・・・。デジカメで患部を撮影し、それで状況を知る。耳だから血が出やすいようで、患部は小さい。まあ大丈夫だろう。血を見ると弱くなる人と強くなる人と居る。後者かも、少し気合を入れて分け進む。

 
 カラモン峰到着。もう少し伐採跡などや無毛地帯が設けられているのかと思ったが、現地はまったくの藪の中だった。これは三角点も見つけ出すには大変かとすぐに思った。でも結果を出さないと・・・。下を向きながらゴソゴソと探し出す。すると、山頂のほぼ中央と言えよう場所から四角い顔を覗かせていた。そしてその場所には赤いリボンが東西に小さく縛られており、もう一つビニール紐が縛られ、そこにはカブトムシらしい甲虫の残骸が足を引っ掛けてくっ付いていた。やっと到着。すぐに人形山を振り返る。近くに見えるのだが、経路約2時間。予想以上の藪の濃さだった。歩きながら、岐阜石川県境の瓢箪山の藪を思い出した。瓢箪山ほどには強い藪ではないが、密生した纏わり着く藪であった。ここから人形山を眺めた人は2000年以降何人居るだろうか。当初思っていた大滝山への周回など、もう考えられなかった。パーティーで分け入るならまだしも、単独では体力が続かない。ここまでで精一杯なのだった。その大滝山側は、雑木に遮られ全く見えなかった。さて戻らねばならない。人形山までの帰りも経路2時間は変わらないだろう。こころして格闘する。

 
 カラモン峰からの最初は、僅かに南寄りに降りてしまった。微細尾根はやや北側にあり、僅かだが外して高度を下げたら、戻るのに大変。急ぎながらも頂部を外さないルートファインディングがここでは必要であった。ナナカマドが跳ね返り、笹が纏わりつく。顔中傷だらけなのが判るよう。1670ピーク西側は、ナナカマドの藪。少し南にズレると密生する笹。いずれにせよ両腕を酷使する。それでも時折あるイチイには、ホッとする。疲れた時は甘いものではないが、この甘みに救われる。往路を知っているので、復路がかなり楽だった。往路で苦しんだ場所を避けるようにして進むと、意外と往路よりも楽に進めていた。

 屈曲ピークの1690m峰からは少し南側を気にして歩いてみた。南の方が植生が強いかと思っていたが、丈の低い状況があり、北側より歩き易い場所があった。人形山を前にして最後の鞍部に入る。ここは背丈以上のササの場所。ここも南寄りに行く。往路と雲泥の差で歩き易い。すると道形が途切れている人形山の肩のところに、一人の女性が現れた。こんな所に・・・と思っていると、手を振っている。振り返すとなにやら話している。こちらはゴソゴソと藪漕ぎの騒音の中に居る。停まらないと全く聞こえず、立ち止まる。予想したとおり、「向こうから来たのですか」とか「ルートはこっちに見えますよ」とかアドバイスをしてくれていた。ありがたいがもうへばっていて、自分で進みたい所に進むのが一番楽な状況まで疲れていた。ここも尾根を前にして南から巻き上げるようにすると、笹が深くなく楽であった。踏み跡に乗る。やっと藪に開放された。女性は三重から来た方と言われ、前日は大笠山に登ったそう。展望地まで先行して歩く姿からは、かなりの猛者に見えていた。

 
 人形山の展望場に戻ると、そこは一般ルート、ハイカーが賑やかに展望を楽しむ姿があった。北の一番高い場所を見ながら、「あの高い山はなんですか」と聞かれる。「う〜ん、あのくらい知っててよ」とも思うが、「あれが白山ですよ」と優しく伝える。長い休憩をしたかったが時間的余裕はなし、急いで戻って行く。人形山の主に挨拶してからと覗き込むと、相変わらず良い笑顔で見送ってくれた。戻りながら三ガ辻山側を見ると、数名進んでいるのが見えた。ここまで来たのなら踏んでおきたいが、その欲求は時間が許さなかった。分岐からは北東に降りて行く。今日の訪問者の多さを現しているように、雪があった場所はぬちゃぬちゃに融け、酷い泥濘ルートに変わっていた。タイガーロープの箇所も、往路では何でこんな場所に流してあるのかと思えたが、下りだと、ちょっと掴まりたくなる場所なのであった。

 
 展望スカイラインと言えよう場所が、宮屋敷跡と県境分岐点とのこの間だと思うが、そこから見る北アルプスの山々が、綺麗に並んでいるのが印象的であった。アップダウンを数度こなし、宮屋敷南の分岐点。ただし地形図上のみ。現地地形には道は分岐していない。やはりこちらは改めて出直そう。スキあらばと最後まで思っていたが、こころしないと無理な場所。鳥居の方へ戻って行き、その鳥居の前で小休止。相変わらずの大展望。歩いてきた人形山から続く県境稜線を振り返る。その先に反射板の目立つ大滝山が見える。またあそこはスキーで上がろう。反射板がパタパタと手を振っておいでおいでをしているかのようであった。

 
 最初の急峻を下りだす。そしてなだらかになりだすと、それが延々と続く。少し大きなコンパスで先を急ぐと、ちらほらとハイカーがおり、挨拶をしながら抜いてゆく。宮屋敷から見るこの尾根はけっこうに長い。第二展望台で残り2時間。急がねば・・・。さらに加速する。本当なら紅葉を愛でながらのんびりしたいのだが、やや早く周囲の景色が流れて行った。そして右側から流れの音がしだす。船頭川を林道で跨ぐ辺りの音なのだろう。もう登山口も近い。そう思って右側を気にしていると、白い林道が見え出してきた。以前はこれを伝ってマルツンボリ山へアプローチした。以前と違って綺麗にコンクリート舗装してあるのだった。お堂が見え、登山口に到着。その場所にある水がありがたく、渇いた喉に一杯頂く。急いで着替えて林道を土煙を上げながら降りて行く。調子よく行くと、時折車の底がガリッとやる。”オフローダーじゃないんだ・・・これは”と気づくのだった。

 
 振り返る。カラモン峰は間違いなく残雪期がいいだろう。県境上に雪が乗れば、歩き易い限りかと思う。無積雪期は、かなり構えて行かないと、ササの深さ、そして複数回のアップダウンがけっこうボディーブローとなる。近くに見えて遠い山と思えた。危険箇所は特に無いが、藪の洗礼を受けることは必須。それなりの保護をして入りたい。


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