黒倉山  1242m       鍋倉山   1288.8m            


 2011.5.28(土)   


  曇り    同行者あり       開田峠よりピストン          行動時間3H23M


@開田峠8:33→(63M)→A黒倉山9:36〜42→(17M)→B鍋倉山9:59〜10:39→(19M)→C黒倉山10:58→(58M)→D開田峠11:56


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@開田峠から尾根道を行く。 雪があるので道形はとても不明瞭。雑木を分けながら進むことが多い。 先行していただいた猛者パーティー。 A黒倉山。好展望のピーク。
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A立派な標柱が二つ。 A鍋倉山に向かう。 B鍋倉山。小さな祠が鎮座。 B二等点。割られた角が補修してある。
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B山頂から東側。東頸城丘陵。 B山頂から西。妙高方面。 東側の残雪の上から山頂部。 鍋倉山から黒倉山へ。
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雪に繋がり快適に歩ける。 C黒倉山帰り。佐渡島も見えていた。  振り返り鍋倉山。残雪と新緑のコントラストがいい。 歩き易いなだらかな尾根道。 
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途中の融雪による池。 ブナの回廊。 D開田峠到着。   


  

 これから山を始めようとする方をご案内することになった。「楽しさ」「美しさ」「気持ちよさ」を体感して欲しいと思うのだが、残雪期からの切り替わり季節で、微妙に悩む。どこがいいか・・・。そこそこ歩かなければつまらないし、雪を避けると、今はそれなりの場所。「それなら雪で遊んじゃえ」となるのだが、あまり急な場所は初心者にはリスクが伴う。山の楽しさを体感してもらって、次に繋げたい・・・。景色、地形、天気(これは後からついてくるものだが)等を加味し、悩んだあげく鍋倉山とした。スキーヤーの山としての鍋倉山だが、開田峠からならなだらか地形で山頂まで続いている。そして冬季通行止めだったここも、決行数日前に開放されるようで、タイミングもいい。基本コンセプトは、安心して歩ける場所。

  

 上越飯山線を登って行き、開田峠に到着。いつ除雪が完了したのか・・・あまり除雪の痕が見られなかったのだが、つい最近である事には違いない。準備をするも、風の通り道なのか少し冷たく当たってくる。スパッツをし残雪に備える。少し雨が当たるかもしれないが、今は雨がない状態。途中で脱いだり着たりも勉強、防寒対策だけでいいだろう。そうこうしていると、地元の方らしいご夫妻が現れ、サッと用意しサッと歩き出していた。このスピード、只者ではない・・・。ザックには、万が一の為に人数分のアイゼンも詰め込む。使わないだろうが、この準備も案内側の役目。防寒具も多めに持つ。この分で行くとシェルパになれるかも・・・。

 
 峠からの歩き出しは、しばらく雪に繋がるのだが、尾根上の一番高い部分を拾って行くのには、雑木を分けながら進まねばならない所が多かった。本音はもう少し歩き易い場所なのかと思ったが、意外や分ける作業が出てきた。ちょっと同行者に申し訳なく思う・・・。残雪はしっかりと締まり、非常に歩き易い。残雪一辺倒でなく、当然ながら雪融けもあり夏道も顔を出している。ブナの新緑が美しく、回廊と言えよう中では、思わず大きく呼吸をしてしまう。目に鮮やか、体に爽やか。

 先行する猛者パーティーは、ズンズンと雪の上を行く。慣れた足取りで、夏道標柱があっても別の方向に進んでいたので、完全に地形を把握しているようであった。時折振り向くので、「夏道があっちですよ」と目と指で合図すると、「ここを行けば最短ルート」と言わんばかりの合図を指で返される。なんか安心して着いてゆける先導を得て、少し気分も楽であった。時折ガスも垂れ込めていたが、僅かな時間で消え、往々に良い展望を得ながら進むことが出来ていた。

 
 進行方向にこんもりとした2つの高みが見える。右が黒倉山、左が鍋倉山、ブナの緑と残雪の白さとが、なんとも言えないいい絵面にしてくれている。多くの人がスキーで登るここ。当然スキーで訪れてみたいと思ったが、スキーシーズンが終わったこの時期も、まんざら悪くない。夏道は尾根に対し北側にある場合が多く、そこを伝うように行くのだが、雪の多さからキックステップで行かねばならない。道の存在の安心感を求めるか、それとは別に目標地点までの歩き易さを求めるかになるかだが、道を外れ尾根上を選ぶ。先行する猛者氏も同じ考えだったようだ。その猛者パーティーは、1150m付近から南の谷(スキールートの方)に降りて行った。藪を分けながら降りて行く様は、やっぱり只者ではない・・・。

 さてここから先導が居なくなったわけだが、山頂に向けての夏道が尾根上にある場所となり、雪融けでかなり見えていた。言うならばエスカレーター、伝って登って行く。進路右側には光ヶ原牧場が広がり、そこに見えるロッジのカラフルな色が、おもちゃ箱の中のように緑の草原に映える。何度も立ち止まりながら、自然の出迎えに感嘆の声をあげる。幸いにも少し風が落ち着き、雨の気配も無くなった。少し曇った天気だが、残雪のおかげで周囲は明るい。やっぱりこの場所で正解だった。

 
 しっかりとした登山道を伝い、最後は少し急な場所を数メートル上がると、黒倉山に到着した。北側を良く見ると、佐渡島まで見えている。あまりの景色に、なんかこの場所で満足してしまいそうで、自分の気持ちが鍋倉山まで向いていなかった。同行者に「鍋倉まで行きます?」と聞くと、「行きます!」と元気に返される。「じゃ行きま〜す」と、足を向ける。緩やかに下り、ブナの中を進むと鞍部になりブッシュが出てくる。もう少し時期が早ければ突っ切れるような場所だが、夏道側に西に僅かに進み、分岐道標を見つつ南に進路を変える。この先はべったりと雪の乗った斜面。その東側に夏道が顔を出している。慣れない残雪、少し勾配もあり筋肉疲労も伴うだろうと、ここは夏道の方を選ぶ。ゆっくり、静かに歩みを進める。背後からの呼吸も荒げておらずいい感じ。ノンビリハイク。

 
 鍋倉山到着。最高点の場所からは、妙高側が小さく開け展望がある。もう少し大展望のある山頂かと思ったのだが、意外や樹木に覆われた場所であった。二等点が鎮座し、小さな祠が可愛い感じでちょこんと建っていた。展望を求め、僅かに雑木を漕いで東側の残雪に乗る。そこからは遮るもののない大展望。牧峠側に続く東頸城の丘陵が、綺麗な形で弧を描いている。それにしても目に鮮やかな新緑。いくら観ていても見飽きない景色であった。持ち上げた美生柑で喉を潤し、コーヒーを入れ山頂気分を楽しむ。同行者は終始ニコニコ。当然私もニコニコ。少しブユが多く、虫除けスプレーを噴霧しつつの休憩となった。そうこうしていると、先ほどの猛者パーティーが上がってきた。あのようなルート取り、この山の楽しみ方をしっかり知っておられる方のよう。山頂の妙高側の展望場で休憩をとられていた。西風を受けられる場所で、虫除けには、休憩は西側の方が良かった訳でもある。いい景色、いい空気を楽しんだら、往路を戻る。


 当初は谷ルートでのブナを見ながらの下山を思っていたが、次々と登ってこられた方の話を聞くと、雪が割れている場所も多く、ブッシュもかなり出ている様子。今日は楽しく安全登山、尾根ルートを戻る事にした。スキーヤーも居るだろうと思ったが、皆無。やはり前週が滑れる最後だったのか。黒倉山を再び通って、往路のトレースを拾いながら降りて行く。快適快適。緩やかな勾配が、本当に気持ちよく感じる。僅かに溶けてきた雪が膝に優しく、“ザックザック”と言わせながら闊歩して行く。


 少し調子の乗って歩いていたら、1141高点側に進んでしまった。この手前で尾根を外れ北に進まねばならない場所であり、見落としてしまっていた。ただしこの時期なら、外して進んでも雪に繋がり危なげなくルートに戻ることが出来た。融雪による小さな池が、冷たい色を湛えていた。今日は6名がこのルートを辿っている。そのトレースが、あちこちに見える。各々のルート取りで歩いているようであった。


 ブナの回廊は、何度通っても飽きない場所。そこで澄んだ声のウグイスが美声を聴かせてくれる。ブナの葉のフィルターを通ったその声は、益々耳に気持ちよく入ってくるのだった。僅かにアップダウンをし、少し雑木を分けると、開田峠が見えてきた。そこには7台ほどの車が見える。鍋倉側でなく、牧峠側へ入山している方も居るようだ。峠に到着。

 着替えていると、一人の男性が声をかけてきた。「ザゼンソウを見に来たのですが、どうでしたか?」と。「う〜ん。まだまだ雪がいっぱいです」と返す。各々目的を持って山に入ってきているようだ。先だっての冷池山荘では、雪の量は平年並みと言っていたが、やはり多いので間違いないだろう。


 雨にも降られず、無事下山。終始楽しそうな同行者の笑顔が見られ、こちらも大満足。まずは自分が山を楽しむ。それがいい手本になるのかと思う。

 
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