定高山 994.4m 二王子岳 1420.3m 二本木山 1424m
2011.9.17(土)
曇り 同行者あり 二王子神社よりより 行動時間:6H49M
@二王子神社7:43→(21M)→A1合目8:04→(22M)→B二合目8:26→(15M)→C三合目(一王子小屋・水場)8:41〜49→(22M)→D四合目9:11→(12M)→E五合目定高山9:23→(24M)→F六合目9:47→(15M)→G七合目10:02→(13M)→H水場10:15→(17M)→I二王子岳10:32〜51→(17M)→J二本木山11:08〜09→(16M)→K分岐に戻る11:25→(34M)→・5.5合目11:59→(41M)→・二王子岳再び12:40→(48M)→L定高山13:28→(81M)→M下山14:32
@二王子神社前登山口。 | 沢に沿う涼やかな登山道。 | A一合目 | 神子石 |
B二合目 | 土嚢で補修された登山道。 | 一王子神社 | C三合目 |
C一王子小屋 | C小屋内部 | C水場は水量豊富。 | 三合目から先は、新しい補修跡が続く。 |
D四合目 | E五合目。定高山。 | E定高山三等点。 | F六合目 |
油こぼし | G七合目 | 上部の水場は流れが細い。 | 三王子神社 |
池塘 | 九合目 | 二王子岳避難小屋 | 避難小屋内部 |
H二王子岳 | H二等点。 | H青春の鐘 | H黒石山側 |
H飯豊側 | H二本木山側。 | 二本木山への分岐 | 最初は大きく下る。 |
二本木山への最後。 | I二本木山山頂 | J三等点 | J二本木山から二王子岳。 |
K分岐に戻る | L定高山にはパンザマストが建っている。 | M二王子神社に戻る。 | M見事な二王子神社の本殿。 |
シルバーウイーク突入。ただし前週に続き、台風の影響を受ける週末となった。当初は土日を使う予定で計画を練っていたが、状況により臨機応変に動けるよう、日帰り単発で登れる山をチョイスした。時に天気に逆らう事もあるのだが、基本は逆らってはいけない。フレキシブルな行動をいつも心がけている。今回選んだのは二王子岳。残雪期の山として有名だが、登山道がある場所であり、あえて雪の上を行かずとも・・・との思いもあった。飯豊の展望台的場所であり、飯豊が白くなれば、それそこいい場所であろうが、その楽しみは後回し。とりあえず初登頂を目指す。
関越に乗り長岡を目指してゆく。連週同じ場所を通るのは芸がないのだが、衛星画像から見る雲の流れだと、新潟のあの辺りは少し安定した天気の様子。そんな判断からだった。豊栄のスマートETCゲートで降りて、7号線の南を走る県道3号線で新発田市内に入る。そして新発田駅前を通り県道202号を進んで行くと、途中から二王子岳の道標が現れだす。これらはそう多くは無いものの、迷わない程度に敷設されているのでありがたい。さすが200名山と言えるだろうか。と言うよりは、里山の道で分岐箇所が多い。その為とも言える。登山口となる二王子神社までは、狭いながら走りやすい道幅で快適に進んで行けた。
二王子神社の東側には登山者用の駐車場がある。しかしそこに駐車されている車はまばら。“こんなもんなのか”と思い、とりあえず登山口を確認しに西側に進むと、神社の前に溢れんばかりの車。こういう事か・・・。右へ倣えで、トイレ前の駐車スペースに停める。時計は既に8時に近くなっている。大半の人がスタートした後。それらの人を追うようにスターとして行く。
沢の流れを右に見ながら、涼やかな気持ちよい山道。自然のクーラーがあるようなもので流れからの冷気を感じる。ただしこの日はブユが多かった。すぐに団扇を取り出し仰ぎながら登るのだった。そして1合目の表示が見えた。と言う事は、各合目毎に表示があるようであり、ありがたいような、一方でこれらは視覚的プレッシャーにもなる。私にとっては、それにより「まだこんな所」って思う場合が多いのだった。2合目の僅か手前に神子石がある。折り重なるような大岩があるのだが、ふと足許を見るとサワガニが這っているのが見え、微笑ましい限り。
3合目の手前に一王子神社があり、左に分岐して祠を拝み、そのまま進み再び登山道に合流した。そこには一王子小屋がある。周囲の雰囲気からか、ややジトッと湿気の多い小屋に感じた。コンクリート構造だからだろうか。ここまで水を持たずに来ているので、水場へ進む。行き着いた先は、十分すぎる水量のある水場。しぼんだプラパティスを一気に満たす。この3合目から4合目にかけては、土嚢を使った真新しい登山道修復跡が見られた。このために非常に歩き易い登山道になっている。管理する側の人に感謝であった。4合目はブナの幼木の中の通過点のような場所だった。
5合目が独標と呼ばれる場所で、またの名を定高山。三等三角点があり、何のためかパンザマストも高く建っていた。山の名前があるものの展望が良い訳ではなく、8畳ほどの広さの場所。息を荒げたハイカーが腰をおろして休憩していた。ちらほらと降りてくるハイカーも居り、トレランをしている軽装者も居た。元気に挨拶を交わしながらすれ違ってゆく。6合目を越え、その先で特異地形の油こぼしが出迎える。ロープが垂れていたりステップがしっかり刻まれているので、滑りやすさの中にきちんとした安心感がある。この油こぼしの僅か先が7合目。ここも通過点のような場所。お花畑を経て、山頂までもう僅か。そのお花畑の場所には最後の水場がある。しかし流れはチョロチョロ。何度もここを訪れている人からは、「今日は少ない」との声が聞こえていた。柄杓に溜め、喉を潤す。言わば力水で、少し元気になった。気がした・・・。
水場から登る事5分ほどで三王子神社。針金で修復された朽ちかけた祠がある。何百、何千をものハイカーを見守って来たこの祠、その前で深く首を垂れ旅の安全を祈願する。次ぎに、風でざわめく池塘を右に見たら、その先に奥の院がある。しかし現存するのは台座だけ。いつしか新しい社が建つのであろうが、建った時にまた訪れてみたい。さあ目の前にオレンジ色のかまぼこ型が見えている。既に同行者は山頂に到達しているのが見えた。その小屋の中を覗く。パイプを溶接した扉のノブが、右に捻るとギーと大きな音を立てる。そして中の湿った空気が、その匂いと共に外に出てくる。中は明り取りもしっかりあり明るい小屋。土間で左右に仕切られたそこは、対座して休憩するには適当。しっかりカレンダーまであるのは微笑ましかった。小屋を見たら、その小屋を巻き込むように進み山頂へ。
二王子岳山頂。一番に目に飛び込んでくるのは飯豊連邦の山並み。すばらしくいい感じ。そこから落ち込む尾根を伝い、胎内ヒュッテを探すも見えるはずもなし。少しどんよりとした天気であったが、十分満足できる展望であった。カーンと「青年の鐘」を鳴らすと、その甲高い音が周囲空気を揺さぶり、その音が飯豊の山々まで響いているのではないかと言う気にもなった。破線ルートの石黒山の方を見ると、踏み跡程度の藪ルートが伸びているのが見える。利用者の少なさが、藪の深さとなっているようであった。反対側の南東側には、しっかりとした存在感で二本木山が見えている。ここまで来たからには、行かない手はない。大休止の後、分岐点から二本木山を目指す。
同行者には私ほどの登頂欲があるわけでなく、二本木山までの1キロ(往復2キロ)の距離は負担でしかない。そう思っていると、後から「急いで行って来て、ゆっくり歩いてこのまま二本木側に進み、適当な所で待っているから」と発せられる。それを背中で聞くと、大車輪でコンパスを伸ばしてゆく。最初は大きく下り、その先のニセピークに惑わされ、本峰はその先にあった。ルート上には、太ったマムシが多かった。ニョロニョロと日向ぼっこをしているのだが、あまりこのルートの利用者が居ないためなのだろう。悠然と居る個体が多かった。最後の登り上げをこなすと、山頂部が切り開かれた二本木山に到着した。
二本木山の山頂は、刈り開かれた南の端に、ちょこんと三等点があった。気にしていないと気づかないような存在だった。二王子岳を見ると、目立つオレンジ色が見える。脳裏に残る賑わう山頂の記憶が甦る。背の高い笹があり、展望はいまいち。待っている人が居る訳であり、急いで踵を返す。経路17分ほどだった。往復で30分強。さほど待たさず戻れると踏んで、帰りもストライドを延ばした。しかし、進めども進めども、同行者の姿なし。とうとう分岐まで到達してしまった。途中で花摘みでもと思い振り返るも、その姿は目に入ってこない。二王子小屋の中で休んでいるのかと思ったが、すぐに戻る事を告げてあるのに、それは考え難かった。“すわっ、下山したのか”と判断し、急いで降りて行く。
降りながらも半信半疑であり、「ピンク色のTシャツ着た、単独の女性見ませんでしたか」と、すれ違う方に声をかけながら降りて行くが、それに対しすれ違った数名は首を振った。疲れて登っているので、そんなに見ていないのである。よくよく判る。そうならば言い方を変えようと思った。そして女性なら女性を気にするだろうと、女性ばかりに声をかけてみる。「ピンク色のTシャツ着た、単独のフィリピン人みたいな女性見ませんでしたか」と声をかけた。今回はその特徴を加えてみる。「う〜ん、見たような気もするし・・・」。曖昧だが、なんとなく答えを導きやすくなっているか。そうこうしていると、7合目を越えて下っていた。また単独の女性が居たので、「ピンク色のTシャツ着た、単独の東南アジア系の女性見ませんでしたか」。「えっ、判りませんでした」と、特徴を言えば答えを導きやすいのは、糠喜びだった。そこにトレランの男性が上がってきた。速度が速い分、脳裏に刻まれる、見ている情報量も多いはず。「ピンク色のTシャツ着た、単独の女性見ませんでしたか」と聞くと、「すれ違ったよ」と返って来た。“やはり下っているのか”居場所が判っただけでもホッとした。
さらに下りながら、何人にも声をかける。少し老齢な方が居たので「ピンク色のTシャツ着た、単独のデボラ・ハリーみたいな女性見ませんでしたか」と聞くと、「ええっ? でぼらはり」そこが気になったみたいだった。余計な事は言わないほうがいいらしい。既に6合目を下っていた。そこに往路で行き合った女性が居て声をかける。「連れを見ませんでしたか?」と聞くと、「見ていないよ。まだ降りて行ってないのでは」と言った。「ええっ!!」完全に情報が錯綜。まとまりを持たなかった。一つに他人を当てにして探してはいけないということが判り、既にこの時点ではぐれた結果になった二本木山への行動を悔いた。さらには、動いてしまっている同行者の安否が気になった。この後の行動は、当然判る場所まで戻る。現場百篇。刑事だったころに習ったことである(これはウソ)。5.5合目までほど降りていたが、再び山頂に向ける。上で行き合った人が次々降りて来て、怪訝な顔で私を見る。内容を告げると「居たら声をかけておきます」とありがたいお言葉を頂く。しかし、どんどんと焦りが出るのは事実。平常心を保つ努力をしつつ足を山頂に向ける。
途中、唯一二本木山へのルート途中で行き合った人が現れた。間違いなく同行者を最後に目撃している人である。聞くと「(往路に)通った時に、待っていたようだけど動きつつあったなー」と言う。まあ動いたのは間違いないようであり、事故とかではない様子。色々頭の中で想定しながら、山頂に戻る。小屋の裏や山頂周辺、当然二本木山のルート沿いをくまなくチェック。自分なりに納得した捜索をして、再び下山となる。もう下にしか居ない。精神的にも焦って行動しているので、疲れも強く感じる。そんな中で下山を急ぐ。「何してるんだ、何処へ行った」頭の中をその言葉が駆け巡った。この山塊は上層では携帯電話が繋がらなかった。一部二本木山で繋がったのみ。5合目の定高山を過ぎ、ズンズン高度を下げ4合目に差し掛かる頃、携帯の電話が鳴った。同行者からだった。「下に着いたよ」と普通に告げられ電話は切られた。“先に下るって、いつ言ったの”沸々とこみ上げてくるもの、それとは別の安堵感。一気に疲れが感じられたほどだった。それ以降の下りは、下山時に怒らないよう心に決め下って行く。“単独がいい、めんどくさい”などと思ってしまう自分に、心の狭さを感じるのだが、流石にショックであった。
登山口の二王子神社に到着すると。社殿の前で休憩している同行者が居た。心の中とは異次元の俳優を演じるのだが、「おーい、着いたよ」と声をかけ車に戻る。最初に降りはじめた時に、そのまま降りていれば追いつき同時に降りられただろう。60分待たせたことになった。二王子岳。忘れもしない山となった。