六軒山   1723.3m            


 2011.2.5(土)   


  晴れのち曇り     単独       R120香沢林道入口より          行動時間6H26M


@香沢林道ゲート7:00→(21M)→A1Km分岐点7:21→(138M)→B香沢大橋(左俣)9:39→(106M)→C六軒山11:25〜46→(44M)→D香沢大橋帰り12:30→(56M)→Eゲート帰り13:26


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@「無断駐車禁止」の場所だが、冬季は表示が雪に埋もれ・・・。店も冬季閉鎖中。 @ゲートの先の作業舎まで轍が付いていた。 Aゲートから1Km地点。山側ルートへの分岐点。 A分岐から先。スノーモービルが通っているよう。
kazawadamu.jpg  enteihe.jpg  kazawajyouryuu.jpg  kazawajyouryudamu.jpg 
香沢ダム ダムの先で、右側へ分岐する道を見ながら左へ。 下側から見る香沢上流ダム。 香沢上流ダム
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上流ダムから見る香沢下流。 途中から見る六軒山側。 スノーモービルの跡も無くなり無垢の雪の上を・・・。 橋も雪に埋もれ・・・。
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朝日を浴びて幻想的。 香沢右俣の橋通過。 左の橋と連続する二つ目の橋。 B香沢大橋(香沢左俣)を通過。
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B橋の右岸側の壁には氷瀑が出来ている。 二つ目のゲート。 ゲートの門柱が僅かに顔を出している。 標高1550m付近。分岐のようになっている地点。左に進路をとる。
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地形図に載る分岐。ここは左に。 一度下り勾配がある。 水平道途中の分岐。ここは右へ もうすぐ山頂。
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林道終点地。  C六軒山山頂南側。  C今日はスキートラーブのフリーランドー。  C山頂から西側。武尊山や谷川岳が木々の間から見える。 
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C日光白根山と錫ヶ岳。  C四郎岳と燕巣山。  林道下降途中から笠ヶ岳。  D香沢大橋に戻る。 
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往路のトレールを伝いながら滑り降りる。  Eゲート到着。     


 
 2010年暮れに、一度登ろうと思って企画した場所。やはり狙って登れないと、づっと気にかかる。これが私の性分だからしょうがない。ここは、残雪期には登っている人が多いが、雪が締まる前のこの時期にはそうは入っていない。となるとそれなりに狙い甲斐もある。ただし、状況によっては山頂に届かない可能性も出てくる。林道の片道は10Kmに僅かに欠けるほど。そのまま林道を往復すれば20Kmの長丁場。ここだけを見れば、雪が無いほうが良いように思うが、ポイントは二つ。駐車スペースが乏しい事。林道入口の余地には、至るところに「無断駐車禁止」の張り紙がある。子供染みた判断なのだが、冬季にはそれらが雪に埋もれ、見えなくなっているだろうと思えた。さらにもうひとつ、長い林道であり、スキーを使えばロングクルージングの楽しめると思えた。よって、狙うのは冬季なのであった。山においての適季が各山で存在するが、私にとっての六軒山は、これらの事によって雪のある時がベストに思えた。林道は緩斜面。したがい今回は一番長い板を準備し、久々にスキートラーブ登場。あと、山頂から西に派生する尾根も気になった。藪スキーが楽しめる場所に思えたのだが、どうにも香沢と仁下又沢の太い流れが気になった。麓の方まで降りられれば渡渉は無いようだが、そこには急峻(崖だろう)が待っている。色んな部分を天秤にかけ考えるのだが、単独である事からのリスク回避はしっかりしなければ笑われてしまう。危険と隣りあわせで楽しみがあるのだが、僅かな判断ミスで天と地を分けることもある。とりあえず登りは林道を行く事にした。

 
 2:45家を出る。関越道の流れは、スキーヤーが作っているような感じであった。沼田ICで降りて、椎坂峠を越えてゆく。この椎坂峠を直線で結ぶトンネルが現在工事中なのだが、24時間稼動のようで、眩い明かりの中に賑やかにダンプが出入りしていた。外気温はプラス気温。雪で遊ぶにしては少し暖かすぎる。今日の急峻場所は注意しなければならない。そして現地に到着。香沢林道の入口余地には3台分の除雪がされている。さらに丸沼の方へ進むと、100mほど先に1台分の余地があった。ただしこちらは車道のすぐ脇。車線には出ないものの、そこに置く事で邪魔になる位置だった。「無断駐車禁止」の場所であり気になるが、林道入り口に置く事にした(4:25)。狙い通り、注意看板は雪の下。そして周囲の売店を確認する。各所に板が張られていたりし、冬支度がされていた。と言う事は注意する人も居ないと判断できた。そう思えると、後に移動しての仮眠もぐっすりと出来るのだった。

 
 ひっきりなしに丸沼に向かうスキーヤーが前を通り過ぎてゆく。その音の多さに、丸沼人気の度合いが判る。標高が高いので雪質が良いという事になるか。そんな音を聞きながら半眠りのまま時間が過ぎる。それでも2時間ほど横になれたか、これが出来るのと到着したままスタートするのでは、雲泥の差がある。よって今日は条件がいい事となる。起きだし、板にシールを貼っている後を怪訝そうな目で通過するスキーヤーの姿。逆の立場なら、「何でこんな場所に」と同じ目をしただろう。東の空が青くなりだした頃、林道入口から入山となる。

 
 7:00ちょうどにスタートする。橋を渡り、スキーを滑らせて行く。ゲートの南側には二階建てのプレハブ小屋が建てられ、工事用事務所となっていた。工事はその僅か先で、橋の補強工事をしているようであった。この工事は今年の4月末までの様子。林道の雪の上には、不思議な間隔の轍が残る。スキーにしてはおかしいし、獣にしては一定間隔過ぎる。謎解きが出来ぬままその跡を追って進む。九十九折を経た先に「1.0Km」の表示があり、これはゲートからの距離のようであった。ここでは地形図に示されるように、香沢沿いの道とは別に、山腹を巻いてゆく道の分岐点であった。林道の雪の沈み込み量は、僅かでかなり快適。これなら割りと早い時間で山頂に辿り着けるのではと思えていた。そして、常に進行方向左(北)側を気にしていた。まだ山頂からの西尾根を諦めた訳ではなかった。滑れるものなら滑りたいと思っていた。よって適当な渡渉点が無いか探していたのだった。しかし、案の定と言うべきか、流れがしっかり出ていた。

 
 30分ほど歩くと香沢ダムに到着。ダムと言っても水を湛えているわけでなく、ただの堰堤があるのみ。水量がそう多くない沢のようであった。小学5年生が書いた文字が彫られ、その小学生らしい頑張った文字にニンマリとする。この先、5分ほどで道が分岐する。冬季であり、雪があるのでそう見えるのだが、直進が右の道で分岐するのが左の道のように見えた。でも実際は左側が本道。ゲートの付いていない方へ進んで行く。ズリ足でトレールを付けてゆく。鹿の足跡を追ったり、兎の足跡を横切ったり、雪の上は、これら動物たちの行動がそのまま見えるので楽しい部分でもあった。先の方を望むと、今度は一段と大きい堰堤が見えてくる。進路右手の山壁には、流れが氷瀑となって魅せつけてくれていた。

 
 香沢上流ダム脇通過。こちらは先ほどの下流ダムに比べると、よりダムらしい造り。ただし上流側には、先ほど同様に水が溜まっている様子はない。完全なる砂防ダムの位置付けのよう。ここで続いていた轍の正体が判った。キャタピラーの跡があり、スノーモービルが入った跡であった。それもフロントフォーク間隔の広い、大型の物。少し進むと、進路左上の山々が朝日に輝く。見えているどれかが目指す六軒山なのかと思うが、この時点では同定は出来なかった。上流ダムの僅か先でスノーモービルは引き返しており、その先は無垢の雪の上を伝って進む。正面に朝日を受けながら、この上ない気持ちよさ。いろんな場面場面があるが、冬季は暖かい光の出迎えが嬉しい。

 
 わりと直線的な道が多かった林道だが、次第に九十九折の場所が増えてくる。当然のように、こんな場所は上から滑り降りられる場所を下見しながら進んで行く。今日は長い板で良かった。かなりの緩斜面であり、いつもの短い板だったら、この林道は滑らないと思えた。地形図上の1384高点の東で、香沢右俣を跨ぐ。ここには2連の橋が掛かり、一つを越えると、すぐその先にもう一つ設置されていた。ここで既に2.5時間経過。最初の印象とは違い、なかなか長く感じ、楽そうに思えたこの雪も、けっこうにブレーキになっている。確かに、いつしかモッサモッサと雪を踏みながら進んでいた。スピードは落ちている訳であった。

 
 右俣を跨ぐと、すぐに左俣。そこに掛かる橋の欄干を見ると、「こうざわおおはし」と読み取れた。この沢は「かざわ」かと思っていたが、「こうざわ」なのであった。この橋の右岸側の壁には大きな氷瀑が出来ており、アイスクライミングが出来そうな場所になっていた。その青い氷を右に見ながらずんずんと進む。するとすぐに「お断り」と黒字で書かれた白いプレートが現れ、その前にはゲートがあるようであった。左側を見ると、門柱の頭が僅かに顔を出している状態。これからすると、雪の量は1.2mほどは有るのか・・・。この先もまだまだ九十九折が続く。ショートカットして登りたいところだが、緩斜面の楽さに負けてしまい、しばらくは林道伝い。

 
 1550m付近。地形からすると、どうも分岐になっているよう。地形図には表記されていないが、ここは左側へ折れる道を選ぶ。雪があるので断定は出来ないが、冬季は間違えそうな場所になっていた。高度を増す毎に斜度が緩くなり、1600m付近から大きく進路が左を向き、北を目指すようになる。ここでの林道は大きく巻いているので、ショートカットする。ただし、道を追ってきた部分の安心感が無くなり、次に道形を見出すまで不安になる。どこでも歩けるような場所であり、道が無くてもいいわけだが、ここらへんの心理も面白い。そして1650m地点で分岐となる。右が登り勾配、左が下り勾配。山頂を目指すにあたり下るのは不本意だが、ここは左が正解で西側に進んで行く。シールがシューと摩擦音を出して滑ってゆく。ただしシール滑走はコントロールが効かない・・・。この先は水平動となり、僅かに登りになると、再び分岐。今度は右が登り勾配、左が下り勾配。ここまで来ると山頂の位置は把握でき、右の道を選び登って行く。カラマツからシラビソへと植生が変わり、なんとも高所らしい雰囲気に変わる。もう少し、もう少し、既に4時間が経過し、疲れも出てきていた。一歩一歩が重くなり、なにせスキー板が重い。それでも一歩、二歩。

 
 林道が終点となり、その左(西)側に山頂部があるようであった。ただしその前が雪の壁のようになっていて、もがく様に切り崩しながら登る。そしてこんもりと盛り上がった六軒山の山頂に到着。東側の木には、フジオカのTKさんが付けた、09年5月のリボンが残されていた。山頂はいまいちだが、先ほどの林道終点に降りると展望が良く、北に四郎岳と燕巣山、東側に白根山から錫ヶ岳に続く稜線が見えていた。板を履いたまま、林道終点と思しき所から北を巻いて西側に行ってみる。すると、どうも西尾根に降りて行っているような九十九折の跡も見られる。もしや道があるのか。あるだろう裏づけに、その周囲にシカ避けのビニールテープが巻かれた木が多い。どうやら杣道が存在するようであった。その西側の遠くを望むと、上州武尊山や、その奥に谷川岳の連山が見えていた。ザックを椅子にして白湯を飲みつつパンを齧る。明るい日差しもあり、無風。ポカポカとした冬の日であった。ただし、すぐに崩れてくるきらいはあり、西の空から雲が押し寄せてきていた。

 
 地形図を眺めながら、まだ迷う。西尾根をどうしようか・・・。少し降りてみるが、見える先の樹林間隔は狭い。行って行けないことは無いのだろうが、滑りに難儀するなら、広い林道を滑った方が気持ちがいい事になる。悩んだあげく、林道を戻る事にした。少し後ろ髪を引かれる判断。登り返しがあるので、シールは剥がさず、そのまま滑走に入る。下りだしの最初こそ、シールを外した方がいいと思えたが、すぐに平坦路となり、そしてその先で登り返しとなり貼って降りたことは正解となる。標高1600mを下回った辺りまで着けたまま滑り、そこから剥がして一気に滑走となる。ただし緩斜面。緩やかに、少し風を感じる程度のスピードで降りて行く。香沢大橋まで降りると、勾配が緩いのと日差しを受けた雪で、滑りが悪くなり漕ぐ場面が多くなる。意外や、下りは腕が疲れるのであった。九十九折の場所は果敢にも急峻をショートカットして行き、だらだらとした単調な滑りにアクセントを付ける。

 
 上流ダム辺りからやや勾配が増し、風を切って降りて行く。その滑りの間も、西尾根を滑ったらどうだったろうかと、今日の判断を惜しむように右側を見る。でも下に目を向け流れが見えると、これで良かったのだと思うのだった。林道上は、我がトレールを縫うように沢山のシカが通過している。我がトレールを伝っていないので、シカにとってもこの雪は、何処でも歩けるレベルの硬さになっているということが判断できる。自然界、いろんなものが判断材料になり、人間が劣化しない為にも、ここらへんの察知感覚は保ちたい。

 
 ゲート到着。本日の山行を終える。駐車スペースの部分で、なにか張り紙があるのではないかと危惧していたが、明るくなった周辺は無人の様子が明白で、ホッとしながら車に戻る。


 往復20Km。簡単そうな、そして実際歩いても簡単な山であるが、長いアプローチの山であった。ただし山頂からは展望がいい。目指して満足できる山であった。林道が付いている事で、車で登れる山となっている部分が、人気を下げているのであろう。と言うか、このエリアなら、日光白根や周辺の名立たる山が在ることから、ここはづっとマイナーなままなのだろう。


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