辰ヶ峰  1833m            

 2011.4.2(土)   


  晴れ     単独       神田地区より          行動時間5H11M


@耕地下余地5:51→(20M)→A最初の渡渉点6:11→(3M)→B2回目の渡渉点6:14→(24M)→C稜線6:38→(84M)→D1816.9三角点峰8:02→(19M)→E辰ヶ峰8:21〜40→(54M)→F1575高点9:34→(3M)→G下降点9:37→(10M)→H渡渉点9:47→(15M)→I到着10:02


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@神田地区の北、1211高点の場所から東に入る林道に車を入れる。雪がかなり残り、ヒヤヒヤしながらここまで来る。 畑の中を進んで行くと、谷の中に林道は入って行く。そこにある獣避けの通電ケーブル。 大型の獣を捕獲するケージが設置してあった。 A最初の渡渉点。ここで車道幅は終わり、山道となる。
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Bすぐに2回目の渡渉。詰めていた谷を右岸側に渡って、この先から九十九折が続く。 C九十九折が終わり、主尾根に乗る僅か手前。 C主尾根には有刺鉄線が流されていた。 1575高点は東をトラバースし北側に出る。
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1580m付近で、沈み込み量が深くなり、スノーシューを装着。 1710m付近の、このルート一番の急峻斜面。西を巻いた方が良かった。
1760mの小ピーク。リボンが残る。 D1816.9三角点ポイント付近。この先はなだらかで、周囲展望も素晴らしい。
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1833高点と三角点ポイントとの中間点付近。開けていて気持ちがいい。 東側に大笹沢山側の尾根が連なる。 1833高点のひとつ南のピーク付近。 歩きやすい尾根道。僅かに下って登りあげ。
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E辰ヶ峰山頂。写真右端に赤いリボンが棚引く。 E山頂部の一番太い木にもリボンが巻かれている。 E山頂から御嶽山がすばらしい。 E乗鞍岳もこのように見える。手前は鎌ヶ峰か。
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E山頂の東側がこのように広く、風を避けてポカポカとした日差しを浴びる。 E周囲全ての展望地。穂高の山並みも見える。 E珍しく潰れず完成形でザックから出てきた。美しいヤキソバパン!! 下山開始。
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途中から御嶽山。辰ヶ峰山塊での中間峰辺りから見る御嶽が一番美しい。 1800m峰。地形図上ではジャンクションピーク。 急峻は西側を巻いて降りて行く。 道形があるのか、掘れた地形も見られる。
1575.jpg  kakouten.jpg  kakoutenkar.jpg  kaitekina.jpg 
F1575高点に立ち寄る。道形は高点頂上を通っていない。  G林道への下降点。赤いリボンが下がる。  G下降点から西側を見る。九十九折開始。  冬季なので道形は無視して降りて行く。ショートスキーがあれば、快適斜面。 
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H本流の渡渉点帰り。  谷から出て、畑の場所に出る。周囲には、古い廃車が目立つ。  この作業小屋も古風。屋根を石で押さえてある。中には馬用だろう「鞍」が置いてあった。  I駐車余地に戻る。 


  

 週中の移動量が多かったり、送別会が入ったりと、ちょっとお疲れモードで週末を迎える事になった。何とか出られる気力があるくらいで、流石に全く欲が無かった。これではいけない。病気でも何でも、山で治したり癒すのが常。体は疲れてても頭は元気、金曜日の夜にはいつものように行き先探しとなった。

 

 こんな時用に用意してある山がある。ちょっとネタばらしますが、我が家にはA2相当のホワイトボード(タイプのフィルム)が壁に張ってあり、地図を見ながら面白そうに思った山が書き出してある。雨の時、体調不良の時、残っている2000m超級、全て合わせると30座ほど書かれているのだが、今回のような探す意欲があまり無い時にはここからチョイスすることが多い。そこをつらつらと眺めていると、手ごろな一座が目に入った。「辰ヶ峰」。ここならちょうどいい。あとは、スキーにしようかどうか迷うところだが、久しぶりに足で歩きあげたい。すぐさま登山靴に防水オイルを塗りこむ。そしてスノシューかワカンの選択だが、等高線は密ではないようであり、スノーシューを持つ事にした。

 

 1:10家を出る。久しぶりの野辺山越え。八ヶ岳の南面道路ではかなりの数の鹿が出迎えてくれる。なにか日に日に頭数が増えているような気がするが、気のせいか・・・。20号に降りて茅野にズレ、杖突峠で高遠に降りる。その高遠ではバイパスが完成し、狭い街中を通らなくても城址下に行けるようになっていた。もうじき高遠もハイシーズンになる。花見用の駐車場整備も完成しているようだった。そして伊那を経て権兵衛トンネルを潜って木曽に出る。国道361号は九蔵峠付近が道路工事中で、長い区間で作業をされていた。入山場所として。把之沢川沿いを詰めるのも良いかと思ったが、谷歩きが長いようで、そこでの柔らかい雪が想定できた。早めに尾根に上がるルートをと、西野地区の北側の神田からの林道を入ることとした。もうひとつは高坪地区まで入ってしまい、そこから辰ヶ峰の山腹に上がっている九十九折の道をとも思ったが、全ては初めての場所であり、どこがいいかどうかなどとは判らないのであった。

 

 西野川沿いに集落内に入って行くと、朝の新聞配りの風景があった。静かに脇を通りぬけ北に進んで行く。地図とナビを見ながら進むも、取付き点が良く判らず、小西地区の方へ行ってしまう。戻りながら東側に入る道を確認しながら行くと、白いガードレールが伴った林道が目に入った。付近の様子は地形図通りなのであった。その入口には、雪が80センチほど積み上げられ、林道に入るのをブロックしているようであった。でもここは四駆パワーで乗り越えてゆく。「ガリッ」と腹を擦るも、そういう主旨の車なので意に介さない。少し無謀かと思いつつ、雪の上をトラクションを利かせながら進んで行く。しかし、250mほど進んだ所で万事休す。チェーンでも巻かない限りは進めなくなった。こんな事なら、入口である1211高点辺りに置いてくればよかった・・・。帰りは下り勾配、雪の上のハンドル操作を誤れば、落ちてしまうことにも・・・。楽をしようとしてもいいことはない。

 

 久しぶりの登山靴。なんか初々しい。締め付けられた足が喜んでいる感じ。ちなみに、私は登山靴でもスキー靴でも、ユルユルのブカブカに履くのが好き。スノーシューをザックに括りつけ、いざスタート。歩き出して30mで左側に農作業小屋がある。屋根は板屋根に石が乗せてある古風な物。扉は壊れており、中が丸見え。そこには農耕馬用なのか、鞍も見えて、そのレトロな雰囲気に驚く。平坦な田んぼの為か、雪が覆い道の場所が何処にあるのか判らない状態。周囲を良く見ながら上流に向けて遡ってゆく。途中には廃車が放置されており、これらも田舎らしい風景に見える。田んぼの中の通過から山道に入る。その場所には茶色の乗用車も放置してあった。そしてゲートのように通電式の獣避けの門扉があり、今は開放したままになっていた。さらにそこから30mほど進むと、熊用の罠が置かれていた。ただし閉ったままで、冬季なので休止中ということか。これだけ大きな大罠も珍しい。やはりこの付近には大きな主が居るのか。これに捕まらないよう里に降りて来ないで欲しい。

 

 ほぼ地形図の破線通りに進んで行くが、その道形も途中で車幅が狭められる場所となる。そこは小さな流れで道が寸断され、その先は一転して山道となっていた。そしてそこを伝う事僅かで、この谷の本流と言えよう沢を跨いで右岸側に移る。よく見ると斜面には細かい九十九折が切られ上に向かっている。雪が乗っているのでその8割くらいしか存在が判らないが、立派な道がある様子であった。僅かにつぼ足だが、スノーシューを着けるほどでもなく歩けていた。残雪期らしい歩行が出来ているとも言える。倒木なども途中にあるが、気になるほど出なく、寸々と高度を上げてゆく。そして上の方を気にしていると空が開け、そこが主尾根だと判る。尾根に乗り上げる僅か手前に赤いマーキングも見られた。

 

 1520m付近、ここで主尾根に乗る。そこには尾根に沿って有刺鉄線が張られていた。その西側を適当に登って行く。これまであった道形が、有刺鉄線により寸断されているのだろうか、少し登ると東側から道形が現れてきた。登って行く先は1575高点となるが、有刺鉄線の柵は途中でトラバースして北に向かっていた。それに導かれるように進んで、1575高点の北に出る。ここからは緩やかな登りとなるが、雪質も緩やかになり、つぼ足量が深くスノーシューを装着。道具は道具、その後は快適に歩いて行けた。静かなシラビソの尾根。そこに雪とスノーシューの触れ合う乾いた音が響く。

 

 1710mから、このルート唯一の急峻地形が現れる。場合によってはアイゼンが欲しいような場所。九十九を切りながら少しづつ高度を上げてゆく。そして登って行く頂部が1760mの小ピーク。ここには鮮やかなリボンが縛られていた。ただし、このピークは進路に対して少し北に逸れる感じ。先を見てルート修正をかけながら北東へ進む。地形図を見ると、この先で把之沢川からの道と合流になるのだが、注意していても道形の在り処は良く判らなかった。雪が無いと見えるのか・・・。そしてその僅か上のピークがジャンクションピークと言えようか、こんもりとした顕著な高みになっていた。さあ、この辺りでそろそろ辰ヶ峰の山塊に入った事になる。地形図の表記では、この山塊全体を指して辰ヶ峰と表しているようなのであった。そして嬉しい事がひとつ。予想以上に周囲展望がいい。相変わらずのシラビソの尾根なのだが、樹林間隔があり、ところによっては完全に開けている場所もあった。こうなるとこれまでの苦労(あまり苦労はしてないのですが)は吹っ飛ぶ。緩やかな勾配にスノーシューを沿わせながら進むのだった。

 

 1816.9三角点峰には航空測量の板もなく、現在は通過点のような場所であった。ここから先も快適尾根。東側が開け大笹沢山の稜線が近くに見える。そう思って東側を気にしつつ行くと、今度は打って変わって左(西)側の展望が開ける。そこには、この地の主である御嶽山の白い姿がある。男性的にも女性的にも見える山容。当然のようにうっとりと見入る。うっとりって事は、女性的に見えていたのか・・・。進路は広い尾根で、雪庇も無く安心して歩ける場所であった。僅かにアップダウンを繰り返しながら北に進む。1830m峰で山頂かと糠喜びしたが、そこから僅かに下り込んで、登りあげた先が目的地であった。

 

 辰ヶ峰到着。擦れたリボン、布製の赤いリボン。ビニール製の赤いリボン。これら3種が見られ、パーティー(個人)としても3団体の残り香があった。山頂からは御嶽山と乗鞍岳が見える。これは嬉しい出迎え。わずかに西風があり冷されるので、東側に逃げると完全にシャットアウト。ポカポカとした日差しを浴びながら、ザックに腰を下ろす。ここは乗鞍岳側の展望場。白湯を飲みながらヤキソバパンを齧る。そのパン素材の甘さが幸せ感に変わる。よく見ると鎌ヶ峰の右横の方に、鋭利な槍のような頂が見える。“まさか槍ヶ岳が・・・”と思うが、周囲の山の状態が違う。その弧を描いたような稜線の様子に、“前穂か・・・”となった。いやはや、こんなに見させて、楽しませてもらえるとは思わなかった。マイナーピークであり、樹林に覆われ寒々とした暗い場所を思っていたのだが、正反対な明るい場所であった。そして案外楽に登れてしまった。今日はスキーではないが、もう少し時期が早ければ、スキーでもいいだろう。今の時期なら、フリートレック程度が適当に思えた。

 

 呼吸も落ち着き、マッタリとしたところで下山となる。往路のトレースに沿わせるように戻って行く。戻りながら前方遠くを見やると、中央アルプスの白い頂が見える。ここまでくるともう完璧。展望の山として辰ヶ峰を紹介していいだろう。照り返しの陽射しを受けながら、眩しさと共に、それら展望に目を細めながら戻って行く。三角点峰を過ぎ、次のジャンクションピークでは、かなり注意していたが南東への道の在り処は判らなかった。そして急峻地形の場所は、上からだと地形が良く見える。ここは西側が僅かに緩やかであり、そちらに膨らむようにして降りて行った。

 

 下山時は1690m付近からが要注意。尾根を違えて進まねばならない場所。上からの方向でそのまま降りてしまうと、明後日の尾根を選んでしまう。急峻が終わったら、西側を気にして進みたい。地形図には破線があるが、その在り処が判るのは1670m付近で、この辺りには掘れた筋が長く見られた。ズンズンと広いストライドで降りて行き、帰りは1575高点に立ち寄る。ただしやや植生の濃いピークで展望は無い。立ち寄らずにトラバースした方が無難。有刺鉄線を左に置きながら降りて行き、下降点到着。ここからは快適斜面。スキーがあれば楽しい場所。それでも、スノーシューを使いながら一歩を滑らすように降りて行く。臨機応変、どんな場所もその場に応じて楽しむ。それが自然の遊び。

 

 渡渉点を二つ経て、安定した林道に足を乗せてゆく。まだ大して時間が経過していない為か、往路同様の雪の硬さが残っている。西側の場所で、日中はあまり日が当たらず、いつもこんな様子なのかもしれない。畑の場所まで出ると、そこに広がるのは山村風景。ゆったりとおおらかな気分にしてくれる。そして車に到着。今日の山行を終える。

 

 短時間で登れ、難しい所も特に無く、展望のいい山。これらの要素からメジャーな山の位置付けでもいいと思うのだが、あまり登られる人は居ない様子。と言う事は、無積雪期と積雪期とでは、大きな差があるのか。くじ引きではないが、時折「当たりハズレ」を思う時がある。「ハズレ」とはあまり言わないものの、この場所は間違いなく「当たり」であった。

 
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