大行山 1780m
2012.1.21(土)
雪 単独 スノーパーク尾瀬戸倉から 行動時間:4H18M
@スノーパーク尾瀬戸倉6:56→(45M)→A硫黄沢を渡る7:41→(13M)→B富士見下山荘跡7:54→(5M)→Cゲートから林道を離れる7:59→(51M)→D標高1500mで尾根に乗る8:50→(69M)→E大行山9:59〜10:25→(34M)→F富士見下山荘跡帰り10:58→(15M)→Dスノーパーク尾瀬戸倉11:13
@スノーパーク尾瀬戸倉が現在通過可能な道の終点地。スキーヤーに混ざり駐車。 | 高石沢出合いの堰堤下を行こうかと思ったが・・・。スノーブリッジは無かった。 | 大久保沢出合前辺り。数日前のスノーモービルのトレールが続く。 | A硫黄沢を渡って、やっと右岸に乗る。 |
B富士見下山荘跡。トイレ舎は雪囲いがされている。 | C冬季はゲートは開放のまま。この先から西側の谷に入る。 | 急峻を、何度も九十九を切りながら登って行く。 | 登ってきた斜面。ラッセル奮闘。 |
D標高1500m付近で主尾根に乗り上げる。露岩も多く痩せた場所もある。 | 1500m付近から登ってきた側。 | 標高1700m付近。快適な広い斜面。 | 降雪の最中。綺麗なツリー。 |
E地形図で示す場所の、北東の場所に標識が付けられている。冬季だとここが一番高くなるのかも。 | E山頂の東側。 | F西側 | F今日はフリーランドーで。 |
ゲート帰り。今日の入山は一人のみのよう。 | G富士見下山荘跡帰り。 | Hスノーパーク尾瀬戸倉に戻る。 |
尾瀬の片品側の前衛峰と言えよう大行山。夏道は無く、雪を伝って登る山。多くは残雪期の春頃の登頂記録が見られるが、2月・3月はあっても1月の記録は無い様子。「いっちょ、やってやろうか」、こんな事で我がモチベーションを少し盛り上げてみる。金曜日は平地でも降雪。出かけるにも経路の事を考えると躊躇したくなるのだが、ヌクヌクと過ごす事をヨシとする自分ではない。ここは果敢に攻めてゆく。現地はどれほど降ったのだろうか。前橋市内でも5センチほどあったようで、西上州で8センチほど、山間部ならそれ相応に降ったのだろうと予想した。そして天気図からは、縦じまの等高線ではなく横じま。この時季にしては変則的だが、あまり風も無いだろうと読み取れた。決行。
1:15家を出る。関越道は意外や空いている。降雪の影響だろう。沼田で降りて椎坂峠を越えて行くのだが、ここがツルツルであった。何度もタイヤをとられ肝を冷す。アジアンタイヤは・・・ちょっと次回は無い・・・。安くても日本製の方がいいと体感。ソロリソロリと雪道を進み、鎌田の交差点を左折してR401を片品方面に向かう。大清水への代替バスターミナルのある尾瀬戸倉温泉の所で、尾瀬戸倉スキー場の案内看板に従って左折。あとは一本道で、現在の終点地が「スノーパーク尾瀬戸倉」の駐車場であった(3:45)。駐車場ではひっきりなしに除雪車が動き回り、そのエンジン音とライトで、休めたもんじゃない。降りしきる雪、どう行動しようか悩む。まだこの先の雪の様子が見えていない。志賀高原で体験したような、腰まで埋まるような雪だったら、もう出ないと到底山頂は踏めないだろう。ただし、ゲレンデ側もピステンブーリーだろうか、忙しく動いているのがライトの動きで見える。尾瀬があり、「登山」で入っていい場所であり問題にはならないだろうが、入口はスキー場であり、そこでの通過で、小言を言われるのも嫌である。タイミングを見定めていた。営業開始時間は8時。そんな時間まで待っていることも出来ない。暗い中行動してピステンに踏まれるのも嫌であり、白み始めた頃に入山する事と決めた。
しばし仮眠。今日はシュラフを2式用意し、懐にはテルモスに入れたお湯を抱き快眠とする。当然耳には耳栓。これまでは何も気にしなかったが、仮眠のしようが大きく山行にも影響するようになってきている。年なのだと思うが、工夫しだいで体を休められる事も知り、実行している。そして目を開けると、びっちり四方の窓を雪が覆っていた。2時間ほどで7センチほど積ったか。コーヒーを飲みながらパンを齧り胃に流す。食事と言うよりは、作業のような・・・。外には、駐車場の車列を整える監視員が居る。監視員が居ない時間に停めているので、我が車は整列はしていない。なにか言われるかと思い、ドキドキしながらルームランプを点けていた。10分ほどしても、何も注意が無かったので、置き場所はここでヨシとした。外に出てシールを貼りながら、ゲレンデ内の通過のタイミングを計る。こちらが思っているほど、現地の人は思っていないのかもしれないが、すぐ近くの尾瀬岩倉スキー場では、こっ酷く怒られた過去があり、それ相応に自己防衛があるのでスキー場には敏感になっているのだった。
開業1時間前、白みだし雪が降ってはいるが有視界。開業前に練習する風を装って入って行く。すると、なぜかピステンが傍に寄って来る。縄張りに入って来た部外者を見定めている様子。それに負けじと、急いでロッジ側のある西側に避けてゆく。次ぎに一番北のリフトの脇を通るのだが、ここでも作業員が雪降ろしをしながらこちらを見下ろしていた。なにか声をかけたそうに見えるのだが、俯いたまま心は急ぎつつゆっくりした歩調で脇を通過して行く。その御仁が背中側20mほどになった頃、やっとスキー場から抜け出したと思えた。ここまで神経を使う必要は無かったのか・・・。でも・・・。
林道の上には、スノーモービルのキャタピラーの跡が残る。ここはスノーモービル禁止の場所。どうすると堂々入れるのだろうか。そんなことを思いながらそのトレールの上に足を乗せてゆく。おかげでこの辺りのラッセルは軽減。快適に進んで行ける。あと、スキートレールが他にも二人分ある。ツアーでも楽しんできたものだろうか・・・。高石沢の出合いの先に東西に沢を横切る水路堰堤がある。当初はこの付近を渡渉して高石沢と大カッパ沢の間にある尾根に取り付こうと思っていた。この時季なら運がよければスノーブリッジを利用する事で渡れると思っていた。しかし、運が良くない・・・ブリッジ無し。もう一つは、ここは川底がコンクリートで固められている場所。その浅瀬を・・・とも二段構えで思っていたのだが、音がするほどに強く流れていた。
大久保沢の出合いでは、沢に登って行く堰堤群の脇をスキートレールが添っていた。荷鞍山を回ってきたのか・・・意外な場所のトレールにニンマリ。みんな遊んでいる。相変わらず続くスノーモービルのトレールを追ってゆく。進度が格段に速い。予想では、やっとやっとスキーの先を上げながらラッセルして進む行軍を予想していた。それが快適なほどの林道歩き。次ぎに大カッパ沢出合い。ここでも沢の左岸側の尾根に取り付くべく、硫黄沢の渡れそうな場所を逐一見ながら進んでいた。いくつか伝えそうな場所はあるが、リスクが大きそう。完全に繋がっておらず、飛び石のように雪の塊が出来ていた。御嶽の北東にある兵衛谷では、冬季に八艘飛びをやってのけたが、ここではその一つ一つの雪の塊が小さい。諦めずに左を見ながら探すが、次第にその主尾根から離れてゆき、林道は自然と橋で硫黄沢を渡る。急がずとも、ここを待っていればよかったわけだが、飽くなき挑戦。何かしようとする努力は無駄ではなく、単独であるからこそのフレキシビリティーと、何重ものルート検討・考察は大事だと思っている。
硫黄沢を渡り、僅かで富士見下山荘跡のトイレ舎の場所に到着。トイレ舎を見るとパブロフの犬ではないが、もよおしてくる。しかし、窓と言う窓は、雪囲いがされ入れないようになっている。横目で通過。冬季スキールートなのか、山手側の小屋の脇から、小尾根をスキートレールが登っていた。そこには赤い境界支柱も見える。地形図を見ると林道を行くより、小屋から北に突き上げた方がなだらか地形がある。知っている人のコース取りと言えよう。トイレ舎の先を西に進むと、そこにゲートがある。確か無積雪期には閉じられていた記憶があるが、冬季は開け放たれていた。さて迷う。このまま林道を伝えば、この先にある湿地ほどまで登って西に山頂を目指せばいい。しかし残雪期の多くはこのコース取り。それでは面白くない。果敢に攻めるのが常。どうしても大カッパ沢の東にある尾根を登ってみたい。
ゲートの先で林道を離れ谷の中に入る。谷の中は起伏が大きく、谷の左岸側を騙し騙し高度を上げてゆく。右岸側も見えるが、勾配が強い。標高1400m付近からはだんだんと覆いかぶさるように上の斜面が見えるようになってきていた。何処かで右岸側に行かないと・・・。谷の中はやや深く、入ってしまうとそこから抜け出すのにも苦労しそうな地形に見えた。そして1430mほどからトラバースして西側へ向かう。これまでフカフカであったが、硬いバーンもあり、エッジを効かせて斜行して行く。谷地形の緩い場所を選んで右岸側に移り、主尾根に向けて細かい九十九を切りながら這い上がる。ここもきつい斜面だった。当然ヒールサポートは一番上。勾配に対して楽なのだが、ちょっとした踏ん張りたい時に、心許ない位置なのであった。
尾根に乗ったのは、標高1500m付近。1428高点付近の広い尾根を地図で見ていたので、登り上げた場所が痩せ尾根だったので意外だった。露岩も多く、それらを縫うようにして登って行く。そして1600m付近からは一転して広大な斜面と変わる。獣の足跡も一つも無く、我がトレールのみ一筋引かれる。静かに落ちる雪の音。実際は音はしていないのだが、見ていると聞こえる。斜面が平坦になれば山頂は近いと判っている。コンパスを見ながら方向を定める。北に突き上げると1752高点に上がってしまうから、やや西側に進んで行かねばならない。その方向を見ると、こんもりとした場所が見える。既に歩き出して3時間近く経過。そろそろ山頂を拝みたい。どんな山頂なのか・・・だだっ広い場所を予想していたのだが、好事家が残雪期に登る場所。標識などはどのくらいあるのか・・・。
1750m付近はダケカンバの幼木が無数に林立し見栄えのする場所だった。高み高みと狙って行くと、いつしかシラビソの樹林の中に入り、こんもりとした細長い場所に立った。すると目の前の木肌に、オレンジのペンキで「大行山」と書かれている。その上にはG標が揚げられていた。でもおかしい、地形図の山頂はまだ先のはず。少し足を進めてみるが、確かに勾配は下がってゆく。無積雪期と積雪期の最高点が違う場合がある。ここはそれなのだと思った。真の位置を確かめるのも大事であるが、結局はその山の一番高みを目指してきているわけであり、標識の場所で納得とした。高みに戻るが、その場所はやや暗いので、少し東に下がって休憩とした。
大行山。一度は笹を濃いで狙おうかとも思っていた。それには、ここは斜面途中に三角点が設置してあり、探すのに難易度が高い場所。見つけてみたいとも思っていたのだが、結局雪を伝って登ってしまった。1月でも難なく登れる山であることも判った。積雪と天気にも寄るのだろうが、5時間ほど想定していたが意外なほど楽に到達してしまったのだった。白湯を流し込み、冷えた体を温める。今日は登り返しは皆無であり、滑りは楽しみ。バックルを硬く締め込み、いざ。
流石に往路の痩せ尾根は厳しく、高石沢側へ降りる選択もない。東側に進んで登山道付近に乗って降りて行くコースを描いた。1752高点を左にして滑って行く。緩斜面で至極快適。しかし1600m付近で、急峻地形に入ってしまった。もう少し早くに西に行けばよかったようだ。しょうがないので緩い斜面を求めつつ南に進む。途中小さな谷に勢いよく突っ込んで、両足のスキーが外れる場面も・・・。リーシュをしていて良かった。していなかったら板が見つからなかったかも。そしてこの先も1550m付近で急斜面に掴まる。地形図を見てもやばそうな斜面が待っている。彷徨とはこのことか、今度は北に向かって進み、滑ると言うよりズリ下るようにして1500m付近の緩斜面に降り立った。雪崩やしないかドキドキした斜面もあり、復唱するが1752高点を掠めるようにして東進した方が良かったようだ。緩斜面に入れば、あとは気持ちよく滑って降りて行く。時折林道を跨ぎ、冬季ならではの自由さ。
途中で林道に乗るが、林道滑りは長い板に限る。短い板だと緩斜面は滑らないのであった。今日の板の選択は、この林道をも見越した選択。ゲートを越えて富士見下小屋跡を通過、時折ストックで漕ぐような場所もあるが、概ね快走。ただし降雪があり、あまりスピードを出すと顔が痛い。ほどほどの滑り心地のいいスピードで降りて行く。そして最後はリフト横の通過。リフトに乗っている方の全ての目がこちらを見下ろしている。そんなリフト直下。「なんだこの人、こんなところ滑って・・・」そんな声が聞こえてきそうであった。ここだけ一気にスピードを上げて降りて行く。スノーパークに到着すると、チケット売り場の女の子の視線が・・・。林道から滑ってきているのをずっと見ていたようで、目が合うと笑っていた。軽く会釈をする。
無事、大行山を踏めた。スキー山行で楽しめる場所であり、大人数で出向いても山頂部が広いので歓迎してくれる場所でもある。ただし展望が乏しい。1700m付近で少し開けているところはあったのだが・・・。