台倉山   1852.9m        遠見山   1840m     
  
                       

 2012.7.28(土)   


  晴れ    単独       木島平林道を4キロ地点まで進み尾根に取り付く         行動時間:9H11M


@木島山林道ゲート4:43 →(7M)→A小屋4:50→(47M)→B4キロ地点5:37→(2M)→C尾根取り付き点5:39→(107M)→D台倉山7:26〜30→(73M)→E遠見の池付近8:43→(119M)→F遠見山10:42〜45→(111M)→G遠見の池川尾根末端12:36→(9M)→H林道に出る12:45〜50→(68M)→Iゲート帰り13:53


kijimayamarindou.jpg  konboku.jpg  koya.jpg  naibu.jpg
@木島山林道を行く その昔、混牧がされていた。 A小屋。個人的な小屋のようにも見える。 A内部にまで水が引かれ、装備の整った小屋。ただし、入れるのはここまで、実際の室内には鍵がかかっていて入れない。
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林道の様子。 B4Km地点。1Km毎に標柱あり。 C尾根取り付き点。 尾根の上。さあ笹との格闘。
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昔の柵か、5本ほど続いていた。 下層はさほど植生が濃くない。高度を上げると濃くなる。 上部には道形が時々現れる。ササの中にあり、伝える場所もある。 振り返り木島山。
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途中の目印になる大岩。 途中に一箇所のみリボンが2本巻かれていた。 D台倉山を西から東に見ている。 D薄れたリボンが垂れていた。
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D三角点は笹に埋もれ。 D三等点。 D台倉山から東の様子。 遠く鳥甲山の姿が見える。
hurimukidaikura.jpg  hukaisasa.jpg  temaetoomi.jpg toominoike.jpg 
振り返り、先ほどまで居た台倉山。 笹が密生。 鳥甲山の手前に遠見山がある。 E遠見の池の場所に、池がない・・・。
bunahari.jpg yubi.jpg  tabekasu.jpg hurimuki.jpg 
ブナハリか? 指の太さ以上のササの連続。 熊の食べかすも多い。 振り返り台倉山。
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ほとんど潜ったままの状態。 遠見山の西側の肩に乗った辺り。 山頂直下。 F遠見山南側
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F遠見山北側。 F双頭の朽ちた古木がある。 下山に使った西斜面は、かなりの激薮。 笹薮が静まり、植生が緩くなったあたり。これより沢下り。 
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沢の中の様子。上部は枯れ沢。 G遠見の池川の出合い。ここから林道へ出るのに進路が見えずに難儀した。  H林道に出る。  H本来はこの橋(欄干なし・コンクリート構造)の所に出るはずであった。 
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H橋から見る出合側。  ゲートから4.5Km地点。  3Km地点。標柱は熊に齧られている。  熊の親子が3頭居た。 5分ほど対峙し足踏み。
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小屋帰り。  林道にはウツボグサが多い。  Iゲートに戻る。駐車余地は5台ほど。   


 志賀高原の藪。国内の藪の中でも屈指の場所。もっとも、南方の離島はさらに凄いのだが、その太さと強靭さは、こちらに軍配が上がるほど。そして盛夏、暑すぎる日が続いている。密生を考えると、こんな時に藪漕ぎなどと、季節違いとか場違いに思えるかもしれない。ただし、経験から学んだ部分で、濡れていて難儀したことが多い。笹薮の中がカラカラに乾いていたら・・・漕ぎやすいのではないか・・・ふとそんなことを思いついた。


 前々から気になっていた山がある。木島平の北東に位置し、栄村と村界の場所。スキーで行こうかと、何度も降雪期にも眺めていた場所。しかしアプローチがいかにも長すぎる。藪漕ぎも楽ではないがスキーでのロングコースも酷い。天秤にかけるのだが、積雪期に行けないと藪漕ぎを思い、無積雪期が終わるとスキーでのアプローチを思案していた場所。そんなことをして2年くらい経過、そしてまた無積雪期のターンになった。カヤの平牧場までの道が開くころ、美味く残雪があれば快適に登れるだろう。タイミング次第で登り易い場所にもなる。そこに一つ別の欲求がある。「遠見の池」が見てみたい。地形図には大きな池として記入されており、場所柄神秘的な池に思えていた。抱き合わせとなると、完全無積雪期。


 1:17家を出る。上信越を信州中野で下りて、R403号を伝い糠塚地区からの清水平林道でカヤの平牧場へ上がって行く。高速を降りた時の外気が26度。長野にしては暑い。それが、カヤの平まで上がると22度まで下がった。僅か4度の差でも涼やか。牧草地の脇にテントがいくつか見える。金曜日から泊まれる人ってどんな人なのだろう。舗装路の上を単独のハイカーが南進している。高標山を目指しているのだろう。速い出発、まだあたりは暗い。

 奥志賀公園栄線は、野沢温泉側にも奥志賀高原側にも抜けられない旨の表示も見える。最初、R292経由でも良いと思っていたのだが、伝っていれば不通にひっかかり危ない所であった。分岐点から2.8キロ進むと、右側にやや下り勾配の林道がある。これが今日伝う木島山林道(4:05)。林道路肩に余地があり、つめると5台ほどは駐車可能。外に出ると、ビンビンと感じる。この感じ・・・。その前に風に乗って臭いがしているのだが、間違いなく獣の居る臭い。最初は林道歩きであり、ヘッドライトで行こうと思っていたが、この感じに、しっかり夜明けを待つことにした。


 夜が開け、そこにある案内看板を見る。その昔はこの林道の先でも放牧がされていたよう。となれば、それなりの人が入った跡があり、杣道が利用できるのではないかと思えていた。ゲートには南京錠がかかり、自転車をも入れぬよう、左右の隙間は塞がれていた。バイクはもちろん入れられない。半身になって入れるような隙間をすり抜けて林道に足を踏み入れる。久々の濃い藪漕ぎ、高まるモチベーションと相対する不安で、体と思考が少しバラバラに動いているような感じであった。


 緩やかな林道で、この林道がどんな状況なのかと気にしながら進んで行く。どこかで藪化しているのではないかと危惧していたのだった。ゲートから7分ほどで、目の前にログハウスが現れた。個人的な建物のようにも見えるが、事前に調べた地図では牧場小屋と書かれていた。扉が開き、中に入ると沢水が引かれ、ありとあらゆる道具が揃っていた。入れるのはこの前室までで、本当の部屋の入口には鍵がされていた。なんと、未開封のビールまで置かれており、その製造年号は新しかった。このことから、頻繁に管理者が来ているように思えた。勝手ながらここで給水させていただき、林道を詰めて行く。


 この林道、ゲートからの距離が白い標柱で示されている。1Kmを過ぎ、2Kmの表示を見た先で、黒いものが横切った。なんて久しぶりだろうか。カモシカの灰色でなく、サルの大きさでなく、まさしくツキノワグマ。右側の沢から上がってきて山手に入っていった。その周囲の木々の動きを観察し、離れたのを確認して足を進める。放牧が終わり人間はあまり入ってこなくなったのだろうか、熊にとっての楽園なのかもしれない。益々周囲の獣臭が強くなっている。林道の上にもその糞が各所で見られた。林道脇には紫のウツボグサが沢山見られる。鶯の鳴き声が谷間にこだまする。蝉の鳴き声が不思議となく、そのための涼しさもあった。


 3Kmの標柱は熊に齧られていた。この先、左側の2mほど上辺りでゴソゴソと動くものがあった。ここは帰りも同じ。何かの巣があるのやも知れない。4Kmの標柱を見ると、そろそろ台倉山を意識して取り付き点を探さねばならない。顕著な谷があるので沢登りとも思っていたのだが、その手前西側には顕著な尾根がある。下から見ると伝い易そうな尾根で、瞬時にこれで行こうと判断できた。それには、他の場所が植生が濃いのだが、ここはまばら。下だけなのかもしれないが、僅かな事でも進度に違いがでる。少しだけ偵察に東に進み、戻って決めた尾根に取り付く。


 5mほどの急登を這い上がると尾根に乗った。植生は弱く、そんなに負担になるほどではない。ただし藪は藪。ルートがある場所とは大違い。くもの巣はあるは、ウルシは生えているは、五感をフル活用して進まないと自然に遊ばれてしまう事には変わりなかった。オヤッと思ったのは、何か支柱にされたのか、インチサイズのパイプが埋められていた。予想できるのは牧場の柵。人工物がある事で、何処まで続くのかと期待したが、3m間隔ほどを5本見ただけで、その先には見えなかった。もっとも、広い尾根であり、何処かに続いていたのかもしれないが・・・。


 だんだんと高度を上げると植生も濃くなる。なにせウルシに気を使いながら分けて進む。途中で珍しく完全武装とした。時として半袖でも突き進んでしまうのだが、ここは拙い。かぶれそうだし、笹も多いことから傷だらけになる。長袖を着込んだ。右に左に、よく見ながら歩き易そうな、植生の薄い場所を選びつつ高度を上げる。ありがたいのはブナが在ること。ブナの下は枯れ枝が落ち、その為の空間が出来ている。よって大木を拾うように歩くと遮蔽物が少なく幾分か楽なのであった。幾分かである。


 1550m付近。やはり高度を上げるとササの質がワンランク上がる。ネマガリを採る分には太いほうが嬉しいが、漕ぐには逆。当初に伝おうとした沢が東に見え、降りて行って沢登りに変えようかと思えるほどに障害になってくる。はたしてこのまま突き上げて、山頂まで到達するのか・・・。途中で厳しいササの城壁・城塁が待っており、敗退するのではないか・・・そうも思えた。暑い日であるが、何を有り難いと言ったらいいのか、潜る場所が多く、さほど日差しが気にならない登りであった。ふと振り返ると、木島山がデンとした姿でこちらを見ていた。けっこう登って来ている。頑張ろう。


 村界に乗り上げた付近からか、なにか獣道のような筋が見え隠れしていた。完全にササの中にあり、分けながら伝ったりもしたが、途中であやふやになり逸する。それでも何回も見え隠れしていた。無いより在る方がましであり、省力の為に伝う。そして判断材料を見つけた。刃物跡が残っていた。どうやら昔の作道跡で、1544高点側からあがってきていたのかもしれない。残念ながら、現在は伝える状態になく、藪漕ぎよりいい程度な道形で残っている。その途中。真新しいピンクのマーキングが下がっていた。好事家は居るもんである。そのリボンは、東の谷側にマークしてあるようであり、谷ルートで上がってきた方の下降点箇所の目印のように思えた。なかなか手ごわくなってきたササの植生、潜るようにして道形を探し探し行く。乾いていると思った笹は、朝露でしっかり濡れている。濡れ鼠ほどではないが、しっかりと濡らされる。下には雨具を履いているが、上は着ていない。暑くて着れないのであった。


 台倉山登頂。いつ着くか、いつ着くかと思わせるような登りだった。もうこの1座で十分と思わせるような藪漕ぎ。なにせ、脛や太腿を叩く笹に、ここに歓迎されて居ないことを感じていた。“脱いだらアザだらけだろうな・・・”山頂には三角点があるはずであり、探し始める。この山頂には朽ちたリボンが一つ下がっている。三角点はその南西1mほどの場所にある。ひっそりと笹の中に隠れているような様が、愛らしい点であった。意外と思えたのだが、この山は展望がいい。モシャモシャの背伸びするような場所を想像していたが、周囲の植生の圧迫感は無い。予定していた時関よりはかなり早くに到着した。ただし相応の疲労もあり達成感もある。こうなると“ここ1座で降りてしまおう”なんて思えたりもする。でももう一方、ここまで上がったのなら、もう一座踏まないと、また来なければならず、そこそこの標高まで同じような苦痛を繰り返さねばならない。どっちが得か・・・。山で損得を考えるようになっている時点で修行が足りないのだが・・・。


 とりあえず、もう一つの欲求でもある遠見の池まで行って判断することにした。方角が変わると植生が一変する。台倉山からの南東斜面は密藪が待っていた。笹に腕ひしぎ十字固めを決められたり、足をロックされたり、あとは蔦類も多く、鉈が欲しい場所でもあった。進度が一気に落ちる。下りながら、前方の見通しが利く場所が2箇所あり、そこから眺めると、遠く鳥甲山が見え、その手前に遠見山が構えていた。“あそこまで行くのか・・・止めとこうよ。”弱気な自分が言っていた。上から池が見えれば目印になるのだが、一切見えてこない。それほどにササが高い。2.5〜3mほどはあるだろうか。全ての視界を閉ざしていた。こんなところで遭難すれば、上からも発見されないのだろうと思えていた。


 遠見の池付近。付近と書いたのは、池が無いからである。あまりGPSは出さないようしているのだが、ここでは出して場所を確認する。地形図の池を示す場所にいるのだが、水気が全く無い。倒木も多く、笹が深く、進路が見出し辛い場所であった。池はどうしたんだ・・・。この暑さに干上がったのか。少なからず湿地があっても良さそうなのだが、それもなかった。在るけど位置を外していたのか、この池が見られなかった事が、大きく悔いとなる。もうこうなると“もう一座、是が非でも踏まないと”と言う気持ちになった。


 遠見の池付近から遠見山への登りに入る。笹の中には熊の食べかすが沢山残る。どれだけ居るのだろうか。笹に残るのか強烈な獣臭がする場所もあった。糞も多い。深い笹、太い笹、間隔のない笹、バリバリと大きな音をさせながら分けて進む。膝を入れ笹を分け、そこに体を半身入れてこじ開けるようにして進んで行く。何度となく撤退を思うのだが、体力としては疲れておらず、問題は精神の部分。困難から逃げたい、楽をしたい・・・人間の卑しい部分が出ている。でもここを越えないと卑しいまま。


 遠見山の西斜面は、ブナの枯木がちらほらとある。ブナハリタケか、もっさりと生えている場所も見られた。いつもなら採っている余裕があるが、この時は皆無。いかに楽に分けて進むかで頭はいっぱいになっていた。この時期にして柔らかい新芽のネマガリも出ている。それらは目ざとく熊が取って食べかすになっている。美味しいのは判っているようだ。困ったのが、蜂やアブが付きまとう。大きな羽音をさせて頭の付近をひっきりなしに飛び交っていた。何もされなければ放っておくのが基本。ただし刺されれば・・・叩く。アブに左肩を刺され、パチッという破裂音とともに一撃で・・・。


 地形図をみると判るのだが、遠見山の標高点は1832ピークでとっている。しかしこの山塊の一番の高みは1840mピーク。これにより、日本山名事典も1840mピークで座標を取っている。地形図を追うと、ちょっと違和感のある山なのである。本当は地形図の座標点まで行ければいいと思っていたが、そんな余裕は無くなっていた。最高地点までを目指す。それが西寄りであり、今回の経路としてはありがたいことであった。1800m付近で笹の中にシラベが多く見えるようになる。それらを拾うように行くのだが、笹は深いまま、ちょっと外すと、深い高低差がある場所もある。倒木が隠れていたり、最後の最後まで楽ではなかった。そろそろか・・・山頂部の肩に乗ったのは明らかで、もう少し。


 遠見山山頂。と言ってもそれらしい顕著な場所ではなく、笹原の山頂にシラビソが林立していて視界なし。目立つ双頭の古木があり、その下で小休止。とうとうここまで来た。「その一歩が道となり・・・迷わず行けよ、行けばわかるさ」歩いてきたからこそ経路が判った。そしてきつかった。笹に切られたであろう顔がヒリヒリする。叩かれた向こう脛が何箇所も痛む。でも結果が出せた。目標点に到達ってのは、この遊びの最高の喜び。願わくば鳥甲山が見えれば言うことは無いのだが、そんな場所ではなかった。まだ終わった訳ではなく、これから林道までの下りを考えねばならない。地形図を見てもう一度再考。当初は遠見の池まで戻ってそこから下ろうと思っていたのだが、同じ場所を下るのは勘弁願いたい。そう思えるほどの植生であった。ここは西北西に下りる尾根を伝おうと考えてみた。やや広い尾根となるが、間違えても南北に沢があり、どちらにしても遠見の池川に降り立つことが出来る。さあ行動開始。


 少し西に進み、適当な場所から南西に下降しだす。熊の爪痕もシラビソに残っている。降りながら、かなり半信半疑となるのだが、酷く笹が密生している。往路の尾根どころではなくなった。このまま突き進んでいいものか。重力に任せて分け降りて行くのだが、なにかあって戻ろうと思っても、そう観単に戻れそうにない激薮度であった。当然のようにより歩き易い場所を選びながら行くのだが、あまりの厳しさに沢の中へ逃げることにした。1770m付近から、やや北寄りにルートを変えて進む。1740m付近まで降りると、密生地帯を抜けて視界が得られる中を降りられるようになった。そしてしっかり沢の中に入る。


 遠見の池川左俣。上部は枯れ沢で、それでも流れが途絶える事はないのか、苔生した岩がほとんど。慎重に足を乗せて降りる。1660m付近で、ややなめ底となり表情が一変。その先で流れが有れば小滝でもあろうかと言う段差が3箇所ほど現れる。ここも苔生しており、ザイルが欲しい場所。慎重に岩を掴みながら降りて行く。こんなところで滑落すれば、誰も助けに来ないし見つからない。単独行であることを心して細心の注意を持って行動する。クネクネとしながら下って行く沢、途中から細い流れが出てくるが、途切れ途切れの流れとなっていた。沢ルートの選択は概ね正解だったようだ。視界があるのと足先を邪魔するものがないので、これまでに比べ至極楽であった。

 
 1570m付近。沢の傾斜が緩くなりだした辺りから、流れが太くなる。右岸側左岸側を選びながら何度も渡渉しつつ降りる。大きな水溜りのような場所もあり、水没を気にしながらルート選びをする。歩き易いと言え、ここでもササがあり、足元が見えない場所が多い。踏み外して水没しないよう、その一歩に筋力を使いながらゆっくりと足を運び注意を払う。しかしこの沢歩きも、下の方に行くと狭い谷(沢)全体に流れが覆い、右岸も左岸も歩き辛くなる。1470m付近で南側に這い上がり尾根に乗る。尾根の乗るとまた密生。しばし忘れていた平泳ぎを再び再開。

 尾根歩きとなり進んで行くと、こんな場所にも錆び付いたアングル鋼が並んでいた。ただし見えたのは3本のみ。そろそろ林道と出合わねばならない。首を伸ばすように先を見るも、なかなか現れない。進路左にも右にも沢があり、地形図上の自分の位置はおおよそ把握できるが、沢歩きから再び藪漕ぎになったので、その負荷がここを長く感じさせていたのかもしれない。そして突如、足の先が崖となり、急降下する。まさしくずり落ちるようにして沢に降り立つ。地形図で見るとここに林道が在るはずなのだが、道が見えない。ここで戸惑ってしまった。あるべきものがないのは、今日の遠見の池に続いて2度目。林道が荒廃して自然に戻ってしまったのか・・・そう思いつつ周囲を見ていた。川下に進めばあるのだろうが、流れがあったり植生が濃く、どうにも進み辛い。ここで北側の大地に7mほど這い上がる。するとこちらには古い切り開きがあり、その先に林道が見えた。ホッとする。これで長い藪漕ぎから開放される。ササの中が涼しかったのか、やけに林道上での熱さを感じる。藪装備の長袖を脱ぎ捨て、Tシャツに着替えると幾分か爽快感が得られた。橋を確認しておらず、東に進んでみる。20mほど進んだ先に、欄干のないコンクリートの橋があった。そこから遠見の池川の上流を見ると、60mほど先に降りてきた尾根末端が見える。そういう事か・・・。

 
 林道を戻って行く。3分ほど進むと、これまでの1キロ刻みの標柱とは違う「4.5Km」と書かれたプレートが木の根元に落ちていた。往時はそれなりに往来があった林道なのだろう。しばらくして右側に往路の取り付き点が見えてくる。その先が4Km標柱の場所。鶯の囀りを聞きながら快適な林道歩き。快適さは、目標座が踏めた満足感がからが半分。3km標柱を見て、その僅か先で、奇怪な泣き声が聞こえた。なにか尋常で無い事が起こったよう。すると前方の木に、スルスルと黒い固体が這い上がるのが見えた。居るのか・・・。可哀相な事をしてしまった。のんびり遊んでいたのかもしれないところを驚かしてしまったようだ。木の上で行き場に困っている。小熊が二頭、親熊がその後ろの太い木に登り全体を見ている。静かに後ずさりしながら様子を観察。降りる様子を見せたり、やはり次の行動に戸惑っている様子。木の上が安全なのか降りた方が安全なのか・・・。20mほど離れてもそのまま、30mほど離れると、こちらをジッーと見つつ次の瞬間スルスルと降り出した。林道に出てくるのか、少し身構えたが、普通に藪の中に入って行った。固体は見えないが、木々が動く様子で居場所が判った。久しぶりに自然を強く感じることとなった。野生動物が安心して生息できる場所があるって事はいい事。ここの林道のゲート封鎖は適当に思う。森の民が離れた事を確認して歩き出す。周囲により注意を払いながら・・・。

 
 往路でガサッと動いた場所は、復路でも同じように動き、何かが警戒音を発した。何が居たのか・・・。林道脇3mほどの場所であった。1kmの標柱を過ぎると、前の方に小屋が見えてくる。誰かが来ているかと思ったが、気配なし。沢水で喉を潤し、あとわずか。自然の音に混じってエキゾーストノイズが聞こえてくる。バイクも楽しいのであろうが、静かにならないものか・・・。乗っていた時はそんな事は思わなかったのだが・・・。それより、不通とあったのに野沢温泉側に抜けられるのか・・・。

 
 ゲートに到着。ちょうどいい風量がブユを蹴散らしてくれ、着替えるのにちょうど良かった。もう少し時間がかかると思ったが、何とか結果を出せた。さて、乾いたササはどうだったろうか。逆に今回の場所が濡れていたら、かなり難儀したと思う。この点では、この時期の入山もプラス要素が多い。潜る場所がほとんどであり、そのために日差しを避けられ幾分か涼しく歩けていたとも言える。

 
 この山域。山の技量より、熊が多く居る事をどう判断して入るかが問題に思う。間違いなく居る。風の音や流れの音で、彼らがこちらに気づかない場合もあるだろう。敵対視して攻撃的に入るのではなく、共存を意識して入るべきなのだろうと思う。やもするとバッタリ・・・なんて事もあるだろう。避けたい人、ちょっと楽しみたい人。私は後者なのだが、前者であれば無積雪期は避ける方がよく積雪期での入山がいいだろう。

 
 遠見の池は、はてさて・・・。見落としたのか消えたのか。

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