長倉山   1439m        
                        

 2012.1.9(月)   


  晴れ      単独      上越橋側より         行動時間:3H20M


@1070.8駐車スペース7:00→(8M)→A上越橋7:08→(59M)→B三国峠南(トンネル上)で尾根に乗る8:07→(44M)→C長倉山8:51〜9:26→(45M)→D上越橋10:11→(9M)→E1070.8高点駐車スペース10:20



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@1070.8高点駐車スペースからスタート。 上越橋東の除雪(雪捨て場)スペース。晴れていればここに停めても良かったか。 A上越橋を渡りきり、登山口。17号は歩道が無く、ここまでが怖い。 新雪の上にトレールを引きながら。
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朝日を浴びて・・・。 木漏れ日ハイカー奮闘!! 送電線の下は快適バーン。帰りはここを下る。 途中から三国山側。
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稜線手前。雪庇は2mほどあり、割って進む場所を検討中。 雪庇直下。 B稜線に乗る。鉄塔の先に三国峠の鳥居と社がある。 この雪庇の上は安全通過。
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標高1400m付近から、かなり危険な雪庇の状況に。計4回崩落があった。 振動で大きく割れ落ちる。
落ちる。 目の前で割れる。
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1410mピーク。この前後も危険だった。  長倉山へのラスト。雪庇を避けて樹林の中を通過して行く。  C長倉山南側。双子峰のように南北にピークがある。  C長倉山から稲包山側への稜線。この先、深く落ち込む。鉄塔間近まで下ったが、そこで引き返す。
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C長倉山から三国山側。  C今日はカルフのメタ。マンゾクスペシャル。  C谷川岳は雪雲の中。お約束。  1410ピークでシールを剥がして滑降開始。 
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新雪の上を快適に・・・。 送電線の下を大きなターンで・・・。  Dトンネル脇に到着。  E駐車スペースに戻る。 



 久しぶりに上越国境を目指す。所謂落穂拾い。地形図に載らないが事典に載っている山がちらほらある。残っていると気になってはいるものの、そこは季節になるとあの蛭が出る。動きが鈍る時季に入山するのが適季と思っていた。そして平標山側に対して、三国峠以南のスキー報告が乏しい。地形的なものとは薄々解釈していたが、行ってみないと判らない部分もある。いざ・・・。余談だが、本来この日は、八ッの赤岳へガイドを頼まれた日であった。依頼者が仕事になりキャンセル。ピッケルをストックに、アイゼンをスキー板に切り替えたのだった。

 
 関越道を月夜野インターで降りて、17号で三国峠を目指す。最初のセブンに寄るも、しっかりヤキソバパンが並んでいた。「今日はいける」、げんかつぎではあるが有ると気分が乗る。と言うのは、三連休初日の山旅では寄ったセブンに置いてなかった。ちょっとの事だがモチベーションが変わってくる。そんな影響があるなら家で作ってくれば・・・と言われそうだが、そこは突っ込まないで欲しかったり。話を戻す。断然湯沢側へ抜けて行く車が多い。乗車している人は若者と家族連れ。多くは苗場周辺のスキー場を目指しているのだろう。路肩でチェーンを巻いている姿もある。外気温はマイナス6度。スタッドレスのありがたさを感じつつ横目で通過して行く。

 
 三国トンネルを目の前にして、除雪された駐車余地がある。そこからトンネルまで500mある。たかが500mだが、積雪期の17号でのこの距離は恐怖。時折大型トラックも通過している。路上を歩かねばならなく、それも雪があるので路肩寄りでなく車道寄り。かなりプレッシャーだった。もう一つ、トンネル出口に上越橋が在る。その袂にもスペースがあるが除雪用スペースの為、駐車しないで欲しいとの文言が書かれていた。以前はトンネルを出て湯沢側から登ったので、こんなことは思わなかったのだが、群馬側からのこの時季のアプローチは少しいやらしい。トラブルは避けたいので500m戻った余地に停める事にした。三国トンネル内でユーターン。ユーターンできるほどの通過間隔であった。

 
 月明かりの夜であるが、この付近は雪雲が覆っており、薄ぼんやりとした月が見えていた。僅かに仮眠してから準備をしだす。新雪を考慮し、今日は一番太く軽い板としカルフのメタを積んで来た。これにシールを貼る人は稀だろうが、私は貼る。ずっとそうして使ってきており、そのために内蔵されているシールが変になっているとかは無い。スキーシューとも言われたメタ。これにバインディングを付けた事で、格段に面白い道具に変わった。スキーヤーの皆さんには邪道と笑われるかもしれないが、趣味は自己満足であり、自分が楽しいように工夫し行動する。さて恐怖の500m。仮眠をしたのは、夜明けを待っていたのもある。スタートからすぐは完全なるブラインドコーナー。スピードを上げて突っ込んできて、歩行者に驚いてブレーキを踏もうものなら、そのまま遠心力で歩行者(自分)の方へ滑ってくるだろうと思えた。よってリスク回避で夜明けを待っていた。しかし昼間の方がスピードを上げてくるようで、やはり恐怖の時間で間違いなかった。かなり早足で最初の除雪スペースへ行く。そして峠に登ってくるエンジン音を聞き分け、急いで上越橋を渡って行く。

 
 登山口に到着し、ちょっと・・・。三連休でもありトレースがあるものと思っていたが、登山道はまっさらな雪であった。それはそれで嬉しいのだが、意外に入山者が居ない場所なんだと思えた。峠くらいまではトレースに乗って板を担いで上がる予定であったが、しっかりとスキーラッセルが始まる。沈み込みは20センチほどか。そう辛くないラッセルだった。ありがたいのは風が無い事。入山して10分ほどして防寒具を脱いで腰に縛った。背中から朝日を浴び、我が影を追うようにして純白の斜面を少しづつ這い上がって行く。途中標高1250mほどの場所で谷に入り、そのまま突き上げてゆく。この辺りで本来の夏道は北に進むようだが、この時季だとその道形が良く判らなかった。それよりそこから西側がすばらしいバーンが広がる。上空を見ると送電線が通っている。送電線に木々が触れると山火事になるため、往々にそんな場所は伐採してある。スキー場のような斜面がそこにあるのだった。一方、三国山側も良いバーンが見えている。あっちもこっちも楽しめそうなのだった。

 
 1300m付近まで上がり、送電線鉄塔が稜線尾根上に見える。その前に従えるように、こちらに頭を垂れた雪庇が鎧のように待っていた。こうなると三国峠に一旦上がってから、こちらに進んで来ればよかったか。雪庇を正面にし、割って入れそうな場所を選ぶ。その高さは平均2mほど。こうなるとスキーを履いている事が邪魔になる。ピッケルとアイゼンだったら楽なのに・・・。僅かに高度を下げるようにして、何とか尾根上に這い上がる。そこからはレッドカーペットならぬホワイトカーペット。雪庇の上を板を這わせてゆく。当然崩落を気にして樹林側寄りを進んで行く。最初の目指すピークが目の前の1400m峰。ヒールサポートの助けを借りて調子よく上がって行くと、東側で異変が起こった。それも轟音と共に・・・。雪崩が起きている。それも雪庇が崩れて・・・。飛び込むように西側の樹林帯へ体を預けた。そしてもう一度同じように進んでみる。3mほど行くと、今度は目の前の大きな雪庇が“どうだ”とばかりにズドンという音と共に落ちていった。ここの雪はそんなに弱いのか・・・。よく見ると長いクラックが尾根に沿って入っていた。その距離15mほどか、衝撃によっては一気にこれらが落ちるのだろう。背筋が寒くなった。この後は、必ず西側の木々を掴むようにしながら這い上がって行った。計4回、私の振動で雪崩れた。なんという影響力。平地でもこうありたい。

 1400m峰に立つと、その先もこれまでと同じような雪庇尾根。向かう先すぐ近くに長倉山が見えているのだが、かなり遠くに思えるようだった。スキーだったから力が分散してよかったのか、スキーだから広範囲に影響したのか、カンジキだったらどうだったろう。歩きながらも色んなシチュエーションで考察を重ねる。あとは、少し時期が早かったとも言える。スキーの報告が少ないのは、これらがあるのか・・・とも思えた。この先は西寄りに進み、その大半を樹林の中を進んだ。進路の右の方にはキワノ平ノ頭があり、そこからの尾根上に向山も見えている。今日はそのキワノ平ノ頭まで進もうと思っていたが、完全に意気消沈状態であった。とりあえず長倉山まで安全にと思って、少しスピードを落として慎重に登るような足取りとした。尾根が終えて長倉山側の斜面に入ると、やや硬いバーンがあり、この堅さがありがたかった。尾根上の柔らかい雪の上は、崩落を目の当たりにして少々トラウマな状態でもあった。でもこれも体験。落ちればこんな悠長なことは言っていられないのだが、まだ娑婆に縁がある。シール任せに這い上がってゆくと、獣の足跡の沢山残る大地に立った。

 
 長倉山到着。この山は南北に2つの高みがあり、乗り上げたのは北の峰。ここから見ると、南の方が高く見える。さてここでよく考えねばならなかった。ここから西進としたいが、100mほど高度を下げてから登り返しとなる。有視界であり、稜線の全ては見えている。これまでと同じような雪庇の尾根。昨日までの私なら、“雪に乗って楽々”と思えたが、今日はそうでない。こんなに緩い雪もあるんだと体感。進退をけっこう悩んでいた。悩んだ時は行動してみるのが常。とりあえず気がおさまるところまで進んでみる。稜線上には、山頂から70mほど下がった場所に送電線鉄塔が立っている。その僅か上まで降りてみた。そしてそこから時間配分。まだ時計は9時。ここまで2時間を要しており、同じほどかけてキワノ平ノ頭。なんて思っていたら、みるみる雪雲が迫ってきていた。先ほどまであれほどに晴れていたのに・・・。色々を精査する。これは自然も、「今日はここまでにせよ」と言っているのだと解釈。現実に、足許にこれほど神経を使わねばならない登行はかなり疲労度が嵩む。“また出直そう”そう思えた時は、既に踵を返して登りはじめていた。

 
 山頂に戻りザックに腰を降ろして大休止。耳を澄ますと、西風に乗ってかスキー場のBGMが聞こえてきていた。それと17号の往来の音も聞こえる。地図を見ながら滑降する場所を、出来る場所を探す。でも往路の送電線の下を見てしまうと、そこを滑らずにおれない。シールのまま1400m峰まで戻って、そこから滑り降りて行くことに決めた。三国峠を挟んで北側に三国山が見えている。今日は誰か入山しただろうか。その奥に谷川岳があるのだが、その場所らしく、しっかりと雪雲の中に隠れていた。

 さあ戻って行く。シールを着けたままだが、柔らかい雪であり、そこそこ形になった滑りとなる。そして雪庇尾根。ここは樹林側を行く。そして1400m峰に登り返す。崩落が怖く最高所に立てないため、細引きで立木にビレイをとってシールを剥がす作業をしていた。そしてバックルを締め込み、一気に滑り込む。快適も快適。シューと言う静かな摩擦音をさせながら滑り降りて行く。綺麗なシュプールとは言えないが、何となく満足できる弧を描きながら。立ち止まって、その弧を見上げニンマリする。送電線下の快適バーンはあっという間。次ぎに樹林帯の中に入り、往路のトレールを時折見ながら縦横無尽に滑る。この自由度がたまらない。山スキーの楽しさはここにある。

 あっという間にトンネル脇に出る。苗場側からの帰路の車がやたらと多い。反面、新潟側へ抜けて行く車は少ない。よって南側の車線に乗って戻って行く。すると、橋の袂の除雪スペースに、登山の準備をしている家族連れが居た。まだ子供は小さく、用意しているお父さんだけ登るのかと思ったら、家族全員で三国峠まで行くと言う。この時季に、この雪に・・・。車に積まれた装備を見ると、間違いなく玄人。お子さんはご夫妻が背負って行くのだそうだ。余計な心配はいらない猛者ハイカーのようであった。今日の我がトレールも有効利用してもらえるだろうと思うと、少し嬉しかったりする。足を進ませ、我が駐車場へ戻る。まだ10時20分。こんないい天気に勿体無いが、気分は既に温泉に浸かっていた。猿ヶ京温泉に沈没してから帰路につく。

 補足。猿ヶ京温泉センターのご主人は、東電委託の巡視路整備員であった。国境付近の山道情報には長けている方であった。あとこの付近の厄介者であるヒルに対してのノウハウを持つ方であった。ヒルにはヤマビルファイターが一番効果があるそうだ。それと長靴なら、口の部分が布製になっているものがいいらしい。そこに塩水を含ませておくと、効果絶大らしい。居るのは杉林の中。そこさえ抜け出してしまえば大丈夫だと。

 

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