大岳 1843.4m 糠塚 1405.8m
2012.02.11(土)
晴れ 単独 赤沼茶屋から 行動時間:8H33M
@赤沼茶屋6:00
→(14M)→Aしゃくなげ橋6:14→(46M)→B弓張峠7:00→(31M)→Cからさわ橋7:31→(48M)→D堰堤群8:18→(38M)→E最終渡渉から尾根取付き8:56→(72M)→F大岳10:08〜32→(20M)→Gツメタ沢に降り立つ10:52→(52M)→Hからさわ橋帰り11:44 →(55M)→I弓張峠帰り12:39〜47→(48M)→Jあおき橋13:35→(21M)→K糠塚13:56〜58→(17M)→LR120号に出る14:15→(18M)→M赤沼茶屋14:33
@赤沼茶屋からスキーを履いてスタート。直線的にしゃくなげ橋を目指す。 | Aしゃくなげ橋で湯川を跨ぐ。 | 明るくなり、林道歩きは快適。 | 小田代原通過。凍てつくトイレ舎。 |
小田代原では、「貴婦人」を狙うカメラマンが二人居た。 | B弓張峠。ここは特に峠名を掲げていないよう。 | Cからさわ橋を渡ったら、すぐ西側に林道ゲートがある。 | 無垢の雪の上にトレールを流して進む。 |
途中の西ノ湖への分岐道標。 | 途中の倒木。潜るようにして通過して行く。 | 林道歩きから見る大岳。 | 林道が尾根を巻くところで、大きな崩落あり。これが見えたら、その先が堰堤で林道終了。 |
D堰堤を左岸から巻いてゆく。二つ目の巻上げが少し急。 | 堰堤の上は気持ちいい場所。 | 最初の渡渉点。渡ってから振り返る。(右俣の方) | 二回目の渡渉(左俣)。 |
左俣側の主谷を詰めて行く。 | E三回目の渡渉点は、スノーブリッジで繋がる。 | 尾根の様子。勾配は強くなく、粗い九十九を切りながら上がる。 | 手前1820m峰から見る大岳。 |
大岳の北側にニセピークがあるので注意。最初、ここで山頂かと思った。 | F空き缶が残る大岳最高所。 | F唯一の山名を記す物。 | F大岳から東方面。 |
F大岳から南側。 | F今日はカルフのメタで。 | G左俣に降り立つ。 | G振り返り、降りてきた斜面(写真中央)。 |
帰りは板を外して渡って行く。風が強く、ブリザードのよう。 | 堰堤帰り。 | Hからさわ橋帰り。ここから2.2キロの登り返し。 | I弓張峠到着。スノーシューの足跡が沢山。 |
小田代原から湖上山がわ。奥に白根が見えているのか? | 小田代原東側で、林道から散策路に入る。 | 分岐点から戦場ヶ原側へ進む。 | Jあおき橋を渡って行く。雰囲気のある場所で、居心地がいい。カモが水面から飛び立つ。 |
正面の林の中に糠塚がある。 | 東進してくると、こんもりとした高みが現れる。意外と高低差があり、西から見る糠塚は山らしい。 | K糠塚標高点を取っている場所。中央の木の右脇(影の中)に地理院の標柱あり。 | K標柱。さすがに三角点は掘り出さず。 |
K糠塚から南側。 | K糠塚から北側。 | 糠塚を東側から見る。 | L国道120号に出て、路肩を伝って南進。 |
M赤沼茶屋に戻る。 |
10日、定時を過ぎて仕事をしていると、「今どこですか」と催促の電話が入る。大先輩からの電話であり、もう言い訳せずに「今すぐ行きます」と二つ返事をし、高速を吹っ飛ばして太田に行く。太田駅前のそのアジトに行くと、「駆けつけ三杯って言葉知ってるよな」と・・・。ここでも「はい、知ってます」と直立不動状態。そんな、おどろおどろしいミーティングが執り行われた。これが亡国の集い。この企画が伝えられ、それなら終わったあとに日光に足を伸ばそうと思い、未踏座の大岳に行くことにした。それと積雪期にしかアプローチできない、糠塚山も抱き合わせにした。この糠塚山は、「スノーシューを履いて、行ってきちゃったよ」とサル氏が嬉しそうに報告してくれた場所。この日のミーティングは、そのサル氏を偲んでの献杯でもあった。その後でもあり、自分の中でも意味を成す記憶に残る山行にしたかった。
そうそう、日光の「糠塚山」と、白川郷の「籾糠山」は、そのネーミングが耳に残る名前。自分の中で姉妹山、兄弟山などと位置付けていた。2004年から気になりだし、はや9年が経過していた。やはり戦場ヶ原と言う湿地に躊躇してしまう場所。沢山の降雪があった年に行こうと思っていた場所であった。そして今年は雪が多い。
酒宴が明けたのが22時くらいだったか、駐車場に停めた車の中で仮眠をしてから、翌朝3時くらいに日光に向ける。R122を走りながら、こんな酔い明けで歩けるかどうかも心配であった。中禅寺湖まで上がり、辺りが雪景色となると、自分のスイッチが入り微妙に気合が入る。自然を前にして、やはり心して挑まねばと思うのであった。あと、気温が上がった後の降雪であり、雪崩れる可能性の多い条件であった。真剣に向き合わねば・・・。
入山は赤沼茶屋とした。この時期、除雪してある駐車余地は限られ、数少ない中での適地と判断していた。トイレ前に駐車し、トイレ舎内に入ると、なんと暖房が効いていた。これ幸いにと、トイレ内で着替えをさせてもらった。仕事のままの服装であり、さながらスーパーマンの変身のようだったかも。月明かりはあるが、最初は樹林帯の中、ヘッドライトを点灯してスタートとなる。
計画では、赤沼茶屋から真西に進み小田代歩道に乗って小田代原に行こうと考えていた。雪の中、ヘッドライトを頼りに適当に歩いて行くと、スノーシューのトレースがあり、それが南西側に進んでいた。進む方向として、そう間違っていないのでそれに乗ってゆく。どこに連れて行かされるのかと思っていたところ、出た先は「しゃくなげ橋」のところだった。トレースのおかげで綺麗にショートカットして林道に乗った形となった。林道は除雪がされ歩き易い。先行者も2名居るようで、そのソールパターンからは登山者では無いと読み取れた。スキーを滑らしながら、スケーティングをしながら、少々蹴るよう進んでゆく。
夜が白みだし、周囲が見えるようになってゆく。湖上山が前方にスクンとした姿で見えてくる。その下が小田代原。まだ先行者の足跡は先に続く。どこまで行っているのか…。すると右側に平原が見えてきた。その淵に沿うように林道があり、伝って行くとログ調のトイレ舎と東屋が見えてきた。そこから足跡は小田代原に入っていっていた。その先を見ると、三脚に据え付けられた立派なカメラを覗いている人が居る。もう一人、何かのタイミングを待ってそわそわしている人も居た。二つのカメラが狙う交点を見やると、そこには一本の目立つ木がある。どうやらあれが「貴婦人」と呼ばれる木らしい。言われるだけあって、枝振りと立ち姿が綺麗。山王帽子山側がモルゲンロートとなって輝いている。既に綺麗だとは思うのだが、どんなチャンスを狙っているのか。
何度もカメラマンを振り返りながら進む。向こうもこちらを何度も見る。御互いに気になるようだ。その先が弓張峠であった。特にその名を表示されたものは無し。おおよその判断として、ここが中間地点と思っていた。よってまだ先は長い。峠からは緩やかな下りこみが続く。最初のカーブの場所からは、外山沢側に進んでいる新雪の覆ったトレールがあった。滝見のものか…。それを右に見ながら、少し滑るように下ってゆく。凍った雪があり、シューシューと擦れた音が聞こえる。
目の前にオレンジ色の欄干が見える。これが「からさわ橋」であった。橋を渡ると直ぐに右側に林道の入り口ゲートが見える。そこを入って行く。なんとなくそこに林道があるのが判るが、無視して適当に谷の方へ進んでゆく。それでも結局、道形の上に乗る。進行方向左に太い流れがあり、意識しながら緩やかに高度を上げてゆく。大きく右側に振る場所は、どこに連れられるのかと半信半疑で行くのだが、急峻の巻き道であった。そこが終わると、林道の先の方に大岳が見えてくる。大きな倒木を潜り、その先では崩壊した林道が抉られた姿で見える。ここは足元に注意しながら進む。そろそろ取り付き点を考えねばならない。右岸側の尾根を見るのだが、その前の流れが太い。渡れそうも無いのでそのまま左岸を行く。ちょうど尾根と林道が交差する所で大きな崩落があり、大岩が道を塞いでいた。その先は斜行する道となり、エッジを効かせながら少し下り坂となる。
目の前に堰堤が現れる。二つ重なった(近接した)特異な形態。周囲は広く景色はいいが、どうしようか迷ってしまう。右岸には行けないので左岸を巻き上げるしかないか…。やや急峻な場所を巻き上げてゆく。二つ目の巻上げがややきつい。そして二つの堰堤を越えると、そこは広い谷の中。雰囲気としては、北アの中房川の上流域のような印象があった。色々表現したいが、とどのつまりは気持ちいい場所。ただし上流に行けば流れが覆われていると予想したが、まだまだ口を開けていた。平坦な左岸側をまだ詰めて行く。
大岳沢の出合いでもまだ右岸側に行けなかった。行けないと言うのは語弊があるが、水没するつもりがあればいつでも渡れる。濡れないように渡れる場所を探していたわけで、それがためにここまで左岸を伝ってきていた。ツメタ沢が枝分かれして、美弥古滝の方へ行くしかなくなった。こちらがツメタ沢の本流と言っていいのか、名前が変わるのかは判らない。出合から100mほど上流に行くと、やっと飛び石が伝えそうな場所があり、板を履いたままシールをグリップさせるように渡って行く。飛び石の上は凍っており、至極神経を使う。ストックなくして渡れない。やっと渡ったものの右俣側を渡っただけで、左俣側となる大岳沢が次ぎに待っている。中州尾根を乗り越えるのが面倒なので、出合まで100mほど戻るようにしてから大岳沢に入って行く。こちらの流れは、幅が狭く容易に通過。もう一つ細い流れが出ていたが、スノーブリッジを使って渡る事が出来た。やっとこれで大岳を狙えるステージに立てた。左岸側に居たのでは、いつまで経っても取り付けないのであった。
大岳沢に入り、200mほど詰めた辺りから斜面に取り付く。地形図から読み取れる、一番緩斜面尾根からアプローチする。しかしだんだんと板が重くなる。先ほどの渡渉で濡らした為と判っていた。ゴットリと固まったシールの雪を綺麗に剥がす。既に凍っている部分もあり、これも綺麗に除去。そうしないと同じ事の繰り返し。水没はしたくなかったが、氷の乗った飛び石は板を履いて通過しないとならなかった。この尾根はその南側に深い谷を擁し、北側はなだらかであるが南は切り立っていた。樹林帯なので日差しが入らない。ただしその切り立っている側には日差しがあり、そこに添うように登って行く。風に巻き上げられた雪や、振り落とされた木々からの雪で、全身が白くなってゆく。特に難しい場所はなく、軽快な九十九を切りながら高度を上げて行く。右側に見える斜面を見ながら、滑る場合のコース取りも考えながら登っていた。
1820mピーク。大岳の北に位置する双耳峰的高み。目の前に大岳が見える。ここはかなり植生が密生していて、スキーの板が詰まり、先に滑らせられないほど。どうしようもなく、少し戻ってから東側に逃げて通過して行く。濃い植生はここの20mほど。再び尾根筋に戻り、最後の登り上げ。この付近に来て、マーキングの絶縁テープがちらほらと目に入るようになった。それを拾うように進んで行くと、ピークらしい場所に到着した。しかしまだ先にテープは続く。半信半疑で進んで行くと、また同じようなピークが現れた。今度のピークと先ほどのピークの差は一つ。今度のピークには空き缶が引っ掛けられて居る。間違いない。
大岳到着。空き缶には「大岳」と書かれていた。東側と北東側のみ開けている場所で、展望を楽しむような場所でなし。少し戻って陽射しの沢山当る場所で小休止。滑走計画と戦場ヶ原に入って行く経路を地図上で考える。パンを齧りつつ白湯を飲み。それが終わるとバックルを締め出す。大岳沢までが今日の滑走できる斜面。後は歩くスキー。短時間だが存分に楽しもうと意気込む。しかし、先ほどの1820m峰があり、すぐに登り返しがある。ここはカルフのメタの強み。登り返しの多い場所は内蔵シールが役に立つ。さて滑る。
やや東寄りに滑ってゆく。本当はここから東に降りられればいいが、柳沢川の方へ行ってしまう。それでも良かったのだが、楽しい反面、弓張峠への登り返し距離が長くなる。1820mピークは登り返さずに東側を巻き込むようにトラバース気味に進み尾根に乗る。そして尾根に乗り、その北側斜面のパウダーを楽しむ。この斜面は樹林間隔もあり、細かい谷も少なくスキーに適していた。あっと言う間に大岳沢に降り立ち、ここからは下流に行かず、中州尾根に登り上げ直線的に右俣の方を目指した。しかし、この中州尾根の右俣側は大岩がゴロゴロある急峻地形。場所を選ばないと降りられないような場所で、ピンポイントで滑り降り、右俣に降り立つ。そして往路のトレールに乗って同じ渡渉点から左岸に移る。
帰りは、往路よりやや高い位置を通過して行く。沢の川面より20mほど高い位置をトラバースして行く感じ。すると、そんな場所にもマーキングが残されていた。堰堤も高い位置から巻いてしまおうと、そのままトラバースして行くが、堰堤付近はかなり勾配がきつく、それと日当たりが良い為に雪解けが進んでいる。それには岩が多く、熱を持ちやすいせいもあるのだが、そのままトラバースできずに結局堰堤の上にずり落ちるようにして降り立つ。往路のトレールは、風が雪を運び全てかき消されていた。崩落場所まで登り上げ、その先は少し滑りになる。大きな九十九折もショートカットするように斜面を下る。昼近くなり、天気も上々。気持ちのいい広い樹林帯の中、休憩したいような心境。でも心を鬼にして、弓張峠まで登り上げてから休む事とした。
からさわ橋まで戻り林道に乗ると、新しいタイヤの轍と、スノーシューのトレースが増えていた。ゆっくりとした歩調で登り返して行く。峠まで2.3キロ、けっこう長い登り帰し。その途中、外山沢の入り口からは、10名以上と思えるスノーシューのトレースが沢に入っていっていた。入口付近は踏み固められ滝見のツアーでも実施されているのかと思えた。日光にスノーシューはよく似合う。ここほどスノーシュー人口が多いところはないのではないか・・・。
弓張峠に到着し小休止。林道から小田代原の方へ進んでいる新しいトレールも見られた。この先はほとんど平坦路であるが、戦場ヶ原の湯川はピンポイントでしか渡れないであろうから、自由に歩けそうでありながら、制約もある。再度地図を眺め作戦を練る。休憩を追えて、小田代原側に降りて行くと、スキーシューパーテー5組とすれ違う。凄い人気である。さすがに貴婦人を狙う人はこの時間居ない。朝方だけいい絵が撮れるようだ。小田代原の東側から小田代歩道に入って行く。こちらにはクロスカントリースキーのトレールも残っていた。最初の分岐をしゃくなげ橋の方へと進む。途中で湯を沸かして調理にかかっているパーティーもあった。横目に見ながら通過して行く。
湯川の西側の平原には、スノーシューの足跡が、そこかしこに残っていた。雪の上を自由に歩ける楽しさを満喫しているようであった。こちらも自由に歩かせてもらい、東進して行く。しかしその自由さが自由過ぎて、目の前に太い流れが現れた。湯川にぶち当たってしまった。上流側を見ると、300mほど先に橋が見える。当たらずも遠からずで進んで来られたか。上流側に進んで行くと、その橋が「あおき橋」と言う事を知った。ベンチもあり、かなり居心地がいい場所。水面からは一羽のカモが飛び立つ。なんとも言えない情景であった。橋を渡り、この散策路は屈曲し南東に向いている。ここからルートを離れ東進。
歩いて判ったのは、雪融けする日中は、樹林の中の方が硬くて歩き易い。通常でも木々からの落ちた雪があり、固まって歩きやすいのだが、この平原では日差しが遮られ、より融けないので硬く歩きやすいのだった。しかし、前方にそれらしい高みが見えてこない。そのせいで、少し迷っている気分にもなった。コンパスを定め、少々ブレながらもその方向に進んできているのだが・・・。すると樹林帯の先に、こんもりとした高みが見えてきた。思いのほか顕著な高みで、それが糠塚山とすぐに判った。西側は意外と勾配があり、何度も九十九を切って登ってゆく。平原の中を通る風で冷されるのだろう。斜面は硬くアイスバーン一歩手前な感じ。騙し騙しゆっくりと登る。
糠塚山の山頂は東西に細長く、乗り上げた場所から50mほど東に進むと三角点の標柱が顔を出していた。その上には小さなマーキングも残る。戦場ヶ原の中の独立峰。孤島とも言えるのだが、周囲展望はいい。諸条件からして、もう来ないであろうここ。目に焼き付けるように360度グルッと回る。さああとは車道まで出て、赤沼まで戻る行程。自然の中からひと気のある場所に出てゆく。糠塚から滑り降り、その先の平原は樹林帯がない。よって雪が緩く難儀する。スノーシューよりスキーの方がいいはずなのだが、それでも歩き辛かった。西風を受けながら、少し押される様にして東に進み車道に乗る。
車道脇はありがたいことに除雪してあり、適度な雪が残る。スキーを滑らし歩くには好都合。メタでクロスカントリーはきついが、クロスカントリーばりに滑らしながらガツガツと進んで行く。途中で路肩で子供連れが戦場ヶ原の展望を見ていた。私の出現に「すげー、すげー」と子供が叫ぶ。見たことがない姿だったのだろう。スキー場じゃない場所でスキーを履いている姿が。いい気になって滑る長さをもう数センチ長くしてスケーティング。行き交う車にじろじろ見られるのと排気ガスを吸うのが玉に瑕だが、それでも快適に進むことが出来た。路肩の雪の上をアップダウンしながら戻る事になると思っていたが、快適に、それもスキーを履いたままで戻ることが出来た。
赤沼茶屋に戻ると、沢山のスノーシューハイカーがそこに居た。各々散策して楽しんできた様子。やはり日光はスノーシューのメッカと言えよう。よく晴れ上がった日であり、とても気持ちの良い山行となった。
大岳がスキーに適しているかどうかは微妙。白錫尾根などを狙うなら、谷の滑りは長く楽しいだろう。