末川尾 1635.3m
2012.2.26(日)
小雪 単独 神谷地区1180m付近田んぼ内除雪終点地から 行動時間:3H
@除雪終点6:34→(23M)→A林道終点斜面取り付き6:57→(26M)→B主尾根に乗る7:23→(55M)→C末川尾8:18〜31→(63M)→B駐車余地9:34
@除雪終点から見る付近の田んぼ。 | @尾根末端の様子。どこから取り付くのがいいのか・・・。 | 尾根の東に回りこみ、雪を拾って林道を進む。 | 途中のチェーンを跨いでゆく。すぐ先に養蜂の箱がある。 |
A残念ながら林道は途中で終点。ここからの急斜面がアイスバーン。 | B主尾根に乗る。この先はなだらかなアップダウン。 | B主尾根に乗った場所から東尾根。見えていない左側の斜面が急峻。 | 途中の伐採地。 |
伐採地から見る天ヶ峰。本当は向こうのピークに居るはずだったのだが・・・。 | 雪の華が咲く。 | 途中の送電線鉄塔。 | 最後の急登。 |
急登を振り返る。 | C末川尾山頂。こちらにも鉄塔あり。 | C今日はオフ・リミッツ。この尾根だとこの長さでも長いほど。上の方はいいが、下の方が藪尾根。 | これが下の方。雪で覆われておればいいが、雪解けが始まり、倒木が顔を出しており、引っ掛けては転倒。 |
林道除雪終点に到着。 | D到着時に、ちょうど畑を見に来た方が来られていた。 | D駐車余地には3台ほど停められる。 |
気胸の調子も麗しくなく背中が痛む。さらには天気もあまり良くない様子。少し高度を下げて遊びたい。ただし、先だってのミーティングで「最近の旅人は、低い所ばかりで遊んでいる」と辛いご指摘を受けた。確かに甘んじている。とならば、いろいろが許す範囲で高いところを狙って結果を出したい。しかし、この時期容易く行ける未踏座の高い場所は乏しくなってきており、第一にアプローチがし難い場所ばかり。1700m台で探しても難しく、1600m台まで下げて、やっとちらほらと選択肢が出てきた。そんなこんなで、これからはどんどん登る標高が下がってゆく傾向。
今回は、野麦峠の東にある天ヶ峰を狙うことにした。横道と抱き合わせの2座。尾根と麓の39号線を眺めながら周回ルートを画策。以前はMLQの報告が、ネット上国内唯一であったが、姿を眩ましてから封印されてしまった。よって未知の世界。そこをスキーで攻めてやろうと思っていた。降雪もあったようでふかふかの雪を予想して行く。
1:30家を出る。久しぶりの日曜日の深夜行動。松本に出るまでに数えるほどしかすれ違いはなかった。空は星空であり、いい天気とも思えるが、松本から158号を登って行くと雪雲の中に入って行く。出掛けから、「何か忘れている」と思いながら走っていた。気づいたのが、梓湖脇を走っている時。アウターの防寒具を忘れてしまっていた。ズボンは持っている。なんてこと。これではリスキーで予定が遂行できない。代わりのアウターは、先日家事をする時に利用して積んでいない。これは大誤算でポカもいいところ。長距離の予定であり、この時点で他の場所に切り替えることにした。地図を眺めると、ありがたいことに短距離で楽しめる場所が見つかった。末川尾。事典に載る場所であり、エアリアの地図にマークが入れてある。前日は仕事、自然やいろいろが、「そう焦るな」と言っているのだと理解した。
行き先はほぼ一緒。寄合渡の交差点から野麦峠の方へ入って行く。当初予定は、ここから右(北)の尾根。今は左(南)の尾根に入る。神谷地区に入ると「野麦峠」「神谷遊農倶楽部」と書かれた古い標識が在り、そこから除雪林道が奥に続いている。除雪は民家までかと思ったが、さらに畑の中まで続き、かなり奥の方まで進むことが出来た。ただし枝分かれする道は軽四のみ通行可。高度を稼ごうと入ってはみたが、15mほど進んだら雪が堅すぎでタイヤが空転。ヒヤヒヤしながら四駆のLoモードに入れて、やっと脱出したほどであった。そして唯一の余地に停める。除雪終点地から15mほど戻った場所に3台分の余地がある。麓側は軟弱そうな土地なので、置く場合は注意が必要。ここでしばし仮眠、夜明けを待つ。とは言うものの、気胸による背中痛が強い。そんなには寝れないのだった。
6時、夜が白み始める。日に日に夜明けが早くなってきている。雪の様子から、短い板の選択となった。これほど硬いとは・・・春が近い証拠でもある。見える尾根末端の様子は、何処からでも取り付けそうだが、その何処からでもってのが難しい。雪を拾うようにしたいし、硬いバーンは避けたい。迷うのだが、最後は単純な判断。明るい方へ行く習性があり、尾根の東側へ巻き込んで行く事にした。
スタートしてすぐに、除雪最終地点の雪の塊を乗り越えて行く。その先は、本当に硬いバーンが田んぼの中に待っていた。ガリガリと音をさせながら踏みしめてゆく。右にNTTの鉄塔を見ながら南に詰めて行く。どこから取り付こうかと斜面を見ながらなのだが、乗っている道の存在も確かめたい。緩やかに山腹に入って行くと、チェーンでゲートされた場所に出る。ここで道は分岐するが、そのまま山手に進む。この分岐点が、地形図の実線の末端のようであった。
道形に沿って行くが、イバラが非常に多く、使われていない事が体感できる。引っ掛かれながらも進む。あまり高度を上げていかないこの林道、何処から上へと望みを持ちながらいたが、あっけなく終点となって止っていた。標高1250m、見上げる斜面は至極急峻。こんな事ならもっと早いタイミングで取り付けばよかった。林道の甘い汁に誘われて、その結果に厳しい場所に来てしまった。戻るのも面倒なので、気合を入れて取り付く。シールのトラクションと言うか、食いつきを確認するかのようにして、一歩一歩這い上がる。かかっているのはエッジ近辺の10mmほどの幅、それほどの急峻と雪の締まりようであった。空転してずり落ちる事数回。それでも大きな九十九を切りながらの我慢の登行。ここさえ辛抱すれば・・・。
1330m付近で、東側に派生する尾根に乗る。登って北斜面を見下ろすが、良くぞがんばった。頑張った分と言えるのか、この先は楽なルート構成であった。1420mで南北に連なる主尾根に乗る。アップダウンが続き、帰りの滑りをどうしようか迷うのだが、その前に滑りにならないような堅さのままであった。天気は小雪。この状態で雪が緩む可能性は低かった。スキーの報告がない場所は、やはり適さないのか。それもその時々の運不運もあるだろう。
1436高点を超えてズンズンと進んで行く。特に迷うような場所はないが、進路方向が微妙に優柔不断な感じであり、無積雪期にはマーキングが欲しい場所も見受けられた。冬季はトレースが付くので、その手間が省かれる。このルート上では、開けた場所が2ポイントある。展望場と言えるのだが、天ヶ峰がかっこよく見える。本当は向こうを歩いているわけだったのに・・・。標高が1500を過ぎた辺りから、雪質が変わる。少し柔らかくなり、新雪風味の雪面となった。これで少し一安心。上からこの辺りまではスキーになる。以降はズリズリ・ガリガリ降りればいい。
1550mで、最初の鉄塔の下を通過。ジーとセミのように碍子が振動している。何度体験しても、送電線の下の通過は嫌なもの。ここが二度目の展望場。先ほど目線で見えていた山々が、だいぶ眼下になる。そしてここから急登。地形図からはさほど斜度がきついようには読み取れなかったのだが、それまでが緩斜面過ぎてそう感じたのかもしれない。そろそろ山頂。どんな山頂が待っているのか、期待を膨らませながらゆっくりと這い上がってゆく。8時を回り、野麦峠スキー場が動き出したよう。周辺の谷にそこからの放送が響く。
末川尾到着。送電線鉄塔がスクンと立っている。その上の大地が三角点が埋められている場所と思えるが、掘り出す気力が起こらないほど雪に覆われている。展望も無い事は無いが、「いい」と言えるような景色は無い。南には巡視路なのか尾根道なのか、切り開きがあるようであった。以前は林道を使って南から北進して登頂しようかと思っていたが、山腹林道が使えるのかは未知数であり、やはり山は麓から登るものと、冬季を待っていた。スキーを脱ぐと、1mほど潜るような積雪の様子であった。持ち上げた牡丹餅を白湯で流し込む。もう少し苦労してのアプローチと思っていたが、短時間で到達した。シールを外しつつも、ガリガリのバーンが気にかかる。どうしようか・・・。
バックルを締め込み、いざ滑降。1500m付近までは、予想どうりスキーになった。その先がいけなかった。ガリガリで至極疲れる滑り。無駄な筋力を使うというか、鍛え方が足らないと言うか。ガリガリと削りながら滑る微振動で、腰が痛くなるほどであった。1436高点を過ぎ、往路の東尾根を右に見て、そのまま北進して降りて行く。潅木が多く、縫うようには進めず、スピードを殺してのボーゲン滑降。1327三角点も、その場所をよく判らぬまま通過する。もうこの辺りには笹が出ていて、スキーどころでは無くなった。その笹に引っ掛け、倒木に引っ掛かり、転倒すること数度。何処に逃げればよいのか・・・。もう下の方には田んぼが見えていて、僅かだとは判っているが、スキーを履いている事がここでは邪魔になっていた。そして最後は脱いでしまった。
つぼ足でズンズンと下る。この方が場所を選びながら滑っていた先ほどよりはるかに速い。それでもまだ滑りたい。5分くらいのつぼ足のあと、雪の繋がりを見つけ東側に滑り降りて行く。この1250mからの最後の斜面がミニスキー場のようで気持ちよかった。スギの並ぶ中を抜けると、出た先には獣用の檻が設置してあった。田んぼの中を自由に滑り降り、往路のNTTの鉄塔脇に出る。道の上は相変わらずガリガリであり、足に力を入れながらコントロールして滑り降りて行く。
もうすぐ除雪終点地という所で、ワンボックスの軽四が上がってきた。山中を滑る音は、麓までガリガリと響いただろう。そして入山禁止の立て札には、懲罰金1万円の文字がある。もしや、このためか・・・と思ったが、「あんちゃん、何処いってきた」。スキーを上げて見せると、「ほーそんな趣味かい」と気さくに話してくれる。「歩く人はいるけんど、スキーの人は初めて見た」と。地元の人であり、山を知っている。どうやって登ったのか不思議だったようで、シール登行と剥いでの滑走を説明すると、「それでこの雪でも上に行けるんだ」と納得されていた。つぼ足で山の上の方まで行ったのかと、そこが解せなかったようだ。でも場合によっては、つぼ足でも行くのだけど・・・。御仁は自分の田んぼの様子を見に来た様子であった。
駐車余地で荷物を整理していると、「もう帰るんかい」と声をかけてきた。そこで「鄙びた温泉を紹介してください」と聞くと、ここで奈川温泉の野麦荘が、1月に火事になって閉館した事を聞いた。そんな情報は知らなかった。残念でならない。「鄙びた所は無いけど・・・」と、御仁は渋沢温泉の方を紹介してくださった。戻りながら付近で感心することが一つ。一帯の家は、ほぼ100パーセントで薪ストーヴを使用している。各家の前に詰まれた薪を見ているだけで暖かそうであった。時折煙突からモクモクと煙が上がる。