スルス俣山   1642m     小出俣山   1749.1m     
  
                       

 2012.04.21(土)   


  1600m以下ガス(曇り) 以上快晴    単独       川古温泉から千曲平経由         行動時間:7H17M


@川古温泉駐車場(ゲート前)6:02 →(41M)→A千曲平(千曲橋)6:43→(169M)→B小出俣山9:36〜40→(42M)→Cスルス俣山10:22〜41→(53M)→D小出俣山再び11:34〜38→(61M)→E千曲平12:39→(40M)→Fゲート到着13:19


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@川古温泉の駐車スペースに停めて歩き出す。自転車を使っても良かった。 ゲートから450m地点に緯度経度を示すこれがある。 崩落も多い。 ダムを右に見て。
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A千曲平通過。晴れていれば小出俣山が見上げられるよう。 A千曲平橋 工事標識だと思うが、31番で林道を離れる。 取り付き斜面。この先はしゃくなげとササのミックス。
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取り付いて千曲平を振り返る。 標高1000m付近から雪が繋がりだす。 猪が食事中だった様子で、邪魔をしてしまった。6頭ほど周囲に居た。 やや危険箇所。登りより下りで注意。
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ガスの中、高度を上げてゆく。 標高1600mを越えると、ガスを抜け出し快晴に。正面が小出俣山。 進路右手に谷川岳主峰群。 振り返り雲海を見下ろす。
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B小出俣山から平標山側。 B万太郎山 B谷川岳主峰側。 Bすかいさんの標識。前橋ハイキングの標識は解けた状態で雪融けの藪に中にあった。
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小出俣山からスルス俣山を目指す。中央右の高み。 優しいトラバースだが、高度を違えると、雪庇が待っている。予想をつけて見定めて進まねばならない。 スルス俣山側の稜線に乗る。なだらかで快適。 手前峰から見るスルス俣山。西側は鋸の歯のよう。
sennokura.jpg oidumatagawa.jpg  tore-ru2.jpg  hourakuon.jpg 
Cスルス俣山から仙ノ倉山側。 Cスルス俣山から小出俣山 C我がトレースが点々と続いている。 C万太郎山側は、ひっきりなしに雪崩音が聞こえていた。
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D小出俣山再び。 小出俣山から下降開始。 上層はスキーに最適。小出俣山までならスキーで上がると楽しいだろう。 E千曲平に降り立つ。
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E獣の行動を記録している装置のよう。付近一帯に仕掛けてあるようであった。 E千曲平橋を渡って・・・。  Fゲート(駐車スペース)に戻る。  


 

 上州は四万温泉エリアの、「スルスノ頭」に登ってから、この「スルス俣山」が気になってならなかった。残雪期の山であり、タイミングも重要。しかし週末が悪天続きでなかなか決行できずに推移していた。いつものように雨でも登るが、さすがにこの時期この標高となると、それなりに構える場所となる。もどかしい日々が続いた中で、やっと行けそうな日がやってきた。しかししかし、決行前夜は22時まで仕事、家に戻って遅い夕飯を終えると既に23時を回っていた。かなり疲労困憊。いつもなら事前に天気やら道路情報を確認するのだが、出かける準備をした時点で仮眠をと決め込んだら、目を覚ましたら4時になっていた。“ヤバイ、中止にしようか”と最初に思ってしまった。“でも行こう、行けば何とかなる”何とかするのも自分の真骨頂。高速をやや深めにアクセルを踏んで駆けて行く。月夜野インターで降りて17号を伝い、赤谷湖が左に見えたら相俣交差点から川古温泉の方へ進んで行く。ちなみにこの川古温泉。「かわこ」で非ず「かわふる」と読む。

 
 川古温泉の駐車場が、そのまま林道ゲート前。以前に十二社ノ峰から下ってきた時に通過しているので懐かしい場所でもあった。既に時計は6時に近い。予定ではヘッドランプで歩くつもりで計画していたのが・・・こんな時間に。少し高速ギアで歩くしかないか・・・そう心に決めた。準備をしていると、真横に熊谷ナンバーが停まる。なぜにこんなに広いのに横に・・・。降りてきた御仁はザックを持ったハイカー。挨拶も何もしない方であり、こちらも同調。いろんな人が居ていいが、そう決め込むなら横に停めて欲しくなかった。違和感を抱きつつ、出立とする。

 
 ゲート脇から林道に入るのだが、利用者が多いためだろう道が出来ている。歩いてすぐに、この林道での景勝地と言おうかオーバーハングした大岩がある。オーバーハングとは語弊があるが、大岩を作道の為に破砕した痕でもある。その下を落ちはしないかとドキドキしながら通過して行く。しばらく進むと、左カーブになったところにパウチされた紙を発見。そこには緯度経度と標高、ゲートからの距離(420m)などと書かれていた。この先も続くのかと思ったが、在ったのはここだけであった。

 
 林道上は崩落もあり、車が通過するにはだいぶ整備が必要。ゲート封鎖は正当な判断である。進んで行くと、右側に人工物が現れ、ここが発電所の調整池。雪融けの冷たそうな水を湛えていた。目を凝らし魚影などを探すも、魚に肥えていない目には映らず・・・。雪は785高点付近からちらほらと現れる。そして小出俣沢左俣側へ進む道の分岐辺りから、しっかりと繋がる。おかげさまで踏み抜きは少ない雪の状態。快調に足が前に出ていた。

 
 千曲平に到着。名前が判るような平らな地形がある。高みを見上げるとガスが濃い。今日はこんな天気の中に登頂か・・・。その天気同様に曇った気分になる。千曲平橋を渡ってすぐに取り付こうかと思ったが、林道が緩やかに高度を上げている。伝った方が進みやすいと判断し、さらに奥に詰めて行く。すると、工事用の認識符号「31」番が下げられた場所で植林帯となり、ここが824高点となるようだ。ここで林道を離れ北進を始める。適当に進んで行くと目の前に顕著な尾根が現れる。これがオゼノ尾根末端。ササの薄い植生があり、そこに踏み入れてゆく。そのササの植生は、次第にシャクナゲとのミックスになる。歩き易いような、歩き難いような・・・。やや急でもあることから、そう思えたのかもしれない。

 
 900m付近まで雪は切れていたが、その先からだんだんと現れ1000m付近から完全に繋がりだした。その前に、950m付近で、「ングォ〜」と言う、特異な警戒音が聞こえた。左右から聞こえ、どちらに注意してよいやら判らなくなるほど。そして肉眼に黒い物体が・・・。“すわっ、親子か”最初は熊だと思っていた。しかし続く警戒音を聞いていると猪だと判った。その数、6頭ほど居り、親が尾根の左側、子供らが右側に配置している。進んで行く上方にも居るようで、まるでこちらは袋の鼠状態。と言っても敵対心を持たず居れば、危害を与えてくるものではない。静かに邪魔をしないようにゆっくりと足を進めてゆく。距離にして10mほどか、じっとこちらを見ている固体もあった。牙も見える。

 
 雪が繋がりだすと快適な尾根歩きとなる。右俣の流れの音がまだ強く、高度を上げていない事を示している。いつになったら沢の音が聞こえなくなるのか・・・。長丁場のような気がして、僅かにギヤを入れ替えスピードアップ。キックステップがサクサクと雪を刻んでゆく。尾根上に自然木が出てくると、この尾根での難所も近い。何となくここの風景はすぐ東の三岩山の尾根に酷似していると思えた。その危険箇所は右巻きで進む。岩と雪との間に空間があり、落ちないよう、さらに東側に滑らぬように足を置いて這い上がってゆく。ここさえ抜ければ、この先の危険箇所は皆無。

 

 ガスの中ではあるが、風が無いのがありがたい。標高1600m付近にさしかかると、“おっ、晴れてくる”と喉元まで声が出るほどに、一気に空の青が強くなった。振り返ると雲海が眼下に見える。“抜け出したか”曇りではなく、ガスが垂れ込めた中に居たようだ。それを曇りと言うのだが・・・。ここからは快適な春山登山となった。陽射しを感じ、先ほどまではザクザクとした雪の音であったが、この時間から軽快にサクサク。ただし、腐るのも早いから、やはり行動は早くせねばならない。小出俣山の山頂が望めるようになってからが少し長かった。右側には谷川岳の主峰群が並んでいる。既に黒い場所が多く、それほどに険しい場所が多いということになる。雪庇を西側から巻き上げるように乗り上げると、今日の最高地点に到着した。

 
 久しぶりの小出俣山。2008年のちょうどこの時期に訪問している。その時は尖がった山頂部であったが、この日は平らな山頂。雪の堆積により表情を変えるよう。万太郎山側の立木にすかいさんの標識が見える。360度の展望。すばらしい眺め。来て良かったと思える。これぞ雪山であり、この展望があるから止められない・・・。さてここが終点でなく、まだ先があり歩みを進めねばならない。最高点と思しき高みには、ブッシュの中に前橋ハイキングの標識が落ちていた。それを見つつ下降に入る。

 
 小出俣山の西側尾根は、クラックが多く踏み抜き回数も多くなった。ここでアルミワカンを装着。格段に足元の状態が良くなる。道具は道具。尾根の北側を進むようにして進んで行く。最低鞍部からはこの先の1720m峰の北側を巻いてスルス俣側の尾根筋に乗る事とした。優しいトラバースではあるが、2箇所ほど雪の堆積があり、それを乗り越える箇所で急登を登らねばならないところもあった。雪崩れそうな緩い雪とも感じられ、衝撃を与えないよう、それでいてしっかりとステップを刻まねばならない場所もあった。最後は雪庇尾根に乗る格好になるので、狙う場合は1720m峰側に寄りつつ、高い位置でのトラバースが適当となるだろう。

 
 1720m峰からスルス俣山への尾根に乗る。ここは至極快適。完全なるスカイライン。周囲の山々に見られているような位置付けで、今日は雲海に浮いた孤島の様でもある。手前峰の1650mからスルス俣山を見ると、その西側の尾根が鋸のように見える。伝えるのか・・・。隙あらば伝ってみようと計画していた。しかし、東から数えて3歯目の西側が垂直に落ちている。遠目で見ているだけで憶測でしかないが、懸垂が必要になるか。そもそもその北側はゲジゲジマークの集合体。危ないと思ったら止めた方が身のためのよう。そんなことを思いつつ足を進めてゆく。最後は緩やかな登り。最後の最後まで至極優しい経路であった。

 
 スルス俣山到着。何処かのワンゲルの標識があるのかと思ったが、皆無。そでもで雪融けしたブッシュの上は、微かに踏まれたような痕はある。そのブッシュに腰をおろし、周囲を眺めながら日差しを浴びる。仙ノ倉、平標、目の前の万太郎が見事。先ほど居た小出俣山が遠くにある。スケベ根性が働き、戻るのにどこか近道はないかと地形図を探るも、この西尾根が伝えなければ、十二社ノ峰側は烏帽子岳近辺がヤバイ場所だし、往路を戻るのが無難になる。結局、オゼノ尾根を下降することにした。こうしている間にも、ひっきりなしに万太郎山南斜面で大崩落が起きている。轟くような轟音がドウドウセンに響く。雪解けが始まり、進み、これが春。

 
 さて戻って行く。トレースに足を乗せるように行けばよいので、復路は楽であった。1720m峰の懐を巻いて小出俣山への登り返し。ここが急登。数度の休みを入れながら上がって行く。緩い雪で足許が流れ、這い上がるにも一苦労であった。誰かが登頂しているのではないか・・・。乗り上げた時にどんな反応をしようか・・・そんな余計な事を考えつつ乗り上げる。着いてみるとまっさらな誰も居ない山頂であった。

 
 小出俣山再び。ここから下れば、また雲海の中の景色となる。折角の大展望を目に焼き付けるように楽しんでいた。グリセードーかシリセードーか、スキーを持ち上げたならかなり楽しい雪質に思えた。スルス側の行動があるので持ち上げなかったのだが、小出俣山だけならスキーで上がるのも楽しいだろう。踵を食い込ませるように下山に入る。

 
 先の方のブナの中に人影が・・・。と思ったら、ブナの形がそういう形だった。人恋しさか幻影か、雪目になりつつあるのか、いつもにはない誤認でもあった。歩幅を2mぐらいに延ばして、グイグイと降りて行く。しかし一旦制御を誤ると、一気に滑り落ちてしまう。2度ほど滑り出しヒヤヒヤする。そして今度は間違いない。前のほうに7名のパーティーが居た。ちょうど危険地帯の上で、抜けた所で休憩していた様子。標準語での会話であり、関東圏の方のよう。上まであと1時間強。少し腐りだしているのでもう少しかかるか。でも我がトレースがあるから楽であろう。ガスが上がらねばいいが・・・。「気をつけて」と定型挨拶語を言って背を向ける。下の危険箇所で、左足を滑らせ2mほど滑落して立木に助けられる。気を抜くと・・・。

 
 往路は気づかなかったが、この尾根は復路用にブナの木にペンキが塗られている。それを拾うように尾根を降りて行く。往路で猪と出合った場所は、土坑が進んでいた。何を彼らは食べているのだろうか。右俣の音が強くなり下の方に千曲平の白い平原が見えてきた。もう少し。それにしても、これほどに速くに行って来られるとは思わなかった。全てに雪質だとは思うが、天気も後押ししてくれていた。

 
 千曲平に降り立ち林道に向かってゆく途中、不思議な装置が杉の木に付けられていた。LEDが並び温度も感知している装置のよう。赤外線も出ているのか・・・。この謎は、林道途中で解けることになった。千曲平橋を渡って戻って行く。振り返るも往路同様のガスの景色。先ほどのパーティーは山頂に着いている頃。大展望に逢えたかどうか。林道を戻って行くと、山手側に植生を復活させる取り組みがされている場所があった。そこの解説を読むと、野生動物の生息調査をしている旨の文字が並んでいた。先ほどの装置は間違いなくこのことに関するものであろう。謎が一つ消えてすっきり。残雪路が終わり、途中の湧き水で喉を潤し林道を闊歩して行く。余裕が出てきて、“自転車で入っても良かったな〜”なんて思うのだが、自転車用に筋肉を鍛えていないので、より疲れるのは見えている。それでも緩やかな林道であり、自転車利用も適当であろう。もっとも、ゲート脇からバイクでも入れるのだが・・・これは奥の手。

 
 ゲート前には6台の車が停まっていた。大宮ナンバーが複数台あるので、これが先ほどのパーティーか、横に停めた御仁の車は無く、十二社ノ峰でも上がって既に下山したのか・・・。片づけをしているとウェーダーを着た釣の人も川から上がってきた。それぞれの春を楽しんでいるよう。今日は気持ちよい春の日だった。いつもこんな日とは限らないが、悪天続きの後は、ありがたい天気に思えるのだった。

 これでスルスシリーズ完結。小出俣山を狙う場合、余力のある人は足を伸ばすと大展望が待っている。いい山だった。


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