スルスノ頭   1720.9m     
  
                       

 2012.03.17(土)   


  雪    単独       奥四万トンネル(摩耶の滝入口)より         行動時間:14H


@奥四万トンネル4:53 →(31M)→A摩耶の滝下降点5:24→(92M)→B1082高点北東で日向見川を離れる(斜面取り付き)6:56→(164M)→Cコシキノ頭西側鞍部で尾根の乗る9:37〜40→(25M)→D1644高点10:05→(157M)→Eスルスノ頭12:42〜13:02→(114M)→F1644高点帰り14:56〜15:00→(94M)→G1082高点北で日向見川に降り立つ16:34〜38→(100M)→H摩耶の滝下降点帰り18:18→(35M)→I奥四万トンネル到着18:53


tonneru.jpg  kakouten.jpg  houraku.jpg  tosyou.jpg
@奥四万トンネル前から摩耶の滝への散策路(軌道跡)を行く。 A摩耶の滝への下降点分岐。この先の軌道側へは自己責任。 道が崩落している場所が続く。 渡渉箇所も連続する。
houraku2.jpg  tosyou3.jpg  kotaki.jpg  kidouato.jpg 
雪の落ちた崩落箇所は、さすがに板を脱いだ。 大小合わせて5度ほど渡渉。 左岸側に小滝が見えたら、この次ぎに出てくる谷が取り付きとした谷。 軌道跡が残っている場所も見られる。
tosyou4.jpg  torituki.jpg  onekarashita.jpg  1150.jpg 
最後の渡渉を終える。この前に日向見川を右岸へ渡り、左岸へ戻る。軌道跡(道形)が途切れた先の進路取りは雪の状態による。 B1082高点の北東付近から斜面に取り付く。コシキノ頭へ突き上げる谷には、最初に小滝があり、この時季詰めるのは難しい。 1100m付近で主尾根に乗り斜面を振り返る。かなり急峻。時間をかけた。 1150m付近まで登ると、打って変わっての平坦斜面となる。
koshikienbou.jpg  heitan.jpg  onewomaeni.jpg  onenonoru.jpg 
1250m付近。中央やや右に円錐形のコシキノ頭が見える。そこを目指して進む。 降雪の中であるが、晴れていればかなり気持ちのいい斜面。広大。 コシキノ頭西側の尾根の下。雪庇を割る場所を品定め中。 Cコシキノ頭からの尾根に乗る。
1644.jpg  16621710.jpg  koshikikitakara.jpg  surusuno.jpg 
D1644高点頂上を僅かに掠めるように進む。 1622高点側から見るスルスノ頭側。見えているのは、手前の1710m峰。 途中から栂ノ頭側を振り返る。薄っすらとコシキノ頭の鉾先も見えている。 Eスルスノ頭。東側が開けている。
hyoushiki.jpg  minami.jpg  ita.jpg yakisoba.jpg 
EK大かM大か、ワンゲルの標識。かなり年季の入ったもの。薄っすらと「スルス頭」と読み取れる。締まった残雪期に訪れたのだろう。 Eスルスノ頭から南側。 E今日はオフ・リミッツ。湿気の多い雪に苦しめられた。でもなんとか山頂に届いた。 Eたぶん、おそらく、スルスノ頭でヤキソバパンが撮影されるのは初めてだろう(笑)。
sextupione.jpg nijyuusanryou.jpg  1644kaeri.jpg  tocyukaraakagi.jpg 
スルスノ頭から南の1710m峰までは、雪庇尾根。東側も切れ落ちていて足元が危険。 1662高点は二重山稜。往路復路とも、谷部に入ってしまうのがいい。もしくは東側の尾根が適当。(帰りに振り返り撮影)。 F1644高点まで戻り、シールを剥がす。1710m峰からも一度剥がして滑ったが、スルスから1644まではアップダウンの尾根。 1644高点からコシキノ頭側に下り、途中から見る赤城側(中央の薄黒い山塊)。
koshikinishikara.jpg  sextupishita.jpg  syamen.jpg  oritekita.jpg 
コシキノ頭を目指して降りて行き、適当な場所からドロップイン。 尾根を降り、その雪庇の下。往路とほぼ同じ場所から振り返る。 広大な斜面。快適。ただ、雪が重い。 1200mから進路を西よりにし過ぎて、崖の上に出てしまう。板を背負って、緊張と根性のクライムダウン。
oritatu.jpg  michigatasaisyuu.jpg  kakoutenkaeri.jpg  toucyaku.jpg 
G日向見川に降り立ち一安心。渡渉して右岸に乗り、つぼ足でしばらく進む。往路のトレールに乗るまで4回ほど渡渉。 軌道跡(石垣)が残る最奥地点。ここまで戻り一安心。あとは我がトレールに伝って戻る。  H摩耶の滝への下降点に戻る頃には日没。  I奥四万トンネルに戻る。 


 

 

 2008年3月の最終週末、念願の栂ノ頭から木戸山への周回を成し遂げた。天気にも恵まれ、雪の状態も良く、気力体力も相成って快走とか快歩とか言いたいほどの山旅となった。その時、コシキノ頭から南に広がる真っ白な斜面が印象的だった。「絶対にスキーで滑りたい」そう思わせる斜面なのだった。ただ、一度踏んだ場所にはなかなか行かない。周回をしてしまったので出向く理由は無くなったのだった。しかし、ある。上越国境と、このコシキノ頭の稜線を繋ぐ尾根上に、孤島のようにポツンと存在感のあるピークがある。その山の名前より、四万沢川に在る「スルスの岩洞」の方が地形図に載るので有名ではあるが、「スルスノ頭」も珍名山として十分に自己主張している。目指す場所が出来れば、あとは行くだけ。一つ引っかかるのは、平地では雨予報。上では雪だろうが、それでも重い雪が予想できる。楽しいのか辛いのかと言えば、辛い方になるやもしれない。覚悟して挑む。

 

 2時、家を出る。大戸の関所を経由して中之条町に入り、四万温泉を目指して進む。もう何度訪れた事か。周囲は勝手知ったる場所ばかり、迷う事無くピンポイントで現地に到着。しかし今年は雪が多いのか、奥四万トンネルの所には除雪余地が無い。どうしようかと迷ったが、そこは四駆、雪に突っ込んで駐車場を整地。脱出の予備練習もしてからエンジンを切る。平面距離でも6キロ強。そんなに大変じゃないと高をくくり、出発を急がなかった。仮眠に入るのだが、これが原因で、下山は日没後になってしまった。備え有れば憂い無し、どんな場合も余裕を持って行動しないと。と言うか、単純に眠かった。週中はほとんど21時以降の帰宅。疲れが取れないのだった。

 

 4:30バナナを一本齧りつつスキーにシールを張る。実はまだ半信半疑なのだった。雪がどのくらいあり、どのくらいスキーに利があるのか・・・。もしかしたらワカンの方が良いのではないのか・・・。でも初志貫徹。途中で苦労しても、あのコシキノ頭の南斜面は滑りたい。そこだけで満足するつもりもないが、スルスノ頭の登頂と、この斜面の滑走は、今回の二つの楽しみでもあった。静まりかえっている四万の温泉街。一人ゴソゴソと山中へ向けて動き出す。

 

 摩耶の滝へは、散策路がかなり整備されて、色んな休憩所が設けられていた。たしか、2008年時は入ってすぐで大きな崩落があり工事中だった。すっかり修繕され綺麗な散策路となっていた。ルートを懐かしむように進む。雪融けも進み、時折土の上を歩いたりもした。そして摩耶の滝への下降点。この先がちょっとした危険地帯。足の置き場が厄介な通過点がある。雪があると、より危険度は増し、慎重に通過して行く。前回入渓した沢を横目に、そのまま日向見川に沿って進む。渡渉箇所、崩落箇所が次々に現れる。さすがに雪の無い崩落箇所は、スキー靴をドロドロにしながらトラバーストなる。雪が残る事から、もう少し快適に進めるかと思っていたが、どうもここは逆効果のよう。荒れている為、雪の無い時の方が速いように思えた。

 

 2.5万地形図の日向見川表記の「日」の字の西側に太い谷が入っている。ここには小滝が見える。その先で、軌道の道形が完全に消滅する。最後は石組みが見えるのだが、上流は言うなれば断崖となる。進めず右岸側に渡渉し、40mほど遡上して、再び左岸に戻った。流れには深みもあり、倒木の上に積った雪を利用して対岸へ行く。そろそろ取り付き点に思っていた付近。顕著な谷が見えるが、30mほど上の方に小滝が見える。詰めて行くと巻き上げるにも苦労しそう。日向見川の上流側を見ても北斜面は断崖。唯一、谷の西にある小尾根が伝える場所と判断し、急斜面に取り付く。既にスタートから2時間が経過していた。目論見では1時間の予定であり、大誤算なのだった。

 

 伝って来た場所は、見た通りの難儀する斜面であった。何度も切り返して、時間のわりに高度が稼げない。足を置ける場所がピンポイントで、急峻過ぎてエッジ依存が大きい場所だった。それでも来たからには根性で這い上がる。後ろ向きな思考も出なくは無いのだが、最後の場所まで諦めない。そして1100mで尾根上に乗り一安心。もう少し良いコース取りがあったのではないかと見下ろすが、伝って来た場所がベストに見えていた。

 起伏の多い小尾根を伝って行くと、1200m付近から前の視界がグッと開ける。開けると言っても降雪があり、そう遠望は利かないのだが、それでも広い地形となり、悪天でありながら気持ちのいい場所に入ってきた。しかし、それと同時に、板の下にゴットリと雪が着くようになってきた。何度もした渡渉が思い起こされるが、雪質自体も湿った重い雪。
片足におおよそ5キロ以上負荷がかかる場合もあったかと思う。“これじゃ、行けてコシキノ頭”完全なるシールトラブルであった。この板に使っているのはブラックダイアモンドのシール。このシールは特に水分を吸収しやすいので有名なのである。撥水剤を出かける前に施したのだが、今日は2度塗りせねばならなかったようだ。ストックで叩きながら進むが、毎回懲りもせずに雪が着く。これをいたちごっこと言うのか・・・。

 

 緩斜面ではあるが辛い登りとなった。どこかで硬いバーンにならないかと期待したが、気温も高くそれは無かった。板を滑らすと言うより、上に持ち上げて踏み降ろす動作。カンジキ歩行の様相であった。それでも高度を上げて行くと、先の方に黒い円錐形の山が見えるようになる。間違いなくコシキノ頭。これだけ顕著に判れば、「四万槍」と呼んでもいいと思えた。そこに向けて雪面に深いトレールを残して上がって行く。この時は、まるで高下駄。板の下に着く分の深さが、後に続くトレールの深さなのであった。

 

 目の前に雪庇の壁が現れた。何とか頑張って主尾根に到着した。雪庇を破り登る場所を見定めながら、少し庇に添うように上側に進み、適当な所から雪庇の上に乗る。取り付きから2時間40分ほど登りに費やしてしまった。簡単に踏もうと思っていたスルスノ頭だが、自然はそう甘くはいかないものと体感させられる。スルスまで行くと、時間的にロングコースとなることは確実。帰りの日没も計算に入れ、進退を考える。ここで諦めれば、次は旧三国スキー場からアプローチだろう。同じルートでアプローチするのは面白くないから。としたところで、向こう側からでもそう簡単ではない。ここまで来たなら、頑張って踏んでしまおう。そう思って気持ちをリセットする。いつもそうなのだが、気持ちが入れ替わると、そこまでの疲れは吹っ飛ぶ。いくらでも歩けそうな気分になるのであった。

 

 1644高点まで這い上がって行く。誰かのカンジキトレースがあるかと思ったが、今年の入山者の足跡は見られなかった。周囲を探ったが皆無であった。尾根のやや北側を伝うようにして、1644高点は山頂を通過せずに、僅か北側を巻いてゆく。この辺りから緩斜面になるのだが、スキー板の下の雪は、よりゴットリと付着するようになった。一歩毎にストックで叩く。ストックに重さがないので、そう簡単には落ちない。でもやらなければもっと重く付着する。試練の時間であった。その重さで股関節が痛くなる。そして腰も痛くなる。それでもおかげさまで、1644高点から上越国境に向けての尾根は、緩やかな尾根で起伏は楽であった。視界があれば気持ちよい場所であろうと思えた。湿気の多い雪に降られ、全身ビショビショ。今日はウールの手袋をしてきたが、これは正解だった。どんな仕様の物も濡らしたであろうから、濡れても暖かく感じるウール製品は、現地で助かった。

 

 コシキ沢の源頭付近の尾根を歩いている途中。ふと振り返ると、コシキノ頭の鉾先がガスの中から浮き上がった。もうかなり遠くなっている。またあそこまで戻らねばならない・・・因果な遊びだとつくづく思う。そして1662高点の場所だが、ここは二重山稜になっている。顕著なのは西(南)側の尾根。小さいのが東(北)側の尾根。進路からだと自然と東側の尾根に乗る。ここで無理して西に乗り換えることはない。適当なのは、その間の谷を進む事であった。ここからやや大きく下り、その先で標高差100mほどの登り返し。やや急峻な場所があり、シールに付着した雪のせいで、要らぬ筋肉を使い疲れる登りとなった。あと、登りきって山頂ならいいが、この1710峰はニセピークで、その先が目指す山頂。ここからの尾根筋は雪庇が東に張り出し、その下は崖。やや西側を伝うように進んでゆく。樹林を縫うように進んで行くと、目の前に二本のダケカンバの太い木が目立つ場所となった。

 

 スルスノ頭到着。シールトラブルを思うと、我ながら良く頑張った。やがて8時間が経過する。ほとんど休憩をしていないでこの時間。雪質が適当なら、もう1時間ほど短縮できたかと思う。なにか無いかと探すと、雪面から100mmほどの場所に、ブリキの標識を見つけた。M大製にも見えるしK大製にも見える。どちらにせよ、在ってありがたい標識であった。薄っすらと「スルス頭」と読み取れる。少し小休止。西風を避けるように樹木を背にして、東側を向いて休憩。このピークは東側のみ開けている。ただし、この時は視界なし。下山を13時に決めて、僅かだが10分ほど体を癒す。白湯を飲み、暖かいお湯が胃に落ちてゆくのが判る。この暖かさだけでもありがたい。復路を少し細切れにして計画を練る。まずは1644高点まで戻る。次は日向見川まで降りる部分、そして渡渉を繰り返す最後。この三分割を一つ一つこなして進む。

 

 復路スタート。相変わらずであるがシール団子状態。下り坂では滑りたいが、とても残念な状態であった。トレールに乗ってもなお、重く板の下に着いてきた。下りがあっても登り返しのあるところでは、シールを外さないのがいつも。それが、今回は珍しく1710峰からの下りはシールを外して滑り込む。労力より時間優先の判断とした。1662側に登り上げ、その先は緩やかな大きな起伏を我がトレールに伝って進む。この時は雪は霙と変わっており、少し視界が得られるようになってきた。東を望むと、栂ノ頭の先に鉄塔が見えている。と言う事は赤沢山付近まで見えていると理解できた。その左に稲包山、そこから奥に連なるのが谷川の白き峰々。何となく同定が出来た。そうしつつも足は動かしてゆく。一歩一歩。どうにか雪団子が解消できないかと工夫しながら歩くのだが、トップを高く上げるようにすると、その上げかたが大きいほど、バインディングのつま先側を支点に戻る反動も強くなる。ここでの踵と板がぶつかる衝撃が少し効果があることが判った。板には悲鳴だろうが、この状況を打破するにはこれが一番と判断し続けてみた。効果あり。完全ではないがストックで叩かずとも良くなった。しかし足上げ、腿上げは大きくなり、それ相応の負担は増す。新たな雪に対するノウハウを体得。苦労して覚えるってやつである。

 

 1644高点に戻る。振り返ると、上越国境がしっかりと白く見えている。すばらしい展望であり、見られるなら早くに見せて欲しかった。それでも、此の天気に見られただけでもありがたい。神々しい峰々が連なっていた。その手前に、スルスノ頭らしき高みもある。既に踏んでいるからなのだが、ニンマリと見てしまう。さあ、やっとここで本格的に滑りの態勢。日向見川までロングクルージング。三分割の第二ステージであり、一番楽しみな美味しい部分。シールを外してコシキノ頭側に滑り出すと、開けている南(南東)側の展望がいいこと。赤城の山塊まで見えるようになってきた。滑ろうと思ったのだが、何度も停まってはカメラを構える。その昔は滑り(行動)優先であったが、こんなカメラの些細な作業が、楽しい思い出作りとなることに気づいた。日本人はカメラ好きと言われるが、思い出作りが上手と言う事なのではないだろうかと思う。さて滑る。鞍部近くまで降りたら、雪庇の優しい場所から南側斜面にドロップイン。広大なスキー場のような場所。何処を滑ってもいい。ここだけ樹木が少ないのは不思議なのだが、それほどに雪崩れると言う事なのか・・・。いや緩斜面であり、それはない。たまたまなのだろう。やや重い雪に、ジワーッと板を滑らせて行く感じ。もう少し堅かったら、最高の気持ちいい場所であろう。

 

 往路のトレールを気にしつつ滑り降りて行く。下の方の進路はピンポイントで選ばねばならない。そうは判っていたが、標高を落とすとどんどん雪が重くなり、滑りやすい場所をと勾配のきついところを選びつつ降りていったら、少し尾根を外れて西側に位置してしまった。1120m地点。雪融けで岩が露出しているような場所に入り、尾根側に戻るにも戻り辛くなっていた。ここでの判断は、東側に戻ればよかった。そのまま下側に雪を伝って降りて行く。何となくその先の様子が判ってきた。左側にナメ沢。そこの沢底は当然ナメ岩。傾斜もきつくなり、進む先が見えなくなる。覗きこめる場所まで行くと、その下には日向見川が見えた。川が見えて嬉しいのだが、高低差は60mほどある。まったくの崖の上に居た。さてどうしよう。下側の潅木とザックの装備を考慮し進路を考える。長いシュリンゲは2本ある。潅木はそこそこある。雪もある。降りられるか・・・となった。板をザックに括りつけ、本気のクライムダウンが始まる。ちょっとでも滑れば、停止はなく死が待っている。こんなところでオロクで発見されるのは勘弁願いたい。それがために全身全霊を足先と腕に集中させ、潅木にシュリンゲを巻き繋ぎながら、少しづつ高度を下げてゆく。しかしザックの板が邪魔で思うようなコース取りが出来ない。かなり試練の下りとなった。下っては登り、板の引っ掛からない場所を選び、また降りる。当然足場の良いところを選ぶ。雪があったから降りられたと思うが、なかったら懸垂で降りるような場所。こんな判断をするなら、スキーでもザイルを持たねば・・・などと思ってしまった。無事に日向見川の左岸に降り立ち、生きた心地をしっかりと味わう。そして壁を見上げる。よく降りてきた。

 

 右岸側に渡渉してつぼ足で進む。ここは深みでしっかり水没。この先は第三ステージ。しばらく渡渉回数が多いので板はそのまま、つぼ足で進む。左岸側も伝い辛い岩壁だが、右岸側もデブリの斜面があり、それを避けるように川の中を進まねばならなかった。左岸、右岸とクネクネと進む。すると、左岸側に往路のトレールが見えてきた。ちょっと気を抜いたのだが、雪の下に隠れたスノーホール、ここでは大岩の隙間に落ちてしまった。腰まで落ちて、這い上がるのに難儀する。右岸側はそんな大岩が多いので足場に注意なのだった。板を履けばいいのは判っているが、その先で渡渉をせねばならないことも判っており、時間がかかる歩行を続けていた。そして右岸側の往路のトレールに乗る。ここでも安心して足を乗せていたら、大きく踏み抜いた。我が行動に安心はあってはならないようだ。常に緊張していないと・・・。

 

 往路の渡渉点で左岸に移ると、目の前に軌道の石垣が見えてきた。戻ってきた戻ってきた。時計は17時を回っている。ここまで戻れば日没を迎えても大丈夫。先ほどの壁のところで日没だったら、目も当てられない。さて進むが、1082高点から東に伸びた尾根の対岸側で、高低差5mほど這い上がって道形に乗る場所がある。板を脱いでも難儀し履いて登ったのだが、なにせ雪が緩く登り辛い場所であった。ゆっくりと足を進めて戻って行くと、スノーシューのトレースが見られた。猛者が入ってきているようで、栂ノ頭を狙って入ってきているようであった。この時間で往路の足跡しかないので、幕営装備の様子。崩落地は往路同様板を脱いで進む。下は雨だったようで、雪解けが進んだようにも見えた。

 

 摩耶の滝の下降点まで戻ると、こんな日であるが滝見の人が来られたようで、新しいトレースが降りて行っていた。滝を上から見下ろしたのだが、水量もあり迫力のあるいい滝であった。四万の名瀑、人を惹きつけるものがある。日没となりヘッドライトを頼りに戻って行く。谷の下の方に橙色の明かりが見える。下のトンネルの明かりのよう。その暖色に誘われるよう、人恋しさにちょっと足早になる。現地入りした時点で歩き出せば、明るいうちに戻れたか。歩きながらも色々反省。一番の反省は、第二ステージの最後の行動。終わりよければ全てヨシだが、危なかった。あの時間は、楽しいを通り越した時間であった。いいふうに捉えれば、技量が上がったと思えるが、そう甘んじてはいけない。

 やはり雪解けは進んでおり、往路時より黒い土が露出しているのが目立っていた。最後のスロープを滑り降り、奥四万トンネルに到着。
全てによく頑張った。コシキノ頭辺りで気持ちがちょっと折れそうになったが、何とか持ちこたえて結果が出せた。珍名山をまた一つゲット。嬉しい収穫であり、筋肉疲労が心地よかったりする。コシキノ頭の南斜面も、予想通りの斜面で気持ちよかった。また滑りに行ってもいいだろう。

chizu1.jpg

chizu2.jpg

chizu3.jpg

chizu4.jpg

chizu5.jpg
  
 
                          戻る