鶏冠山(南峰) 2248m 三俣山 2220m 白倉山 1851m
平森山 1812.8m 朝日山三角点 1667m
2012.10.6(土)
くもり 単独
犬切尾根を登り鶏冠山へ、三俣山まで南進して朝日山まで下る。朝日山から北西尾根を湯之沢へ降り、遠山郷を経て大島地区に戻る。
行動時間:14H45M
@都合橋5:18 →(8M)→Aモノレール取り付き5:26→(106M)→B犬切尾根に乗る7:12→(45M)→C1535.8三角点峰7:57→(126M)→D鶏冠山北峰10:03〜11→(29M)→E鶏冠山南峰10:40〜47→(71M)→F三俣山11:58〜12:09→(78M)→G白倉山13:27→(47M)→H平森山 14:14→(61M)→I朝日山三角点15:15→(89M)→J渡渉点からの枝沢に降り迷走16:44→(37M)→K湯之沢渡渉18:21→(14M)→L鶏冠橋18:35→(65M)→M池口岳入口分岐19:40→(23M)→N都合橋東駐車余地20:03
@「都合橋」の東側の余地に車を入れスタート。 | 「東池口橋」通過。 | 全線開通記念碑を右に見て、30mほど先から取り付く。 | Aモノレールの麓駅舎。2両が格納されていた。 |
最初の急登を終えて尾根に乗ったところ。 | レールがあるので観音開きの鹿除けフェンス。 | レールの横を伝える所は伝い。歩き易い場所を選び適当に高度を上げる。 | 二つ目のフェンスを潜り、麓側を見下ろす。 |
扇状の植林斜面があったり。杣道が斜面にあるのだが、はっきりしたものは少ない。作業自体は近年されていないよう。 | 3つ目のフェンスは下側を潜って進む。 | レールの周囲は木々が茂る。使われなくなってしばらく経過していると読める。 | 藪化した場所を過ぎると、次ぎに明瞭な踏み跡が出てきた。 |
モノレール最終地点。踏み跡はこの場所で自然に吸い込まれ判らなくなってしまった。 | Bやや密藪を漕いで犬切尾根に乗る。途中にはヌタ場などがあった。 | 1175高点から1440.5高点への湾曲する尾根に鹿除けネットが張られているが、補強するバン線が錆びて見えず、何度か顔に引っ掛ける。 | シャクナゲ沢ルートの下降点。こちらだと「水没」が必須の様子。 |
1535.8高点の一つ西側のピークには御料局点が埋まっている。 | 御料局三角点。 | C1535.8高点。 | C三等点鎮座。 |
尾根右側にガレ場が出てくると、そこから見下ろすと大滝が見える。流れの音も周囲に轟く。 | 滝見のガレ場の様子。 | 1715m付近。大岩が現れる。 | 1920m付近。倒木。 |
1930m付近から見る南峰。 | ササの中の踏み跡を辿る。 | 犬切尾根の名物オブジェ。虫ようではなく、枝が巻き付いているよう。 | おおぶりなヌタ場もある。 |
D鶏冠山北峰到着。 | D鶏冠山北峰標識。 | D北峰から見る南峰。 | D北峰から見る池口岳側。 |
D山頂の北側に二本の倒木があり、ベンチにちょうどいい。座りながら山頂部側を見る。 | D今日もリンゴを持ち上げる。 | 北峰から僅かに南進し、展望のよい場所から見る南峰。紅葉は始まったばかり。 | 途中の鞍部から見る犬切尾根。 |
南峰への登りにはタイガーロープを流してある場所もある。 | ここで進路は左。岩が現れたら、30mほど東(左)側に水平にトラバースする。足元がやや不安定な場所。 | 途中のV字展望。 | E鶏冠山南峰。 |
E南峰標識。 | E南峰の御料局点。 | 南峰から僅かに南に進んだ辺り。 | 進んで行く尾根上にはポコポコとピークが並ぶ。 |
岩場の場所は踏み跡に従い西側を巻き込む。 | 2181高点は、南北に双似峰となっている。 | 2181高点の南側から三俣山から北に降りる県境尾根を望む。 | 大きなヌタ場が二箇所ある。 |
2194高点通過。鹿道なのか、はっきりとした道形がある。 | 2209高点北側の斜面。西寄りに登って行く。 | 2209高点通過。 | ガレ場が一箇所あり、けっこうに切り立っているので注意。 |
もうすぐ三俣山。 | F三俣山到着。 | F古い山名板と標石。 | F三俣山から見る2251峰。 |
F三俣山から鶏冠山側。 | F三俣山から犬切尾根。 | F三俣山から合地山(左)。 | F手書き道標も残る。 |
F2251高点をバックにヤキソバパン。 | F看板側へ下降開始。 | 古い道標もあったりする。 | 2200m付近。 |
2080m付近。 | 2013高点には「笠松山」とふられていた。 | 1840m付近。もうすぐ白倉山。 | G白倉山の東側に標識が着けられている。標高点をとっている場所とは別。こちらの方が高い場所のよう。 |
G白倉山の標高点の場所。 | GMLQのいたずら書きは消えてしまっていた。 | やけにリボンが多く残る場所となる。どうも西俣沢側へ降りるルートがあるよう。 | 平森山の手前で、合地山を狙い幕営しているパーティーが居られた。 |
H平森山到着。 | H平森山標識。 | H平森山三等点。 | I朝日山三角点ポイント。最高点にあらず。 |
I朝日山三等点。 | Iここはここで標高をとって標識が掲げられている。 | 北西尾根を下りだし1630m付近。 | 1630m付近から振り返る。かなり広い地形。進路注意。 |
1360m付近。上からはリボンが続いている。 | 1230m付近には檻が設置してあった。どうやってこの場所まで持ち上げたのか? | 1120m付近。尾根が狭くなってゆく。 | 大岩の上に刻印がされた場所が現れると、しばらくその形態が下まで続く。 |
先の刻印の場所の先で、尾根の左(西)側を巻いて進む場所になる。 | 1110mで尾根分岐。左を選ぶ。 | 830m付近。尾根上がフェンスで覆われて、その左側は酷く急峻であった。ここはおそらくルートミス。フェンスを左に見て右側へ進まねばならなかったよう。 | J急峻を下り沢に降り立つ。なにを誤解したか、これが湯之沢だと勘違いして降りて左に進んでしまった。下流に行かねばならないところを、「湯之沢に下りたら左」との思い込みで。 |
これは、地形図に見える湯之沢の渡渉点から南に入る沢で、それなりに大きな流れがあり、湯之沢と誤解してしまった。 | 迷走途中にいい形の角を発見。 | K闇夜を迷走して、やっと正規の湯之沢を渡渉する。正しい渡る場所かどうかは不明。 | L鶏冠橋の東側に自転車をデポしておいた。しかし前輪が空気漏れでまともに走れない事に。出掛けに入れてきたのに・・。 |
L鶏冠橋 | M遠山郷を抜け大島地区に入り池口岳への分岐点。 | N都合橋まで登り上げゴール。 | Nすぐ上に強い流れの側溝が降りて来ており、ゴボゴボと煩い場所。 |
秋の3連休。白山山系に幕営・クライミング装備で出向く予定であった。前週はそのための下見も・・・。しかし急な事情が発生し中止となった。急いで別の場所を探さねばならないのだが、そこはいつもの瞬発力。全く困る事無く場所選びが出来る。事前準備が少ない・・・と思われがちだが、地図、アプローチ林道情報、天気、今やインターネットで収集できる。地形図を買い集めた過去、役場の終業時間を気にして仕事中に電話した過去が懐かしい。1週間かかっって収集した情報が、今は1分もかからない。いい時代。よって極端には、当日に行き先を選定する事も出来る。
南アルプスの2000m超の登り残しも、残り4山となっていた。もったいぶるように残していたり、美味しい物を最後に食べようとするのと同様の気持ちで居た。反面、登っていない場所に対しては「登りたい」気持ちは強い。結局は遅かれ早かれの訳なのだが、今回は気になっていた静岡・長野県境にある鶏冠山と三俣山を目指すことにした。三俣山は日本山名事典での表記。三又山と表すのも多いよう。南アのバリエーションルートは、歩かれている人が多い。濃いササ漕ぎなどがないからだろうかと思う。ここもそんな場所かと思う。ただしアプローチが遠い場所。それ相応に計画しないとならない場所となる。
ルート選定時がなんとも楽しかった。どうアプローチしようか、下ろうか・・・。どうせなら大きなコースにしたい。犬切尾根を登るのは順当として、下りはどうしよう。登山口とするのは大島地区側。そこと上手く一筆書きで結べるコース取り・・・。梶谷川の上流域の梶谷地区から山越えの道が地形図に表記されている。これを上手く伝えばと思えた。ただし、後半に一山越えるとなると、けっこうに大変。それならと視野を広げると、国道152号を絡めるといい感じに大周回になる。普通にテン泊を入れた二日間コースと思えるが、やはりここはワンデイで結果を出したい。若かりし頃の思い出作りにも・・・。若くないのだが・・・。林道と車道は、自転車でつなぐ事とし、マウンテンバイクを装備に入れた。天気はいまひとつ秋晴れにはならないよう。涼しい空気のなか歩ければ疲労度も少ないか。自然条件もプラス思考に持ってゆく。いざ。
前夜、21時に家を出る。出たとたんに野暮用の電話が入り、40分ほど運転しながらの打ち合わせ。おかげで眠くならずに高速巡航。松川インターで降りて153号を伝い、矢筈トンネルを潜って152号に乗る。何度訪れても静かな山村。遠山郷を抜け秋葉街道に入り、梶谷川の出合いで「せせらぎの里」の方へハンドルを切る。ここから沢に沿って林道を詰めて行く。林道名は、「林道梶谷線」と言うらしい。養魚場が左にあり、防犯の為か明るい場所となっていた。その奥に一軒だけ廃墟があり、そこを最後に民家が見えなくなる。カーナビを見ながら下山ポイントを探す。暗く周辺の様子が判らないので、判断は渡った橋の数と道の様子から。そしてその場所に着いた。湯之沢の出合いには鶏冠橋というのが架かっており、その東側が破線ルート入口となるが、完全に廃道化しているようであった。マウンテンバイクをその場所に置いて、怪しまれないよう「登山中」と書き、日付を添えた張り紙をしておいた。
来た道を戻り、ふたたび遠山郷を抜けて、今度は池口岳の登山口を目指すよう進んでゆく。大島地区の、最後の家の犬が吠えている。いい番犬である。犬切尾根に乗るには、シャクナゲ沢がメインルートのようであるが、モノレールルートも有効らしい。ここは水没しない方と、後者での取り付きと決めていた。林道開通記念碑が見えると、その先にそれはあった。ここで、帰りは下から上がってこなければならないことを考えると、やや下の方からスタートしたい。下って行き、都合橋の袂に余地があったのでそこに突っ込む。2時、今日は仮眠時間も十分取れそう、夜明け頃を出発時間として後に移動しシュラフに包まれる。
3時、4時と定期的に目を覚まし、空を見上げる。今日はくもりの様子。月齢は夜歩きに適していたはずだが、周囲は暗かった。5時に起きて車内で靴紐を縛る。運転席で過去どれだけ靴紐を縛ったか・・・。家の中で靴を履く人は礼節がないと叱られるが、この所作も後ろめたさがないわけではない。履いたまま飛び出ると、格納庫から飛び出すロケットのような気分なのだった。何処まで平和ボケしているのか・・・。でもきちんと装備は確認。ビヴァークしてもいいようにツェルトとエマージェンシーブランケットの有無を確かめた。
5:18都合橋をスタートする。アスファルト林道を詰めて行くと、次にあるのが東池口橋。開通記念碑が見え、その先のモノレール小屋を覗くと、その中には2両のモノレールが格納してあった。それほど林業作業が盛んだったと言う事になる。過去形にしたのは、エンジン周りや様子、臭いからして、しばらく使われていないと判断できたから。さて取り付く。苔むした小岩の上に足を乗せてゆくのだが、すぐにザレタ斜面となる。薄い九十九折がレール左側の斜面にある。鹿も伝っている蹄の痕も残る。そして急登を乗り上げると、痩せ尾根の上に出る。ここは吹き上げの風が気持ちよかった。下草を気にしてスパッツを着けたが、しばらくは不要の場所が続き、レールに着かず離れずで添って進む。
観音開きのフェンスが現れる。この周囲も鹿の食害で困っているようだ。エリアが広いだけにハンターの絶対数が少ないのだろう。もっともここは、鳥獣保護区か・・・。その頭数の多さからか、下草が全く無い。急登の部分を除けば、バリエーションルートとしては歩き易い場所となる。途中からレールを右に見て、そこから30mほど東側を歩いた。そこに杣道があったからで、この辺りは適当に登り易い場所を伝っていた。
6時になり、谷間に音楽が流れる。村としての起床ラッパのようなものだろう。耳を澄ますが、あまり聞いた事のない曲調であった。でも、時計をなくしビヴァークして朝を迎えたら、この音楽は時刻を知らせる重要な物となる。二つ目のフェンスもレールに沿った場所で通過。その先の斜面で、古い鎌の刃が落ちていた。機械で下草を刈る現在、過去はこれらで・・・重労働だったろう。林業は廃れるべくして廃れているのか・・・。
三つ目のフェンスは下側を潜って進む。この辺りはレールの場所が確認できないほど離れた場所を歩いていた。終点を見ずに・・・調査にならないとも思ったが、いつしかレールが右側から現れた。藪化した中の道で、両腕で分けつつ進むような場所。そのなかには一斗缶なども多数転がり、人の気配がする場所となっていた。藪を抜けきりレールに伝うと、やけにレール脇の踏み跡が濃くなる。このまま快適に連れて行ってくれるのか・・・と思ったら、あっけなく終点地となった。その先に踏み跡などが見えず、それが意外であった。もう少し明るい広い頂上駅を予想していたが、山腹の場所でパタッと途切れているのであった。
何処に居るのかおおよその目処はつくが、木々の間から見える周囲地形が、東にも南にも高みが見え、どの方向に進めばいいのか悩む所であった。ここは南進と決め進んで行く。やや密生する植生。ツガの幼木からの枯葉が背中に入り痛いこと。染み出るような湧水地にヌタ場があったりし、20分ほど藪をこぐと、やっと犬切尾根に乗った。尾根の上にも鹿除けフェンスがあるのだが、この補強となっているバン線が、錆びて見え辛く、2度3度と顔や首に引っ掛けた。ゆっくり歩けばいいのだが、やや早足で進んでいるので、注意散漫で目が追いついていないのだった。
緩やかに東進から北進に変わってゆくような尾根筋。この先が1440.5高点となるか。通過ポイントと三角点を拝んでいこうと思っていたが、いつしか通り過ぎていた。快適な歩き易い尾根。犬切尾根に乗るまでが大変であったが、乗ってしまえば不自由な部分は皆無のよう。そしてマーキングが多い。出来れば回収して欲しいが、いろんな考えの人が居るから、黙認となる。途中、シャクナゲ沢への下降点表示が、トリコロールカラーで書かれていた。表示が山頂側を向いていたので、下山時を意識して掲げられているようであった。当然と言えば当然なのだが・・・。
1535.8高点の西側のピークには御料局の三角点が埋まっていた。歩く途中の嬉しいアクセント。そして1535.8高点には、三等点が四方を囲まれた状態で鎮座している。なんとも飽きないで歩ける尾根。商売人にはもってこい。展望はないものの、遠くまで視界の届く尾根で、そのための快適さもあった。これが犬切尾根か。その昔は公式ルートだったはず。その長さから歩かれ無くなったのか、最初の渡渉が要因か・・・。周囲の名山に利用者を奪われたか・・・。
途中で、右下の梶谷川からの水流の音が大きくしだす。音質からして何があるのか一目瞭然。標高1680mくらいだったか、ガレ場の所から谷を望むと、そこに大ぶりな滝が見える。これもこの尾根のアクセント。お膳立てが素晴らしい。1715m付近で大岩が現れる。その間を縫うように、やや右寄りを伝って進む。1900mを越えると、少し倒木帯が現れだす。負荷になるほどでなく軽快に跨いで進む。
1920m付近から上の方に円錐形の高みが見え出す。やや右側に見えるので鶏冠山南峰となるか。地形図上での標高差は300mほど。もう少しとも思えたし、まだまだとも思えた。そしてこの先からやっと足許に植生が現れ、ササの中の踏み痕を伝って進む事となる。勾配が緩やかになると、その先の尾根中央に楽しい木のオブジェが待っていた。こんもりと下膨れ。もう枯れてしまっているようであるが、その枯れ具合からの文様が綺麗であった。ヌタ場を経て、この先は道形が薄く適当に進んで行く。ただし適時にマーキングがある。無視して・・・。
鶏冠山北峰到着。犬切尾根を登り切った。取り付きから4時間半ほどだから、快調に登れたか。見上げるような場所に池口岳がある。反対側には鶏冠山としての最高峰の南峰が聳える。山頂の北側に倒木が2本あり、ちょうどいいベンチとなっていた。その上に腰掛けリンゴを齧る。誰も居ない場所。この自然との一体感がいい。口の中でジューシーな甘さを楽しみつつ、大きく鼓動する心臓音が静まるのを待つ。地形図を見ながらこの先のルートを確認。三俣山までどんな尾根筋なのか。初めての場所はいつもワクワクする。深山の雰囲気のある県境稜線、線こそ引いていないが、県境と言う場所は分水嶺だったりし、一目置く場所だったりする。さて南進。僅かに進むと、南峰の全容が見える場所となる。紅葉が最盛期なら、それはそれはいい景色の場所であろうと思えた。
鞍部まで下ったら南峰への登り返し。タイガーロープと細引きが流してある場所もあり、そこを這い上がると次ぎに大岩が付近に現れる。直登らしい道は見えず、東側に水平道が見られ伝って進む。距離にして20mくらい。足場が緩く注意が必要。その先からは谷部を登るような格好になり、鹿道や踏み痕やらが混在している。ここにもマーキングがあり追うことも出来る。やや左(東)側を巻き上げるようにして頂上を目指してゆく。周囲に色づく広葉樹が多い。もう少しタイミングをずらせば、燃えるような中を歩けただろう。
鶏冠山南峰到着。北峰から僅かな場所であり、着いたものの登頂感が薄かった。本来ここが鶏冠山としての最高所。私にとって大事な場所なのだが、この先の行程も長い事から、ここで気を抜くことはできず次の目標点が気になっていた。空が開けた居心地のいい場所、本来なら長居がしたいのだが・・・。先ほど居た北峰側は樹林に遮られ見えない。標高以外の部分では北峰の方がいろんな部分で勝っていると思えた。南進して行く。
進む先に顕著な円錐形の高みが見えている。2251峰であろうか、その右にダラッとした山塊があり、それが目指す三俣山のよう。そこまでの尾根上にはポコポコと高みが続く。予想に反して藪が薄く歩き易い。鹿道もあり、それが登山道のように歩き易くなっていた。途中に尾根ルートが岩の上で行き詰る。ここは東側を巻くように踏み跡がついていた。鞍部まで下り2181高点までの登り上げ。低い笹原でこの辺りも至極快適。その2181高点は南北二つのピークになっており、標高点は南の方であった。ここを過ぎると、東側が開ける展望地。しばし足を止めて周囲展望を楽しむ。晴れていればササが銀色に輝く場所となる。
標高2160mに大きなヌタ場が二つあった。しかし、今日は鹿の警戒音もしなければ姿も見えない。ヌタバに見える蹄の痕も古い感じがする。鹿の遊び場としては面白くないのかどうか。2194高点付近も明るい通過しやすい状況が続く。そして2209高点北から、少し地形が暴れだし、ルートを選び進まねばならない。と言っても大枠では歩き易いと言える。ここまで快適とはつゆ知らず。もしかしたら、ここ数週の濃い藪で態勢が出来ていたのかもしれない。僅かに倒木帯もあるが、跨ぐ回数は数えられるほど。そして2209高点西で、西側斜面が崩落している場所がある。その距離8mほど。ここはあまり西に寄らずに通過したい。もう目の前にデンとした三俣山が待っている。なにせ予想以上の進度。こんなに早くに進めるとは思っていなかった。快適快適。
三俣山到着。なんと言っても2251峰の存在が目立つ。なにか山名がついていれば登るのだが、無名峰であり、勿体無いような気もする。その存在に、こちらの三俣山が霞んでいる恰好でもある。古い標識が標柱の脇に置かれていた。現在掲げられている物は、各方面への手書き看板、そしてハンターへの鳥獣保護区警告表示であった。歩いてきた犬切尾根が見える。合地山も見える。既に遠くなった池口岳も見え、樹木が在るにしては満足できる展望がある。目的の2座を踏んだ訳だが、この先の不安要素は朝日山からの進路。廃道尾根がどんな常態か。渡渉は・・・。まだまだ気を抜けない。ヤキソバパンで腹ごしらえをして下降に入る。
古い朽ちた道標を右に見て、踏み跡の様な筋を追って降りて行く。こちらの尾根は今年の最初に白倉山まで来ているので、おおよその植生は把握していた。言うなれば案の定の様子。重力に任せてどんどん下って進む。やや不明瞭な場所もあるが、良く見定めれば進路は見えてくる。最初の通過ポイントの2013高点には、「笠松山」と書かれたプレートが掲げられていた。注意していないと上からだと気づかずに通過してしまいそうな低い場所につけられていた。さあこの辺りから倒木帯となる。下りギアに切り替えて快適に降りて来ただけに、ここでの倒木のお出ましはけっこうに辛い。県境では数えられるほどであったが、こちらはその逆。一辺倒ではないのだが、ササの中に隠れていたり、大きく立ちはだかったり。
1873高点の西側は、ガスると嫌な場所とみていたが、この日は視界があり最良の繋げ方で白倉山側の尾根の乗れた。そしてその白倉山なのだが、前回は標高点の場所で引き返して知らなかったのだが、東側に標識を取り付けたポイントがあった。標高点との距離は60mほどあっただろうか。確かに東のこの場所の方が高いようにも思えた。そして標高点の場所だが、既にMLQ氏のいたずら書きは消えて見えなくなっていた。その代りに、三俣山にもあった遠州山楽愛好会のテプラが巻かれていた。ここまで来れば、先は勝手知ったるルート。一つ思ったのだが、降雪期より無積雪期の方が遥かに歩き易い。倒木の条件は同じとしても、そのように思えた。跨いで分けて、ガツガツと西進して行く。
1815高点の西側で、急にマーキングが花を咲かせたように賑やかに付けられている。何事かと思ったら、どうも西俣沢側への下降路がある様子で、その切り開きが南に降りていっていた。マーキングを追ってしまうとルートを間違えてしまう場所となる。この下降点の場所から5分ほど進んだ1790m付近で、二人の方が幕営していた。まだ早い時間と思ったが、痙攣のトラブルに見舞われ、安全をみてここを塒にした様子。この先、合地山まで足を伸ばす計画とのこと。人のよさそうな二人で、ちょっと立ち話。テントの周囲には、ウヰスキーの甘い香りが漂う。“たまには幕営しようか・・・”そんな気にさせてくれていた。最後にビーフジャーキーをいただき、それを齧りつつ背を向けた。
平森山通過。ここは休まず先に進む。しかし一度あることは二度ある。ここからの南尾根へのルートに吸い込まれてしまった。前回も同じ。道形の広い方が南尾根。狭い方が朝日山に続く尾根となる。25mほど登り返してルート修正。後からの報告では、さきのパーティーも復路で吸い込まれ苦労して修正したとのこと。これがバリエーションルートの楽しさかもしれない。全ては自分で判断せねばならない。
倒木帯の中。跨ぎ、乗り越え、時に一本橋をし・・・。この尾根で平森山と朝日山間が一番強い倒木帯となる。しばし忍耐の通過点。最終座の朝日山ももう目の前。やや不明瞭なルートを進みつつ、その場所に近づいてゆく。バリバリとササを分けてゆく。分けると言うよりは、枯れた物が多く、踏んでのバリバリ音なのであった。朝日山の最高点には行かずに北西尾根に近づくべく、朝日山三角点の方へ寄っていく。山塊の北側を伝うように進むのだが、こちらはとても歩き易い斜面で、選択としては正解であった。主尾根であろう場所を左に置きながら、トラバースして行く感じ。そして広い大地の上に乗り上げると、マーキングが見え出し、三角点の場所へ導いていた。
朝日山三角点。最高点よりは、こちらの方が何となく居心地がいい。やはり三角点の有無が影響か。さてここから問題の北西尾根を進む。廃道状況でも道形はあるだろうと思ったが、全くない状況。さらには、最初の方は広い斜面。すぐさまコンパスを当て、方向を決めるのにベゼルを回す。でもでも、好事家の好意なのだろうマーキングが、等間隔に縛られていた。それを拾うように進むと尾根の上を正確にトレースして行くことが出来るのだった。1360mで尾根が分かれるが、しっかり左側を導いていた。広い尾根が終わり、この先から痩せてくる。さらには勾配が増してくる。そしてそして斜面の土質はズルズルと滑りやすい細かいザレ状。けっこうに足の筋肉を使う場所となった。
1230m付近。尾根の西側に踏み跡が進んでいるのが見えた。それが進む尾根と交差するような場所に、獣用の檻が設置してあった。獣とは熊なのであろうが、この標高までどうやって持ちあげたのか不思議であった。なにかここに至る別ルートがあるような気がしていた。そのまま主尾根を下る。1100m付近で、これまで標柱だった境界表示が自然石への刻印+赤ペンキに変わる。これより下は、かなりの場所でそれが見られた。僅かに下ると痩せ尾根の岩の上となり、ここは西側を巻いて進んで行く。
1020m付近も尾根が分かれる。コンパスを見ながら北西へ北西へと進む。しかし、これがちょっとした判断ミスになった。標高830m付近で、尾根上に鹿除けのフェンスが現れた。もうすぐ湯之沢に降りられるとの安堵感がそうしたのかもしれないが、フェンスで囲まれている場所を右にして、左に進路を選んでしまった。実はこの辺りにはマーキングはない。続いていたピンクのマーキングは、途中から林業作業用と思しき赤布に変わり、それもいつしか見えなくなっていた。その時点でルートを外したのかもしれないが、なにせフェンスの場所を右へ行かずに左を選んでしまった。北西を意識しすぎた結果。ここからは怖いほどの急峻。ザレ斜面でフェンスの網を両手で掴みながら降りるような場所だった。
下に流れが見え、もう少しでゴールなどと思い降りていた。そして降りきり、「左に進めば林道に出る」と頭に擦り込まれており、体もそう動いた。流れの中を「上流」に進む。何で上流に、でも降りたら左・・・。頭がおかしくなっていたのか、全く判断できずに、少し進めば沢が右に屈曲するはず。その場所を追い求めて沢の左岸側を進んでいた。ここも伐採木が酷く、かなり伝い難い場所だった。こんな場所が最後なのか・・・などと、気楽なもん。しかし行けども行けども思うような地形が出てこない。間違えに気づいたのは沢に入ってから20分後だった。やや上の方にあがって、より全体地形を見ようと試みた。周囲は樹林帯で見えないのだが、一応迷った時のイロハや鉄則は守る。自分の場所が判った時は、958高点の北側辺りにいた。全く明後日の場所に居た。元を正せば、フェンスの場所での判断ミス。いい経験であった。既に日没で、闇夜の中をヘッドライトを頼りに急峻を降り、沢の中を歩く羽目となった。こんな場所で怪我をすれば、それこそ笑いもの。脳裏には少しビヴァークも浮かんだが、夜歩きは好きな方。慎重に降りて行く。左岸側を降りて行くと、お茶碗などがヘッドライトに反射した。どうやら主流である湯之沢に降りたよう。やや平坦な場所が続き、何処から渡渉できるのかと思いつつ歩いていると、ふと見ると足許に鹿の角があった。しゃれこうべ付きの二本の角を擁すもの。大きさも手ごろでザックにくくりつける。これは迷った恩恵となるか。
湯之沢の渡渉は、石に乗りながら3歩で渡りきる。そこそこの流れがある場所ながらちょうどいい渡渉点が見つけられた。今度は右岸となるのだが、林道に戻る踏み跡を探すのが難しい。山腹に杣道があるのだが、水平道を行くとガレ場になり、足元が危ない斜面を横切る。でも行けども行けども林道に出ない。ルートミスかと思い、少し戻ってザレた斜面を下り、20mほど高度を下げて探してみる。ここでも闇夜なので、本当に注視して探す作業をする。すると標高を下げた場所に別の道形があった。それ以外にも杣道が入り乱れており、正解を探すのはけっこう大変と思えた。伝って行くと、見覚えのある場所となり、そこに我が自転車の反射板が光った。やっと到着。しかし・・・。
自転車を押して林道に出ると、何かおかしい・・・フロントタイヤの動きが重い。出掛けに入れてきたのだが、エア漏れを起こしているのだった。こんな時はオフロードバイク乗りとして培ったノウハウがある。リムとタイヤの間に草を詰める方法があり走ることが出来る。それをやろうかと思ったのだが、闇夜の中でヘッドライトを頼りにどれだけ作業が出来るか・・・。色々考え、ゆっくりでもこのまま乗って行ってしまおうと判断した。バーストする事も考慮に入れて、転んでも受身を取る気持ちで走らせていた。幸いにも152号まではほとんど漕がずに走る事が出来た。152号に乗ってからは少し登り勾配があり、前過重になる所があり押して進んだ。そして遠山郷の街中は緩やかな登り勾配。家々の明かりが漏れる中を怪しく通過して行く。「こんばんは」と挨拶してくださる女の人もいたり・・・自転車を押す姿がよほど健気に見えたのかも。民家がなくなり押出のバス停を過ぎると、勾配も強くなる。このまま自転車を押し上げていたら、かぐらの湯の受付時間を過ぎてしまう。T字交差点の余地に自転車をデポして闊歩して進む。夜の入口でもあり、思いのほか行き交う車も多い。轢かれぬよう、その都度ヘッドライトを車に向けて存在をアピールする。最後の最後で事故に遭えば、山の中でどれだけ神経を使って安全に降りて来ても無意味。闇夜、「歩いている人など居ないはず」の所を歩いているわけで、それなりの自己防衛をする。
大島地区に入り、池口岳への分岐点となる。最後の登りとばかりに、振り絞るようにラストスパート。走るわけではないが大車輪。是が非でも風呂に入ってから寝たい。そのための頑張りでもあった。受付終了まで残り35分、残り30分と刻々と時間が経過して行く。民家の犬が、怪しい私を察知して吠え立てる。またまた足早になる。そして前の方に白い長い欄干が見えてきた。都合橋である。とうとう周回完了。長かった山旅も無事終了となった。完結。
降り返る。湯之沢から朝日山の廃道ルートは、道形はほぼ皆無と言っていい。道を追って歩くスキルの人は入らない方がいいだろう。地形で判断して歩ける人なら通行可。湯之沢に降り立つ所で大チョンボ。もうすぐ林道に出ると思った気の緩みが生じていたのだろう。そして地形図を見ての思い込み。降りた場所で地形図どおりと思えたためにコンパスなどを出さなかった。一瞬でも見れば、90度進む方位が違っている事が確認できたはず。これを糧に、今後は同じミスを繰り返さぬよう確認作業をするようにしたい。そもそも、沢を遡上する時点でおかしな行動なのだが、疲れた中では、普通では考えられない行動を取る場合も・・・。肝に銘じよう。ただ、小さい声で言うと、迷いが楽しかったりする。迷った自分を第三者的に見ている自分が居り、「さてどうするんだい」と語りかけていた。