滝ヶ岳   1774.4m        湯谷頭   1549.4m     
  
                       

 2012.9.29(土)   


  晴れ    単独       白山中宮道         行動時間:9H29M


@中宮温泉駐車場4:52 →(9M)→A中宮道登山口5:01→(52M)→B次三角点5:53→(24M)→Cシナノキ平避難小屋7:17〜20→(44M)→D滝ヶ岳行政標柱8:04→(6M)→E滝ヶ岳取り付き点8:10→(47M)→F滝ヶ岳8:57〜9:11→(9M)→G登山道に戻る9:20→(39M)→Hシナノキ平避難小屋帰り9:59→(13M)→I湯谷頭南尾根取り付き点10:12〜16→(60M)→J湯谷頭標識ピーク11:16→(34M)→K湯谷頭三角点峰11:50〜12:06→(43M)→L登山道に降り立つ12:49→(83M)→M登山口14:12→(9M)→N駐車場に戻る14:21


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@中宮温泉駐車場から 知らないと林道の進路を戸惑うだろう。道なりにクネクネと上がって進む。そしてここが林道を離れる場所。 A右岸から左岸に渡って登山口。 B次三角点が横たわっていた。いつから・・・なのか。ただ、この標柱は根の部分が浅い。
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次三角点前の登山道の様子。快適。 途中から望む湯谷頭 振り返ると冬瓜山が赤く焼けてきていた。 とちのき坂
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白山側はガスの中に入って行く。 Cシナノキ平避難小屋。以前より内部が綺麗になっていた。 D登山道上の滝ヶ岳の行政の標柱。ここは滝ヶ岳にあらず。 白山側のガスが晴れた。
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白山も荒々しい表情を持つ場所がある。火の御子峰の鋭利な尾根。乾いた色に日々崩れている様子が伺える。 E滝ヶ岳への取り付きに使った小谷。 谷形状の最終地。僅かに伝えただけ。ここで東寄りに進んでしまい、進路を誤った。西寄りに進むべきであった。 ササは細いが、しなりのある強いものが多い。重い雪に耐えて強度が強くなっている。
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滝ヶ岳の南峰側に乗り上げる。こちらには展望のいい場所があり、これはこれでミスコースの恩恵に。 滝ヶ岳南の鞍部の藪。 降り返る。見えている笹原は、その高さは1900mmほど。潜って進んできた。 F滝ヶ岳到着。ササの中にポツンと三角点がある。
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FコマQさんのリボンが残る。2009年のもの。 F三等点 F山頂の西側5mほどの場所に座るのにちょうどいいダケカンバがある。山頂に休憩適地なし。 ダケカンバの林立する場所を通過して降りて行く。
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G登山道に戻る。 Hシナノキ平避難小屋に戻る。 H小屋内部。前回は濡れた湿った感じであったが、今は綺麗に整備されている。薪も揃っていた。 南側から見る湯谷頭。
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I湯谷頭の取り付き点。登山靴を縛りなおして突入。標柱の裏から斜め上に昔の道が上がっている。 I行政の標柱に書かれたいたずら書き。一般登山者は無積雪期は入らないほうがいいだろう。 道形の上に覆いかぶさる潅木。跨ぎながら、持ち上げながら分けて進む。 作道跡が判る山手側の土砂を切った跡。
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尾根頂部を通過したり、東側をトラバースしたり。はっきりとした道形は見えてこないが、何となく薄っすらとある。 これが道形の濃い場所。濃くてこの様子。全く見えてこない場所も多い。 2mほど深く掘れた場所もある。不思議な通過点。 1530m付近。大木が林立している。 
sancyouhyoushiki.jpg  horetasasa.jpg  kitagawakara.jpg  yudaninokashirasantou.jpg 
J藪山と思っていたら、行政の標識があった。三角点峰の南220m付近。枯れた大木の脇に建つ。噴泉塔と蛇谷の表記あり。 三角点峰側に近くなると、ササの中に道形が見えてくる。潜りつつ進む。ササが強く、分けるのに難儀する。 K湯谷頭到着。北側から撮影。 K湯谷頭三等点。 
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K湯谷頭から見る白山側。  K2010年5月のMLQ氏のいたずら書きが薄っすらと残る。  K今日は青リンゴを持ち上げる。  下山の最初は尾根伝いに降りたが、急下降しだし、逃げるように南の谷の中に入って行く。
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谷の中には一箇所のみ危険箇所あり。ナメ状になっていて左岸側の潅木を掴みながらズリ下る。 途中で僅かに流れが出てくる。  L登山道に乗る。 L降りてきた小谷。 
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登山道はブナの中の快適道。 マムシを3匹見た。かなり生息している様子。ここでの半ズボン登山は危ないかも。  温泉山を越えてゆく。展望ポイント。 登山口を上から見下ろす。 
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M登山口に降り立つ。 湯谷の右岸側で護岸工事をしていた。ここにバケットをオペレートしている人が居て、谷間を山土を乗せたバケットが空中を行き来していた。  N駐車場に到着。この日は私一人しか入山しなかった様子。  

 
 2008年7月、岩間道から御前峰に上がり、そのまま中宮道に抜けた。その時に残してしまった山が2座ある。今回はその落穂拾い。ネット上では石川の雄であるコマQさんのページで紹介されている。少し前にはMLQ氏のサイトでも詳細表記されていたが、今は見ることが出来ない。中宮道から僅かに逸れる場所であるが、そこは北陸の藪、短い距離だからとて簡単に・・・と言う訳にはいかない。もう一つの目的として、地獄谷とクロカベ谷に挟まれた尾根を下見しておきたかった。白山山系でここだけ異質な場所。霊峰白山の姿は、越前や加賀から見える流麗な女性的な姿、しかしここは男性的な荒々しい姿がある。これも白山なのである。

 
 前夜、20:45に家を出る。週中の疲れで酷く眠い。出だしからすぐに仮眠を入れる始末で、高速なのに鈍足。記憶薄のまま金沢西インターを降りて157号に乗って中宮を目指す。ヘッドライトもテールライトも見えないような静かな山村を、一里野を経て現地入りする。白山の市ノ瀬側を表とするならば、こちらは裏登山口、ハイカーの車は皆無であった。広い駐車場にポツンと停める(2:38)。6時間ほどかかってしまった。最長タイムかも・・・。この日は藪山ではあるが時間の配分が読める山であり、そう急ぐ事もなかったが、18時に金沢で所用があり、さらには21時からも予定があった。約束したからには予定は守る・・・。間に合うように夜明けを待たずして出立することにした。出発を5時として2時間ほど仮眠を入れる。

 
 一応ザイルをザックに突っ込んだ。駐車場は外灯があり明るく便利。トイレもあり至れり尽くせり。この明るさは、もし山中を暗い中歩いて下山してきたら、本当にありがたい明るさとなるだろう。さて出発する。ロープゲートを跨いで、右岸側のコンクリート舗装路を行く。日中でもそうだと思うが、夜だと尚更迷いやすい場所。登山口までの経路に道標はなく、工事用の枝道があるので吸い込まれそうになるが、何せコンクリート舗装路を伝って行くので正解。変則的な九十九折を登ると、その先で分岐道標が現れる。以前はこの道標は無かったはず。迷う人が多いのだろう。しかしこの右岸側の場所で水が枯れていた。塩ビホースからジャバジャバ出ていたのに、その受けとなる木樽も乾いた状態。汲んで上がろうかと思っていた計算が狂ってしまう。上の水場は流れが細く汲むのが大変。今日は水難か・・・。ザックの中の水分質のものを頭に浮かべる。スコッチウヰスキーだけ(汗)。

 
 木橋を渡り登山口からコンクリート階段を登って行く。ここを通過するのはこれで4度目か。なにか懐かしい場所に思える。急な階段が終わると草地の中。いつも綺麗に刈り払いがしてあるのが感心する部分。ライトに反応してか、音に反応してか、足元のバッタがピョンピョンと跳ねる。安眠を邪魔しているのか・・・。山道に入り九十九折の清浄坂を上がって行く。だんだんと夜が白みだし、ヘッドライトは懐へ仕舞う。いつもながらの相変わらずの快適な一級の道。静かであり、状態が良く、好きな登山道の一つである。

 
 次三角点の場所に到着。すると無残にも倒れていた。どうしたのかと思ったら、標石の下の根の部分が浅いのだった。この状態でずっと立っていたのか。そっちの方が不思議くらいであった。でもこれは立っていたほうがいい物だろう。ブナの中の道は、気持ちがいいとしか言いようがない。周囲の獣がゴソゴソと動く。驚かさないよう忍び足なのだが、さすがに野生の先住民、気づきが早く先に反応している。温泉山に上がると、進む先の湯谷頭がデンと構えている。振り返ると乳頭山と言い換えられそうな冬瓜山(かもうりやま)が朝日に焼けだしていた。右のほうにリッジがある稜線を目で追ってゆく。

 
 とちのき坂を経て白山側を見ると、ガスが覆い出してきていた。今日はこのまま曇るのか・・・と天気予報どおりな状況を納得していた。湯谷頭の南を通る巻き道を伝いながら、取り付き箇所を見定めながら進んで行く。どこから入るのがいいのか。尾根伝い、谷登り、あとは植生の問題が一番い大きい。そして巻き終わり、湯谷頭の南尾根と登山道が合流する場所に、行政の標柱が建っているのだが、その右肩に湯谷頭へのルート案内がいたずら書きされていた。そこには「30分〜60分」の経路とある。さらには展望場としての紹介があり、これは一般ハイカーもそそられるだろうと思えた。ただしここからピークまでの距離は900mほどある。藪であり、まず30分は無理だろう、60分で行けるのかという距離に思えた。当然机上の時点で経路にしてみようかと思っていた場所。少しこのいたずら書きに背中を押されたことになった。その前に、まずは滝ヶ岳を狙うべく先を急ぐ。

 
 シナノキ平避難小屋は、相変わらずひっそりと建っていた。内部の以前は、湿った感じがあったが、現在は銀マットを敷いたせいだろうか、暖かさが感じられる小屋になっていた。小休止を入れて東進して行く。嬉しい事にガスっていたのが晴れ地獄谷側がクッキリと見えてきた。このままの天気で推移するのか、またガスに覆われるのではないかと、急いでカメラのシャッターを押す。こちらから見る白山本峰側は、荒々しい姿。色合いから活火山を感じたりする。気持ち硫黄の匂いがしてくるのは視覚が嗅覚を刺激しているのだろう。滝ヶ岳の行政の道標を過ぎて、東側を注視しながら進んで行く。どこから取り付こうか。実は前回少し取り付き、30mほど斜面を上がっている。そこはやや南側の尾根の辺り、その北側に小谷があり、そこから取り付くことにした。

 
 さて滝ヶ岳を狙う。小谷は20mほどで谷形状がなくなり、右(南)側の薄い植生を狙って進んだ。掻き分け掻き分け、細いササだが強靭なササ。分ける腕がかなり疲れる。登り上げた場所は1760mの山塊の肩的場所。ややルート取りを南に寄ってしまい、小谷からもう少し北に上がるべきだった。ちょっとミスルート。でもしかし、この南側には展望のいい場所があった。3畳ほどの場所なのだが、それ以外は深い藪。ミスコースの恩恵に与かる。北進して行くが、北に進むにつれて足元の状態が良くなってゆく。地面に足が着かなかった南側があり、地に足が着くのが嬉しかった。手前鞍部を過ぎると細い尾根筋があり伝って行くと、藪の中に標石を発見した。

 
 滝ヶ岳到着。展望はなし。先ほどの場所で展望を楽しめたことが生きてくる。腕を持ち上げて笈ヶ岳側を撮影できるくらい。細い潅木にコマQさんのテープも見える。休憩するにもスペースがなく、やや西に分けると曲がったダケカンバがあり、これが腰掛けるのにちょうど良かった。バリバリ・ガサゴソと漕いできた音が消え、本来の自然の音が聞こえる。自然の中に居る事が実感できる場所であった。地図を見ながら下山路を探る。往路は大きく南を巻いてきてしまった。復路はすんなり降りたい・・・。西を見ると白いダケカンバが林立している。そこを狙って降りて行く。膝を入れながら下を向いたササが股の間を抜けて行く。下りはそのササに乗るように豪快に降りて行く。登りで苦労した分、楽しむように、滑るように。

 
 登山道に出てシナノキ平避難小屋の方へ戻って行く。ややアップダウンがある場所で、新たにサルの糞がいくつか追加されていた。群れが居るのか・・・。サルは頭数が多いので、山中でもっとも気を使う獣でもある。神経を研ぎ澄ませながら周囲の音に注意を払う。その時、登山道の右の方で大きく動いたものがあった。ドキッとしたが鹿であった。サルの群れの中に入ってしまったのかと思ったのだがセーフであった。そして前の方に赤い屋根が見えてきた。

 
 シナノキ平避難小屋を通過し、取り付きとなる行政標柱の前で登山靴を縛りなおす。2座目の湯谷頭を攻めるにあたり、再び気持ちをリセットする為。日々初心者の気持ち・・・。これがないと山に遊ばれてしまう・・・。そしてもう一度いたずら書きを読む。残雪期に伝ったのだろうが、このコースタイムはどう導き出したのだろうか・・・。歩いた結果からなのか予想なのか。書かれている場所が行政の標識であり、いたずら書きとは判っているが、なにか公式なものと読み取ってしまう。さて突っ込んでゆく。

 
 左斜め上に上がると、尾根の西側となり、そこに道形が北に続いていた。その昔は登山道があったようだ。道形の幅は2mほどあり、けっこう広い。山手側を見ると、作道した時の山側を削った跡も見られる。ただしこの道形の現在は潅木に覆われ、普通に歩けるような場所は一切ない。完全なる藪漕ぎの場所となっていた。尾根頂部を進んだり、東側の斜面を進んだり、道形があるような無いような・・・そんな状況であった。どの木も重い雪に耐えてきているために弾性が強く、分けた後に注意をしないと顔を叩きにくる枝も多い。藪漕ぎにはメガネが必須と言われるが、ここはそのものであった。

 
 途中、尾根を斜めに谷が横切る場所となる。谷形状がそのまま北北東に進むのだが、谷が二分して北にも登っている。しかしここまで尾根伝いに来ているのに、ここから谷登りになるのも変。そう思い尾根を選択して登って行く。この尾根は下の方は不明瞭であったが、少し高度を上げるとやや明瞭な道形が残っていた。作道跡でなく獣の跡なのかもしれないが・・・。そして物凄く深く掘れた場所が出てくる。中に入ると背丈を越えた2m以上はあろうかという深さ。水の流れだけではこのようにはならず、道の跡なのかと思えた。そろそろ1540m付近となる頃、やけに大木が林立しだす。その根のところには空洞があり、獣の足跡も残っていた。時計を見ると、そろそろ60分が経過する。着かしてもらわないと・・・。

 
 藪を濃いで行くと、枯れた大木が途中で折れた状態で白く残っていた。その前に、なんと石川県が建てた山頂標識が残っていた。道があったことを裏付けるはっきりとした物。これを見て2つ驚いたことがある。一つに、昔はこの場所を山頂としていたこと。もしかしたら三角点ポイントより、こちらの方が高いのかもしれない。二つ目に、そこに書かれた「噴泉塔」と「蛇谷」の表示。私の知らない昔の道があったようだ。以前に我が師匠に霧晴峠を通っていた昔道の話を聞いたことがあるが、そこに繋がる道なのかと思えた。そしてここまでがドンピシャの60分だった。でも三角点の場所ではない。密藪はまだ続き、そう簡単には着かせて貰えない状況。時間表示があったことで、自分の中での新たな行動の計算もしてしまっていた。着かせて貰えない事に微妙に疲れが増すのだった。それでも漕ぐしかない。山頂部の一角に居る事には間違いなく、あとわずか。この先は尾根形状はなく、細かい起伏と掘れた跡、それが道形なのかもしれないが、入り乱れた中を方角を定めてコンパスを見ながら進んで行く。このあたりは分けると言うよりは、屈んで潜って行くと言った方がいいか。

 
 なかなか開けた場所が出てこないことに、ミスルートをしているのか、コンパスが狂っているのかと疑いだす始末。山頂部は展望場的場所で開けているとのレポートが上がっているからである。山頂らしき場所、三角点を埋めてあるような場所、明るい場所、これら要素を全うするような自然地形を追いながら行く。すると南側が開けた場所が見えた。ササを分けて抜け出ると、ちょこんと標石が見えた。やっと着いた。

 
 湯谷頭到着。山塊の北西端の場所で、もっと言うとその場所の南の端の方に三等点が埋められていた。三角測量をしやすい場所とも言えるが、もう少し山塊の中央側にあるのかと予想していたのだった。すぐに周囲の木をチェックする。しかしいたずら書きが見えてこない。そしてよくよく見ると、黒マジックの文字が薄れた状態で残っていた。MLQ氏のいたずら書きである。他に人工物、人間の作業と思われるものは皆無であった。確かに展望のいい場所。腰を降ろしても展望が楽しめる。青リンゴをほうばりながら見る白山は格別な味がする。笈側はナナカマドの密生で見えてこないが、南から西にかけては抜群に見通すことが出来る。さて地図から下山路を探る。山頂から1314高点を結ぶように尾根を伝うか・・・。ただし1314高点の場所には尾根に踏み跡は皆無だった。好事家も伝わない場所となるか。となると1470m付近まで伝って南に降りる尾根に乗るか・・・。これに決めた。

 
 注意しながら下山に入る。最初こそ地形図に倣うが、そのうちにやけに急峻になった。なんども地形図を見るも、この傾斜はそこには書かれていない。左には深い谷。これは地形図に見られる。その西はこれほど急峻とは読み取れない。腕時計の高度計を照らし合わせても解せない。やや西に振るが、主尾根の間に小谷が入っている。しょうがないので谷に突っ込む事にした。下山に谷歩きは、ちょっと嫌なのだが選択肢としてその方が安全とみた。急斜面をササや潅木に捕まりながらズリ下って行く。谷の中に入るとササが密生して、しばらくブルドーザーのようにバリバリと轟音をさせながら分けて進む。そして小谷の中央部に入ると、流れのない乾いた石の堆積した中に入った。ここは至極歩き易い。ただし下に進んで滝でもあれば危険な場所に変わる。

 恐る恐る進んで行くと、途中から細い流れが出だす。その先にナメ岩状の場所が現れた。ザイルを出そうか・・・。いや面倒なので左岸側を行こう。潅木を握りながらトラバース、次ぎに枝の長さが5mほどあるものを掴み、ザイル代わりにしてゆっくりと沢の中に降りて行く。滑ればカランコロンと10mほどはナメ岩の中を落ちてしまうような場所。枝を握る手にも力が入る。足場が緩く腕力頼み。危険箇所はここだけだった。下から見ると、登るには問題ないが下るには嫌らしい場所であった。水分に転ばぬよう注意しながら降りて行くと、細い登山道に乗った。ちょうど登山道が小谷を横切る所で、作道が狭くなっている場所で、伝って来た小谷の方が広いために違和感がある。とりあえずホッとする。と同時に喉の渇きが・・・。大きな声では言えないが、水を持っていない・・・。

 
 ブナの中の登山道を降りて行く。超一級の道と言えようか。ガサゴソと動くので注視するとマムシが居た。そしてこっちにもまた・・・。かなりの生息数のよう。温泉山に戻り降り返る。あそこからあのように降りて来て・・・と尾根筋をなぞるように湯谷頭を望むことが出来た。あとはガンガンと下るだけ。藪漕ぎの疲れか、ロングコースを歩いてきたくらいに足取りが重い。ゆっくりと降りて行く。下に行くに従い、工事の音が大きくなる。今日は土曜日か・・・と音により曜日を把握する。九十九折に途中には、ルート上にクマバチが出入りする穴があった。土の中に巣がある模様。ルートのど真ん中、それほどに利用者が少ないと言う事かも。草地まで降りると益々工事の音が大きくなった。よく見ると、鉄のバケットが空を走っていた。なにをしてるのか・・・。

 
 登山道に降り立ち、右岸側に移る。そして林道に乗ったら、貯水タンクからオーバーフローする水で喉を潤し顔を洗う。生き返ったような清々しさ。降りて行くと、九十九折のところに櫓が組まれオペレーターがそこに乗っていた。バケットを操っている人がここに居た。この場所より200mほど高い位置から山土を入れ、それを右岸側の護岸工事に使うべく運んでいるのだった。エンジン音が止まる事無くやたらと煩い。中宮温泉の静かな風情がちょっと・・・。コンクリート舗装路を行くと、薬師乃湯が対岸に見え、女性客が足湯から上がった所であった。いい風情、横目に見ながら降りて行く。3軒あるうちの何処に入ろうか・・・品定めしながら・・・。

 
 駐車場に到着。温泉宿のバス以外には私の車だけ。やはり静かな登山基地。それが故に好きなのだが・・・。なんとか中宮道の落穂拾い終了。残る白山山系の未踏座は難しい所ばかり。さてどうしよう。

 
 出向く前に我が師匠に連絡をすると、師匠はヨログロ山に入るとのことであった。12時近辺に登頂し、私のコールサインを呼んでくださったようだが、白山が邪魔をしていた様子。それにしても渋い山を目指す師匠。この頑張っている刺激が我が活力。一人で登っているものの、周囲の頑張りがあって自分も頑張ろうと思うことが多い。


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