猿嘯山        880m         三ッ岩岳        1032.2m                                                                                                                                         
   2020.10.10(土)


  雨    単独   北麓より      行動時間:1H41M


@林道750m地点7:44→(16M)→A主尾根に乗る8:00→(2M)→B猿嘯山8:02〜05→(39M)→C三ッ岩岳8:44〜45→(30M)→D主尾根よりの下降点9:15→(10M)→E林道に降り立つ9:25


   
今回の行動の元になった地図。砥沢の分岐点に掲示してある。 @北麓の取付き点。砥沢からの経路に危険個所多数。落石が尋常でないほど。 ガレに苔むした最初 ガレ谷に薄い杣道が見られる。
       
林班の境界か、杭が打たれたり、このように転んでいるモノもある。 A主尾根に乗ったところは、フジの巨木が蔓延る。 倒木にサルノコシカケ 直径350mmくらい
     
B猿嘯山登頂 B登ってきた東側 B南側は遮るものが少なく、晴れていれば展望のいい場所。 B山頂の北西は岩尾根。少し降りてみる。
       
15mほど行くと急降下。ザイル必須。 北尾根の様子。少し下に突峰が見える。 950m付近の小ピーク 三ッ岩岳の岩壁下
       
ここからは、南巻きは深く巻き、北巻きは岩壁直下の高い位置を巻く。直登は正面左にあるチムニーが適当。 チムニー状の場所。見える黒い木の上まであがったが、雨の影響大で、リスクを考慮し北巻きに転進。これで正解だった。 C三ッ岩岳。左の岩峰を登っても、最高岩峰に対しての前衛岩峰で、上での通過がし辛いのが登頂して見えた。 C三ッ岩岳から見る猿嘯山(中央の高み)。張り付いていた岩壁は右の岩峰の向こう側。見える通り岩ヤじゃなければ巻いた方が無難。
     
C南牧村の標識 C割られた三角点 三ッ岩岳北西鞍部からの、北東への下降点。 岩峰の巻き終わり
     
D下降点のフジ D下る斜面。 ガレ斜面は足が流れる。 E林道に戻る。一応ここも御荷鉾林道。砥沢の方からは、普通乗用車での進入は崩落幅が大きく不可。大仁田経由が安全。




 この案合図から位置を読み解く。ベースデータはこれしかなく、座標は読み解くしかない。絵図は上が南で描いてある。


 上の地図を地形図に投影するようにして、三ッ岩岳から
猿嘯山の同角度線を引き、林道のカーブ位置によりXとY位置を想定した。よく見ると案内図の三ッ岩岳位置も少し南に描かれている。このことも考慮に入れて予想する。

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 猿嘯山の存在を知ったのは、とあるサイトに載っていた一枚の写真から。そこに見える地図に、全く読めない漢字が混じり山名が書かれていた。誰かに聞くにもなんて読むんだろう。現地の人に聞くにしても読みが判らないと・・・と思い南牧村役場に問い合わせる。すると丁寧に答えが返ってきた。この後に判ったことだが、同じ字を使った猿嘯山ノ滝と言う場所もある。読み方をスッと書いては頭の体操にならないので、文末に書きます。


 読みが判ったら、次は場所の同定に入る。絵図に黒三角で示される場所がその場所だが、明細に位置されているのではなく、概略的に書かれているようだ。尾根伝いに南東に進むと三ッ岩岳がある。本来ならもう少し南に位置するように見えるが、少し北にオフセットされプロットされていた。そんな絵図であるが、他に情報がないのだからここから追ってゆくしかない。登っている人の情報もない。常用漢字でないような漢字を使っているので、検索できないからかもしれない。

 
 まず地形図を必要範囲で印刷し、等倍くらいにした絵図も用意した。分度器は工具箱の中なので、取りに行くのが面倒なのでそのまま600mmのスケールを使用し、絵図の三ッ岩岳と猿嘯山を結んだ。絵図の右側に地形図を印刷したものを添わせ、三ッ岩岳から同角度の線を引く。次に林道のカーブ位置を基準に示している位置を読み解く。何本か線を引くうちに、何となく山頂位置が絞られてきた。まあ名前が付くほどの山であるから、現地に行けば間違いなく判るだろとは思っていた。

 
 下準備は完了したが、林道(御荷鉾スーパー林道)から距離が近く、普通の日に狙うにはもったいない場所と考えていた。行くなら少し負荷のある日。冬季も考慮したが、林道が不通になってしまうと、登山より長い林道歩きに行くような感じになってしまう。となると狙うのは悪天日となり、ちょうど台風通過で雨予報の日となり決行をとした。

 
 朝飯前にサッと踏んで来ようと出かけた。砥沢の分岐を南に入ると橋があるが、その手前に例の絵図が掲げられており、退色しておらずしっかり「猿嘯山」とそこに読めた。それで安心したわけではないが、スーパー林道を示す道標があると踏んでいたので、見えるまでと思いまっすぐと進んで行った。その結果、砥山本谷を伝い不動滝まで行ってしまった。大雨のおかげで凄い水流になっていたのを見られたので無駄足ではなかった。地形図を確認し、日影地区から渋沢川に沿って進む。分岐にも経路にも御荷鉾林道を示す道標は無い。

 
 476高点の北東分岐で、進むべき道は東進であるが、ここに通行止めとバリケードが出ていた。そして渋沢川沿いの林道には「う回路」と書かれた表示がある。大津(1053m峰)を巻き込むようにして迂回するのかと地形図からは読めたが、あまりにも遠すぎて、今日の目的地に対し明後日の方角に進んでしまう。行けるところまでと橋を渡って東進に入る。これが・・・。

 
 落石が多く、それも鋭利な岩が多い。数も多ければ範囲も広い。避けつつ行くのだが、それでも頭大以上のものがあったりして、ガリッと底を擦る時もあった。大きく押し出しがある場所もあり、村の土木課もほとんど手を付けていない様子が見えた。それが為に「通行止め」であった。それでも何とか進んで行ったが、砥山本谷を跨いだ先で大崩落していた、林道幅の五分の三ほどが抜け落ちており、舗装路であるためにスパッと切れ落ちているように見える。雨の中に崩落地の下見をして諦めモードに入る。

 
 ここだけなのか、この先もなのか、経路の落石を思うとここだけではないような気もするが、このまま撤退も寂しい。水分量の多い地盤はより崩れやすくなっているが運を天に任せることにした。山側の縁石部に片輪を乗せるようにして、なるべく谷側に重さがかからないようにして、四駆にしてグリップを利かせてそろりと危険地帯に入り、中盤からは一気に抜けた。何とか突破したが、帰りはまた同じことが待っている事実。

 
 猿嘯山の西は等高線が密で不可。尾根末端の北側はゲジゲジマークが取り囲み、それが切れるのが尾根の東側の最初の谷であった。ここを取り付き予定点としていた。崩落地から先は、落石や倒木があるものの、大きく危険個所は無く現地に到着した。谷の手前には黄色い注意看板が立っていた。南を見上げると尾根筋が見えるが、猿嘯山のピークは見えなかった。南に谷を登り、主尾根に乗ったら西進してゆけば、どこかにピークがあるはず。

 
 7:43 ザックに20mザイルを入れて出発。谷からの土砂の堆積なのだろう。小山を乗り越えた先に側溝が見られた。元々はこの谷の場所はかなり広い余地があったようだった。苔むしたガレ地形を登って行く。杣道だろ痕が見られるが、づっと伝って登れるほど残っていない。時折赤い境界標柱が地面に打たれていた。谷は林班の境となっているようであった。

 
 ガレて歩き辛いので右側の尾根に乗ってしまいたくなるが、我慢してガレた中を進む。上に行くと、地形図通りに針葉樹が出てくる。管理されているようには見えず、忘れ去られたような植林地のようであった。針葉樹の中には、かなり緩やかに東西に続く長い道形が見られる。林業作業用の道か獣道となるが、判断は出来なかった。

 
 主尾根に乗り上げた場所には、基部幹径350mmほどの太いフジの木があり、そこから奇形な幹を長くのばしていた。西側に高みが見える。向かってゆく尾根筋から南側は遮る樹木が少なく、天気さえよければ展望のいい場所だろう。この日はガスっていてダメだった。山頂手前には、大きな倒木があり、折れずに立っている側には大きなサルノコシカケが2つ見える。この尾根上にも赤い杭が見られた。

 
 猿嘯山登頂。その先は岩尾根で、少し伝った形跡があり15mほど降りて行ってみる。ガスで全容は見えないが、勾配の強い岩尾根で、安全通過にはザイルを垂らしたい。上から見下ろすと、ガスの中から下側の高みの上部分のみ見える。800m付近の肩ピークだろうか。この場所で猿嘯山で間違いないだろう。進んだ最北端でスマホで確認すると870mに居たので、猿嘯山の標高は880mとなろう。人工物は一切なかった。

 
 20分ほどで目的を達成してしまった。準備はしたが経路に危険個所は無かった。雨は降りしきり戻る選択もあったが、少し登れば三ッ岩岳があり、こちらからアプローチしてみようと考えた。乗り上げたフジの場所を経て細尾根を進んで行く。小ピークが途中にあり、越えながら行くのだが、同じルートを戻るなら、何か所かマーキングをした方がいい。枝尾根があり、緩く弧を描いている尾根で帰りに少し戸惑う尾根だった。

 
 三ッ岩岳の岩峰群の西側は屏風のような岩壁が立ちはだかる。高低差20mくらいだろうか。南側はゲジゲジマークから読める通りの切り立った壁で、北側も似たような壁だった。越えるなら西側のここを登るしかない。その中でもチムニー状になった場所が適当で、少し上がってみる。濡れていて条件は悪い。古木は腐っていたり枯れていたり、掴めそうで掴めないものがあった。そして岩の上に乗っている土は緩い。登りながら、ここを越えたら山頂であるなら行く値はあるが、山頂ではなく、さらに続いたら・・・戻らねばならない場合もある。一度懸垂下降をして、偵察に北側の壁の下を進んでみることにした。獣なのか好事家なのか、踏み跡が薄く見られる。そして途中で岩と岩との鞍部に上がっているような幅があり上に行く。

 
 出た場所は、その通り岩と岩の鞍部で、先ほど登ろうとしていた岩峰の東側にはろうそく岩のような形状の岩があった。壁を登り通過せず正解だったようだ。鞍部に道はなく、最高所はさらに東側にあると判る。今度は南側を巻くようにして、最後を岩混じりの斜面を東に突き上げてゆく。

 
 三ッ岩岳登頂。白い標識の裏に這い上がった。北側に踏み跡が降りておりリボンも見られた。鞍部からそのまま南に上がればよかったようだ。少しお浚いすると、三ッ岩岳には、今は南よりのルートしかないが、昔は北からのルートが在ったのかもしれない。それをこの日は少し辿ったように思えた。幸いこの時にはガスは晴れ、先ほどいた猿嘯山が良く見えた。予定以上のアルバイトをしたのでこれで下山。

 
 鞍部へと北に降りて行くと、岩峰の南側にメタリカルなリボンが続いていた。好事家が伝った後のよう。往路の尾根上には見られなかったので、もしかしたら西側の谷を伝っているのかもしれない。それでも、往路は北側を巻いて上がってきたので、帰路は南を踏査したいと思えた。鞍部から壁の下を進んで行くと、リボンは3つほど確認できたが、その先が見えなかった。そして岩壁があり、大きく下巻きをせねばならなくなった。これなら北側の方が楽と判断でき、鞍部に登り返し北側を再び伝う。戻る途中に岩峰の尾根筋まで上がってみたが、やはりソロでは伝わなくて良かったと思えた。

 
 岩峰群の西端に戻る。振り返り見ると、北にも南にも細い道形が進んでいた。もう不安箇所は無かったが、950mで北に進みそうになり、930mでも北尾根に誘われた。930mからの枝尾根は、その選択の方が良かったのかもしれない。フジの場所まで戻り、植林地内を下って行く。大きなキノコが点在しているのが上から見ると判った。分別が出来れば手を出すのだが・・・。ガレた斜面をズリズリと流れながら下って行く。

 
 林道に戻る。濡れながら着替え、帰路は林道を東に進んでみることにした。何かあれば戻ればいいし、何もなく大仁田まで出られれば東側から林道をアプローチした方がいいことが判る。一か八かであったが、最初こそ落石が見られたが、三ッ岩岳の北麓以東はかなり状態が良く走ることができた。そして大仁田ダムの分岐に出て、大仁田川沿いを降りて行く。砥沢経由の方が近いと思って選んだが、今現在は大日向から大仁田地区を経てアプローチする方がいい。

 猿嘯山は「えんしょうやま」と読むそうだ。


 

 

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