野栗諏訪山        1330m                                                                                                                                                  

 
 
2020.5.23(土)


  曇り(ガス)     単独     赤岩橋から北東尾根を往復      行動時間:3H10M


@赤岩橋4:55→(44M)→A1060m肩5:39→(74M)→B野栗諏訪山6:53〜6:59→(32M)→C東尾根から北東尾根に戻る7:31→(34M)→D赤岩橋8:05


   
@赤岩橋分岐。大ナゲシ・赤岩岳への道標あり。 林道740mからの、水線の読める枝沢を見る。 740m枝沢の北側から西に登りだす。 植林斜面。急登の連続。あまり道形(作業道)が無い。
       
850m付近にマーキングが見られた。 950m付近。馬酔木が現れだすと、少し踏み跡らしき筋が見える。獣道も含め。 1030m付近は北側に巻いて進む。 1030m付近の主尾根はこの勾配。振り返る。
     
A北側から巻き上げ1060mの肩に乗る。 1060mからの南西尾根。 本日の核心部。1130m付近で岩壁が現れる。偵察に15mほど這い上がったが、人間なら行けるが犬は無理だった。東の尾根にズレる。 東側の尾根もこのような岩混じりだが、北東尾根よりは危険度が少ない。
       
1210m付近に薬莢が落ちていた。これを見る前に真新しい熊の糞が見られた。 1260m付近。最後はたおやか。 野栗諏訪山の東峰。 B野栗諏訪山到着。社は東を向いている。
       
B野栗諏訪山で犬が撮影されたのは、これが初めてだろう。破れたシャツが経路の嶮しさを物語っている。 Bヤキソバパンと食いしん坊 Bガスに覆われていたが、ヤシオツツジが彩っていた。 下山途中、1240m付近に大きなサルノコシカケが見られた。
     
直径350mm程ある。 核心部を東尾根から北東尾根に戻る途中。少し高度を下げ過ぎ、伝うのは写真中央あたりを左から右へと進む。 1120m付近では、北東尾根に戻る最後に岩溝があり、ザイル無しで(犬)は通過は困難。1130m(付近)の高度を保って横ズレ必須。 C北東尾根の壁(岩尾根)下に戻る。
       
尾根の南側はタグのつけられた檜が並ぶ。 食害の痕も痛々しい。 貯水枡(配水槽)の前で林道に降り立つ。 D赤岩橋に戻る
       
胡桃平の集落。傾斜地の土地利用は見応えがある。       




 野栗諏訪山へのアプローチと言えば、西上州の雄である打田さんの紹介により大ナゲシ北稜がメインルートとなっている。猛者諸氏の奮闘する姿がWEB上に見える。1073高点南の20mの懸垂は、単身なら何も問題ないが犬連れには不可。となると野栗諏訪山には犬は登頂できないのかと思える。野栗諏訪山から小ナゲシ側も気の抜けない場所が多く、北からも南からも北稜を伝ったのでは犬連れでは攻略できないと判断できた。さらに言うと、犬が登頂したことのないピークなのではとさえ思えた。

 

 野栗諏訪山の西側は要塞のような地形。南鞍部まで西の所ノ沢経由でアプローチすることも出来なくはないが、計画するに際し光が見えるルートが北稜を挟んで反対側の北東に存在する。北東の赤岩橋に駐車し「くりみ橋」まで戻って取り付くのが打田さん紹介のスタンダードコース。ここを赤岩橋からそのまま南西に登ってはどうだろうかと考えた。推奨コースに対し谷を一つ挟んで東側の尾根を登る格好になる。1150mからは等高線の密な場所があり、険しい地形と読めるが、複雑地形が幸いし上手く抜けられそうな感触でいた。肌感覚と言うか経験感と言うか・・・。

 

 3時半に家を出て、野栗沢の現地には4時50分に到着した。林道は19号の影響を受けているようであるが、最小限の出費で修繕の様子が見られた。胡桃平地区からは細くなった林道を落石を避けながら登らねばならなかった。赤岩橋の分岐には、大ナゲシと赤岩岳への白い道標が掲げられていた。迷犬を降ろす前に、水気の多い地面を歩きながら蠢く軟体動物を探す。すぐ東の小鹿野町や神流町では蛭の発生が伝えられている。地続きで隣接するこちらにも居るのじゃないかと気にしていた。上野村での被害例は無いが、より東だと可能性はある。つぶさに見たが居ないようなので準備開始。居たら本当に帰ろうと思っていた。

 

 4:55大ナゲシ側へと林道を進み、地形図に読める水線の入る谷の左岸尾根を登りだす。ここには胡桃平地区のだろう配水施設の中継槽が見られる。少し手前に林道幅のような地形が山手側に入っているが、10mもしないところで終わっていた。植林斜面を登って行くのだが、勾配が急すぎて流れてしまうのか、獣道や作業道があまり見られない場所だった。すぐ前を行く迷犬の四足を注視しつつ登るが、蛭の付着は無いようだった。外気温は10℃で、この気温も幸いしていたのかもしれない。

 

 850mまで這い上がると、古いマーキングが下がっていた。上側からは幹径で見られないので、登山とは違う目的での設置だったのかもしれない。それでもここを登っている人の気配が初めて感じられたものだった。940m付近からアセビが現れ、低木の常緑樹の植生の中では伝うところが限られるようで、獣道が細く確認できた。

 

 北東尾根は1020m付近からかなり急峻になる。植林地形が北に見えるので、少なからず道も在っただろうと北尾根側に巻き上げてゆく。振り返り北東尾根を見返すと、登れなくはないが下りだったらザイルを垂らしたいような斜度に見えた。北尾根側から1060mの肩に這い上がる。露岩が多く、植林されていなかったら天狗の何とかと名をつけたいような雰囲気の場所だった。ここからの南西側はヒノキの植林帯のたおやかな尾根が続く。こんな感じで山頂まで続いてくれればと思ったが、そう甘くは無かった。

 

 1130m付近で、進む先に岩壁が現れた。ザイルを持っての単身なら進むが犬には酷な地形で、それでもと15mほど攀じってみるが、その上はもっと難易度が上がっており四本足の動物には無理だった。基部まで戻り、西側の方が等高線が緩むのが読めるので、北側山腹をズレて進むが、滑落を考慮しリードを繋いで迷犬を導くが、ここも四本足の動物では伝えない地形となってしまった。もっと下側を巻けばと思ったが、下側はさらに斜度があるように見えた。諦めねばならないか・・・もう一度地形図を睨む。

 

 北東尾根の直登がダメで北巻もダメなら、もう残すは南の水線の谷に落ち込む東尾根しかなくなった。まだ可能性が残されているだけありがたかったが、南に見えるゲジゲジマーク地帯に近づいてゆくようで、あまり気持ちのいいものではなかった。でもここで諦めたら登頂は無い。南にズレるにしても岩場を1.5mほど這い上がる場所があり、そこを迷犬はガリガリと爪の音をさせながら這い上がっていた。東尾根は目視距離にあり、獣もズレて上がっているのか、かなり薄い踏み跡も見られた。地形図からは落ちても痛くないような傾斜で描かれているが、現地を見下ろすと滑れば止まらないように見えていた。

 

 東尾根にも露岩と言うか岩場があるが、それでも土の載った場所もあり、尾根筋の北側の谷部を上がって行く。勾配が強く、帰りはザイルを使いたい場所ではあったが、迷犬の下山のために、何度も見下ろしながら帰り用の踏み跡を作ってゆく。東尾根も1180m付近で四つ足動物では登れない岩壁となった。今度は北東尾根にズレるように北に斜上してゆく。カール状の地形を1130m付近と1180m付近で横ズレするのだが、上側にも薄い獣道が存在した。その上に真新しいクマの糞があり、慌てて周囲を見回した。迷犬が鈴を着けているので、かなり前から相手は気づいていただろうと思うが、まだ温かさが残るような糞が落ちていた。

 

 1190m付近で北東尾根に戻ると、そこに薬莢が落ちていた。クマの糞と薬莢、居る場所で的確に猟師が狙っているのが見える。谷を追われた熊は、南に要塞のような壁があるので北に逃げるしかなく、上がった場所がここになるのだろう。専門用語でマツバと言うらしい。この1190mから1200mまではやや這い上がる感じで斜度が強い。ここを抜けてしまえばあとは歩き易い地形が続く。東尾根から北東尾根へは、かなりピンポイントなルート取りだったので、珍しく3つのマーキングを残しつつ上がってきていた。

 

 周囲は濃いガスの中となった。相変わらず下草は無く、その点は歩き易い。まず東峰に突き上げ、西に僅かに下ると鞍部であった。ここまでくれば少し踏み跡が見られると予想したが、伝う猛者は多くはないようで、ハッキリとした踏み跡は見られず、鞍部からの南の谷も同じであった。西に登ってゆくと目の前に人工物が見えてくる。

 

 野栗諏訪山登頂。朽ちた木の社が出迎えてくれる。てっきりこの社は北を向いて建っていると思ったが、登ってきた側の東を向いていた。朝日が昇る方角に設置したのかと思うが、野栗の胡桃平地区の人が設置し拝むようにするなら、北を向いていないとならないと思ったのだが、東向きは意外であった。人工物はこれのみで山名板なども見られなかった。南側は岩壁の上になるが、新緑が茂りガスにも巻かれていたので怖さは無かった。ここでも北に踏み跡が見られると思ったが、ハッキリと見えるものは無かった。薬莢が在ったことから猟師が入ることは判ったが、猟犬がこのピークまで上がったことがあるのかどうか。上がったからとて撮影はしないだろうから、ここで犬が撮影されるのは初めてだろうと思う。ヤシオツツジの奇麗な山頂だった。

 

 鞍部から登り返し東峰に立ち、往路の通りに戻ろうと思ったが、尾根が広くてどこを伝って来たか判らなくなっていた。もう少しこまめにマーキングするべきだった。途中、往路に見なかったサルノコシカケの化け物を見る。朽ちた木に6個ほど見られるが、それがみな直径300mmオーバーだった。往路にこの目立つものを見ていないのだから、大きく往路を外れていることになる。行けるかと南に振るが、全くの絶壁の上になった。やや早く、ゲジゲジマークの辺りの等高線を南にズレようとしていたのだった。北に戻り急峻地形を降りて行くと、少し緩斜面地に往路のマーキングが見えてきた。ここからは東尾根へはマーキングを追えばいい。しかし・・・。

 

 東尾根に着いてから、どう降りるか判らなくなった。よく見降ろしつつ登ってきたはずなのに・・・。ここもマーキングをした方が良かった。細尾根を靴のエッジを立てながら九十九を切って下り、高度計が1130m付近になったあたりで北にズレてゆく。向かう先に北東尾根があるので、もう僅かと少し高度を下げつつ進んでいた。北東尾根の南側には岩壁があり、その下の谷はクーロワール状になっていて、溝の底は岩床でその上に落ち葉が載って居る地形だった。ザイルがあれば下降可能であるが、この時は在っても犬が下れない。10mほどカール地形を登り、往路の踏み跡で北東尾根に戻った。これで核心部の通過は完了でホッとした。

 

 1060mの肩から先は、北尾根に入りそうになるが、1060m地点が印象的な場所で、気にして北東側に振ることができた。ヒノキの植林帯の中を降りて行く。道形が無いので歩き易いところを、尾根形状になった場所を伝うようにして降りて行くと、林道が見えだす辺りから少し踏み跡が出てくる。伝って進むと、往路に見た配水施設前の林道幅の道形が見られる場所に出た。北にわずかに進むと、ゲートの先に赤岩橋の白い欄干が見えてくる。下山。

 

 振り返る。ザイル無しで野栗諏訪山に登れるのが判った。ちょっと一癖あり、すんなりとはいかないが、核心部の1130m付近から1210m付近までを上手くこなせば登頂はある。ザイル無しで通過したが、もちろん東尾根もザイルでのアプザイレンの方が安全であり、出しての通過が望ましい。岩慣れしていたら、そのまま北東尾根を伝い往復でいいだろう。この場合はザイル必須となる。薬莢のあった場所は、1210m付近であり、猟師がザイルを使って登り降りしているとは思えないので、おそらく昔から、北東尾根と東尾根を絡めて登っていたのだろう。社が東を向いていることからも。

  


 
 
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