にゅう       2352.2m      稲子岳     2380m        
   
                                                                                                                                                
                                                                                                            
    2020.9.19(土)


  くもり     単独      しゃくなげ尾根から反時計回り     行動時間:5H31M


@みどり池入口バス停5:09→(92M)→A白樺尾根出合6:41→(33M)→Bにゅう7:14〜20→(47M)→C稲子岳8:07〜09→(8M)→D稲子岳コマクサ植生地8:17〜24→(29M)→E2231高点8:53→(22M)→F登山道に乗る9:15→(31M)→Gしらびそ小屋9:46〜49→(51M)→Hバス停10:40


   
@みどり池入口バス停(駐車場) @しゃくなげ尾根を示しているが・・・。 @復旧したようではあるが、通行禁止と出たままになっている。 地形図からは左右どちらでも進んでいいようだが、現地は右を推奨。
       
しゃくなげの回廊 OSJ KOUMI100の道標が見られる。 崩落地はう回路で通過。
     
谷の倒木帯も綺麗に処理されている。 A白樺尾根出合 白駒池よりのルート出合 にゅう直下
       
Bにゅう登頂 B最高所の表示はこれのみ B三等点 B東
       
B南 B南西 B北西 B北
     
Bにゅうから白駒池 Bにゅうの展望場 B展望場にある標識 Bにゅうから東
       
にゅう西の鉄はしごの場所から稲子岳へのルートが分岐する。 下降点からはリボンが続く。 下降点からの斜面を振り返る。 尾根道は踏み跡は濃い場所もあれば薄い場所もある。
       
倒木も多かったり、アップダウンも多い。 C稲子岳到着。 C標識は3つ見られる。 C稲子岳最高所。東側が望める。
       
樹林帯から出る。 D稲子岳のコマクサ植生地 Dコロッケパンと D電気柵が張られている。
       
尾根上に通路幅がロープで造られている。 南西尾根上の道形。 ロープ場は犬の通過は難儀した。ここがあるので、稲子岳は大型犬の縦走は困難と言えるだろう。ここの西側でルートミス。 薄い踏み跡に乗り、ここに降り立つ。稲子岳の西側の谷の中には、鹿に対する防護柵が設置されていた。
     
E2231高点付近には計測装置が設置されていた。一方は倒壊。 稲子岳からの踏み跡に戻る。  F中山峠に至る登山道に乗る。 こちらも登山道から稲子岳側にリボンが導いていた。分岐点にはシラビソの根元に小さなケルンあり。
       
軌道が残る Gしらびそ小屋 G雰囲気のいい小屋前の様子。 Gみどり池と、後は天狗岳側の山塊。
       
しらびそ小屋のスタッフ駐車場。ここまでは、荷物はヘリ輸送。ここから小屋まではクローラで運ぶ。 林道に出る。  橋を渡りゲートに戻る。 Hみどり池入口バス停 




 秋の四連休、翌日より里帰りの一団がやってくるため、その準備もあり午前中には家に戻れる場所選びをした。

 そしてもう一つの選択条件。珍名座の「にゅう」なら、八ヶ岳でも犬連れで歩けるだろうと考えた。梯子場や岩場がルート上にある場所もあり、その意味で犬連れは歩けない場所がある。もう一方、観光地化され犬の入山を禁止しているエリアもある。双方を考慮し、行けるだろうと踏んだ。稲子湯からの経路に在るしらびそ小屋には以前に犬が飼われていた。このことからも、現地では好意的に受け入れられるだろうと判断する。

 

 2時15分家を出る。この日は、夜間は中部横断道は封鎖されていた。出来る以前は使わずとも十分早いと思っていたが、いざ使ってみると、信号のない道路は便利で多用している。あとは無料で利用できるので・・・。松原湖を経由し、現地道標に従って稲子湯へと向かってゆく。狭いルートが多く、ガスが垂れ込めた中ではフォグランプが重宝していた。経路の高原野菜畑では、ヘッドライトで収穫している作業者があちこちに見える。大変な作業ではあるが、収益は上がるとも聞く。稲子湯の駐車場は300円。さらに上に進み、無料の駐車スペースのある、みどり池入口バス停の駐車スペースに停める。連休初日で混んでいると思ったが、3台のみ停まっていた。経路2時間で到着、仮眠に入る。

 

 南側は日陰になるが、この季節は木の実がボトボトと落ち屋根を叩く音が続いていた。5:09行動開始。奥に停めている車も室内灯が灯り準備をしているようだった。下調べ時にしらびそ小屋のブログを見て、しゃくなげ尾根コースの通行止めが解除された事を知った。それがあり、登路はしゃくなげ尾根とした。ただし、入山口には行政設置として通行禁止の看板が出ている。しかし登山道を進んで行くと、トレイルランニングの道標が続く。歩きながらスマホで調べると、「OSJ KOUMI100」と言う大会のコースとなり、この新型コロナの騒ぎがある中、2020年もこのあと10月に大会が実施されるようだった。

 

 林道に出合うと、右に進むよう矢印がされている。地形図からは左に進んだ方が尾根に乗るには近いように見えるが、ここは矢印に従う。尾根筋を林道で巻き込んで進むと、取り付き点にもトレランの矢印がされていた。ここから10分ほど登ると、屏風のような自然の石組がある。離島に残る砲台跡のような印象の場所であった。ここからは名前の通りシャクナゲの植生となる。低木ではなく高木が多いのがここの特徴だろう。なので回廊となっており、その中を進んで行く。

 

 相変わらずトレランの道標が導き、当然のように崩落地も迂回するように矢印されていた。しらびそ小屋からは、この崩落地が望めるようで写真が掲載されており、進む先に見覚えのある崩落地形が広がっていた。右に巻いて進む。巻いた先で谷に入るが、ここも夥しい倒木で、チェーンソーの刃痕があちこちに見られ、奇麗に除去されていた。ここも19号台風の影響だったのだろう。修繕にかなりの労力を費やしたはずであり頭が下がる。

 

 しゃくなげ尾根コースなので尾根を伝うのかと思うが、伝うのは前半で、後半は鬱蒼としたしらびその中を縫うように斜面を伝って登る。そして標識のある場所に出合い、ここが白樺尾根との合流点であった。ニュウと導く道へと足を進めてゆく。先ほどまでの密生帯から、樹林ではあるが空間の多い場所となり心地いいルートとなる。大岩の二つある小ピークを見たら、すぐ先が白駒池からのコースとの出合となる。前回の登頂時は、この白駒池側からアプローチしている。ここからの根の張るルートは懐かしみながら登る事が出来た。

 

外気温は15℃と爽快であったが、ガスの垂れ込めた周囲で明るさは乏しかった。西側から回り込むように稜線に上がり、最後を北に進む。直下からガラ場となり迷犬が通過できるかと危惧したが、自力で登れない場所は1か所のみで、そこを抱き抱えて通過させるとにゅうの山頂に着いた。

 

にゅう到着。20年ぶりの登頂であった。当時もそうだったように、三角点脇の杭に小さく山名が記されていた。周囲展望は、上層はガスの中となり、少し空間があり下層もガスの中で、雲にサンドイッチされたような景色を眺めることになった。ここは最高所は岩の折り重なる場所で、展望場は北側に少し降りた場所に在る。平らな場所があると言った方がいいか。降りて行くとそこで迷犬は伏せの態勢となり休みだした。平らな場所は犬には必要だった。安いんでいると単独の男性が登頂した。挨拶の声を発すると、黙って会釈を返した。後から展望場に降りてきたが、一切会話をしない方であった。空気を読むのが難しい部分である。人嫌いに人には近づきすぎても嫌がられ、人好きな人には遠すぎても煙たがられる。

 

展望場が狭くなったので稲子岳に向かう。ゴツゴツとした進路に、少し介助するようにして迷犬を導く。そして鞍部から登り返す手前で、東側にマーキングが降りて行っている。踏み跡を追うと急降下で犬には降りられないので、そこは適当に足場を選び降りて行った。そして稲子岳側の尾根に乗ると、明瞭な筋が続く。この道形はづっとこの仕様ではなく、所々で薄くなっている。地図に載らないのだから薄くなるのも当たり前。そして緩やかな登りと地形図から想像するが、現地は微細なアップダウンがあり、岩穴がある場所や、倒木があり、跨いだり潜ったりもする。そして南に行くほどに少しルートファインディングをせねばならない場所も出てくる。広い尾根筋なので、好事家の踏み跡が一か所に集中しないのだろう。

 

稲子岳登頂。シラビソの林立する山頂で展望は無いが、標識の場所より北東に最高所があり、そこに進むと東側を望むことができる。最高所には青緑色のリボンが縛られていた。初めてであればここで休憩をするが、西に進むと開けた場所があることを知っているので西に進む。樹林帯から抜け出すと、喉の閊えがとれたように楽に歩けるようになった。道形の場所が崩落したのか、見えない部分もあるが、植生のある場所と無い場所の際を進むと、西側のコマクサの群落の場所に出る。ただし今の時期は何も見えなかった。葉くらいは残っていると思ったのだが、コマクサと判るものは皆無で、唯一場所を示しているのは、電気柵で囲われている事だった。20年前はロープだけだったが、今は電気を流して食害から保護しているのだった。休憩適地に来たが、やたら風が強い。西から吹いているので、少し陰になる窪みで休憩とした。ここは荒々しい硫黄岳の山肌が良く見える。ちなみにここは自然植生ではなく、人工的に植え付けたものと聞く。

 

予定の2座を追えて後はしらびそ小屋を経由して戻るだけ。一度伝っている場所でありもう楽な気持ちでいた。しかし・・・。コマクサの植生地からは、南北に流された緑のロープの間を降りて行く。少し高度を下げるとハッキリとした道形が続いている。そしてその先で岩場にロープを流してある場所となる。人間には容易い高低差ではあるが、犬には通過はほぼ無理だった。人間にもロープを垂らしているほどの場所であり、掴むことができない犬は通過が出来ない。北側も南側も偵察してみたが巻くことはできなかった。さて困ったのだが、ロープの東の大岩の窓を潜れば通過できそうに見えチャレンジする。ただしこちらも迷犬は嫌がり進もうとしない。困ったが、ここしかもう進路がなく、抱きかかえるようにしてリッジ状になった岩の上に乗せ、そこから下らせ窓を潜り、このステージをクリアーした。ちょっとした難関を突破したので、気が緩んでいたのか、現地が判りにくくなっていたのか、踏み跡を伝ったつもりがなかなか尾根形状に至らず、降りて行く先に広い地形が見えてきた。

 

降りた場所が最初判らなかった。方角は間違いなく稲子岳から西に降りており、降りて行けば中山峠に至る道に出合うはずと思っていた。降りた場所にはニホンジカに対する柵があり、その北側に何か標識が見える。その標識が道標であると思い、フェンスの西沿いを進んで行った。そこに行くと、道標と見えたものは雨量計のような測定装置であった。二つあるうちの片方の装置は倒壊していた。この時にすでに周囲の景色でどこに居るのか判断できた。稲子岳と主稜線との間の谷に降りてしまっている。ちなみにとスマホで地形図を開くと、2231高点の場所を示していた。余計なアルバイトとなってしまった。迷犬に対するガイド役であるが、客を連れてルートミスをしてしまった。まあ客は気づいていないのでいいが・・・。

 

ニホンジカの柵は北と南に入口があり、どちらの扉もロープで結わえてあり、これが開け難い。そしてフェンスの中の植生はアザミが多く、ズボンの上から棘が足をつついた。扉は南側が特に開けづらい。そこから適当に倒木の中を南に進むと、谷の底に踏み跡が続いていた。獣が作ったのか、柵の作業のために人為的に作られたものかは判らなかった。2270mの尾根に乗ると、歩きたかった道形が東西に延びていた。西に進んで行くとガレた倒木の斜面となり、ここも少し進路を選ばねばならなかった。前回は何となくの道形があったが、流れが通ったのだろう、やや判り辛くなっていた。

 

登山道に乗る。登山道からの稲子岳への取り付きは、注意看板の場所であった。そこには稲子岳にへの進入を控えるように書いてある。そしてその少し下から、にゅう側で見たのと同じリボンが稲子岳側へと続いていた。その分岐点には小さなケルンも作られている。少しアルバイトが入ったが、ここまで戻ればもう不安な場所は無い。軌道跡に乗り緩やかな道形を伝って行く。小海側は裏ルートとなるのか、あまり登山者とすれ違わなかった。都度迷犬を座らせすれ違いに配慮する。犬がいることを喜んでくれるハイカーが居ると、こちらも嬉しい限りであった。

 

みどり池を擁したしらびそ小屋に到着する。犬が居た小屋であり、スタッフは犬を好意的に見てくれると思ったが、大ぶりなためか黒い為か、見て見ぬふりをされていた。まあそれでいい。いちいちハイカーをかまっていたら仕事にならないだろうから。この頃になると、少し夏の日差しが戻り、この場所は明るくいい風景であった。キャンプ場を左に見て、そう言えば20年前通過時は一張りの緑のテントがあったっけと思いだした。クローラのキャタピラ跡が続く道を降りて行く。以前は四駆なら通れた道だろうが、今は荒れてしまいクローラでないと通過は無理。道を修繕するお金も捻出できないだろうから、今後もこのままだろう。そして途中でエンジン音が上がってきた。薪を積載したクローラで、運転者は小家主てあった。規則があるのか決め事としているのか、登山者とのすれ違いでは停車していた。

 

直線的な道形を降りて行く。見通しはいいが、長く続くと疲れる印象だった。小屋のスタッフ駐車場まで降りると、ヘリで荷揚げした荷物が置かれていた。本来なら、場所があるならしらびそ小屋にヘリ輸送したいだろう。ヘリにしたらここに降ろすも小屋に降ろすも同じことであろうから。ただしスペースがないがばかりに、クローラを使って、時間をかけて運ばねばならない。でもそれで現地が守られているのだろうと思う。クローラの使い古したキャタピラーが何本も置かれていた。結構距離があるので痛むのも早いだろう。土が流れ岩が出ている場所も多いので。

 

林道を降りて行くと、この辺りからぽつぽつと登山者が増え始めた。林道を縫うように登山道があり、楽を選ぶのなら林道歩きとなろう。女性のパーティーからは「一緒に歩いてきたのですか」と聞かれる。主稜線のコースを知っているから聞いてきたのだろう。大型犬には酷な場所が多いから。一緒に歩いてきたのは間違いないので、「はい」と答える。橋を渡りゲートが見えたら、そこがみどり池入口バス停となる。着替えていると、トレランの試走だろう稲子湯側から走り抜けてゆくランナーが何人も通過してゆく。

 

帰りは小海リエックスバレー側に進んでみる。広く走りやすく、往路よりはるかに楽であった。道標はなぜ集落地を経由してアプローチさせるのだろうか。

 



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