牙山        2111m                           
         
                                  
                                 
                                                                                                      
  2022.10.29(土)


  秋晴れ     単独    蛇堀川の右俣を詰めたが抜けられず、法印坊洞窟西の尾根で往復      行動時間:5H19M


@浅間山荘5:53→(42M)→A二の鳥居6:35→(10M)→B登山道を離れる6:45→(23M)→C蛇堀川右俣行動最奥1849m地点7:08→(29M)→D大岩屋1830m地点7:37→(12M)→E1770m付近で尾根に取り付く7:49→(78M)→F主稜線に乗る9:07 →(4M)→G牙山9:11〜22→(64M)→H蛇堀川左俣渡渉点帰り10:26 →(12M)→I二の鳥居帰り10:38 →(34M)→J浅間山荘11:12 
                                      


 
@天狗温泉浅間山荘スタート。相変わらず駐車料金は500円。 流れがあるルートは心地いい。木橋の右岸側がやや朽ちていた。犬は踏み抜いていた。 不動滝 A二の鳥居
       
Bここで登山道を離れる。薄い枝道が北東側に分かれている。 薄い道をわずかに進むとしめ縄がかかる。まだ真新しい。 蛇掘川の左俣を渡り右俣側へと進む。 右俣には流れは無かった。若干湿っている程度。1745m付近。
   
大岩。1760m付近。 1765m付近。ナメ床状。 1780m付近。シカの踏み跡を利用して上に抜けてゆく。シカは、カモシカになるだろう。 1780m付近の周囲は、岩穴があちこちに見える。
       
1795m付近。このマーキングは、登山道から蛇堀川へと続く薄い踏み跡の途中にも見られた。 1825m付近で行く手が大岩壁になり行動不能な感じに。 C1841m付近。抜けられそうな場所を探すが、濡れた岩場で、かなりリスキー。犬はそもそも越えられない。 左の絵の東の岩屋に、鍋類(アルミ製)がたくさん見られた。
       
1815m付近の大岩の上に、水神様が立っていた。表は「水神」と彫られ、裏は「柏木村」とあった。 西に戻りながら、また壁の東側を北に登ってみる。1800m付近。
D東西に長い、距離20mほどあろうかと言う岩屋があった。奥行きは5mほど。 D岩屋前から南側。遮るものが無く心地いい展望地。休憩適地。
     
こちらは法印坊の洞窟。 洞窟前の古い標識。以前は散策路が在ったことが判る。 E洞窟の西側、1770m付近から尾根に取り付く。 1780m付近。左右に振りながら登りやすい場所を探して標高を上げてゆく。
       
1820m付近。ここは西側(見える向こう側)へと巻いた。 1930m付近。シャクナゲの密生帯の途中のオアシス。 濃いシャクナゲ帯を抜けると、その先の植生の中には明瞭な道形が見られる。2050m付近。 2095m付近。主稜線直下。
       
F主稜線に乗って西へ進む。 山頂っぽいが手前峰。 G牙山到着。19年ぶり。 G大きな標識が付けられていた。
       
G裏にはこの通り、遊び心があっていい。 G北西側。トーミの頭。 G南 G東側。剣ヶ峰。
       
G牙山から浅間山。秋晴れ!! GGyipayama De Yakisobapan G北側の外輪山の連なり。 2003年は、牙山からの南斜面を下り、小谷の中を伝った。
       
牙山から東側に、リボンが続いていた。天狗の露地側からのようだった。コルを見下ろしている。ここは犬の通過は無理。2mほどの段差。 道形を伝って戻って行く。 シャクナゲを避けて、往路より東側を伝ってみた。2060m付近。シカ道が見られた。 途中で若い男女のクライマーに出会う。50mザイルとギアを装備し、牙山から天狗の露地に降りると言う。犬好きな方々で遊んでもらう。
       
1885m付近の尾根上の目立つ露岩。帰路はここから西に下る。急峻で細い踏み跡が西側にある。 H蛇堀川の渡渉点帰り。 登山道に戻る。 I二の鳥居帰り。
       
林道が蛇堀川を跨ぐ場所は、ショートカット道を使った方がいい。 秋色で心地いい。 I浅間山荘に戻る。みな出払い駐車場は静か。 I山荘の馬がのんびりしていた。
       
Iバンパーに一枚の落ち葉。いい感じ。    2003年時の牙山山頂。西から見ている。  2003年時に使った、尾根西側の谷地形。振り返り撮影。 




 川上村の山に登りつつも、頭の片隅にはいつも牙山の事があった。たぶん、おそらく大型犬でも踏めるんじゃないかと・・・。牙山に登ったのは2003年。この時は剣ヶ峰と抱き合わせにして、剣ヶ峰側から岩峰を都度南に巻いてアプローチした。そして下山はそのまま南西の小谷を降りた。雪があって雪を利用したってこともあるが、山の名前ほどに厳しい場所では無かったと言う印象だった。

 
 ネット上では、天狗の露地のある北側からと、牙山の南西尾根を使っている記録、そして剣ヶ峰側からの3通りが見られる。そこに別ルートをと思った。川上村の沢歩きで味を占めた感じであるが、牙山も沢を詰めてのアプローチを計画した。蛇堀川の右俣を詰めて行けるんじゃないかと地形図を見ていた。問題はゲジゲジマークのある1900m辺りまでだが、なんとなく抜けられそうに見ていた。利器である衛星画像とも併せて下見をし決行する。

 
 うまく成功すれば、好事家でも登頂数が少ない場所に、大型犬では初登頂になるのではないかと思えた。地形図に読めるゲジゲジマークの量からは、計画にはギャンブル性が高く、敗退もいつもより強く考えられた。ダメと言う事も判れば一利。秋晴れの日、牙山の南面で遊ぼうと言うコンセプトであった。

 
 4時ちょうどに家を出て、5時41分に浅間山荘に到着した。既に8割がたが埋まっており厩舎のある方へ停める。山荘の人がすぐに駐車料金を徴収に来て500円を払う。以前は徴集されることはなく、受付に払いに行っていたが、払わずに帰ってしまう人に対しての対策かもしれないと思えた。500円払って有人監視のある場所に停めさせてもらえるのだから、車上荒らしを思えば安いものである。すぐに準備に入る。次々にハイカーがやってきていた。マイクロバスでの団体も見られた。さすが秋。下山後には温泉に入るだろうから、百名山の登山口は立地条件は最高だろう。一方の登山口でなくなった、峰の茶屋(蕎麦屋)側の売り上げは落ちているはずである。

 
 5:52スタートする。鳥居をくぐっての林道歩きは、ちょうど紅葉が見ごろで彩りが綺麗だった。ここから歩くのは何度目だろう。橋の架かる手前からショートカット道が在ることを今回初めて知った。先行者を追い抜き、速く温まろうとやや速足で進んで行く。外気温は4℃であった。分岐は不動滝側へと足を向ける。沢沿いを行く予定であり、水量も含め早くに水の様子を掴んでおこうと思った。

 
 二の鳥居を過ぎ、やや急な九十九折を進むと、右手に「登山コース」と書かれた標識がある。そこから薄い踏み跡が蛇堀川へと分岐している。入口は枯れ枝で気持ち塞がれていた。踏み跡に入るとすぐに、道の上にしめ縄が張ってあった。不動滝にも二の鳥居にも真新しいものがあり、これも同じタイミングで設置されたことが判る。何か信心に関わるものがあるのかと、周囲を見たがなかった。緩やかに降りてゆく。鹿道のような細さで足場の悪い場所もある。途中には青いビニールのマーキングがされていた。

 
 蛇堀川に降り立ち左岸を見るも、続く道形が見いだせなかった。適当に小尾根を越しながら東進し右俣側へと進んで行く。植生はササで、全てが膝下なので歩き易い場所が続いた。左俣の左岸、右俣の右岸を伝い、1750m付近から右俣の中に入る。水線が書かれている谷であるが、流れはほぼ無く湿っている程度であった。

 
 進んで行くと1760m付近に大岩が現れる。周囲は岩が多いので特に驚かないのだが、驚くのはあちこちに岩穴が見える事だった。1770m付近からはナメ床に変わる。そんな沢の中にピンクのマーキングが沢底に見られた。稜線から落ち流れ着いたのか、こんな沢をマーキングしながら遡行したとは思えない。1780m付近からは、進む先が詰まってきた。抜けられるのか否か、相変わらずあちこちに岩穴が見える。巣穴であることも想定して、気を抜かぬよう五感をフル活用していた。進み易い場所を進んできたら、水線の延長というよりは、やや東北東を進んでいた。東進が容易でなく右岸側に伝い易い場所があったからだった。シカも歩いており、彼らによる道も存在した。シカと言っても、このエリアはニホンジカではなくカモシカとなろう。

 
 こんな手探り行動であったが、進んだ先の1795m付近には、蛇堀川右岸にあった青いマーキングがここにもあった。さらに高度を上げてゆくが、もう万事休すな状態で上側には大岩壁が見えていた。地形図通りで隙は無かった。ただしクライマーなら抜けられそうなチムニーがあり、マーキングはそれが為だろうと思えた。1830m付近には大きな岩屋があった。一応登れるところまでと、1850m付近まで登った。この先は人間なら進めるが、犬はここまでだった。チムニーの中に岩穴がある場所で、少し下った東側の岩屋には、たくさんのアルミ鍋類が見られた。デポされたものなのか、捨てられたものなのか、ここを頻繁に訪れていたグループが居たことを示していた。

 
 この場所から西に戻ると、同じようなチムニーがあるが、ここも犬の登行は無理だった。上手くゆく日もあれば、今日のようにいかない日もある。牙山の蛇堀川右俣遡行計画はダメだった。このあとは法印坊の洞窟でも見て帰ろうと思っていた。南に戻ってゆくと、なにか人工物に見える岩が立っていた。自然石のようでもあり半信半疑で近づくと、岩の北面には「柏木村」と書かれ、南面には「水神」と書かれていた。先ほどの青いマーキングもあり、この場所を示していたのかと思った。麓の水源がここだったわけである。火山館付近を見てしまうと、濁った有毒そうな水と言う印象の蛇堀川であるが、麓では生きるために大切な水だったのだろう。柏木村とは、御代田町になる前の村名なんだろうと思った。意外な石碑を見つけお土産を貰った気分でもあった。

 
 西側は岩壁が見える。諦めたものの、その岩壁の東が登れそうなので登ってみる。落石がありそうなのと、砂礫の地面で迷犬も嫌そうで避けた場所選びをしていた。流れる足場に苦慮しながら登って行く。ここを抜けられればと一縷の期待を抱いていたが、進んだ先はまた大岩壁であった。その手前に丘陵のような場所があり、居心地が良さそうに見えた。そこに乗り上げようとしたところでハッとした。岩壁の下に大きな岩屋があった。それはそれは大きい横長のモノで20mは無いにしても15mはありそうな距離で、進んで行くと奥行きは5mほどあった。こんな大きい岩屋を見るのは久しぶり。そして振り返るとここからの展望はすこぶるいい。ヒサシゴーロ尾根が目の前にあるが、手前に遮るものが無いので開放感のある場所であった。山行は半ば諦めていたが、こんないい場所があることを知ったのは嬉しかった。

 
 右に岩壁を置いてソロリソロリと降りてゆく。上からは水が滴ってきていた。間違いなく落石が多く、本来はヘルメットを被って行動する場所だろう。ササの草地を南西側に進んで行くと、途中の立木に三角の黄色く塗られた鉄板が見られた。昔の道標であることは一目瞭然で、その北側にぽっかりと大きな岩穴が口を空けていた。これが法印坊の洞窟であった。這い上がり洞窟探訪。早いけど今日はここまでかと戻りにかかる。すると、この岩穴から1分ほど西に進んだ場所に踏み跡とマーキングが見られた。なにか誘っているようであり、再びここで牙山へのスイッチが入った。

 
 1770m付近から尾根に取り付き、その先は伝い易い場所を選びながら高度を上げてゆく。踏み跡が見えるが、人間のものか獣のものか判断できなかった。尾根下側地形はやや広く、複数カ所に踏み跡があった。1820m付近では岩屋のようなハングした奇岩が出迎えてくれた。ここは東側を嫌い、西側に回って登って行く。しばらくは下草が無く伝い易いが、1900m付近からはシャクナゲガ現れだす。偉そうに胸を張って分けて進むと至極疲れ、腰を低くし現地に同化するようにして進むと楽であった。途中植生が途切れる場所が現れるが、ガレた場所で東は犬の通過が危ないので、西側のシャクナゲの密生帯の中を抜けた。足場の悪い倒木を乗り越えたら、しばしで密生帯は終わる。

 
 2020m付近まで進むと、今度は明瞭な道形が現れる。以前はここに牙山への登路が在ったのかと思わせるような広い道形であった。植生はあるがこの道形が在るので容易に進んで行ける。向かう先が明るくなり主稜線が近いことが判る。主稜線直下は下草が無毛となり見通しがいい。そして主稜線に乗る。懐かしい景色。周囲展望からもそう思えた。細尾根を、東側の崖に注意しながら伝って進む。手前に一つ偽ピークがあり、それを越えた先が本峰であった。

 
 牙山登頂。大きな私設標識が掲げられていた。19年ぶりに登頂。そして牙山を大型犬が踏んだ。秋晴れの日で展望は申し分ない。火山館側からはハイカーの声が上がってきていた。オオカミを祖先とする犬が、牙山の上に・・・と思うと自然と顔がほころんだ。よく登ってくれ、よく漕いでくれた。さて下りはどうしよう。もう一度あのシャクナゲに突っ込むか、剣ヶ峰側に逃げるか、もしくは天狗の露地側に下降できるか否か。この時は、行けそうなら別ルートで下ろうと思っていた。ヤキソバパンを迷犬と分かち合い朝食とする。標識は誰が設置したのだろうと裏返すと、山名を反映させた楽しいデザインがされていた。さて下山。

 
 2003年時は、下降は山頂からそのまま南西に谷地形を降りて行った。雪が有ったからでもあったが、ちょっと負荷に思ったのは麓側の最後のわずかな距離で、その他は概ね伝い易い谷に思えた。途中に大きなカモシカが居て至近距離で対峙した事も懐かしい。大型犬も連れ上げられると思った背景には、ここの経験があったからで、谷地形をカモシカが伝っているなら、最後の最後はこの地形を使えば行けると踏んでいたからであった。

 
 山頂から西に進み、天狗の露地への下降点を見ておこうと思った。主稜線にはマーキングが続き、おそらくこれが天狗の露地からのルートの場所を示しているようだった。2100mの高みの東側に行くと、2mほど垂直に降りねばならなかった。安全通過は懸垂で、犬の通過は無理と判断できた。南を深く巻けば進めるが、それならもう往路の尾根を降りてしまう方が楽に思えた。再び同じ尾根を辿ることにした。

 
 道形を伝い高度を下げ、シャクナゲの濃い場所を避け、尾根側に対し東斜面を下った。こちらは下草が無く、その中にシカ道だろう薄い道形が見られた。2060m付近からは西を意識して少しづつ寄せてゆく。そしてまたシャクナゲ薮の中に入った。するとここで、人間の声が聞こえてきた。先ほども火山館側の声が聞こえており、登山道も近いので下から上がってきていると当初思ったが、続く声は近くから聴こえてきていることが判った。向こうの人らも、迷犬の着けている鈴の音が聴こえていたようで、「こんにちは」と発すると、すぐに「こんにちは」と返してくれ、薮と格闘していたので「すぐにそちらに行きますね」と少し進路を修正して声の方へと進んで行く。その途中「犬は大丈夫ですか?」と聞くと「大好きです」と返答があり、迷犬を先に進ませる。

 
 居たのはギヤ装備で固めたクライマーで、既に迷犬を愛でてくれていた。こんな場所で行き会うとは・・・お互い思った事だった。御仁らは、山頂からそのまま懸垂で天狗の露地側に抜けると言う。装備があれば一番無難な進路だろう。ここを降りるのはリスキー。先ほど伝っているからいくつもの屈曲ポイントは判るが、初めてであったらかなり迷う尾根であった。3分ほど雑談をして別れる。かなり撫でてもらったので迷犬はご機嫌そうだった。ガレ場は再び西側の密生帯に入る。そして1885m付近の奇岩の場所まで進んだら、ここで西に90度進路を変え急下降。この西面には踏み外しそうな細い九十九折がある。ここを抜けきってしまえばもう危険個所は無いと言っていい。

 
 同じ場所に降り立とうと思っていたが、実際は往路より西を歩いていた。麓側の低い笹の中を進んで行く。どこでも歩ける地形であり、シカ道が付かないのはそのせいだろうと思えた。蛇堀川に戻り渡渉して道形に乗った。しかし伝っていたつもりでいながら上の方で見失ってしまった。登山道に出たのは標識の場所より10mほど南だった。あとはゆっくりと登山道を伝ってゆく。今日はシナノゴールドを持ち上げてきた。迷犬と水分補給しながら降りてゆく。

 
 二の鳥居からは西側ルートを進む。ちらりほらりとすれ違いがあり、林道に出ての橋の所は、帰路はショートカット道を使った。200mほど短縮したんじゃないだろうか、往復で400mになる。浅間山荘への最後は紅葉が美しく、登頂できたこともあり最高のフィナーレであった。鳥居を潜り駐車場へと入ると、繋がれた三頭の馬が迷犬に興味を持ったようで顔を向けてくれた。その後に大量のおしっこ。嫌われたのか・・・。到着。

 
 振り返る。バリエーションの山であるが、剣ヶ峰にもルートが在った過去を思うと、牙山も在ったと考えるのが無難だろう。それが上部に残る道形で、そこからは南西尾根に在ったと判断できる。犬連れでどこまで行けるかと、計画段階では半信半疑な行動であったが、無事結果を出した。場所が場所だけに狙うならザイルを持って入りたい。南西尾根だけ利用なら持たないでいいと思う。

 
 気になったので、「柏木村」を調べてみた。御代田町地内の旧村名ではなく、小諸市地内の旧村名であった。このことから、小諸地内でも蛇堀川の水が利用されていたことが判る。と言うより、地図を見れば一目瞭然、上流こそ御代田であるが、下流のほとんどが小諸地内を流れている。

 


  
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