箱根山     44.6m                
   

 2010.12.26(日)   


   晴れ     パーティー       都立戸山公園    行動時間:17M(園内)


@公園北側入り口5:11→(8M)→A箱根山17:19〜27→(1M)→・東側直下17:28


  
9202.jpg  9203.jpg  9205.jpg  9208.jpg 
@早稲田側から入山(入園) ライトアップされた池周辺。ちょうど紅葉が盛り。 途中の山頂を示す道標。 山頂へ向かう階段。
9209.jpg  9210.jpg  9211.jpg  9213.jpg 
直下からの階段。 A箱根山山頂の基石(三角点では非ず)。 A方位盤。都会らしく、ビル群が書かれている。 A山頂から北側。
9214.jpg  9215.jpg  9220.jpg   
A山頂から西側。 A外国人やカップルの姿もあった。写真は生粋の日本人。 A山頂から新宿の夜景



 都電荒川線の早稲田駅を降り、学生らが行き交う中をこの日のリーダーQUY氏がぐんぐんとメンバーを引っ張ってゆく。背中にはザックを背負っており、その為に一見山屋に見えるが、その右手にはノートパソコンが握られていた。それを見てしまうと、タウンユースのザックに思え、普通に町中を歩く人に思えるのだった。一方、メンバーの中のKQA氏は、上着は完全防備。厳冬期の北岳を体験している青いゼロポイントのジャケットを羽織っていた。「あの極寒の北岳で身を守ってくれたのだから、これしきの都内の寒さなど・・・」と得意満面。しかし氏は上半身は固めたものの、迂闊にも下半身にラクダの股引を履くのを忘れた。かなりそれを悔いていた。もう一人のメンバーであるHXF氏は、寒いのか寒くないのか、全く言葉に出さない。と言うのも、この日のために食事調整をして、少し太って来そうだ。ボクサーやモデル並みの体調管理、登山家にもいろんな人が居るもんだと感心する。

 大隈講堂を左に見て、QUY氏の足取りは益々速さを増してゆく。先ほどタウンユースなどと風体を見ていたが、上半身から押し出すような歩きは、まさしく山屋。まるで伝説の登山家の加藤文太郎さんか、上高地の主である上條 嘉門次さんのような胸を張った歩行の仕方。今日のリーダーとして相応しい。そして安心感がある。その背中を見ながら付いて行く。なかなか現われない箱根山に、他のメンバーからは「遠いよ〜」「いいよ俺、ここで帰っても」と、容赦ない言葉が浴びせられる。聞いているのか聞いていないのか、リーダーは臆する事なく歩みを止めない。まるで板挟み状態の私は、どちらにでも転べるようにコウモリ人間を決め込む。いや風見鶏野郎でもいい。それにしても寒い。怪しい人に思われてはいけないと我慢していたが、とうとうジャケットのフードを被り防寒とする。これで近くで殺傷事件など起きれば、“間違いなく職務質問されるのだろうなー”なんて思うのだった。早稲田の35館前では、どこを旅行してきたのか、学生らしい男女30名ほどが、バスから降りて周囲に散ってゆくところだった。”若いっていい”なんて思いながら、その集団の流れを縫うように西進してゆく。都会は自然界以上に注意が必要。いつどこから刺されるかもしれない恐怖がある。自然の中を歩くのに対し、何倍もの注意を周囲に注ぎ、我が身を守る。なにせ都会は疲れる・・・。

 「ここ渡りましょう」とQUY氏からコールされる。斥候にまずQUY氏がガードレールを跨いで箱根山通りを横断する。安全と判るや、後続が次々と氏のトレースを辿る。これでやっと登山口に到着。そこには「都立戸山公園箱根山地区」と書かれていた。既に周囲は完全に日が落ちている。しかし園内からは賑やかな声。それには園内には照明が灯り明るいからであった。池の畔では白黒の猫が水を飲んでいた。都会らしい風景・・・。そしてなにやら特異な竹馬に興じているグループもあった。ドクター中松のスーパーピョンピョン に匹敵するくらい面白そう。これも都会だ。相変わらずQUY氏は先頭をどんどん進む。何だろうこの自信。この箱根山を熟知している。この土地勘が不思議でならなかった。途中には山頂を示す道標も現われ、僅かに残っていたリーダーへの道案内の不信感は払拭された。そして目の前にバベルの塔(夜なので、そう見えた)のような山頂部が現われる。かなり急登であり、登れるのか。リーダーから「みんな、確保するからハーネス着けて」と言われたような・・・。

 喘ぎながら階段を登ってゆく。後続のKQA氏とHXF氏はかなり遅れだした。この事からも判るように、凄い険しい登り。振り向いて「おーい大丈夫か〜」と声をかけても声が返ってこない。かなり離れてしまった模様。心配で双眼鏡を出すが、ナイトスコープでないので見ることが出来ない。ここでガスに巻かれればパーティーがバラバラになってしまう。周囲に緊張感が漂う。完全に日が落ち、もう肉眼が頼り、目を凝らして麓側を見据える。そこへ両名の姿が朧気ながら見えてきた。「ほっ・・・」。無言で登ってくる両名は、かなり苦しいらしい。リーダーからは、「かなり空気が薄くなっているから気をつけるように」と指示が出される。確かに、薄い感じがした。たぶん、きっと、嘘だろ、だよな。

 山頂には三角点の様に見える基石が埋められ、その東側に標高を彫った石も埋められていた。山頂中央には同定版もあり、そこには周囲のビル群が書かれていた。これも都会らしい。少し木々が邪魔するものの、新宿の夜景なども見え、なかなかいい場所。その為か、カップルなども来ていた。我々がこんなに苦労して登った場所なのに、丈の短いスカートの女の子と、その彼女を抱く男性。飄々とした表情で不思議そうにこちらを見ていた。私は暗くなったので普通にヘッドライトを出したのだが、それが彼らには不思議でならなかったようだ。ナイトハイクなら当たり前なのに・・・。それから外国人の方も居り、寒空の夜景を子供と楽しんでいた。そして全てのメンバーが登頂し、記念撮影。みんな険しい登りに耐えて、満足そうな表情で写っていた。

 この山頂からの南ルートは封鎖されていた。見るからに楽しそうなルート。なぜにここを封鎖したのかと憤りを感じたが、鉄パイプで塞がれたその様子から、過去遭難者が出たのかもしれないと思えた。この南ルートを辿って登頂した人は何人居るのだろうか。かなり難しそうでトポでも仕入れないと攻略できそうになかった。その封印された南壁ルートを恨めしく見ながら、東ルートに降りてゆく。降りきると、そこには戸山の歴史を書かれた案内看板が建っていた。その先で3頭の獣が突如現われる。時に「ニャー」と鳴くのだが、照明によって作られるそれらの影は、恐ろしいほどに大きい。早足で通り抜けるが、大のニャー好き、いや猫好きのKQA氏は、立ち止まりその獣たちを呼び寄せている。「噛まれて松島トモコさんのようになったら危ないから行きましょう」なんて言っても聞く耳を持たない。遠巻きに静観しながら「飽きる」のを待つ。そして一行は、肩をすぼめながら再び早稲田方面に戻って行く。

 帰り際にKQA氏から聞かれる「DJFは秋葉原には興味はないのですか?」と。とんでもない、刺される確率の高いそんなゴミゴミした場所に行くなんて・・・。言葉を濁すように、「あまり興味がなくて・・・」と返すのだが、至極残念そうであった。上州へ帰るHXF氏と私。一方QUY氏とKQA氏はその足で秋葉原へ向かった。無事ならいいが・・・。危ない証拠に、警邏している警官の全てが、防弾チョッキを纏っている。この事実に言い訳は出来ないだろう。

 そんなこんなで無事登頂は出来たものの、都内の冬山は予想以上に過酷であった。とは言え、山頂からの夜景は、苦労した分に値するものであった。ビルなどのコンクリートの構造物に囲まれ、それでもここにまだ山が残っていることが嬉しい。高山も山、低山も山。山にはそれぞれの面白さがある。

 一部誇張した表現があるものの、ノンフィクションです。(脚色:DJF)

chizu1.jpg

chizu2.jpg  

                       戻る