権現岳 1104m トッケイ峰 1280m 鉾ヶ岳 1316.3m
2010.11.13(土)
曇り 同行者あり 柵口登山口から島道登山口へ抜ける 行動時間:7H52M
@権現岳登山口7:55→(79M)→A胎内洞9:14→(64M)→B権現岳10:18〜28→(58M)→Cトッケイ峰11:26〜33→(47M)→D鉾ヶ岳12:20〜13:16→(10M)→E大沢岳下13:26〜34→(13M)→F金冠13:47〜48→(116M)→G島道鉱泉登山口15:44→(3M)→H島道鉱泉駐車場15:47
登山口下の地図 | 三角屋根のロッジ脇に駐車。 | @登山口。駐車スペース狭し。 | 濡れた落ち葉で滑る登路。 |
ひとやすみ | 岩斜面の上に落ち葉が乗る。ロープに掴まって這い上がる。 | ロープ場の連続。 | A胎内洞に入って行く。 |
A洞内の出口側、ザックが引っ掛かり難儀。 | バン線が流してある岩場も。 | 天狗屋敷の祠。 | 急登箇所。腕力を使う場所の連続。 |
権現岳に向けて | ハサミ岩を下から見上げる。 | 白山権現。ここは展望の良い場所。麓側が箱庭のように見える。 | B権現岳。奥は鉾ヶ岳。 |
B権現岳からトッケイ峰側。 | 権現岳山頂の富山の精鋭パーティー。 | 権現岳から先は、西側から木々に押されるようなルート。 | バンザイ岩を見下ろす。 |
のぞかずの窓から谷側。 | 急登鎖場。 | Cトッケイ峰。やや狭い山頂部。 | Cトッケイ峰から鉾ヶ岳。 |
Cトッケイ峰から妙高側。 | トッケイ峰と鉾ヶ岳間は、至極快適。 | D鉾ヶ岳到着 | D一等点 |
D鉾が岳の標識標柱。 | 最終目的地で乾杯。「飛鳥U」でリッチに・・・。 | Dヤキソバパンと火打。 | D避難小屋内部。日差しを受けあったかい。 |
D鉾ヶ岳からトッケイ峰。 | D焼山・影火打側。 | D鋸岳と後立山。 | 途中から、歩いて来た稜線。 |
E大沢岳下分岐。 | E島道コースに入り最初の展望ピークで下界を望む。 | 金冠の上には、富山の猛者諸氏が到着。 | 痩せ尾根から金冠に取り付く。 |
F金冠(後は権現岳) | 金冠からは急下降がしばらく続く。 | コース最大の難所。濡れていて滑り易かった。 | 沢を巻き込むトラバース場所。ロープが流してある。 |
島道コースと溝尾コースとの分岐。 | 島道コースと島道鉱泉への分岐。ちょっとここで間違えやすい。双方に「島道」であるから。 | 周辺の紅葉 | 滝も見える。 |
鉱泉への最後の分岐。この標柱が無かったら真っ直ぐ進んでしまいそう。 | G島道鉱泉登山口に到着。 | G登山口の様子。 | H島道鉱泉の駐車場は、少し降りた場所にある。 |
冬季に山に入らない方は、そろそろ登り納めになるようだ。折角の山が美しくなる時期に、「勿体ない」と思ってしまうのだが、全ては趣味。楽しい範囲で遊ぶので良いだろう。と言う事で、某有名企業山岳会も今年の活動を終えると言う。でもって、「何処かに連れてって」と声が掛った。
さあこの時季、晴れれば最高。それも雪が降った後ならそのまま冬山のクッキリとした展望が拝める。ただしその反対だと、そのまま冬山の寒さを味わう事になる。従って、臨機応変に行動できるようかなりたくさんの場所を選びだし準備していた。決行日までは、当然のように逐一変わる天気予報を見ながら推移するのだった。当初、参加メンバーは私を含め4〜5名であった。しかし一人消え、二人消え、この時期の落ち葉のようにひらりひらりと減って行き、最後は二人となった。残ったのは会の精鋭であるエンジェルだった。先日、中崎尾根を歩ききったエンジェルであり、こうなると少しハードルを上げたくもなる。そして行き先を能生(糸魚川市)の鉾ヶ岳とした。これまでの足で登る山と対比させ、腕を使って登る部分も体験して欲しかった。
1:35家を出る。大町を経て地走りで行こうか迷ったが、能生インターがほとんど登山口と言ってもいいくらい。すぐに上信越道に飛び乗る。空には明日に上弦を控えた月が明るく輝いていた。と、佐久に入った途端、スーッと大きな流れ星。なんか嬉しくなるほど夜空が楽しい。更埴から妙高を抜けて、北陸道に入る。上越のジャンクションを経て能生インターは僅か先、集合場所に決めていたセブン(イレブン)には4:15に到着。“マズッタ”と思ったのは、この能生の駅前のコンビニ、駐車場が非常に狭い。4台しか置けないのであった。困ったが、既に待ち合わせ場所にしてしまっている。心臓に毛を生やしてから居座る事にした。集合時間は7時。それまでウトウトしつつ、本を読みながら時間を潰す。
7時、時間きっちりでエンジェル到着。まずは、下山口に車を置くべく2台で向かう。島道鉱泉へのアプローチ道は、けっこう急峻。エンジンが唸りを上げながら車が登って行く。そして温泉施設の下のカーブの所に駐車場があり、そこに突っ込む。温泉施設前だったら少し気兼ねするが、ここなら置いておいても心が痛むことは無い。私の車を置き、便乗させてもらい柵口温泉側に進む。登山口へは、道標がいくつも設置してあり、地図を見返すことは無く伝って行ける。山道をしばらく伝うと目の前に緑色の三角屋根が見え、その脇に周辺地図もある。そこから僅かに上がると登山口であった。ちょっと駐車スペースが十分でなく、悩む場所。自分だけならいいが、他の利用者が来た場合、どうしようか、どう置いておこうかと悩むようなスペースであった。先ほどの三角屋根前の地図を見ると、その三角屋根の脇に停めるよう車の絵が書いてある。しかしここには1台しか停められない。さらには、林道を左に折れた先にも駐車スペースがあるようだが、実際を見ていない。空いている三角屋根施設脇のスペースに突っ込む。すぐに準備となる。なんだかんだで、既に時計は8時に近い。縦走をコースタイム通りで歩くと6.5時間。これに休憩を入れると8時間強。下山は夕方になるか、と予想をつける。
7:56三角屋根前をスタート。今日は水を350mlしか持っていなかった。その先の飯場前の水槽にはカランが付いており、予備水として500mlを汲む。この水が飲用出きるか否かは不明。煮沸すれば飲めると踏んでの給水であった。そして登山口からズンズンと落ち葉を踏みながら登って行く。その落ち葉との間には靴のソールがあるのだが、地表の冷たさがそのまま伝わってくるようでもあった。前日の雨が、しっかりとそれらを濡らしているのであった。滑り易い登路に、騙し騙しグリップさせながら登って行くと、白瀧が遠望できる場所に「ここでひと休み」と書かれた標柱がある。しっかりそれに従う。しかしその白瀧は涸れており、僅かに肉眼で流れが見える程度であった。この休憩を終えると、この先から急坂をロープに伝いながら登る場所が連続する。苔生した岩の上には落ち葉が覆い。これで滑らないはずもなし。週中は誰も入っていないのか、落ち葉は退かされる事なく一面に堆積していた。雪山を登るかのように、蹴り込んだり、退かすような作業を入れながら登って行く。後続のエンジェルは、慣れない場所に足をとられている様子。しばらくは、足場を造るように落ち葉を分ける作業が続く。
これでもかとロープ場が現れ、エンジェルが両手を振るしぐさも見える。握力を頻繁に使う為に、疲れてきている様子。これほど腕を使いながら登る場所も初めてであろう、休憩を入れながらじわりじわりと上がって行く。降られないだけマシとも思いたかったが、なんかドンヨリした天気。こんな時は非常に肺が重い。そしてスタートから1時間経過しても、まだ胎内洞に着いていなかった。時計を気にしながら、何度も地図を見る。天候からくる気分的な部分もあるが“意外と長いなー”なんて思うのであった。そして岩混じりのロープ場が現れ、周辺の雰囲気が土より岩が多くなってくる。そろそろか・・・。
胎内洞。思っていたより狭い場所で、岩に書かれた赤い矢印に従う。2/3ほど進むと両サイドがかなり絞られ、天井側も低くなりザックも引っ掛かる場所となる。でもこのくらいが楽しい。楽に抜けられてはつまらないし、印象に残らない。最後の抜け出る所も、一枚岩で少し危険度がある。その石に刻まれた窪みにつま先を入れて抜けてゆく。ここを抜けると、しばらく岩の多い場所が続く。バン線を流している場所もあり、手を赤くしながらそれらに伝って行く。胎内洞から15分で天狗屋敷に到着。確かに天狗様が居る様な、高度感のある場所。一枚岩の上に置かれた祠があるのだが、岩は斜めになっており滑り落ちそうで怖い。それが注連縄の奥に鎮座していた。高度が上がってきているので、当然のように周囲展望がよくなっていた。終わり気味の紅葉であるが、何とか楽しむ事が出来ていた。まだまだロープ場は続く。さながらフィールドアスレチックな感じ。そして胎内洞と併せての有名ポイントのはさみ岩の場所に来る。確かに狭い。下って行く自重もあり、太い人は嵌ってしまって抜け出せないのではないかと思えてしまった。下に抜け出て見返すと、その太い人が伝ったのか、北側に巻いた踏み痕もあった。でもここは岩に挟まれ通過しないとつまらない。そしてすぐに白山権現の祠が有る場所に出る。ここは非常に展望がいい場所。麓の西飛山地区が箱庭のように見える。さあここまで来ると、権現岳も目と鼻の先。尾根上を僅かに進み山頂に立つ。
権現岳。アンテナ塔が邪魔だが、気象観測用となると、致し方ないと思えるのが自分でもいやらしい。ステンレスの同定盤には、周囲の山がマンガチックに絵書かれている。曇ってはいるが、なんとか周囲も見渡せる。まずまず・・・。そうこうしていると、5名のパーティーが登頂して来た。話し言葉は富山弁。でも、このエリアにはその富山弁が良く似合う。ふとその中の一人に見覚えが有った。何処で見たのかは判らぬが、そこから頭を廻らす。談笑しながら一緒に山座同定。「あれが雨飾りで、あれが焼山で・・・」賑やかで晴れやかな山頂になった。南西側には次に通過するトッケイ峰も見えている。このトッケイ峰、エアリアにはトッケ峰と表記してあるが、事典ではトッケイ峰とあるので、現地現称主義を基本とする後者を使わせてもらう。
権現岳から先は、西風に木々が押された恰好なのか、西からそれらの木々に押されて歩くような場所が続く。ただし展望尾根と言っていい場所で、何処を切り取っても絵になる風景があった。見下ろすと、雪の積もったように見える木もある。ブナか・・・。途中に「バンザイ岩」という景勝地もあり、その直下には「のぞかずの窓」と言う場所もある。人間の天邪鬼な部分を誘った地名。そう書かれると覗かずには居られない。ただしそんなに危険度は無く、高度感も竦むほどではなかった。ここで追いかけて来た富山パーティーに先を行って貰う。足が揃っているパーティーで、男所帯だから速いのだった。本当なら、落ち葉の登りで、露払いならぬ落ち葉払いをやって欲しいところだったが、スタートは我々の20分後くらいのようであった。急登の鎖場を経て10分ほど進むと、トッケイ峰到着。
トッケイ峰はやや狭い山頂で、10人も居れば満杯になるような広さであった。高度を増すごとに展望が良くなって欲しいが、相手は自然。なかなか上手くいかない。経路の尾根から見た周囲景色の方が上回っていた。さあここまで来れば、あと1座。向かう先にデンと構えている。そしてここからのルートはかなり快適。これまでがこれまでだったので、尚更そう思えるのだろう。緩やかに下って行き、泥濘の最低鞍部を経て登りに入る。歩きやすいのだが、背丈以上のササが左右に生い茂り、展望が無い尾根。そこまで望んでは酷だが、これで展望があれば至極快適尾根となる。「あとひといき 7分」の表示を見て、5分ほどで這い上がる。
鉾ヶ岳到着。一等点が鎮座し、その北側に青い避難小屋がある。小屋の中は日差しにより暖められた空気があり、ホンワカとしていた。エンジェルも日頃使わない筋肉を酷使し、今日は疲れたようだ。たぶん慣れないから、さながら全身運動となった事だろう。持ち上げたビールで祝杯をあげる。そして既に到着しているパーティーに声をかける。「池の平でMLQに行き逢っている真っ黒黒(黒が一つ余計)ネコさんでは」と言うと、前半は判らないが、後半は合っていると言う。やはり・・・我が記憶もまんざらでない。私の正体を明かすと、「よく見てますよ等高線・・・」とまた別の方(山沿いは一時晴れ)が・・・。いやはや、こっそりやっていたのに富山の精鋭諸氏に見られているとは、ちょっと恥ずかしい感じ。その後は笑いの絶えない会話が続く。曇ってはいるが、暖かく風も無い。この時期にしては最高のお膳立てとも言える。妙高側、後縦山側が一望出来、この部分でも大満足。エンジェルが持ち上げてくれた紅茶とクッキーで、ビールの口直し。そして十分休憩したところで下山となる。
山頂からは地形図に無い吹原道というのが西側に降りて行っていた。ちょっと間違えそうになるが、小屋を左に見て北側に降りて行く。最初の大沢岳のところで分岐となり、ここは金冠を通過したいが為に溝尾コースを選択。ただし島道コース側に展望ピークがあり、ちょっと寄り道。そこまでは僅かで、なかなか居心地のいい場所。300度ぐらいに開けており、パノラマピークとも言えようか。金冠に向かう富山パーティーが東側の尾根に見える。なんか絵になる・・・。分岐まで戻り、後を追う。その金冠手前はやや痩せ尾根で、ここも絵になる場所。岩が尾根を覆い、そんな中に動く石もあるので注意。急峻をロープを掴んで這い上がると、標柱の立つ金冠に到着。ここも展望ピーク。360度邪魔をするものは何も無い。山頂の北側には碑があり、もしや遭難碑か・・・手前がブッシュで近づけなかった。さあここからが今日一番の山場。急勾配で降りて行く。
ロープや鎖が入り混じり、足場は滑り易い。しっかりと掴みながらズルズルと降りる。エンジェルも続くが、先ほどアルコールが入ったので、こちらもかなり神経を使う。長いロープ場に腕力も疲れ気味だろう。時間をかけながらゆっくり、そしてゆっくり。そして最後の岩場。何処にもエスケープルートが無く、ロープに伝わって降りるしかない。足場は滑り、左右どちらに振っても滑り易い場所。エンジェルが怖さを跳ね除けて下ってくれるのを祈るばかり。ザックの中にはザイルがあり、確保しながら・・・とも思ったが、ここはエンジェルに賭ける。するとスルスルと・・・。余計な気遣いだったようであった。ここを過ぎると、もう危険箇所は皆無。
尾根からの下降点には標柱があり、それに従う。落ち葉があり滑り易いことを除けば、至極快適なルートとなっていた。下って行くと島道鉱泉と溝尾登山口へとの分岐。これは左の島道の方へ。すると次にまた分岐となり、島道鉱泉と島道コースを示している。ここは迷いやすい。表記が同じ「島道」であるから、ちょっと迷う場所。富山パーティーはここで間違えたようで、三重滝側に進む紅葉の中に姿が見え、声が響いていた。ここでのエンジェルは的確に進路を示す。よくよく地図を見てきているようだ。感心感心。分岐を右に進むと、ほぼ水平道となり、足の下には水路があった。この周辺は紅葉がすばらしく、目の保養をしながら歩いて行ける。水平道の途中に下降点標柱があり、島道鉱泉を示している。これが無ければ真っ直ぐ進んでしまう所。緩やかに、最後は弧を描くように下って行くと、「お疲れさまでした」と書かれた標柱が見え、その先に広見があった。
島道鉱泉到着。富山パーティーも同じくして下山し、ひっそりとした登山口が一気に賑やかになる。島道鉱泉はやっているのかいないのか。それでも誰か居るようで、2台の車が停まっていた。鄙びた温泉(鉱泉)であり、入りたいところだが、構えがひっそりし過ぎており、我ながらも躊躇してしまうほど。すぐに車の場所まで降り、真っ黒ネコさんを乗せて柵口側に向かう。
非常に面白いルートであった。面白さには、やや危険度があるからなのだが、車が2台用意でき縦走できたことも嬉しい部分。それでも、ここに大パーティーが居たとしたら、通過待ちでとんだ事になっていただろう。そもそも場所が場所だから、ホイソレとは入らないか・・・。なにせここの魅力は「鎖」と「ロープ」と「バン線」であろう。当然展望も伴うが、そこそこの標高にして十二分に楽しめる場所であった。そしてファイト一発のコマーシャル気分にもなれる場所かな。