前尾高山 2089m 尾高山 12212.4m 奥尾高山 2266m
岩本山 2269m
2010.06.12(土)
晴れ 単独 しらびそ峠からピストン 行動時間5H6M
@登山口4:59→(36M)→A前尾高山5:35→(41M)→B尾高山6:16→(32M)→C奥尾高山6:48→(43M)→D岩本山7:31〜52→(41M)→E奥尾高山帰り8:33〜35→(27M)→F尾高山帰り9:02→(39M)→G前尾高山帰り9:41→(24M)→H登山口10:05
@しらびそ峠登山口。杖が沢山用意されている。 | @立派な案内図が出来ていた。 | A前尾高山 | B尾高山 |
B尾高山三等点 | C奥尾高山 | C古い標識 | CKUMOもある |
大岩の脇を通り。 | 密なシラビソ帯を抜けてゆく。 | D岩本山 | D岩本山から奥茶臼山への進路。 |
D岩本山のKUMO | D岩本山の西側には平らな草地あり。 | E奥尾高山帰り。 | F尾高山帰り。 |
途中から前尾高山を望む。 | G前尾高山 | ビューポイントから見る赤石岳側。 | ヒュッテしらびそは外周の改修工事中。 |
H登山口到着 | H大沢岳へのルートは封鎖中。これで廃道になってしまうのか・・・。 | Hしらびそ峠から大沢岳側。 |
先週の山行以降、肺の調子がよくない。心臓付近から発するポコポコとエアーが漏れる音が消えないのであった。そして軽い咳が出る。危険レベル3。先だっての診察で、原因となっている場所を手術で塞ぐ事は出来ないと理解した。もう一つの癒着術は別として、もうこの先も気胸と付き合って行くしかないように思えた。当然、痛みと苦しさの度合いで行動は違ってくるのだが、今回もまた、低圧環境に体を持ち上げ、治癒させる事とする。なるべく空気の薄い高さを求め標高を稼ぎ、尚且つ肺に負担がかからない緩やかな場所。これらを基準に場所探しに入る。そしてものの10分ほどで見つかる。ここまでくると、もしや特技か・・・。金曜日の晩の場所探しをする集中力たるや・・・。
しらびそ峠から奥茶臼山までのルートは、確か2005年くらいに山頂までの開削が終わり、その後ハイキング道として綺麗に整備され公式発表になった。それまで300名山としての奥茶臼山は、登山者にとっては難所の1座であったが、この作道によってハイキングの山になってしまった。道の無い昔の方が楽しかったと言う人も居るだろうが、作道によってここを訪れる人が多くなれば、財政も潤う。町村合併により、ここも飯田市になったのだが、南アルプスという好立地を利用しない手は無いだろう。よって作道は、一部の藪山派以外には、プラスとして受け入れられることだろう。
しらびそ峠からの道は、以前は尾高山までのハイキング道であったが、その先が延ばされた形となった。このハイキング道上では、尾高山と奥茶臼山が地形図に記され、さらには、前尾高山が山名事典に載っている。要するに私のこれまでの登山スタイルに対し、3座が有効の山であった。こんな中、とある理由で岩本山(2269高点)と奥尾高山(2266高点)を目的地とした。地形図にも事典にも載らない場所に登るなど、かなりイレギュラーな事だが、高度もルートも肺の調子に申し分ない場所。決行となる。
1:15家を出て、すぐに上信越道に乗ってひた走る。高速1000円になってR152号を通って分杭峠を越えてゆく事が無くなった。通らなくなると寂しいもので、たまには通りたく思ったりする。ただでさえ利用者の少ないR152。私一人でどうもこうも無いだろうが、1000円のおかげでさらに交通量が減っているだろう。そんなことは無いか・・・。中央道を飯田で降りて、しばらく下道。ここからが長くうんざりする。矢筈トンネルを抜ける頃には夜がすっかりと開け、窓を開けると清々しい空気がなだれ込み、ぼんやりとした運転疲れの頭をリセットしてくれる。クネクネとしらびそ峠への坂道を登ってゆく。ゆっくりと登ってゆくと、特異な羽音で小鳥が舞っている。機関銃の連射のようにバタバタとした羽音、警戒心が強く姿が良く見えないのだが、周囲で沢山音が聞こえていた。
しらびそ峠に到着すると、そこには車が1台。汗をかいた車内はものけの殻。既にスタートしているようだ。南アルプスの主峰群を見ると、まだ白く残雪が見える。この辺りだと真っ黒な山容を思っていたが、融け切るまでにはもう少し時間を必要とするようであった。すぐに準備をする。夜露も無さそうであり、スパッツを着けずに行くことにした。しかしこれは後から・・・痛い目に、いや、痒い目に・・・。
2006年9月に一度尾高山まで登っているのだが、この時には無かった立派な飯田市の案内標識が登山口に掲げられていた。そこにはちゃんと、岩本山と奥尾高山の名前が入っている。4:59入山。この先は、ハイキング道でもあり、ルート紹介はあまり必要ないかと思う。しらびそを基調とした植生の中、シダ類が多く、苔生した場所も多い。目に優しい、プチ屋久島を意識させるような場所であった。緩やかな登りで、途中にはビューポイントがあり、赤石岳側を望むことが出来る。
2089高点で前尾高山なのだが、標識では2082mと表記されており、その下に「2089mです」といたずら書きされているのが微笑ましい。ここからは大きく下って、ポコポコとアップダウンをこなして行く。途中で先行者が休憩しており追い抜く。この方が登山口に停めてあった車の持ち主であろう。当初の尾高山までのハイキング道だった頃に付けられた道標が、いくつも点在し残り距離を示していた。2121高点も顕著なピークで、ここを越えると、その先が尾高山であった。
尾高山は三角点のある山頂部は視界が得られないので、少し東に進んだ場所が休憩適地となる。4年ぶりの登頂。斜面に腰を降ろしてパンを齧っていた記憶が甦る。さあこの先は未踏のルート。どのような作道なのかと興味津々で足を進める。少し倒木もあるが、さして危ない場所は無く、迷うような場所でも無い。それほどに、この先のルートはしっかりと切られ管理されていた。地形図通りのなだらか地形を、緩やかにアップダウンを繰り返す。鈴を着けずに歩いているので、小動物が私の姿を察知し、急いで逃げてゆく音がする。ほとんど無風で外気温は12度くらい。快適すぎるくらいの条件下、本当に気持ちよく歩けていた。そして肺への空気の流入量を少しづつ増やし、状態をみる。低圧療法はやはり上手くいき、状態はよくなる様子がみられる。これが確証できれば、私も医療界に参入しようか・・・(これは冗談)。ルート上には、こまめにピンクのリボンがされている。しらびその尾根を遠望してみると、それが奥の方まで続いている様子が見える。安心して伝えるルートなのであった。
奥尾高山到着。尾高山から先は、優しいルートで足早に進んできた感じ。山頂には新旧2つの標識と、さらにはKUMOも縛られていた。確かこの時のKUMO氏は奥茶臼山まで行ったはず。私も岩本山まで入るなら、その先僅かで奥茶臼山であり、行っても良かったが、なるべく最小限の肺への負担にしたい。やはり最終目的地は岩本山になるのであった。じっくり立ち止まるのは帰りとして、その最終目的地に急ぐ。
2266高点(奥尾高山)の先は、大岩なども現れ、少しだけアクセントとなっている。これまではしらびそ樹林だけで、ちと代わり映えしないルートと感じ、これらの印象物は、少し記憶に残る物となる。だんだんと栂村山から奥茶臼山を狙った時と同じような、密なしらびその植生になってくる。その中を相変わらずなしっかりとした道が付いている。ここまで足を進めてもなお、登山道と言うよりはハイキング道と言えるルート状態であった。緩やかなアップダウンで、ほとんど汗することは無い。口を結んでの鼻呼吸。全く負担が無い状態であった。
岩本山到着。ここにも標識の他にKUMOが縛られていた。ちょうど標識の前に横たわった大木があり、そこに腰を降ろす。トランシバーを握りながら、高森町の方と他愛も無い会話をしていると、なにやら足首から膝にかけて痒くなってきた。ズボンを捲り上げてみてみると、蚤の大きな物が数匹這っていた。“拙い、ここでは立ち止まってはいけなかったのか”そう思ったのだが、もう後の祭り。既に痒い。噛まれてしまったようであった。登山口からここまで2.5時間ほど、あと1時間進めば奥茶臼山に届くだろう。ここまで来て引き返すのも勿体無いが、奥茶臼に興味が無いのだからしょうがない。途中で追い越した方は、300名山フリークか、途中追ってくる鈴の音が聞こえたので間違いなくこちらに来るはず。しかし20分ほど滞在していたが、姿は見えず。ゆっくりと各ピークで休憩をとっているようだ。少し青空に雲がかかってきていた。周囲も少しガスが上り、曇り気味に・・・。明るかったしらびそ樹林が、途端に寂しい場所に映る。やはり太陽は大事。さあ下山。
下りだして5分ほどしたら、先ほどの御仁が登って来た。「もうお帰りですか」、「はい、岩本山までのピストンです」。御仁は私を見た時に、奥茶臼までを往復してきたと見ただろう。いくらなんでもそんな速くはなく、テレポーテーションも出来ない。岩本山と告げたことで、頭の中が繋がっただろう。挨拶をし背中側に熊よけの鈴の音が消えてゆく。この先どれだけの人が登ってくるのか、この天気なら数パーティー入ってくるだろう。そう思っていたが、相変わらずの静かなままであった。
奥尾高山では、周囲が完全にガスに覆われた。少し休憩をしようと思っていたが、自然と先に進みたくなるから、天気に人の心が左右されているのが判る。このハイキング道は、奥茶臼山直下にはだいぶ刃物が入っていたが、今日歩いている尾高山から岩本山の間では、あまり刃物痕は見られない。しらびその密生帯もあるものの、開きやすい尾根とも言えようか。
尾高山まで戻ると展望場に若者が居り、大きな一眼を抱えて立っていた。静かに後を通り過ぎ、登山口を目指す。前方に前尾高山が高く聳え、そこを前にして深く下って行く。左手側には、大沢岳への黒い尾根があり、その先は霞んだ空気の中にぼんやりとした稜線を見せていた。林道が近い事を示すように、通過する車や大型バイクの太いエキゾースト音が聞こえてくる。ここで深く深呼吸。肺の調子の確認である。結果はいい感じ。低圧治療完了である。
登山口に降り立ち、しらびそ峠の標識の方に進み、もう一度周囲展望を楽しむ。後からやってきた方に、見えている山の山座同定を聞かれるが、「あれは赤石ですか、あれは大沢だけですか・・・」。聞いてきてはいるが、みんな合っている。「知ってるんじゃん」となるのであった。車に戻り、もう一つ気になっている炭焼山の方へズレてゆく。