奥布山 1741m シヤウヅ山 1835m 黒沢山 2122.8m
奈良代山 1624m
2010.9.11(土)
快晴 単独 奈良代林道ゲートよりピストン 行動時間:7H38M
@奈良代林道チェーンゲート6:07→(37M)→A峠6:44→(30M)→B奥布山7:14〜19→(25M)→Cシヤウヅ山7:44〜53→(142M)→D黒沢山10:15〜38→(105M)→Eシヤウヅ山帰り12:23〜29→(19M)→F奥布山帰り12:48→(16M)→G峠13:04→(8M)→H奈良代山13:12〜19→(26M)→Iゲート前13:45
草木トンネルの方から水窪ダムに向かい、途中から大寄線へ左折して行く。 | 橋を渡ると「林道 大寄線」の表示あり。 | @奈良代林道の一般車終点地ゲート。登山ボックスあり。 | 林道途中のゲート。締まる事はまず無いのだろう。 |
A奈良代山北側の峠。現在は工事用の飯場に。 | 峠からの最初の斜面。どこを歩いてもいい。 | B奥布山山頂。広い平らな山頂部。 | B何とか読み取れる朽ちた標識 |
B西側から東を見ている。 | 奥布山の北東側は笹枯れが目立つ。 | コース上のヌタ場。 | シヤウヅ山に向けて緩やかに登る。 |
途中から西側の展望。 | 振り返り奥布山。 | Cシヤウヅ山。かなり広い山頂部。 | C黒くなぞられた三角点。 |
C御料局境界点。南側には「栃生山」と表記。 | Cもう一方には「白倉山」とある。 | Cシヤウヅ山より黒沢山への踏み痕。 | このような鹿道が入り乱れている。 |
1790m付近 | 1800m付近から黒沢山。 | 途中から北側の展望。 | 1810高点付近から。 |
1810の北東鞍部にテン場適地。 | 1810北東付近。低い所を伝ってゆく。 | 1790m付近。深いササの場所もある。 | 1867高点東側。 |
1880m付近。 | 1960m付近。気持ちの良い笹原。鹿道が無くなり進度が落ちる。 | 1970m付近。笹が無いとオアシスのよう。 | 2000m付近。急登を笹を掴みながら這い上がる。 |
2030m付近から黒法師岳側。 | 黒沢山の肩に乗った辺り。 | 2100m付近。もうすぐ。 | D黒沢山山頂。 |
D三角点脇の標識。 | D笹に埋もれた三角点。 | D健太郎さんの標識もある。 | D黒沢橋側への道標。 |
D黒沢山から下山開始。 | 1867高点北東。 | 1867高点北。 | 1780付近からシヤウヅ山。 |
1810高点から黒沢山を振り返る。 | Eシヤウヅ山に戻ると単独のハイカーが居た。 | E登ってきた黒沢山側。往路よりかなり南側。 | シヤウヅ山西斜面は大展望コース。 |
植生の少ない明るい草斜面もあり、ここも休憩適地。 | F奥布山帰り。 | リボンを追いながら下る。 | ガレ場の上は好展望。 |
G峠に戻る。 | 奈良代山北尾根の様子。 | H奈良代山山頂の様子。展望は無い。 | H朽ちた標識。 |
Hなぜかケルンもある。 | 造林林道に乗る。 | Iゲート前に戻る。 |
土曜日はまずまずの天気、翌日曜日は少し下り坂。その日曜日に、八方尾根登山の依頼があった。となると、前日の土曜日はそこそこの場所にしておこうという思考になる。ここ最近の登行場所のバランスから言えば、南アルプス、北アルプスと続いたので、今度は中央アルプスに入りたいところ。しかし中アには2000m超の未踏座が無くなり、さて何処にしようかと迷う。内心気になっているのは、やや纏まって残る南ア深南部になるのだが、まずは「遠い」事が気持ちを逸れさせる。でも何度も言うようだが、行かないことには前に進まない。一週空いての再訪となるが、前回の不動岳(六呂場山)に続く2000m超の黒沢山を目指す事にした。
奈良代・白倉の両林道が安心して通過できる事を、前回の不動岳山行時に情報を得たので、コース取りは多様に出来る事が判った。黒沢橋から取り付いてもいいし、北側の中ノ尾根山との抱き合わせも面白い。でもちょっと待った。日曜日に余力を残さねばならない。となると必然的に一番狙いやすい奈良代林道利用が良い事になる。ルートの良し悪しでは、黒沢橋からのアプローチが良いようだが、ゲートから登山口まで歩いている時間を、少しでも多く山中を歩く時間に当てた方が楽しい。奈良代山経由コースで決行となる。
1:00家を出る。高速に飛び乗り燃費運転を決め込むが、とろとろ走っていると、流石に睡魔が襲ってくる。ほっぺたを叩きながら、太腿を抓りながら頑張ってみるが、それでもダメな時はサービスエリアのコーヒーが万能薬となる。サッと飲んで3分から5分仮眠すると、その後はわりとスッキリとした頭で行動できるのだった。飯田で降りてR251経由で三遠南信自動車道の矢筈トンネルに潜ってゆく。そして遠山郷を過ぎ、兵越峠を越える頃にはすっかりと夜が開け、やはり今日も経路の長さを感じる。R474草木トンネル手前から右手の脇道に入り、その先で白倉林道起点分岐を南に折れてしばし進む。分岐からしばし進むと、左(東)側に「大寄線」に入る白い欄干の橋がある。ここを左折してクネクネと登って行くと、途中で奈良代林道に合流し伝って行ける。合流点から先は最初こそ舗装路だが、途中からダート林道になり、土埃を巻き上げながら高度を上げてゆく。よく踏まれた道であり、通過(利用)車の多さからか、轍などなく平坦で安定している林道であった。おかげでややハイスピードで進むことが出来た。しかし準備緩慢、何処かで水が得られるだろうと思って来ていたが、この林道の途中には全くそのような場所が無い。探しつつドキドキしながら伝っていたが、結局水にありつけないままゲートに到着してしまった(5:50)。今日は水無し山行となった・・・トホホ。ゲート前は7〜8台駐車可能なスペースがある。もっと停められそうだが、工事関係者が往来する事を踏まえると、そのくらいになるだろう。今日も少し仮眠をと思っていたのだが、日が上がってのこの時間。やはりそんな悠長な気分になれず、行動開始。根っからの時間に関しての貧乏性とも言えようか。家から331Km、そこを経路5時間かかった。
チェーンゲート脇には登山届けがあるが、中を覗くと記録はやや古いものばかりであった。林道に伝いズンズンと登って行く。綺麗な広い林道であり、周囲風景も良くかなり快適。そして30分ほど進むと黄色い強固なゲートがある。開け放たれたままになっているのだが、前後に駐車余地が無いような場所で、ゲートの場所として不自然に見えた。道なりに進むと、スタートから2.6キロ地点が峠のようになっており、現在はそこに工事関係者の飯場が造られていた。すぐ南に奈良代山があるが、帰りもここを通過することから、後回しにして奥布山へ向かう北側の尾根に取り付く。
地形図には破線ルートが書かれており、何処かにその踏み跡があるものと思っていたが、なかなか見つからない。再度地図を見返すと、尾根やや西側にルートがあるようであり、じわりと修正するように寄って行く。するとそこには、明瞭ではないが踏み跡を発見。どうやら尾根が緩斜面の為に踏み跡が濃くならないようだ。逆を言うと、それほどにどこでも歩けるような尾根斜面であった。先ほどの峠から30分ほど登り上げ、奥布山の山頂部に到着。だだっ広い場所で、その大地の北の端にちょこんとした緑の高みがある。そこが山頂かと思って寄るが、そこで無し。ここからは木々の間からシヤウヅ山が見える。標高点を取っている場所を探しに、少し戻るように南に進むと、朽ちた標識が2枚見えた。どうやらここで間違いない様子。地面からは頭を赤く塗られた標柱が立ち、先ほどの標識をよく見ると、辛うじて「奥布山」と判読できる。1座登頂。
次はシヤウズ山。その方向に足を進めると、奥布山の東側では周囲の笹枯れが目立つ。その枯れた景色の中を東に進んで行く。途中にはルート上にヌタ場があり、それほどにハイカーの訪れが少ない事を示していた。ついさっきまで居たような鹿の足跡を見ながら緩やかな登りに入る。大きな倒木がある場所を越えると、北側が開けた地形になり南信の山並みが見渡せる。振り返ると先ほどの奥布山がボテッとした姿で見えている。周囲展望があるのだが、同定の苦手な私は、じっくり見てもよく判らない。判れば楽しいのであろうが・・・。そして途中からかなり気持ちよい尾根となる。やや太い幹のカエデがスクンと立ち、その下などは幕営適地であり、色づいた下でテン泊など・・・思っただけで気持ちよくなるのであった。やや幅広の登路を伝い上がって行く。
シヤウズ山到着。山頂の一角に這い上がってから、北に進んだ端の方に三角点は鎮座していた。彫り込みが黒くなぞられたそれは、三等点にしては大きく感じ、見栄えの良い点であった。その北側には「御料局境界点」と書かれた標柱があり、その一面には「白倉山」、もう一面には「栃生山」とあった。もう一面にも書いてあるのだが、判読不能。展望はほとんど無く、周囲を樹林に囲まれた山頂であった。ただ、広い山頂部であり展望の無い閉鎖感は無く居心地は良い。次に進むべき東側を見ると、それと判る踏み痕が降りている。どんな尾根だろうか。厳しい笹漕ぎとは聞いているが、この先3キロの往復にどれだけ時間を要するのか・・・。
シヤウズ山から東進が始まる。なんとなく踏み跡はあり、それが鹿道と判るまで時間はかからなかった。それには、周囲には迷路のように道形があり、乱れに乱れている感じ。そこを自分のルートファインディングで好きな場所に進めばいいのだが、どうしても歩き易い太い筋を伝う為に、進行方向に対してクネクネと進んでしまっていた。なかには麓側に降りている鹿道もあり、勘と予測を交えて進む事を必要とする。時折見えるマーキングがあるのだが、この往路では、それに伝うことは少なかった。自分なりに尾根の高いところを狙うように進んでいた為なのだが、マーキングは尾根頂部を外して通過している場所が多いのであった。一本調子の尾根ではなく、やや進路が一定しない地形であり、ルート取りはよくよく判断せねばならなかった。途中からは倒木の多い地形で、潜ったり乗り越えたりしながら通過して行く。朝露でベタベタになった雨具ズボンが、足の動きを制限して非常に歩き辛い。これを思うと、天気の良い日でもササの乾く時間を考慮して、もう数時間遅らせて入山する方がいいかもしれない。全ては天候によるのだが・・・。
1810高点付近はかなり気持ちよい周囲の開けた場所。黒法師岳の顕著なピークから連なる尾根筋、北を見ると白倉山側のポコポコとしたピークを持つ尾根も見える。正しくササの平泳ぎで腰ほどのササを分けつつ、鹿道に繋がってゆく。この鹿道があるからいいが、無ければ進度は半分、もしくは1/3だろう。そして1810高点東には、二重山稜的な場所があり、その中央部の窪地には草の禿げた場所があり、テン場適地となる。だんだんと植生が強まって行く感じで、腰までだったササが、肩口までの高さになってくる。途中、すぐ脇でキーンとシカの鳴き声がした。そこでゴソッと大きく笹が動き、大きな頭が飛びあがった。シカもこちらの動きに気づかなかった様子。私もより自然向きな歩き方が出来ている様子。ただ、驚かせてしまったのは確か。鈴くらい鳴らした方が、お互いの為なのだろう。でも自然の風の音を聞きたい私は、静かに歩きたいのだった。
1867高点付近も倒木が多い。鹿道の中に隠れた倒木で、どれだけ脛を強打したか。その痛さから、ズボンを捲くらずとも血か滲んでいるのが見えるよう。真夏のような太陽が上にあり、その日差しにササが完全に乾いている場所もある。そんな場所は漕ぐのに好都合。地形に沿って歩いていたつもりが、顕著な尾根を左に見て歩くような格好になった(ここは尾根上に進む方が楽)。どうやら進路を1901高点寄りにとってしまっていた。ただこれには狙いもあって、1901高点側の鞍部から北に突き上げた方が等高線は緩く、登り易いと判断した為でもあった。しかし進んだ先は、シカ道も無いような笹原で、少しブレーキになる進路判断となった。そして1950m付近の植生は濃く、背丈はそう高くは無いが、密生気味。全くスピードが出ない場所となった。50mほど這い上がると、樹林の中の下草が無い場所があり、さながらそこはオアシスのようであった。しかしその先で再び深いササの中へ。そこを両手で笹を掴みながら、ゆっくりとした進度で足を上げてゆく。なるべく植生の薄い場所を拾いながら進んで行くと、2050m付近で尾根に乗った形となった。そこには何となく踏み痕がある。鹿道でも何でもいいのだが、道形があることは嬉しい。これまでが広い尾根筋だったので、足を置いているここもやや広い場所だが、面白い事に痩せ尾根にも感じられる通過点であった。途中で、少し道形があやふやになるが、もう地形を追いながら進めばよいことであり、山頂は僅か先となっていた。
黒沢山山頂。古い標識が一枚目に入り、その西側に三角点を示す標柱が横たわっているのだが、探せども何処に点があるのか見つけられなかった。周囲の配置石も確認出来、付近にあることは間違い無い。ササを退かしながらしばらく探すと、探していた中央部辺りから三角点の表面が見えた。ほとんど地面に埋まってしまっている状態であり、この状態は探すのが難しいと判った。これで、北アルプス、中央アルプス、そして南アルプスの2000m超すべての「黒沢山」登頂となった。西に進むと、黒沢橋からのルートへ導く道標も見える。周囲展望はほとんど無く、その部分も寂峰らしい感じを醸し出していた。経路4時間ほど。計画段階ではもう少しかかるのかと思ったが、鹿道が入り乱れているおかげで、それを適当に伝うことが出来た。帰りに鹿に遇ったらお礼を言わねば・・・。次につなげる為に中ノ尾根山側を見るが、やはり樹林が邪魔して良く見えなかった。この山頂、私のMOVAはアンテナが3本立つが、送受信が出来なかった。そろそろMOVAも買え時期なのかも。獣が多いせいなのか、かなりの数のハエが舞っていた。
下山。往路を戻る。一つ決めたことがあり、忠実にマーキングを拾って歩いてみようと思った。下りだし2050mの肩の辺りから進路は西側に進んでいた。ここは往路では90度違え、南側から登りあげてきた場所であった。しかし降りて行くと、何かおかしい。降りている場所は尾根形状であるが、主尾根に対して北(西に派生している)にズレている。今の今、マーキングを伝うと心したばかりなのに、我がルートファインディング力は貧弱なのであった。この尾根は鹿道も皆無。それでおかしいと思ったのだった。南にズレてルート修正。この日は天候がいいので良かったが、ガスが捲いていれば、こうすんなりとは間違えに気がつかなかっただろう。広かったり曲がっていたり、複雑な尾根筋であることに間違いない。そしてマーキングを見つけるが、往々に尾根北側寄りにあるように思えた。1867高点はトラバースするように西を伝い、ガレ地形が危険度を増した付近で尾根頂部側に登りあげる。1780m付近になると、目の前にダラットしたシヤウヅ山が見えてくる。まだまだ漕がねばならなく、近くに見えて遠い山に思えた。それでも青く冴えわたった空に、一面の緑の笹原。そこに時折ピョンピョンと跳ねるシカを見る。山を訪れる目的の100パーセントを満たしており、気持ちいい限り。昔の山屋は、こんなふうに道の無いところを遊んでいたのだろうと思えた。
復路は往路に比べ格段に快適に思えた。それには往路の経験値も加味されているのだが、進路をあちらに進めばあのような道がありと、それを判りながら新しい鹿道を伝うことが出来る。より、歩き易い鹿道が選択できる訳であり、進度もかなり速いように思えた。たぶん、もう一度ここに入山すれば、さらに速く歩けるだろう。そして一番良いコース取りも判るだろう。1810高点辺りから振り返ると、既に高い位置に黒沢山があった。この先は緩斜面に迷路のような鹿道のある場所。マーキングは谷形状の場所を進んでいる。ここでの往路は北寄りを通過したが、調査とばかりに南寄りを進んでみる。結果としてはどちらも同じような感じで、コンパスで方向さえしっかりと押さえていれば、何処を進んでも良いように思えた。シヤウヅ山が近くなると、山頂に誰か居るのでは、と思えてきた。シヤウヅ山までならハイキングの山であり、既に12時に近い時間で、黒沢山へ行く人はいないだろうから、居てシヤウヅ山だろうと思った。というのは、藪山から登山道に戻る場合、なるべく驚かさないように気を使う。ハイカーの存在を思うのはそんな背景からだった。
シヤウヅ山に戻る。そこには単独のハイカーが居た。ゴソゴソとササの中から私が出てきたので、御仁の振り向き方は、驚いた為の振り向きようであった。軽く挨拶をして会話はそこまで、御仁は静かに自然を味わっているようで、私も邪魔をせぬように言葉をかけない。少し喉が渇いてきたので下山を急ぐ。このシヤウヅ山の東斜面からの展望が良い。その大展望を楽しみながら大股で闊歩して行く。視線を足許に戻すと、先ほどの御仁の足跡と、そのあとに通過したシカの足跡も見える。登山ルートがあるここにも鹿道はあり、奥布山までの中間地点からお遊びで尾根北側の鹿道に伝ってみる。やはり迷路のように入り組んで分岐しているのだが、ちゃんと尾根に戻れるように付いている。伝っておかしいと思えば、高い方へ進めば問題なしであった。
奥布山再び。木漏れ日の入る雰囲気のある山頂。ここから赤いマーキングを拾って降りて行く。10分ほど下ったか、南側に明るい場所があり、足を進めるとガレ地の縁であった。ここからは黒法師岳側の稜線が綺麗に見えていた。緩斜面をどんどんと下って行くと、下の方に峠が見え、そこに朝は無かったバンが2台あり、ドアが開け放たれた状態で置かれていた。時計を見るともう13時を回っている。作業員たちは現場作業をしているようで、その飯場は静かであった。道を挟んで反対側の尾根に取り付く。斜面には特に登路らしき道形は無いが、10mほど上がると尾根上に踏み痕があり、そこには赤いマーキングも繋がっていた。工事現場はこの山の東側にあり、山を巻き込むような南側に進む林道が見下ろせた。工事現場からこちらを見上げれば、私が見えるような視界であり、あまり刺激しないよう静かに尾根を登って行く。そして目の前にケルンのような石積みが見え、そこが奈良代山山頂であった。
奈良代山山頂にもこれまでのような朽ちた標識があった。ここも鬱蒼としており展望が無い。細い幼木にもたれ掛かりながらトランシーバーを操作していると、目の前に異様な黒い大きな飛行体がやってきた。その幅1mほど。一瞬“ヤバイ”と思ったのだが、その飛行体と目が合うや、それは翻すように180度方向を変えて消えて行った。種は判らぬが、ふくろうのような猛禽類であった。羽根を広げた時の綺麗な文様はすばらしい。猛禽類の背中側から日差しが入り、その羽を透かすような光景はまるでスローモーションのように脳裏に残る。もうこんな体験は二度と無いだろう。向こうもまさかこんな場所に私が居るとは思わなかったのだろう。さああとは林道下り。でも工事関係者が入山している事から、車の往来も予想できた。それならと林道をショートカットするように直線的に降りようと考えた。
真っ直ぐと西進するように、歩き易い尾根斜面を降りて行く。すぐに林道に乗り、僅かに伝って再び斜面を下りだす。しかし1445高点の付近で、その高点方向に行かねばならないところを南西尾根に乗ってしまった。降りて行くと厳しい傾斜になってきたのでおかしい事に気づき西側に植林斜面をトラバースするように進む。すると明瞭な造林用林道に乗った。どこから派生してきているのかと伝って行くと、目の前に我が車が現れた。チェーンゲートの場所から南東側に進んでいた林道であったのだった。無事下山。
振り返る。この山のポイントはなんと言っても鹿道であろう。この鹿道を伝う判断如何で、楽な山にも辛い山にも感じるかと思う。あと、とても獣の匂いの濃い場所が数箇所あった。シカだけならいいが他の獣もいるだろう。御互いに驚かないよう気をつけたい。背丈以上のササを漕ぐ場面もあるが、往々に顔を出して先を見据えながら歩ける場所がほとんど。ここは気持ちよい藪漕ぎが出来る場所、そんなふうに思えた。