又七山(敗退)  1810m      

 2010.01.16(土)   


  雪     単独       奥志賀公園栄線入口から          行動時間1H30M


@林道入口分岐(バス停)7:09→(59M)→A124番CP前8:08→(31M)→Aバス停前8:39


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@深夜から動きっぱなしの除雪車。 積雪量は2.5mを超える。 A最終到達地点。なかなか進度が上がらず断念。スタートから400m付近。 AこのCP前で引き返す。
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スキーを履いても腰まで沈む柔らかい雪。 Bバス停に戻る。


 
 前週ロングハイクアップが成功したので、少しいい気になって豪雪地帯の山に挑む事にした。

 又七山。一度、無積雪期に挑もうと狙ったのだが、地形図に書かれる破線は、完全な廃林道になってしまい、もうほとんど自然に戻ってしまったと言って良かった。さすが志賀高原の植生の勇ましさである。その林道の入口には、大きな岩が置かれ、車が入れないようになっていた。完全に踏まれなくなった場所は、自然に戻りやすい訳であった。30mほど突っ込んではみたが、“こりゃ残雪期だ”と判断し、雪の降るのを待っていた。しかし場所は志賀高原の豪雪地帯、雪の量が半端でない。雪を当てにして行くにしても、最適なのは4月5月頃であろう。その頃ならまず問題なく踏めると思える。ただそれでは面白くないので、厳冬期での登頂を目指してみた。さて結果は・・・。

 1:10家を出る。上信越道に乗り、信州中野を目指す。西を向いてゆくのだが、真正面に見事なほどのオリオン座が見える。このオリオン座の一等星が、爆発するとかしないとかの話を聞いた。そうなると月ほどの大きさに光の輪が広がるらしい。本当なのか、と思いつつ綺麗な星空を眺めていた。長野に入ると雪が舞いだし、中野インターを降りる頃には、かなり強くなってきた。志賀高原に向けて有料道路経由で行くのだが、走るのが怖いほどに降雪があり、途中の上林のチェーン着脱場の屋根の下に入り静まるのを待つ。しかしあまり状況は変わらず、そのままここで仮眠を決めた(3:00)。同じような事を思う人は多く、志賀高原を目指すスキーヤーの一部が、ここに入って仮眠をしていた。

 5:00少し小康状態になり、上を目指す。途中には黄色いヘッドライトの除雪車両が沢山動いていた。上に行けば行くほどに多く、高いところからのライト照射が眩しく、脇を通り過ぎる時にはヒヤヒヤ。それを判っているホイールローダーの運転手は、すれ違い際にライトを消してくれていた。こんな所にも、性格が現われるのであった。

 さて、志賀高原の奥、奥志賀を目指していた。ここから雑魚川に沿って続く、雑魚川林道に進むように公園線に伝って行き、その雑魚川を右岸に跨いだ地点から破線ルートに絡める形で登って行く予定としていた。しかし志賀高原地内は立山の雪の回廊のような状態。ラッセル車が残した残した刃跡が左右の雪の壁に見える。よって路肩の駐車スペースはほとんど無く、スキー場でさえ、ほとんどの車が雪に覆われ見えなくなっている状態であった。“拙い、車が置けない”と思うのだが、もうここまで来たからには、車でラッセルしながらスキー場に突っ込むなりして、決行に向け努力せねばならなかった。長らく置いてある車の上には2mほどの雪が乗っている。週末直前の降雪がもたらしたものなのだろうが、これを見て、“今日は登頂は無理か”とも思えた。片道5キロに満たないが、この深雪を掻き分け行く元気はない。

 公園線の切明に向かう起点分岐到着。雪の壁が2.5mほどの高さで連なっていた。助かったのは、なぜかバス停の休憩舎の横が除雪してあった。もしかしたらバスの回転場所にスペースを作ったのかと思ったが、もう他を探すにしても無いので、ここに突っ込む事にした。突っ込んだ後は、その横や、後を頻繁に黄色いライトを点けた除雪車がチェーンの音を響かせて作業している。「置くな」と言われているように感じたが、こちらもスモールライトを点けっぱなしにして、「仮置き」を強調した状態で停まっていた。夜明け頃になれば除雪を終了するだろうから、それを暫く待つ事にした。作業車が居る前を、スキーを履いて林道に入って行く度胸は無かった。と言うのも、林道の入口が周囲の雪の「雪捨て場」のように集積されていた。既にそこが高い壁になっており、容易に短時間で越えられそうも無かったのだった。そして6:30、周囲のディーゼル音が静まってきた。まだ遠くからは聞こえるが、ここの作業はひと段落らしい。急いでスキーにシールを張り準備をする。今日は当然長い板にした。最大限浮力を得なければまずこのふかふかの中は進めない。最後に防水スプレーを掛けて準備完了。

 7:09急いでスタートする。林道を進む事に対しての後ろめたさは無いが、ここに車を置いておく事に後ろめたさがあり、「置いてゆく」姿を誰かに見られたくなく、急いで行動する。しかし、除雪の壁は高すぎて超えられない。周囲を見ても取り付ける場所が無く、再びバス停まで戻る。そしてバス停脇からなんとか這い上がってゆくが、上にあがったと思った瞬間、足許がふわっと落ち、次の瞬間雪面が1mほど上にあった。こんなにこの雪は深いのかと体感させてもらったのだが、週末に向けての降雪は、ここでは1m以上あったようだ。“こりゃ無理だ”とつぶやきながら、這い出すまでに10分ほど要した。何とか体制を立て直し、雪の上を踏みつけながらのラッセルとなる。板は深く沈み、雪面は腰ほど。なんと先ほどの林道入口まで到達するのに5分以上掛かっていた。やっとその場所に到達し、スタートと思うのだが、もう既に体と頭は後ろ向き、やめようと思っているネガティブな自分が居た。それでも「1時間は懸命に歩こう」と決め足を踏み出してゆく。

 最初の橋に向け降りて行く。歯痒いほど進度が遅い。これほどのラッセルは厳冬期の木曽駒に上がった以来である。スキーを履いてのこの沈み込み量だから、その時の状態を優に超えているだろう。そして橋に掛かる直前、南から雪崩が起こった。最初に雪煙が起こり、その後に重い音が続いてくる。どうも上(別荘地へ向かう車道)での除雪車両の影響のようだったが、この時、フードを被るくらいしか対応できなかった。急いで逃げるにしても、深すぎて足が全く動かず。もし場所が場所で雪崩の大きさが飲み込む大きさだったら、まず雪の下だったろう。雪煙の後の雪は橋の袂に達するくらいで止まってくれた。こうなると、自然が「行くのを諦めろ」と言っているようにも思えた。それでも先ほど1時間と決めたので、足を進める。

 雪はハラハラと舞うほどになり、フードを脱ぐ。外気温はマイナス13度。しかし、ラッセルの連続で汗がほとばしるほどに顔を伝っていた。進めていないのはあからさまであり、地図を見ないように心して時計だけを時折見ていた。そして1時間経過。地図を開き、現在地を把握する。なんと、公園線入口から400mほどしか進んでいなかった。二人でのラッセルなら、もう少し進度が上がるであろうが、それにしてもこの雪ならこんなもんであろう。雑魚川の右岸に行くまで2キロ。今日そこへ行くには5時間掛かる計算になる。雪に甘んじて雪のせいにしたくなく、行くからには登頂を思って進んでいた。しかしこれでは目指しても10時間以上掛かってしまい、もう行くか戻るかを悩む場合ではなくなり、戻るの選択しかなかった。最終到達地点の脇にはコンクリートポールがあり、「124」と書かれていた。次回来た時には、苦笑いしながら見る事になるだろう。

 反転するにも一苦労、自分のトレールに乗って戻ってゆくのだが、膝の前に雪が無いとこんなに歩きやすいのかと実感する。それでもまだ沈む。トレールがあるにしても、歩き辛い復路となった。不甲斐ないが、目指す山に背を向ける負け犬的思いはない。今日は完全に無理、そんな計画をした自分が悪いのだが、体感してみなければ判らない事もあり、これで厳冬期の志賀高原をよく知った事となった。まあ降雪の影響が大なので、「降った後の志賀高原」と言った方がいいだろう。公園線入口に戻り、崩れ落すように雪を踏みつけて除雪してある大地に降り立つ。既に8時半を回り、行き交う車から、不思議そうな視線を受ける。山頂を踏んできたなら、自信満々な目で受け答えが出来るのだが、今日は目を逸らすしかなかった。完全に敗退。もう少し時期を遅らせて狙ってみよう。

 不完全燃焼なので、奥志賀牧場の北側にある丸山を狙おうと思ったが、まあここの雪がちょっとずれただけで変わるはずもなく、経路2キロほどでも、近くにあってかなり遠くに思えた。下道を伝いながら下り、千曲市の上山田温泉北側の八王子山に駆け上がってから帰路に着いた。ここは事典にも地形図にも載らない、地元に愛される里山となっており、麓にはしっかり案内看板もあり、綺麗なトイレも新設されていた。


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