又七山 1810m
2010.03.6(土)
雨 単独 奥志賀公園栄線ゲートより 行動時間4H19M
@公園線ゲート6:25→(13M)→Aゲートから1キロ6:38→(13M)→Bゲートから2キロ6:51→(3M)→C熱平橋2.2キロポスト6:54→(59M)→D1612高点7:53→(43M)→E山頂大地に乗る8:36→(8M)→F又七山8:44→(1M)→G三角点ポイント8:45→(1M)→H又七山最高点8:48〜50→(7M)→I山頂大地からの下降点8:57〜9:08→(40M)→J熱平橋帰り9:48〜54→(50M)→Kゲート到着10:44
@雑魚川林道に向かう、奥志賀公園栄線入口ゲート。 | 林道上はスノーモービルが走った痕があった。 | 124番CP。前回、ここまで来るのに1時間かかった。今日は5分ほど。 | 林道途中から又七山側を見上げる。 |
Aゲートから1キロ地点。 | 丸山中津川林道への分岐点の小屋。 | B2キロ地点。 | C熱平橋 |
C橋の右岸に「奥志賀まで2.2キロ」の標柱あり。 | 標高1420m付近の廃林道の道形。雑木が生える。 | 1480m付近。広い。 | D1612高点付近。 |
D1612高点付近のリボン。雪面から300mmほどの場所。 | 1680m付近。ここが一番の展望場。 | 1680m付近から見る奥志賀スキー場。 | 1750m付近。この先から急峻になる。 |
E山頂大地に乗る。ここも居心地がいい。 | F又七山最高点。北側の様子。 | F歩いてきた南側の様子。 | G三角点ポイントの開けた場所。 |
G朽ちた木にリボンが残る。 | H最高点に戻り、記念撮影。今日はフリーランドー。 | I山頂大地からの下降点。 | 1450m付近のなだらか斜面。 |
1450m付近。滑ってきた斜面を振り返る。 | 林道の道形を跨ぐ。 | J熱平橋前に降り立つ。 | J降りてきた尾根側。尾根の末端に案内板も見える。 |
J雑魚川は太い流れで、既に轟音。 | 林道分岐地点帰り。 | Kゲート到着。(駐車の様子) |
「執念深い」のか、「仕事きっちり」なのか微妙なところなのだが、年頭に狙って不甲斐なく敗退した奥志賀の又七山を目指す事にした。「雪はたっぷりある」なんて思っていたら、雨は続くは、気温は高いはで、ノホホンと胡坐をかいているわけには行かなくなった。志賀高原のライブカメラで見てみると、既に土が見えている場所もある。“こんなに早く・・・”と、もう他の場所には目もくれず、照準を又七山に定めた。
何度聞いても、にやけてしまうこのネーミング。間違いなく「又七」さんと言う人名が由来なのであろう。しかし表立った記録は上がってこない。同じように興味を持つ方は居るだろうと思うし、ましてや山腹に林道が入っている。それを見れば誰もが「登れる」と判断すると思うが、皆無に等しい。たぶんこれには、周囲の名だたる山々に、その存在を消されてしまっているように思えた。同じ出向くなら、顕著な、そして有名処に登りたいのが普通であろう。言うならば、この又七山を目指す事自体が、異端的であり、変わっていると言えよう。でもそんな事はどうでもよく、登りたい場所に登るのが私である。あと、この場所を即座に決めた理由はもう一つ。天気が雨であり、連日気温が高い。なだらかな勾配のこの山は、安心して狙える場所なのであった。
前回を踏まえて、今回もスキーは長い板を用意した。トラウマのように前回の記憶が甦るのだが、再びのラッセルでは学習していないという事になり、少し時期をずらした恩恵として、雪が「締まっていてくれ」と願うばかりであった。天気は雨、雪も溶けだしているだろう。団子にならぬようシールワックスをこまめに塗って準備をした。最後まで迷ったのがアウターの防寒具。上は雨なのか雪なのか。気温からいくと薄い雨具でも良かったが、場所が志賀高原、その響きからはしっかりっ防寒をしておいた方が良いように感じる。迷った時は過剰装備。これが単独行の性となり、笑われない為の手段でもある。
1:10出発し、すぐに上信越道に乗る。八風山トンネルを挟んで上州側は、濃いガスで大半がノロノロ運転。雨粒がフロントガラスを叩き、我ながら「もの好きだなー」なんて思う。深夜移動のスキーヤーの姿も少ない。全ての遊びは天気基準なのであろう。道中はラジオを聴くことが多く、その選択肢の一つが、NHKの「深夜便」なのだが、落ち着いた語り口調と、ゆっくりとした音楽の選択に、睡眠導入剤のようにもなっていた。深夜に眠りに誘うHNKの配慮が逆効果にもなっているのだった。
信州中野で降りて、292号で志賀高原へ登って行く。前回に比べ、あからさまに雪の量が少ない。前回の敗退後、ゴールデンウィーク頃に狙えばと思っていたのだが、早めの判断で正解のようだ。車の外気温計は、高天ヶ原付近でも5度を示していた。なんて言う暖かさ、さらに雨。周囲の景色が白から黒に変わるのも早いはずである。そしてスタート地点となる林道ゲート前に到着。今回は「ゲート」と表記できる。それには、しっかり門扉が見えていた。前回はゲートの「ゲ」の字も判らないほどに埋まっていたのだが、今回はしっかりと見える。バス停側の駐車スペースは土が出ていて、ドロドロ状態。そこしかないのなら停めるのだが、ゲート前にスペースがあるので、舗装路の上に停めさせてもらった。下山後、靴が汚れるのを回避させた訳である。ただここは北に向いて下り勾配、仮眠をするにはいまいちの場所だった。でもどんな場所でも寝られる私には関係なし。(3:15到着)
夜が白みだし、車内でシールを張って準備をする。そして外に出るも、途中のコンビニで買った「もっちりあんドーナツ」が見つからない。先ほど手に取ってあるのに姿を消した。そして椅子の下に落ちていたそれを見つけるまで、5分もかかってしまった。雨の中、6:26ゲートを越えてゆく。スキー靴では沈むものの、板を履けば全く沈まない。これなら今日はいける。そう思えた。ガキ沢橋までもあっという間で、あからさまに進度が違う。前回の最終到達地点の「124」番CPの場所も、あっと言うまに通り過ぎた。前回は雪に行く手を阻まれ、今回はその雪のおかげで進度が早い。おかしなもんである。途中から又七山側を望むが、大きな山塊で、何処が山頂なのかが判らない。登りに控えてシールを張っているが、しばらくは下り勾配なので、張らずして滑り降りればもっともっと早いだろう。
板を滑らせて行くと、奥志賀から1キロの表示があり、ここでスタートから13分。これからすると林道に乗っている時間は30分くらい。途中の大沢橋を経て、3つ目の橋の熱平橋で雑魚川を右岸に渡って取付きとなる。橋から雑魚川を見下ろすと、強い太い流れとなっている。春近しといった印象であった。右岸に移ると、そこに「奥志賀まで2.2Km」と書かれた標柱が埋まっている。周囲の様子が、無積雪期に見た時と少し違うように見えたが、景色が白と緑とで、これだけ違って見えるものかと思った。
谷部を詰めていってもいいようだが、最初から尾根を拾うように進んで行く。すると、北からの林道破線と合流する所に、大岩があり、低い位置にピンクのリボンが見えた。間違いなく無積雪期のマーキングである。そこから暫く沢の脇を伝って行くのだが、その沢の中には散策路があるようで、沢に架かる橋が見えている場所があった。傾斜は至極緩やかで、足への負担がほとんど感じられないような、登り易い傾斜が続いていた。途中で林道の道形を跨ぐが、その道形の上には雑木が無数に生え、それらの太さが廃道して長い時間が経過した事を示していた。この先は一番高い尾根を拾うように進む。下の方はダケカンバ帯であったが、途中からブナ林に変わる。そのブナの高い位置を見ると、熊棚が無数に見える。当然のように熊棚があるブナの幹には爪痕が沢山残る。爪跡の多さと熊棚の多さが、生息数の多さを示しているようであった。
1612高点にもピンクのマーキングは残っていた。やはりこの色は淫ら、自然の中では目立ちすぎる。私も一時は使っていたが、今では使う場合は全回収を心がけている。途中で林道の破線を跨ぐのだが、全くその存在は判らなかった。相変わらずの快適斜面なのだが、だんだんと行く手に急勾配の斜面が見えてくる。上の山頂大地へ上がる前の唯一の難関である。樹林の中を細かい九十九折を繰り返す。熱い、雨具の外側と内側とでは、雨と汗とでほぼ同じほどに濡れているような感じであった。
山頂大地に上がる。登り上げたその場所が、山頂と言って良いほどに居心地の良い場所であった。ここから雪面のうねりに板を這わせて北に進む。周囲はガスで展望は無く、坦々と地形に沿ってずれて行く感じ。そして最高点に到達する。その場所が最高点であることは、おおよそ周囲の地形から判る。ここの確認の為には、三角点の場所を確認すればいいわけであり、さらに北側にずれて行くと、朽ちた木にマーキングの布がくっ付いていた。間違いなく三角点ポイントの為に付けた印である。空の開けた場所で、航空測量にはうってつけの場所となっていた。最高点に戻り、しばし休憩。白湯を飲みながら、5分かけて探した希少なあんドーナツを齧る。シールを見ると、水分を吸ってビシャビシャになっている。こうなるとワックスの効果などあるのかどうか・・・。以外や早くに到達できた。経路、あまり笹が飛び出している場所もなく、無積雪期に見ていた笹は、下の方だけのように見えた。要するに無積雪期でも容易に狙える場所と判断した。周囲の木の周りは雪融けしており、そこから見られる積雪量は1mだった。この豪雪地帯で1m。3月のこの時期にしては少な過ぎるように見たのだが、どうなのだろうか。
又七山の北側から西に降りる広い尾根を滑ろうと思っていたが、周囲のガスがそれを拒んだ。往路のトレールに乗って南に戻り、山頂大地に乗った場所でシールを剥がし滑走準備。しかしここからの下りはしばらくは急峻と、樹林間隔の狭さで滑りにならない。50mほど高度を落すと、そこから快適な斜面となる。ただ、この日は良く滑る。雨の作用だろう、摩擦抵抗が少なくスピードが出やすい条件となっていた。木々を縫いながら楽しい滑走。願わくば雨でなければ、と言う所だが、雨だから緩斜面でのスピード感を楽しめたのかも。少しガスもかかっており、往路のトレールを時折見ながら高度を下げて行く。スキーべたな私でも、快走に近い気持ちよい滑走斜面の連続であった。
熱平橋の所に降り立ち、再びここでシールを張って登り返し。時計を見るとまだ10時前。すぐさま東にある奥志賀牧場内の丸山に行こうかと見るが、まあ今日は天気もこのままだろうし、このぐらいでとゲートに戻る事にした。緩やかな林道の勾配を、ゆっくりと登って行く。そして谷あいに大きく放送音が聞こえだすと、ゲートも近い。スキーヤーはリフトに乗っている時間、じっと雨に打たれねばならない。こちらは常に動いているから良いが、「みんな寒いだろうな〜」なんて気遣ったり・・・。そしてほとんど疲れを感じないままゲートに到着。
1月に体感した積雪と、この日の積雪は全くもって違っており、こんなに楽に踏めるとは思わなかった。一日がかりの山かと思っていたが、半日の山であった。天気さえ良ければ、丸山と抱き合わせで計画すると、楽しいスキーハイクとなるだろう。スノーシュー向きな傾斜の場所が多く、スキー初心者にも適当かもしれない。ただ山頂大地に上がる直下が急峻なので、アイゼンを忍ばせて行ったほうがいい場合もあるだろう。それより、志賀高原でありながら、無積雪期に楽しめそうな場所でもある。雪の下になっているので全てを把握できたわけではないが、たぶん大丈夫だろう。あとは先住の民が沢山居るようだ。彼らが動き出す季節に居住地に入る場合は、静かに邪魔をしないようにしたい。
帰りは、志賀山温泉に浸かってから、中野から長野まで高速を飛ばし、戸隠に居る山仲間のところに寄ってから帰路につく。生憎の天気だったが、充実した一日であった。