峰山 1987m
2010.1.9(土)
雪時々晴れ 単独 利根町平川地区不動滝西側より 行動時間:12H57M
@林道除雪最終地点3:46→(54M)→A910高点分岐4:40→(239M)→B1390m付近で林道を離れる8:39→(15M)→C1420m尾根に乗る8:54→(39M)→D1570m屈曲点9:33→(27M)→E1645.6高点10:00〜03→(168M)→F峰山12:51〜13:22→(85M)→G1645.6高点帰り14:47→(16M)→H1570屈曲点帰り15:03→(18M)→I林道に乗る15:21→(55M)→J910高点(林道分岐)帰り16:16→(27M)→K駐車余地16:43
@平川の集落から林道を1.2キロほど進んで除雪は止まっていた。ここからスタート。 | 不動滝への下降点分岐。これを右に見て左側の道を進む。 | A910高点の林道分岐。林道真菜板倉線起点。 | 起点から12分ほど歩いて、もう終点になっていた。林道はさらに奥に続く。 |
途中、昔の県知事、神田さんの書かれた「樹魂」の碑がある。左側にはナメ滝あり。 | ふかふかの林道を登って行く。 | B1390m付近で林道を離れ東側の尾根に向かう。 | C1420m付近、尾根に乗った。 |
C蛍光色のマーキングが打たれていた。 | 南北に伸びる尾根の様子。快適尾根。 | D1570m地点を東側から見た絵。広く気持ちの良い場所。 | 1580m地点には、二つ目のマーキングあり。経路、これ以外に見当たらず。 |
E1645.6三角点峰。北側から見た絵。 | 雪庇の上をうねりながら登って行く。 | 1770m峰は東側をトラバース。 | 1810m付近。まだ遠い。 |
1810mの先、二重山稜の谷部が雪が固く、そこを伝ってゆく。 | 1930m付近。景色が高山に変わってくる。 | F峰山山頂。南から見た様子。 | F「すかいさん」の標識が掛かる。 |
FMLQのテープも残る。いたずら書きを追記。 | F今日の板は、カルフのメタとエボリューションライトの、マンゾクスペシャルバージョン。 | Fシラビソモンスターが沢山出来上がっていた。 | 今季初シュプール。 |
気持ちよく滑り降りて行く。 | 1770m峰の東側トラバース帰り。 | うねる雪庇尾根を戻ってゆく。 | 途中から皇海山側。少し天気が回復し、見えるようになってきた。 |
1670m付近から振り返る。 | マーキング意外に唯一あった人工物のワイヤー。 | G1645.6三角点峰に戻る。往路のトレールは既に無くなっている。 | H1570m屈曲点の帰り。ここを見ると、雪が無ければ深い笹の尾根の様子。 |
1420m付近から見る水行寺山。 | I林道に降り立つ。林道には往路のトレールが残っていた。 | 林道終点地のゲートの様子。山側から見ている。 | J910高点の分岐帰り。工事関係者か、車がここまで入ってきていた。 |
K駐車余地に戻る。スタート時点では雪の乗ったトラックが、木材を山積みにしていた。 |
「峰山」。2009年暮れ、年内最後の集大成として登ろうと予定してあった場所であった。しかし出かけたものの、途中での突如の腰痛の為に流れてしまった。今シーズンは例年にない大雪で、自然が危険を回避してくれたのかとも思ったが、行かないとまたフラストレーションが溜まるもので、年明け早々狙ってみる事にした。
少し悔いる部分は、2003年にサエラスキー場から笠ヶ岳を狙った時に、抱き合わせで踏んでしまえば良かった。しかしこの時はこの時で、笠ヶ岳をやっとやっと踏んでいた状態で、立ち寄る余力が無かった。従いぽつねんと残ってしまったのだった。アプローチが近いのは同じコースだが、また同じルートで狙うのも面白みが無いので、今回は南の平川地区から狙ってみる事とした。狙うに際し、やはりここは残雪期が順当。それも4月頃の締まった頃が狙い目。だが私は果敢にも厳冬期で踏んでみたいと思えた。それには、南に続く尾根がスキーに適しているように見えたのだった。そして尾根とは別に、林道が奥の方まで入っているので、それがさながらお助けロープのように見えた。ただ、今年は大雪であり、平川の集落から先が通行止めだったら、山頂までは10キロほどの距離になる。いくらスキーでも、この距離は厳しい。でも行かないといつまでも残ったまま。実行あるのみ。
1:10家を出る。天を仰ぐと星空が綺麗に見えていた。山はこんな天気ではないのだろうが、少しばかりか好天を期待しながら17号を掛けてゆく。その17号から別れ120号に入ると、凍った場所や圧雪も見られる。電光掲示板にはマイナス11の表示が出ていた。かなり冷え込んでいるようで、ゆっくりと車を進めてゆく。皇海山への栗原川林道の分岐を過ぎ、1.5キロほどで右側に折れてゆく。入口には平川小学校への案内看板も見られる。村内の道はだんだんと狭くなり先へ行くほどの絞られてゆく。そして建設工事会社の建て屋を最後に、林道に入る。
圧雪林道で、ややツルツル。それでも轍があり、雪の上に先行車が居た事はありがたい。どこまで進めるか微妙なところだが、せめて不動滝の辺りまでは進入したかった。進んで行くと、少し除雪した広見があり、そこに真新しいスギの丸太が積まれていた。あと林業作業のチェーンを巻いたトラックも停まっていた。その先へ行こうとしたが、倒れた大木が道路全体を塞ぎ、万事休す。さて駐車場所だが、林道は狭く路肩には雪があり、下手に谷側に寄せればそのまま50mほど下の坪川へ落ちてしまうような場所であった。となるとさきほどの広見なのだが、今日は土曜日、冬ではあるが間違いなく林業作業がされると思えた。駐車スペースは4台ほどだが、作業スペースを考えながら置き場所を何度もシュミレーションをする。丸太搬出する場合に邪魔にならない位置、ユーターン場所として邪魔しない場所。あとは働いている作業者を怒らせない配慮。村内から1.2キロほどの場所であり、戻っても良かったが、それでも1.2キロの省力はありがたく、なんとか広見の適地に停めた(3:10)。
今日の板はカルフのメタとした。殆どの場合でふかふかの雪であろうから浮力重視。林道歩きが長いので、下りの事を踏まえて長い板にしようかとも思ったが、尾根情報が殆ど無い場所であり、取り回しの良い長さを選んだ。シールを張り、防水スプレーをふりかけ、ヘッドライトで出発する。すぐに大木が道を塞ぐ場所だが、1トン以上あろうかと思える木が道を塞いでいた。林道上の積雪量は40センチほど。そのふかふかの雪を踏みしめながら進んでゆく。
スタートから10分ほどで、不動滝への分岐点がある。ここを右に進むと滝の方へ行き、今回進むべき方向は左(南)側の林道。スギの伐採作業は進行形の様子で、あちこちに山積みされ、運搬と積載用の重機が置かれていた。横を通過しながら“早くに踏んで降りてこなければ・・・”と、置いた車が気になるのであった。地形図には、この先の奈良地区にも家のマークが書かれているが、林道がこの様子だと廃村しているようであった。と言うのも奥に続く電柱や電線が見られなかった。そしてその奈良地区へ向かう道と、峰山の西側へ続く道の分岐となる(910高点)。道の入口には「林道真菜板倉線(起点)」と書かれているが、地形図に見られる地名情報には、それらの名前は一つも無く、ピンとこない林道名となっていた。この林道に入るとカーブミラーなども設置してあり、意外や立派。道幅も十分あり、よほど上部で植林作業が盛んにされているのだろうと思えた。しかし起点から進む事12分ほどで、あっけなく終点となった。地形図からは終点位置などは読み取れず、この場所にはちょっとびっくり。となるとこの先の地形図に書かれている林道は廃道なのか。この終点位置にはゲートがあり、開門されたままになっていた。調査としてこの林道がどこまで使えるのかも調べたかった。とりあえずここまでは車で進入可。判断が出来ないのが路面状況。雪が乗っているので立派な道のように見えているが、雪がなければ荒れた道かも。と言うのも道の中央とか、そんな場所から雑草が生えて、雪の上から飛び出していた。あまり通行がない林道なのだと読み取ったのだった。
林道に沿ってずんずんと板を滑らせて行く。冷え込みが強く、グローブをしていても指先がジンジンと痺れる。計画段階で地形図を見た時は、林道よりその東側にある尾根を伝った方が雪がある時は楽なようにも見えていた。しかし、下の方は植林された斜面で、樹林間隔が狭い。よって歩き辛そうに見え、そのまま林道の選択となった。先へ進むと九十九折が繰り返される。場所を選びながらショートカットするのだが、この日の雪質だとショートカットがかえって時間と労力の浪費に繋がった。腰痛も心配で、なるべくなだらかな道の方が、不安要素を軽減できていた部分もあった。
途中で林道が大きく東に張り出している場所がある。直登してショートカットと思っていたが、スキーでそれを出来る斜面ではなかった。南東側に林道を伝ってゆく。狙っていたルートは、1430高点から続く尾根に取り付こうと思っていた。よってショートカットを思っていたのだが、林道をそのまま行かねばならないとなると、南の1127高点から続く尾根に乗った方が早いと思えるようになってきた。林道に板を滑らせながら地形図を見てルートを考える。1430からの尾根も、林道と合わさる所にゲジゲジマークがあり、計画はしていたが不安はあった。となるとそこを避けられ尾根に乗れる、今の選択の方が安心感がある。林道が90度曲がる手前には、三角の黄色い標識があり、そこから真っ直ぐ尾根側に進んで行く。植林してある斜面はイバラが多く、けっこうにガリガリとやられるので場所を選びたい。急斜面を踏ん張りながら駆け上がると、目の前に広い尾根が現れた。
尾根に乗って時計を見ると、既にここまでで5時間が経過している。距離にして半分が消化したくらいで、この分で行くと山頂到達時間は残り5時間、往路で10時間を費やす事が予想できた。「諦めようか」と言う気持ちも少し、でも果敢に立ち向かうのが私である。経過時間を見れば長いが、時計はまだ9時前。諦めるには早すぎるのであった。この1420mの尾根上には、蛍光色のマーキングテープが釘で打ちつけられていた。この先の尾根は、やや狭いが快適な斜度で登ってゆける。そして西側からの尾根との合流点に達する(1570m)。ここはとても広い場所で幕営適地。西側を樹林が風を遮ってくれ、南に開けているので居心地もいい。このピークの東端(1580m)にも蛍光色のマーキングが打たれていた。尾根上であったのはこの二つのみ。軽く下って、やや急登の登りあげ。途中には苔生した大岩があり、それが印象的な尾根であった。九十九折を切りながらシール頼みで登って行く。
1645.6高点。一応通過点として三角点峰でもあり判断しやすい場所と思っていたが、雪が乗っているせいか、肩的場所であまり顕著なピークではなかった。北東側を見ると、雪庇がうねるように続いている。西風によって東側に張り出しているのだが、その頂稜を上下動しながら進んで行く。もう少しのっぺりとした尾根状態と思っていたが、そう甘くなかった。こうなるとメタ(カルフ)の選択は正解で、短さも軽さも、そして下り時の登り返しもシール内蔵なので得意とする。雪が舞い周囲の山はおぼろげに見えている程度。目指す峰山もぼんやりした絵になっていた。その峰山はまだだいぶ遠くにある。水は欲しくないが、無性に腹が減ってきた。身体が栄養源を欲しているサインであり、米粒の凍ったおにぎりを白湯で流し込む。やはり冬季はパンの方が美味しく食べられるようだ。凍ってもお米の糖分量などは変わらないのだろうか。
1670mで小ピークがあり、そこから下りこみ、ダラッと登りあげて1770mのピークがある。しかしここは最高点まで登らずに、綺麗に東側山腹がトラバースできる。この先、少し勾配がきつくなる。1870m付近で尾根上が進めなくなり、少し西側に膨らんで登って行く。細かい九十九折を切りながら尾根に戻り、東側に出る。この東側は終始展望が良く、西側に樹林がある。登りながら思っていたのは下りの事で、山頂からは西に下って林道に乗ってしまおうかと思っていた。それがあるので何度も西側を覗く。ただ、西風を受ける斜面。山腹の雪の押し出しで林道が完全に埋もれているのではないかとも思えた。ゆっくりとした時間の経過の中で、色々想定しながら這い上がってゆく。
もうすぐ山頂かと思えるが、1900mを越えた先が長かった。モンスターのようになった雪を被ったシラビソの間を、トレールを刻みながら縫ってゆく。時折、ズボッと踏み抜くのだが、日の入り方も関係しており、樹林中の進路のとり方は読み辛いのだった。強風の為、雪面と樹木からのスノーシャワーを浴びる。尾根に乗ってからは殆どフードが脱げない状態であった。
峰山山頂。北端にMLQのリボンが見られる。たかが絶縁テープされど絶縁テープで、よく目立つ。吹きつける雪に対して東側が乾いており、そこにいたずら書きを追記する。そして先だって品塩山で見た「すかいさん」の標識も雪を被って着いていた。よく見ると、板が曲がらないように割れないように、端面に釘が打ち付けてある。細かい配慮である。彫刻を見ると、やはり電動鑿を使用して彫られている。山名板の彫師としては山部さんが第一人者であるが、すかいさんはその後を追う2大巨頭になるのかも。御両名とも栃木の方のようで、日光彫りがあるように山名板も彫って作る姿勢は微笑ましい。この他に荷紐も結わえられており、好事家は訪れるようであった。ザックを降ろし、そこに腰掛けながらしばし休憩。日の入らない山頂であるが、その代わりに風だけは吹き付ける。先ほどまでエンジン全開だった体も、すぐに冷やされてゆく。そして地図を見ながら下山路を探る。既に時計は13時を回ってしまっている。1645.6高点から1430高点を繋げて、不動滝の西側へ降りようかとも思っていたのだが、あまりギャンブルが出来ない時間となってきていた。トレールの殆どは風によって雪が覆ってしまっているだろうから、往路のトレールはあまり期待できないが、それでも今の今通ってきたルートなら安心感がある。滑りを考えると西側に滑り降りてみたいが、林道を見出せず、降り過ぎてしまえばとんだことになる。やはり往路の尾根を・・・。シールを外して滑降準備。そしていざ滑り出す。
パウダースノーを巻き上げながら、こんなにスキーが上手いのかと我ながら驚くほどに面白い。全ては雪質に依存する所。少し日差しも出るようになり、周囲も見渡せるようになってきた。こうなると気持ち良さも倍増。西風に負けないほどの風を正面から受けながらシュプールを刻んでゆく。時にドタッとこけて雪まみれになるのだが、これがまた楽しい。苦労して登った分のご褒美なのだが、流石に下りは速い。しかしまともに滑れる場所は短時間で通過、そして再びアップダウンをこなしながら戻ってゆく。気のせいか、風に乗ってサエラスキー場からの音が聞こえているようでもあった。
1645.6高点まで戻る。滑りで嫌だったのはここからの西側への下り、岩が出ている所や、木の根や倒木が雪の下に隠れており、その倒木の下にスキーが入り込んでしまい、グギッとやる。嵌っていないフリーの方の足が下側にあり、嵌っている足が上側。二進も三進もいかず、外すのに難儀した。ここは雪の着いた南側斜面を下った方が優しいかもしれない。鞍部から登りあげて1580(1570)mピークへ。ここから南に下るのだが、やや尾根が狭いために、ここだけはもっと短いショートスキーが欲しい場所であった。それでも怖いもん知らずで滑り降りる。そして1420m付近から西側の林道に向かって降りて行く。ここもふかふかのパウダー。斜度がきついので一度転ぶと、身体が殆ど雪に埋もれてしまうような場所。転ばぬ事だけ注意してずり落ちるように林道に戻る。
林道に乗ると、往路のトレールがあるので、そこをシナシナと滑り降りる。勾配が緩いので、かかとをフリーにしてスケーティングをしながらの下り。そしてショートカットが出来る所は、どんどん短く刻んでゆく。林道終点を経て、林道分岐点に降りると、ハッと思った。そこまで上がってきている車の轍があった。と言う事は倒木が除去された事になる。さらにさらに、と言う事はあの先に林業関係者が入った事になる。あんなに大きな倒木を一般に人が退かせる訳がない。車の状況がかなり気になりだした。おそらく作業の邪魔をしているだろう。急いで降りて行く。すると途中の伐採現場までは、ホイールローダーが上がってきており、除雪した跡が麓側に続いていた。作業現場には、暖を取ったのか焚き火跡が燻っており、そこからの上昇気流に灰が巻き上がっていた。
不動滝への分岐を過ぎると、林道上の雪は殆ど除去され、林道脇の雪に伝いながら降りて行く。そこにサルの群れが現れたのだが、ほぼ垂直の山側の壁を、いとも簡単に30mほど駆け上がった。そしてすました顔をしながらこちらを見下ろしている。わざとじゃないのだろうが、上から頭大の大岩が落ちてくる。鈍い動きでそれを避けたが、スキーは咄嗟の瞬発力に欠けることを体感。そして駐車スペースに戻る。スタート時に雪に埋もれていたトラックには、山積みに木材が載せられていた。早くに降りてこなくて良かったのか判らぬが、文句を言われる事無く済んだので、少しホッとしている。ただ、怪しいと見えたのか、車の周囲には沢山の足跡が着いており、車内を覗き込んだ様子が伺える。まあそれもしょうがないだろう。無事長駆をこなし登頂できた。「終わりよければ全て良し」、本来は前年度末に使いたかった言葉だが、何も無く無事下山出来、この日に使う事にする。
登り終えての考察。無積雪期、上手くすると林道を車で入れてしまうのかもしれない。ただ植生がどうか判らないので、やはり南から狙うにしても「雪」がある事が必須条件になるだろう。どう考えても無難なのはサエラスキー場からのアプローチだろう。ただ日帰りでなく、幕営を含めた計画の場合は、面白く使えるコースに思えた。狙うに際し、少し早い時期だったがなんとか根性で登りあげた。昨年の黒負山に次ぐ、冬季のロングスキーハイクとなったが、滑るならこの先の締まった時期より今の方が面白いと思えた。